【第64回 気象予報士試験 実技2】問4を徹底解説|500hPaトラフ・低気圧発達・前線解析の考え方
こんにちは!今回は第64回 気象予報士試験 実技2 問4を解説します!
今回の問4では、
- 500hPaトラフの位置の読み取り
- 前線活動が活発な領域の判定
- 地上低気圧と上空トラフの位置関係
- 低気圧の移動方向・移動速度
- 低気圧中心位置の逆算
- 中心気圧変化による低気圧の盛衰判断
- 複数トラフと低気圧発達の関係
- 閉塞前線・温暖前線・寒冷前線の作図
など、実技試験の中でもかなり総合力が問われる内容です。
特に、 「地上低気圧は上空トラフとの位置関係で発達・衰弱が決まる」 という考え方を整理しておきましょう。
実技試験記述5型
基本セット:どこで(場所・高さ・時刻)+ なぜ(原因・背景場)+ 何が起きている(現象)
- 分布型:「A側では○○であり、一方B側では△△となっている。」
- 時間変化型:「◯時にはAであったが、△時にはBとなり、AからBへと変化した。」
- メカニズム型:「〜ため、□□が強まり、その結果△△となる。」
- リスク型:「〜ため、◯◯のおそれがあり、△△への注意・警戒が必要である。」
- 構造型:「◯◯付近の◇◇hPaで、ここが前線面に対応する。」
記述式問題の考え方はこちらの記事も参考にしてください!
⇒ 【実技試験講義No.1】気象予報士試験実技試験記述5型 – 独学資格塾
■ 問4(1) 500hPaトラフ・低気圧発達・移動の読み取り
問題文
500hPa高度場、850hPa気温・風、700hPa鉛直流、地上低気圧の予想図を用いて、トラフの位置、前線活動が活発な領域、低気圧の移動、トラフとの位置関係、中心気圧変化を答える問題です。
模範解答
① 500hPaトラフの位置:
北緯35°東経120°付近
北緯33°東経126°付近
② 前線活動が活発な領域:
北緯30°東経135°付近
理由:850hPaで12℃と15℃の等温線間隔が狭く南北の温度傾度が大きい。南からの強い風による暖気移流が顕著で、700hPaで強い上昇流があるため。
③ ②の領域の西北西(北西)側に500hPaトラフがある。
④ 初期時刻〜12時間後:東北東(東)方向、約10ノット
⑤ 36時間後〜48時間後:北東(東北東)方向、約25ノット
⑥ トラフは低気圧中心の北から北東へ離れていく。
⑦ 低気圧中心位置:
(ア) 北緯28°・東経132°付近
(イ) 北緯31°・東経133°付近
⑧ 中心気圧変化:+8hPa
◇ 解説
① 500hPaトラフの位置
500hPaトラフは、等高度線が南へ谷状に垂れ下がっている部分を見ます。
図では、5760mの等高度線付近に2つのトラフが読み取れます。
1つ目は中国大陸東岸付近にのびるトラフで、北緯35°東経120°付近です。
2つ目はその東側にある短波トラフで、北緯33°東経126°付近です。
この図で確認するポイント
- 5760m等高度線の谷状の曲がり
- 渦度の大きい領域との対応
- トラフ軸と緯度経度線の交点
- ±1°程度の読み取り誤差は許容されやすい
つまずきポイント
トラフは単に低気圧中心を読むのではなく、等高度線が谷状に曲がっている軸を読み取ります。
② 前線活動が活発な領域
前線活動が活発な場所では、次の条件が重なりやすくなります。
- 850hPaで等温線間隔が狭い
- 南北の温度傾度が大きい
- 南からの強い風により暖気移流がある
- 700hPaで強い上昇流がある
図を確認すると、これらの条件が重なるのは北緯30°東経135°付近です。
特に850hPaでは、12℃と15℃の等温線間隔が狭く、南北の温度傾度が大きくなっています。
さらに南からの強い風が暖気を北へ運び、700hPaでは強い上昇流が重なっています。
記述式解答のポイント:メカニズム型
どこで:北緯30°東経135°付近で
なぜ:850hPaで温度傾度が大きく、南からの強風による暖気移流があり、700hPaで強い上昇流があるため
何が起きている:前線活動が活発になっている
受験生がつまずきやすいポイント
温度傾度だけでは不十分です。
温度傾度+暖気移流+上昇流の3点をセットで書くと、答案が強くなります。
③ 活発域と500hPaトラフの位置関係
②で答えた前線活動が活発な領域に対して、500hPaトラフは西北西〜北西側に位置しています。
一般に、地上低気圧や前線活動は、上空トラフの前面で発達しやすくなります。
低気圧発達の基本
地上低気圧が500hPaトラフの前面にあると、上空の発散や正渦度移流の影響を受けやすく、低気圧や前線活動が発達しやすくなります。
