【第64回 気象予報士試験 専門知識】問11 積乱雲の特徴をわかりやすく解説

こんにちは!今回は第64回気象予報士試験 専門知識 問11を解説します!

この問題は、日本付近で発生する積乱雲についての問題です。

積乱雲の成長期、降水過程、下降気流、そしてマルチセル型・スーパーセル型の維持条件を整理して判断します。

この問題で重要なポイント

  • 積乱雲の成長期は、雲内部に上昇流があり、周囲より高温になりやすい
  • 日本の夏の発達した積乱雲による雨は、氷相過程を含む「冷たい雨」が多い
  • 降水粒子の落下や蒸発冷却により、下降気流は強化される
  • マルチセル型・スーパーセル型の維持には、環境場の風の鉛直シアーが重要

■ 問題文

日本付近で発生する積乱雲について述べた次の文(a)〜(d)の下線部の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。

(a) 積乱雲の成長期において雲が上方に発達していくとき、雲の内部は上昇流となっており、雲の中の温度はまわりより高くなっている。

(b) 夏季に地表付近が高温となることにより発達する積乱雲では、降水過程に氷粒子が関わらない「暖かい雨」であることが多い。

(c) 積乱雲からの降水粒子は落下する時に周囲の空気を引きずり降ろし、下降気流が生じる。落下途中に乾燥した気層があると降水粒子は蒸発し、空気が冷えて重くなり下向きの力が働くため、下降気流はより強化される。

(d) マルチセル型あるいはスーパーセル型と呼ばれる積乱雲が数時間にわたって維持されるためには、環境場の風の鉛直シアーの存在が重要である。

(a) (b) (c) (d)

■ 解答

(a)正
(b)誤
(c)正
(d)正

■ 解き方の方針

この問題では、積乱雲を「大きな雲」としてではなく、次の流れで考えると整理しやすいです。

上昇流で発達

雲の中で降水粒子が成長

降水粒子が落下

下降気流が強まる

風の鉛直シアーで長時間維持

特に(b)は、「夏の雨=暖かい雨」と単純に考えないことが重要です。

■ (a)成長期の積乱雲は上昇流が主体

(a)は、積乱雲の成長期について述べています。

積乱雲が上方へ発達しているとき、雲の内部では強い上昇流が生じています。

空気が上昇すると冷却され、水蒸気が凝結します。このとき潜熱が放出されるため、雲の中の空気は周囲より相対的に高温になりやすくなります。

ここがポイント!

上昇流

水蒸気が凝結

潜熱を放出

雲の中が周囲より暖かい

雲の中が周囲より暖かいと浮力が働き、さらに上昇流が維持・強化されます。

したがって、(a)は正しいです。

■ (b)日本の夏の発達した積乱雲は「暖かい雨」とは限らない

(b)は、積乱雲の降水過程について述べています。

「暖かい雨」とは、降水粒子の成長に氷粒子が関わらず、液体の水滴だけで雨粒が成長する降水過程です。

しかし、日本付近の夏に発達する積乱雲では、雲頂が高くなり、氷点下の高度まで達することが多くなります。

そのため、氷晶や雪片、あられなどの氷粒子が関わる冷たい雨の過程で降水が形成されることが多いです。

ここはひっかけポイント!

