こんにちは!今回は気象予報士試験 第55回 実技2 問4を解説します!
記述式問題は以下の項目でカテゴリー分けします。
実技試験記述5型
基本セット:どこで(場所・高さ・時刻)+ なぜ(原因・背景場)+ 何が起きている(現象)
- 分布型:「A側では ○○ であり、一方 B側では △△ となっている。」
- 時間変化型:「◯時には A であったが、△時には B となり、A から B へと変化した。」
- メカニズム型:「〜ため、□□が強まり、その結果△△となる。」
- リスク型:「〜ため、◯◯のおそれがあり、△△への注意(警戒)が必要である。」
- 構造型:「◯◯付近の ◇◇hPa で気温減率が小さい安定層の上端となっており、ここが前線面に対応する。」
こちらの記事を参考⇒【実技試験講義No.1】気象予報士試験実技試験記述5型 – 独学資格塾
(1)解説
◇模範解答
① 21 時
② 低温側の⽅向: 北
理由: 温度⾵が⻄から東に向いているため。(17 字)
◇解説
①30日9時と21時の予想で、下層(950 hPa)から中層(700 hPa)にかけての気温場と風場を比較します。図10上段(12時間予想図:30日9時)と下段(24時間予想図:30日21時)によれば、850 hPa面の気温場や700 hPa面の鉛直流の分布から、30日21時の方が温度移流が弱い状況が見て取れます。具体的には、温度風ベクトルの大きさと等温線に対する角度で判断します。30日9時には南から暖気、北から寒気の流入がまだ残存しており、等温線が傾斜していました。一方、21時には等温線の南北勾配が緩み、広範囲で気温場が均一化しつつあります。これは日中までに暖気・寒気の移流が一巡し、大気が安定化に向かったことを意味します。よって、21時のほうが温度移流が弱いと判断できます。
②「低温側の方向」についてです。温度場の低温側とは、850〜700 hPa平均気温場でより寒冷な空気塊の存在する方向を指します。図10(特に下段)を見ると、九州南部上空の低温域は北側に広がっていること、また850 hPa等温線が東西方向に近いことから、低温側(寒気側)は北と判断できます。理由として、温度風(厚み場に対応する地衡風)は西から東に向いているため(温度風が西→東なら、その左手側が寒気・右手側が暖気となる原理)、寒気の位置する方向は北側になるのです。このように、温度場がほぼ一様となり温度風が水平に近い状況では、顕著な温度移流が起こらず、大気の安定度も高まる傾向があります。
記述式解答のポイント:構造型
どこで・いつ: 850〜700 hPa平均気温場
なぜ: 温度風(厚み場に対応する地衡風)は西から東に向いている
何が起きている:低温側(寒気側)は北
(2)解説
◇模範解答
① 相当温位の最⼤: 326(327) K ⾼さ: 990 hPa 湿数: 1(0) ℃
相当温位の最⼩: 315 K ⾼さ: 660 hPa 湿数: 9 ℃
② 相当温位の極⼤域にほぼ対応して,湿数が相対的に⼩さくなっている。
③ ⼤気の安定性の状態: 対流不安定
理由: 上⽅に向かって相当温位が低くなっているため。
④ 下層に,湿数が⼩さく相対的に⾼相当温位の暖湿な東⾵が予想されている。
◇解説
①内之浦直上の断面で相当温位が最大となっているのは地表付近(990 hPa付近)で約326〜327 Kです。これは非常に暖かく湿った空気が内之浦付近の下層に存在することを意味します。その高度での湿数(空気の乾燥度を示す温度差)はほぼ0℃、具体的には約1℃以下と算出され、飽和に近い非常に湿潤な状態であることがわかります。逆に相当温位の最小値は約315 Kで、高度約660 hPa付近に位置しています。この高さでの湿数は9℃程度と大きく、空気がかなり乾燥していることを示します。すなわち、内之浦上空では下層ほど暖かく湿っており、高度が上がるにつれて空気塊が冷たく乾燥しているという鉛直構造になっています。この相当温位の鉛直勾配(下が高く上が低い)は後述の対流不安定と関連します。