④ 初期時刻〜12時間後の低気圧の移動
低気圧中心の位置を初期時刻から12時間後まで追うと、東北東〜東方向へ移動しています。
移動距離を概算すると約150海里程度です。
12時間で150海里なので、
150 ÷ 12 ≒ 12.5ノット
となります。
指定の刻みを考えると、約10ノットが答えです。
⑤ 36時間後〜48時間後の低気圧の移動
36時間後から48時間後では、低気圧は北東〜東北東方向へ移動します。
移動距離は約300海里です。
12時間で300海里なので、
300 ÷ 12 = 25ノット
となります。
したがって、答えは北東方向へ約25ノットです。
計算でつまずきやすいポイント
- 移動距離をkmと海里で混同する
- 12時間で割るところを忘れる
- 方位は厳密すぎず、図上誤差を考慮する
⑥ トラフと地上低気圧の位置関係変化
低気圧が発達するには、地上低気圧が上空トラフの前面に位置していることが重要です。
しかし時間が進むと、500hPaトラフは地上低気圧から北〜北東側へ離れていきます。
このように、上空トラフが低気圧から離れると、低気圧発達を支える上空の力学的強制が弱まります。
記述式解答のポイント:時間変化型
どこで・いつ:36時間後から48時間後にかけて、地上低気圧の北〜北東側で
なぜ:500hPaトラフが地上低気圧より先行して離れていくため
何が起きている:地上低気圧の発達を支える位置関係が崩れていく
⑦ 低気圧中心位置の推定
(ア)は、12日21時の低気圧位置から過去へ逆算して、36時間前の位置を求める問題です。
⑤で求めた移動速度25ノットを36時間さかのぼると、おおまかに南西側へ戻ることになります。
その結果、北緯28°東経132°付近と推定できます。
(イ)では、実際の風向、気圧の谷、700hPa上昇流域などを考慮して位置を修正します。
その結果、低気圧中心は北緯31°東経133°付近と判断します。
この図で確認するポイント
- 単純に逆算した位置
- 風向の回り込み
- 地上気圧の谷
- 700hPa上昇流域との対応
⑧ 中心気圧変化
⑦で推定した11日9時の低気圧中心気圧は1008hPaです。
一方、12日9時の中心気圧は1016hPaです。
したがって、
1016 − 1008 = +8hPa
となります。
中心気圧が上がっているため、低気圧は衰弱しています。
■ 問4(1)まとめ
- 500hPaトラフは等高度線の谷状の曲がりで読む
- 前線活動活発域は温度傾度・暖気移流・上昇流をセットで判断する
- 地上低気圧は上空トラフ前面で発達しやすい
- 低気圧の移動速度は距離÷時間で求める
- トラフが低気圧から離れると発達しにくくなる
- 中心気圧が+8hPaなら低気圧は衰弱している
■ 問4(2) 複数トラフと地上低気圧発達の関係
問題文
12日9時の500hPa高度・渦度予想図にトラフA・Bを記入し、それぞれのトラフと地上低気圧発達との関係を説明する問題です。
模範解答
① トラフA・Bの作図
② トラフAは12日21時まで主に低気圧の発達に寄与し、トラフBはその後の発達に寄与する。
◇ 解説
① トラフA・Bの作図
12日9時の500hPa高度場では、地上低気圧に関係する2本のトラフが読み取れます。
トラフAは、地上低気圧の西側上空から南西方向へ伸びる主トラフです。
トラフBは、その後方または北東側にある短波トラフです。
この図で確認するポイント
- 等高度線の谷状の曲がり
- 正渦度極大域との対応
- トラフAとBの位置関係
- 地上低気圧に対してどちらが前面にあるか
② トラフA・Bが発達に果たす役割
低気圧は、上空トラフの前面に位置すると発達しやすくなります。
12日21時までは、主にトラフAの前面に地上低気圧が位置しており、トラフAが発達に寄与します。
その後、トラフAが先行して離れ、代わってトラフBが低気圧の発達に関与します。
記述式解答のポイント:時間変化型・メカニズム型
どこで・いつ:12日21時まではトラフA前面で、その後はトラフB前面で
なぜ:上空トラフ前面の正渦度移流や上昇流が低気圧発達を促すため
何が起きている:前半はトラフA、後半はトラフBが低気圧発達に寄与する
つまずきポイント
「トラフがあるから発達」ではなく、地上低気圧がトラフ前面にあるかが重要です。
トラフAとBの役割を、時間帯で分けて説明しましょう。
■ 問4(3) 地上前線解析
問題文
地上天気図に、閉塞前線・温暖前線・寒冷前線を作図する問題です。
模範解答
◇ 解説
前線解析の考え方はこちらの記事も参考にしてください!
