【第64回 気象予報士試験 実技2】問3を徹底解説|名瀬の前線面・高層風・古仁屋の前線通過・大雨解析
こんにちは!今回は第64回 気象予報士試験 実技2 問3を解説します!
今回の問3では、
- 名瀬の状態曲線から前線面高度を読む
- 前線面より下層の湿数分布を説明する
- 名瀬と地上前線の南北位置関係を判断する
- 高層風時系列図から前線面を作図する
- 暖気移流の時間帯を判定する
- 古仁屋の時系列図から前線・シアーライン通過を読む
- 最大前1時間降水量を求める
- 850hPaの強風と暖気移流から大雨要因を説明する
など、実技試験らしい「鉛直構造+時系列変化+降水要因」を総合的に読む力が問われています。
実技試験記述5型
基本セット:どこで(場所・高さ・時刻)+ なぜ(原因・背景場)+ 何が起きている(現象)
- 分布型:「A側では○○であり、一方B側では△△となっている。」
- 時間変化型:「◯時にはAであったが、△時にはBとなり、AからBへと変化した。」
- メカニズム型:「〜ため、□□が強まり、その結果△△となる。」
- リスク型:「〜ため、◯◯のおそれがあり、△△への注意・警戒が必要である。」
- 構造型:「◯◯付近の◇◇hPaで、ここが前線面に対応する。」
記述式問題の考え方はこちらの記事も参考にしてください!
⇒ 【実技試験講義No.1】気象予報士試験実技試験記述5型 – 独学資格塾
■ 問3(1) 名瀬における前線面の解析
問題文
図6の名瀬の状態曲線、図7の名瀬の高層風時系列図、図1の地上天気図を用いて、名瀬上空の前線面高度、湿数分布、地上前線との位置関係、前線面の作図、前線通過時刻、暖気移流の時間帯を答える問題です。
模範解答
① 前線面の高度:850hPa(840hPa、860hPaも可)
理由:気温の安定層の上端であるため。
② 湿数は、前線面から920hPaまでは小さく、それより下層は高度が低いほど大きい。
③ 名瀬は地上の前線の北側に位置する。
④ 前線面の作図
⑤ 前線が名瀬の地表面を通過した推定時刻:3時20分ごろ
⑥ 暖気移流の継続時間帯:
10日21時00分〜11日5時40分ごろ
11日7時20分〜9時00分ごろ
◇ 解説
① 前線面高度の読み取り
図6の状態曲線では、気温の鉛直分布から前線面を探します。
前線面は、暖気と寒気の境界に対応しやすく、状態曲線では気温減率が小さい安定層として現れます。
今回、名瀬の状態曲線では、920hPa付近から上にかけて安定な層が見られ、その上端が850hPa付近にあります。
したがって、前線面高度は850hPaです。
記述式解答のポイント:構造型
どこで:名瀬上空850hPa付近で
なぜ:気温の安定層の上端であるため
何が起きている:前線面に対応している
つまずきポイント
前線面は、単に気温が急に変わるところではなく、安定層の上端として読むのがポイントです。
840〜860hPa程度の読み取り幅は許容されます。
② 前線面より低い高度の湿数分布
湿数とは、
気温 − 露点温度
です。
湿数が小さいほど湿潤、湿数が大きいほど乾燥しています。
図6を見ると、前線面から920hPaまでは気温と露点温度の差が小さく、湿潤です。
一方、それより下層では、高度が低くなるほど気温と露点温度の差が大きくなっています。
したがって、
前線面から920hPaまでは湿数が小さく、下層ほど湿数が大きい
とまとめます。
記述式解答のポイント:構造型・分布型
どこで:前線面から920hPaまでと、それより下層で
なぜ:前線面直下では湿潤で、地表付近ほど相対的に乾燥しているため
何が起きている:湿数は上層側で小さく、下層ほど大きくなっている
③ 名瀬と地上前線の位置関係
前線面は、地上前線から上空へ傾いてのびています。
問題文では、前線面は等温位面に沿って分布しているものとしています。
