こんにちは!今回は気象予報士試験 第64回 実技2 問3を解説します!
(1)解説
◇模範解答
① 前線面の高度:850hPa付近(約1.5km高度)。理由:上空に向かって気温が高くなる安定層の上端にあたるため。
② 湿数(露点温度差)の鉛直分布:前線面から下方約920hPaまでは湿数が小さく(空気は飽和に近い)、それより下の下層では高度が低くなるにつれて湿数が大きくなる。
③ 名瀬の位置は地上前線の北側に位置する。
④

⑤ 前線面が地上に達する時刻は3時20分頃(±20分程度)kisyouyohoushi.com。
⑥ 暖気移流の継続時間:10日21時00分~11日5時40分頃まで、および11日7時20分~9時00分頃までの二つの時間帯
◇解説
①名瀬(奄美大島)での上空気象の解析です。図6(名瀬のエマグラム=状態曲線)を用いて、まず前線面の高度を読み取ります。前線面とは温度逆転層(暖かい空気が冷たい空気の上に滑り上がってできる逆転層)の上端に相当します。名瀬のエマグラムでは顕著な逆転層が一見わかりにくい状況でしたが、細かく見ると920hPa付近から高度を上げるにつれて気温減率が小さい(安定な)層が存在し、その上端が約850hPaに達しています。この層が前線性の逆転層(安定層)と考えられるため、前線面高度の答えは「850hPa」前後となります。許容範囲として840~860hPa程度でも部分点が与えられる想定です。理由については「気温の安定層の上端にあたるため」と書き、逆転層・安定層であることを示します
②湿数(露点温度差)の鉛直分布です。湿数が小さいとは空気が湿潤(飽和に近い)であること、大きいとは乾燥していることを意味します。名瀬のエマグラムで露点温度と気温の差に注目すると、前線面(~850hPa)からその直下の層(約920hPa)までは両者の差が小さく湿潤です。一方、更に地表付近に近い層では高度が下がるほど気温と露点の差が大きくなり乾燥していることが読み取れます。従って「前線面から920hPaまでは湿数が小さい(湿潤)、それより下層では高度が低いほど湿数が大きい(乾燥)」という分布になります。これは典型的な温暖前線付近の鉛直湿度構造で、前線面より上は暖湿空気に覆われ、下層ほど冷たく乾燥した空気に近づくためです。
③名瀬の位置と地上前線との関係です。地上前線は異なる気団の境界ですが、問題文中「前線が通過したとされる根拠」などともあり、名瀬は前線のどちら側(南北どちら側)に位置するか問われています。前線は暖気と寒気の接するところに解析されますが、名瀬の上空データや付近の天気から判断すると名瀬は地上前線の北側(寒気側)に位置します。実際、図1の地上天気図でも名瀬は停滞前線の少し北に位置し、北側の寒気層の下にいると考えられます。答えはシンプルに「北側」と記述します。
④ポイントは停滞前線の南側では東風成分が出現しないという風の特徴を利用し、各観測時刻で風向が東寄り(例:北東風等)から西寄りに変化する高度をプロットしていく方法です。名瀬上空の高層風データを見ると、高度が下がるにつれてある高さで風向が東→西に切り替わるポイントがあります。その高度を各時刻(例えば10日21時、11日0時、3時、6時、9時など)のデータで探し、順次マークします。その点をなめらかに結んだ線が停滞前線面の傾斜を示す線となります。
⑤前線面が地上に達する時刻は、上記の前線面描画から読み取ります。時間高度断面上で前線面の線が地表(高度0m)に降りてくるまでの時間を推定するものです。描かれた前線面の線が高度0に達するのはだいたい3時20分頃と見積もられます。問題文にも「前1時間の降下率がそのまま続くと仮定して…」とあったはずで、これは線を直線的に外挿する操作です。そこで20分単位で答える指定でしたので「3時20分(ないし40分)」と答えるのが模範解答です。
⑥暖気移流の継続時間については、850hPa以下の風向の鉛直シアを解析する問題です。一般に風向が高度とともに時計回り(右回り、南→西→北と回転)に変化する場合を暖気移流、反対に反時計回り(左回り)なら寒気移流と判定します。図7(時間高度図)には10日21時から11日9時までの風向風速の時間変化が示されていました。これを解析すると、高度300m~4000mの層で風向が高度とともに時計回りとなっていた時間帯が二箇所あることが分かります。具体的には10日21:00~11日05:40頃までと、少し間が空いて11日07:20~09:00頃までの2つの時間帯です。この間、南寄りの風が高度とともに西寄りにシフトしているため暖気が北上するパターンになっています(暖気移流)。それ以外の時間帯、特に11日6時前後から7時頃にかけて風向変化が反転する時間帯は寒気移流に変わっています。
(2)解説
◇模範解答
① 停滞前線通過の根拠(3時10分頃と推定):露点温度がそれまで上昇を続けて最大値に達し、気温の上昇が一旦止まったこと、また風向が南東から南へ変化したこと
② シアーライン通過の根拠(5時30分頃と推定):風向が南から南西に急変し、同時に気温・露点が上昇から下降に転じたこと
③ 最大の前1時間降水量とその時刻:38.5mm(5時10分~6時10分の1時間降水量)、時刻は6時10分(その1時間区切りの終了時刻)。※5時10分から6時10分までの6本の10分降水量を合計したもので、最も多い1時間降水量となりますk。
◇解説