②断面図の東経130°〜132°、高度800〜900 hPa付近には相当温位326 K前後の極大域(下層の高相当温位空気の塊)が存在します。この極大域に着目して湿数の場を見ると、その周辺では湿数(温度と露点の差)が他の高さ・場所に比べて小さく(ほぼ0〜2℃程度)、空気が飽和に近いことが読み取れます。つまり相当温位が極めて高い空気塊は、同時に非常に湿潤(湿数小)であるという関係が見られます。これは理に適っており、相当温位θ_eは空気の持つ熱+水蒸気量の指標なので、θ_eが高い空気は水蒸気を多く含む(湿度が高い)傾向があります。そのため湿数が小さく、ほぼ飽和しているような暖湿気塊として存在します。実際、断面図でも相当温位の極大域に沿って湿数0℃近辺の領域(湿舌)が東西に伸びており、両者が対応している様子がわかります。要するに、相当温位極大=高湿度域であり、これは大雨をもたらすエネルギー源である暖湿流が下層に流入している証拠といえます。
記述式解答のポイント:構造型
どこで・いつ: 高度800〜900 hPa付近
何が起きている:相当温位の極⼤域にほぼ対応して,湿数が相対的に⼩さくなっている
③について、内之浦上空の地上〜650 hPaの大気の安定度は「対流不安定」です。対流不安定(潜在的不安定)とは、下層の空気の方が上層の空気よりも相当温位が高い状態を指します。断面図より、内之浦付近では下層(地表付近)の相当温位が約326 Kと非常に高い一方、上空650 hPa付近では315 K程度と低く、高度とともに相当温位が減少しています。このため、下層の空気塊が持ち上げられると周囲よりも軽くなり浮力を得るという状況、すなわち対流が自発的に発生・発達しやすい不安定な大気と言えます。対流不安定層が地上から650 hPaまで広がっていることで、積乱雲が発達するための厚い不安定層が存在し、大雨の発生環境が整っていたことを示しています。
記述式解答のポイント:構造型
どこで・いつ: 内之浦上空の地上〜650 hPaの大気
なぜ:高度とともに相当温位が減少
何が起きている:対流不安定
④大雨をもたらす要因の一つである水蒸気供給の観点を述べます。図10下段および図7から、内之浦付近の下層風を見ると、東ないし南東からの風が卓越しています。この風は海上から暖かく湿った空気を絶えず運び込む暖湿流(湿舌)で、相当温位が高く湿数が小さい空気を内之浦周辺に供給していました。実際、断面図でも東風に対応して前述の高相当温位・低湿数の空気塊が内之浦下層に存在しています。さらに、この東風は山地(大隅半島)の斜面に沿って強制的な上昇流を引き起こし、地形性の降水強化を招きました。つまり下層の暖湿な東風(湿数小・θe高)が豊富な水蒸気を運び込んだことが、内之浦周辺での豪雨のもう一つの重要な要因だったのです。
記述式解答のポイント:メカニズム型
どこで・いつ: 内之浦付近
なぜ:下層に,湿数が⼩さく相対的に⾼相当温位の暖湿な東⾵が予想されている
何が起きている:内之浦周辺での豪雨
(3)解説
◇模範解答
「地形」および「鉛直流」
◇解説
図11左(メソモデルによる前24時間降水量予想)と図11右(実況の6時間降水量解析)を比較すると、全球モデルでは捉えられていなかった内之浦付近の大雨を、メソモデルはある程度予想できていたことがわかります。メソモデルは海上で20 mm以上、陸上で50 mm以上の降水域を予想しており、粗い全球モデルには見られない局所的な強雨を示現しています。この違いの背景には、メソモデルの高い解像度が大きく寄与しています。解像度が細かいほど、地表面の起伏や大気の微細な構造をより現実に近くシミュレートでき、特に局地的な豪雨の発生要因を正確に表現できる利点があります。