図6で850hPa付近の前線面を、等温位面に沿って地上へ延長して考えると、名瀬は地上前線の北側に位置すると判断できます。
つまずきポイント
地上の天気図だけで判断せず、状態曲線の前線面高度と等温位面の傾きを合わせて考える必要があります。
④ 高層風時系列図への前線面作図
図7では、時間と高度ごとの風向風速が示されています。
ここで重要なのは、問題文にある
停滞前線面の南側では東成分がみられない
という条件です。
つまり、東風成分がある層と、東風成分がなくなる層の境界を時刻ごとに追うことで、前線面を描けます。
各時刻で、下層の東寄りの風から、上層の南〜西寄りの風へ変わる境界を結ぶと、前線面になります。
この図で確認するポイント
- 下層に東風成分がある層
- 東風成分がなくなる高度
- 時刻とともに前線面が下がっていくこと
- 最下層300mに達する時刻
元記事では、以下の補助図も使われています。
⑤ 前線が名瀬の地表面を通過する時刻
④で描いた前線面を見ると、前線面は時間とともに下層へ降りてきています。
最下層300mに達する前後の変化をそのまま延長すると、地表面に達するのは3時20分ごろと推定されます。
問題では20分刻みで答えるため、3時20分とします。
つまずきポイント
「前線面が300mに達した時刻」と「地表面を通過した時刻」は同じではありません。
最下層に達する前の時間変化を外挿して、地表面通過時刻を推定します。
⑥ 暖気移流の継続時間帯
温度移流は、風向の鉛直変化から判断します。
北半球では、
- 高度とともに風向が時計回り:暖気移流
- 高度とともに風向が反時計回り:寒気移流
と判断できます。
図7を300mから4000mまで確認すると、暖気移流となる時間帯は主に2つあります。
- 10日21時00分〜11日5時40分ごろ
- 11日7時20分〜9時00分ごろ
ここが重要!
暖気移流は「南寄りの風が吹いているか」だけでなく、高度とともに風向がどう変化しているかで判断します。
■ 問3(1)まとめ
- 前線面は850hPa付近
- 理由は気温の安定層の上端であるため
- 湿数は前線面〜920hPaで小さく、それより下層ほど大きい
- 名瀬は地上前線の北側
- 前線面は東風成分の有無で作図する
- 地表面通過は3時20分ごろ
- 暖気移流は2つの時間帯に分かれる
■ 問3(2) 古仁屋の前線通過・シアーライン通過・最大降水量
問題文
古仁屋の地上気象要素の時系列図を用いて、停滞前線通過の根拠、最も顕著なシアーライン通過時刻と特徴、最大前1時間降水量と起時を答える問題です。
模範解答
① 露点温度がほぼ最大となり、気温の上昇が一旦止まり、風向が南東から南に変わったため。
② 時刻:5時30分
特徴:風向が南から南西へ変化し、気温、露点温度の低下が始まった。
③ 降水量:38.5mm
時刻:6時10分
◇ 解説
① 停滞前線通過の根拠
古仁屋では、停滞前線が3時10分ごろに通過したと推定されています。
その根拠は、図8の地上気象要素の時間変化にあります。
3時10分ごろには、
- 露点温度がほぼ最大となる
- 気温の上昇が一旦止まる
- 風向が南東から南に変わる
という変化がそろっています。
これらは、前線通過に伴って空気の性質が変わったことを示しています。
記述式解答のポイント:時間変化型
どこで・いつ:古仁屋で、3時10分ごろ
なぜ:停滞前線の通過に伴い、気温・露点温度・風向が変化したため
何が起きている:露点温度がほぼ最大、気温上昇が一旦停止、風向が南東から南へ変化している
② シアーライン通過時刻と特徴
最も顕著なシアーラインの通過は、5時30分ごろです。
この時刻に、
- 風向が南から南西へ変化
- 気温が低下し始める
- 露点温度も低下し始める