⇒ 【講義】前線解析 – 独学資格塾
前線解析は、以下の順番で進めると安定します。
前線解析の手順
- 閉塞しているかを判断する
- 等温線集中帯と風のシアーから前線位置を推定する
- 閉塞点を決める
- 閉塞前線の型を判断する
- 地上風のシアーに合うように作図する
① 閉塞の判断
強風軸が低気圧に巻き込むように伸び、寒気の流入と暖気の張り出しが確認できます。
このため、低気圧は閉塞していると判断できます。
この図で確認するポイント
- 強風軸が低気圧へ巻き込む形になっているか
- 寒気が低気圧後面から入り込んでいるか
- 暖気が低気圧前面へ張り出しているか
② 前線位置の推定
前線位置は、基本的には850hPaの等温線集中帯の南縁や地上風のシアーを参考にします。
温暖前線側は、等温線集中帯や風向の変化から比較的読み取りやすいです。
一方、寒冷前線側は温度傾度がやや不明瞭です。
そのため、700hPaで帯状に伸びる湿潤域も参考にして前線位置を推定します。
この図で確認するポイント
- 等温線集中帯の南縁
- 風のシアー
- 700hPa湿潤域の帯状分布
- 寒冷前線側が不明瞭なときの補助資料
③ 閉塞点と閉塞前線の型
閉塞点は、推定した前線位置と強風軸が重なる付近に置きます。
次に、閉塞前線の型を判断します。
閉塞点から地上低気圧中心へ伸ばした閉塞前線について、温暖前線前面の寒気と寒冷前線後面の寒気の温度を比較します。
今回は、温暖前線の進行方向前面の寒気の方がより低温です。
そのため、温暖型閉塞に近い形として、前線は「入」の形になるように描きます。
この図で確認するポイント
- 閉塞点の位置
- 温暖前線前面の寒気
- 寒冷前線後面の寒気
- 「入」の形になる閉塞前線
④ 作図
最後に、地上風のシアーに合うように、閉塞前線・温暖前線・寒冷前線をなめらかに描きます。
前線は、単に等温線だけで決めるのではなく、
- 等温線集中帯
- 風のシアー
- 湿潤域
- 強風軸
- 地上低気圧中心
を総合して作図します。
前線解析でつまずきやすいポイント
- 等温線だけで前線を引いてしまう
- 寒冷前線側の湿潤域を見落とす
- 閉塞点を強風軸と無関係に置いてしまう
- 閉塞前線の型を考えずに描いてしまう
■ 問4 全体まとめ
- 500hPaトラフは等高度線の谷と渦度極大で読む
- 前線活動活発域は温度傾度・暖気移流・上昇流が重なる場所
- 地上低気圧は上空トラフ前面で発達しやすい
- トラフが低気圧から離れると発達しにくくなる
- トラフA・Bは発達に寄与する時間帯が異なる
- 前線解析は等温線集中帯・風のシアー・湿潤域・強風軸を総合する
- 閉塞点と閉塞前線の型を意識して作図する
※ 本記事では、一般財団法人 気象業務支援センターより利用許諾を受けて、気象予報士試験問題を掲載しています。
問題文の著作権は一般財団法人 気象業務支援センターに帰属します。
以上、第64回 気象予報士試験 実技2 問4の解説でした!
独学資格塾では、単なる模範解答だけでなく、「受験生がどこでつまずくのか?」を重視して解説しています。
訂正・ご意見などありましたら、ぜひコメントで教えてください!
皆で最高の独学環境を作っていきましょう!