内之浦周辺の大雨に関してメソモデルが表現した要因としては、例えば地形の効果や細尺度の収束線、上昇流の強まり、湿舌の入り込み具合などが考えられます。その中でも特に最大降水量に影響を与えた要因は何かを問われた場合、妥当なのは「地形」と「鉛直流」です。地形(山地・局地的な起伏)は降雨分布を大きく左右し、内之浦付近でも大隅半島の山並みが風を持ち上げ降雨を強化しました。一方、鉛直流(上昇気流)は積乱雲を発達させ降水粒子を成長させる直接の原動力です。メソモデルでは高解像度のおかげで地形による強制的な上昇(地形性降雨)を表現し、また積雲対流スキームを通じて上昇流の強まりを的確に計算できたことで、局地的大雨の予測精度が上がったと考えられます。以上より、解答のように「地形」および「鉛直流」が最大降水量に大きな影響を及ぼした主要因と判断できます。
(4)解説
◇模範解答
⼭岳の⾵上側で下層の東⾵に伴って空気塊が地形に沿って上昇するところ。
◇解説
図12(九州南部の地形図)と図11右(30日21時までの6時間積算雨量)を見比べ、降水量が多かった地点の共通点を考えます。図11右によれば、大隅半島の東側(太平洋側)の沿岸・山麓にかけて6時間雨量が大きくなっています。ちょうどこの地域は地形図で見ると肝属山地や高隈山地などの山岳が東西に連なる箇所で、東からの湿った風が吹き付ける風上斜面に相当します。今回、下層では前述のとおり東寄りの風が卓越し、豊富な水蒸気を含む空気が山に当たって持ち上げられました。その結果、風上側の斜面で強い上昇流が発生し、効率的に降水粒子が生成され局地的な大雨となったのです。つまり、大隅半島の山岳の東麓(東風の当たる側)で降水量が多くなったことが確認できます。これは地形性降雨の典型で、地形が降雨分布に与える影響の大きさを示しています。
記述式解答のポイント:メカニズム型
どこで・いつ: 大隅半島
なぜ:⼭岳の⾵上側で下層の東⾵に伴って空気塊が地形に沿って上昇
何が起きている:前6時間降水が多くなる
(5)解説
◇模範解答
災害名: ⼟砂災害 対応する指数: ⼟壌⾬量指数
災害名: 浸⽔害 対応する指数: 表⾯⾬量指数
災害名: 洪⽔害 対応する指数: 流域⾬量指数,表⾯⾬量指数
◇解説
平島・内之浦周辺での大雨によって引き起こされるおそれのある災害としては、主に以下の三種類が挙げられます。土砂災害(がけ崩れ・土石流など)、浸水害(内水氾濫や低地の冠水)、洪水害(河川の増水・氾濫)です。それぞれの災害について、気象庁等が警報・注意報を発表する際には定量的な指標が用いられています。
- 土砂災害: 雨による地盤の緩み具合を評価するための「土壌雨量指数」が用いられます。これは降雨によって地中に蓄積された水分量を表す指数で、この値が地域ごとに定められた基準値を超えると土砂災害警戒情報や警報発表の目安となります。
- 浸水害(内水氾濫): 地表面を流出する雨水の量を評価する「表面雨量指数」が使われます。短時間に降った雨で下水や排水が処理しきれず浸水が起こる可能性を、この指数が一定値を超えるかどうかで判断します。
- 洪水害(河川洪水): 流域全体の雨量を積算した「流域雨量指数」が主に用いられます。これは河川流域に降った雨の総量から洪水の発生リスクを評価するもので、一定値を超えると洪水警報等の基準となります。また河川規模によっては地表雨量指数も併用され、流域雨量指数で捉えきれない局地的短時間豪雨による中小河川の氾濫リスクを補足的に判断します。
上記のように、気象当局は土壌雨量指数・表面雨量指数・流域雨量指数などの指標を用いて大雨による各種災害のリスクを定量的に評価し、警報や注意報の発表基準としています。今回想定された大雨でも、これらの指数が基準値を超えることで土砂災害警戒情報や大雨警報(浸水害・洪水)等が発表され、住民への注意喚起が行われることになります。
以上です!独自解説とAIを組み合わせ解答・解説を作成しています。訂正・ご意見あればコメントやご連絡いただけると幸いです。皆で最高の独学環境を作り上げていきましょう!