という変化がみられます。
シアーラインは風向の急変線なので、風向変化を必ず書くことが重要です。
記述式解答のポイント:時間変化型
どこで・いつ:古仁屋で、5時30分ごろ
なぜ:シアーライン通過に伴い風向と気団が変化したため
何が起きている:風向が南から南西へ変化し、気温・露点温度が低下し始めている
つまずきポイント
シアーライン通過では、風速よりも風向の急変が重要です。
さらに、気温・露点温度の変化をセットで書くと、答案の説得力が上がります。
③ 最大前1時間降水量
図8では、10分間降水量が棒グラフで示されています。
前1時間降水量は、連続する6本の10分降水量を合計して求めます。
最も大きくなるのは、5時10分から6時10分までの1時間です。
この6本を合計すると、
38.5mm
となります。
したがって、最大前1時間降水量は38.5mm、起時は6時10分です。
つまずきポイント
「起時」は、前1時間降水量の終了時刻を指します。
5時10分〜6時10分の降水量なら、起時は6時10分です。
■ 問3(2)まとめ
- 前線通過は露点極大・気温上昇停止・風向変化で判断する
- シアーライン通過は風向急変が最重要
- 気温・露点温度の低下開始も根拠になる
- 前1時間降水量は10分降水量6本の合計
- 起時は1時間区間の終了時刻
■ 問3(3) 南西諸島付近の大雨と850hPa暖気移流
問題文
図10下段で南西諸島付近にみられる前12時間降水量の大きな領域について、図9を用いて、その領域と周辺における850hPaの風向・風速と温度移流の特徴を述べる問題です。
模範解答
西南西(南西)の35〜40ノットの強い風が領域の南側から吹いており、暖気移流となっている。
記述式解答のポイント:メカニズム型・分布型
どこで:南西諸島付近の前12時間降水量の大きな領域で
なぜ:南西〜西南西の強風により暖かく湿った空気が流入しているため
何が起きている:850hPaで暖気移流となり、降水が強まりやすい場となっている
◇ 解説
図10下段では、南西諸島付近に前12時間降水量の大きな領域がみられます。
この大雨領域を図9の850hPa気温・風、700hPa鉛直流と対応させます。
850hPaでは、領域の南側から西南西〜南西の強い風が吹き込んでいます。
風速はおよそ35〜40ノットです。
この風によって、南側の暖かく湿った空気が北東方向へ運ばれています。
したがって、温度移流としては暖気移流です。
ここが重要!
大雨の説明では、単に「湿った空気が流入」だけでなく、
- どの高度で
- どの向きの風が
- どれくらいの強さで
- どんな温度移流を作っているか
まで書くと、実技答案として強くなります。
つまずきポイント
「南風」と大まかに書くだけでは弱いです。
模範解答では、西南西〜南西の35〜40ノットの強い風と、風向・風速まで具体的に書いています。
■ 問3 全体まとめ
- 前線面高度は850hPa付近
- 前線面は気温の安定層の上端で読む
- 湿数は前線面〜920hPaで小さく、下層ほど大きい
- 名瀬は地上前線の北側に位置する
- 高層風では東風成分の有無で前線面を作図する
- 古仁屋の前線通過は露点・気温・風向の変化で判断する
- シアーライン通過は風向急変と気温・露点低下がポイント
- 最大前1時間降水量は38.5mm、起時は6時10分
- 南西諸島付近の大雨は850hPaの強い暖気移流と対応する
※ 本記事では、一般財団法人 気象業務支援センターより利用許諾を受けて、気象予報士試験問題を掲載しています。
問題文の著作権は一般財団法人 気象業務支援センターに帰属します。
以上、第64回 気象予報士試験 実技2 問3の解説でした!
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