問題文では「夏季」「地表付近が高温」とあるため、暖かい雨を選びたくなります。

しかし、発達した積乱雲は上空高くまで成長します。

地表が暑い
= 暖かい雨
ではない

発達した積乱雲では、氷粒子が関わる冷たい雨が多いと押さえましょう。

したがって、(b)は誤りです。

■ (c)降水粒子の落下と蒸発冷却で下降気流が強まる

(c)は、積乱雲の下降気流について述べています。

積乱雲から降水粒子が落下するとき、降水粒子は周囲の空気を引きずり下ろします。

これにより、下向きの流れ、つまり下降気流が生じます。

さらに、落下途中に乾燥した気層があると、降水粒子の一部が蒸発します。

蒸発には周囲の熱が使われるため、空気が冷やされます。

下降気流が強まる流れ

降水粒子が落下

空気を引きずり下ろす

乾燥層で蒸発

空気が冷える

重くなって下降気流が強化

冷えた空気は密度が大きくなり、重くなるため、さらに下降しやすくなります。

したがって、(c)は正しいです。

■ (d)積乱雲の長時間維持には風の鉛直シアーが重要

(d)は、マルチセル型やスーパーセル型の積乱雲が長時間維持される条件について述べています。

単独の積乱雲は、上昇流と下降気流が同じ場所でぶつかると、上昇流が弱まり、短時間で衰弱しやすくなります。

一方、環境場に風の鉛直シアーがあると、上昇流域と下降流域が分離しやすくなります。

風の鉛直シアーの役割

風の鉛直シアーがある

上昇流と下降流が分離

新しい積乱雲が発生・維持

マルチセル型・スーパーセル型が長続き

特にスーパーセル型では、強い鉛直シアーにより回転する上昇流が維持され、激しい現象を伴いやすくなります。

したがって、(d)は正しいです。

■ 選択肢の確認表

記号 内容 正誤 判断ポイント
(a) 成長期の積乱雲では上昇流があり、雲の中の温度は周囲より高い 凝結による潜熱放出で雲内が相対的に暖かい
(b) 夏季に発達する積乱雲では、氷粒子が関わらない暖かい雨が多い 発達した積乱雲は氷点下高度まで達し、冷たい雨が多い
(c) 降水粒子が空気を引きずり下ろし、蒸発冷却で下降気流が強化される 冷えた空気が重くなり下降しやすくなる
(d) マルチセル型・スーパーセル型の維持には風の鉛直シアーが重要 上昇流と下降流が分離し、積乱雲が維持されやすい

■ 受験生がつまずくポイント

1. 「上昇すると冷えるのに、なぜ雲の中は高温?」で混乱する

空気は上昇すると膨張して冷えます。

しかし、雲の中では水蒸気が凝結するときに潜熱が放出されます。

そのため、周囲の同じ高度の空気と比べると、雲の中は相対的に暖かくなりやすいです。

上昇で冷える
でも
凝結で潜熱が出る

周囲より暖かい

2. 「夏の雨=暖かい雨」と覚えてしまう

暖かい雨とは、地上が暖かいときの雨という意味ではありません。

降水粒子の成長に氷粒子が関わらない雨のことです。

日本の夏の発達した積乱雲は、雲頂が高く氷点下の高度まで達するため、氷粒子が関わる冷たい雨が多くなります。

3. 下降気流の原因を1つだけで覚えてしまう

下降気流は、降水粒子が空気を引きずり下ろすことだけでなく、蒸発冷却によっても強化されます。

乾燥した空気の層を通ると、降水粒子が蒸発し、周囲の空気が冷えます。

冷えた空気は重くなるため、下降気流がさらに強まります。

4. 鉛直シアーを「積乱雲を壊すもの」と考えてしまう

風の鉛直シアーは、単に雲を傾けて壊すだけではありません。

適度な鉛直シアーがあると、上昇流と下降流が分離し、積乱雲が長時間維持されやすくなります。

マルチセル型やスーパーセル型では、風の鉛直シアーが重要な維持要因になります。

■ まとめ

  • (a)成長期の積乱雲では上昇流があり、潜熱放出により雲内は周囲より高温になりやすいため正しい
  • (b)日本の夏に発達する積乱雲の降水は、氷粒子が関わる冷たい雨が多いため誤り
  • (c)降水粒子の落下と蒸発冷却により下降気流が強化されるため正しい
  • (d)マルチセル型・スーパーセル型の維持には、環境場の風の鉛直シアーが重要なため正しい

正解は②

(a)正・(b)誤・(c)正・(d)正

この問題で必ず押さえたいこと

積乱雲の問題では、上昇流・降水粒子・下降気流・鉛直シアーを一連の流れで理解することが重要です。

成長期は上昇流
日本の夏の発達した積乱雲は冷たい雨が多い
降水粒子と蒸発冷却で下降気流が強まる
長時間維持には鉛直シアーが重要

特に、暖かい雨と冷たい雨の違いはひっかけとして出やすいので、確実に整理しておきましょう。

※ 本記事では、一般財団法人 気象業務支援センターより利用許諾を受けて、気象予報士試験問題を掲載しています。
問題文の著作権は一般財団法人 気象業務支援センターに帰属します。

以上、第64回 専門知識 問11の解説でした!

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