①古仁屋(奄美大島南部)での地上観測データ(気温・露点・風・降水)の解析です。まず停滞前線通過の根拠ですが、問題文に「前線が通過したとされる根拠」とあり、おそらく前線通過推定時刻(3時10分)にどのような変化が起きたか述べることが求められました。一般に温暖前線が通過すると、その地点では気温の上昇停止や露点の極大、風向の変化などが起こります。古仁屋の記録では、3時10分頃に露点温度がそれまでの上昇過程で最大値に達し、気温の上昇もいったん止まっています。さらに風向がそれまでの南東風から南風へと変化しました。気圧のグラフは提示されていませんでしたが、これらの変化を総合するとこの時刻に暖気が上空まで入り込んで前線が通過したと判断できます。従って答えは「露点温度がほぼ最大となり(気温上昇が一時停止し)風向が南東から南に変わったため」という記述になります。風向変化と湿度変化のセットで書くことがポイントです。温暖前線通過時は風向が時計回りにシフトする(東寄り→南寄りへ)傾向があり、問題文でも風向・気温・露点に着目せよと指示されていたので、それらを盛り込む必要があります。
②次にシアーライン通過の根拠です。シアーラインとは明瞭な風のシア(風向・風速の急変)が見られる線で、今回前線通過後の時刻帯にもう一度風の大きな変化が起こっています。古仁屋のデータでは5時30分頃に風向が南から南西にガクンと変化し、ちょうどそのとき気温・露点もそれまでの上昇傾向から下降に転じたことが顕著です。風向の急激な変化はシアーラインの定義上必須要素ですので、解答でも「風向が南から南西に変わった」ことは必ず触れるべき点です。加えて温度・湿度(露点)の下降開始という気団変化の証拠も示されていますから、「風向が南→南西に変化し、気温・露点が低下し始めたため」とまとめます。ここでも複数要素を組み合わせて述べるのが採点基準でしょう。誤って「風速の急激な変化」と書かないよう注意です。シアーラインは基本的に風向の不連続で定義されるので、風向転向の事実を書き落とすと減点されます。
③最大の前1時間降水量については、与えられた降水強度の棒グラフから最大の1時間分を読み取ります。棒グラフでは10分ごとの降水量が示されており、任意の1時間(連続6本)の合計を計算する必要があります。視認して最も背の高い棒グラフが連なっている区間を探すと、5:10~6:10にかけての6本が突出していました。この6本の値を足し合わせると3.5 + 7.0 + 5.5 + 8.0 + 9.5 + 5.0 = 38.5 mmとなります。他のどの1時間区間より大きな値です。したがって最大1時間降水量は38.5mmで、これが記録されたのは6時10分(までの1時間)です。注意点として、「起時」が何を指すか戸惑うかもしれません。通常、例えば“6時10分起時の前1時間降水量”と言えば5時10分から6時10分までの降水量を指します。本問でもその意味で使われており、答えは降水量と「6時10分」という時刻の組で答える必要があります。受験者の中には開始時刻の5時10分と書いてしまうミスもあり得ますが、それは設問の意図とずれるので注意が必要です。グラフ上で棒が高くなり始めた時刻ではなく、1時間区間の終わりの時刻を答えることを求めている点に留意しましょう。
(3)解説
◇模範解答
南西諸島で前12時間降水量が多かった領域(鹿児島の南~台湾の東にかけて伸びる帯状の地域)における850hPaの風と温度移流の特徴は、南西~西南西の強風(約35~40ノット)がその領域の南側から吹き込み、暖気移流となっていることです。すなわち南方の暖かく湿った空気が南西の強風によって北東方向へ運ばれているため、この領域では顕著な暖気移流下にあり、大雨をもたらす条件となっています(風速については30ノット以上程度と書いても可)。
◇解説
最後は南西諸島周辺の温度移流に関する問題です。図10には南西諸島付近の前12時間降水量分布が示され、鹿児島の南から台湾東方にかけてNE-SW(北東から南南西)方向に降水量の大きな領域が描かれていました。その帯状の降水域に対応する850hPa気流場と温度輸送を読む設問です。850hPaの高層天気図(図8など)を見ると、南西諸島上空ではおおむね南西~西南西の風が吹いています。風速は強く、35ノットから場所によっては40ノット近くに達していました。設問では領域の南側から吹いている風とありましたから、実際強風軸が南側を通って北東へ向かっている状況です。この風向・風速により暖かい空気が南から北へ運ばれるため、暖気移流が生じています。等温線の分布を見ても南から北へ高温空気が運び込まれており、まさに暖気が流入する典型パターンです。従って答えとしては「西南西(または南西)の強風(35~40kt)がその領域の南側から吹きつけ、暖気移流となっている」となります。風向風速だけでなく暖気移流という言葉を明記することがポイントです。もし受験者が風向やノットを正確に読み取れなくとも、「南寄りの強風で暖気が運ばれている」趣旨を書けば部分点は得られるでしょう。ただし正確には今回西南西風でしたので、東シナ海方面からの風ではない点に注意です。強風の数値については設問の意図上「強い風」と書くだけでも許容されたかもしれませんが、模範解答では上限下限を示して35~40ノット程度としていま
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