【第55回 気象予報士試験 実技1】問2を徹底解説|低気圧の移動・850hPa前線解析・関東のシアーライン・東海の強上昇流
こんにちは!今回は第55回 気象予報士試験 実技1 問2を解説します!
今回の問2では、対馬海峡の低気圧の移動、500hPa高度場との関係、850hPa前線解析、関東地方のシアーライン、そして東海地方の強い上昇流がテーマです。
特に、低気圧の移動を500hPa高度場と結びつけて考える問題と、関東の地上寒気層によって温暖前線の北上が妨げられる構造は、実技試験らしい重要テーマです。
実技試験記述5型
基本セット:どこで(場所・高さ・時刻)+ なぜ(原因・背景場)+ 何が起きている(現象)
- 分布型:「A側では○○であり、一方B側では△△となっている。」
- 時間変化型:「◯時にはAであったが、△時にはBとなり、AからBへと変化した。」
- メカニズム型:「〜ため、□□が強まり、その結果△△となる。」
- リスク型:「〜ため、◯◯のおそれがあり、△△への注意・警戒が必要である。」
- 構造型:「◯◯付近の◇◇hPaで気温減率が小さい安定層の上端となっており、ここが前線面に対応する。」
記述式問題の考え方はこちらの記事も参考にしてください!
⇒ 【実技試験講義No.1】気象予報士試験実技試験記述5型 – 独学資格塾
■ 問2(1) 対馬海峡の低気圧の移動と500hPa高度場
模範解答
① 移動方向:北東
速さ:45ノット
②
ⓐ 5620
ⓑ 右
ⓒ 左
ⓓ 高い
ⓔ 低い
ⓕ 100
ⓖ 低くなる
ⓗ 8
ⓘ 大きい
ⓙ 下がる
◇ 解説
① 低気圧の移動方向と速さ
8日9時に対馬海峡にある低気圧は、8日21時には日本海、9日9時には北海道付近へ進むと予想されています。
8日21時から9日9時までの12時間の移動を見ると、低気圧は、
北東へ45ノット
で進むと読み取れます。
移動速度は、予想図上の低気圧中心位置の移動距離を測り、12時間で割って求めます。
つまずきポイント
移動方向は16方位で答える指定です。
「北北東」や「東北東」と迷いやすいですが、図上の低気圧中心の移動方向を素直に結ぶと北東になります。
② 500hPa高度場との関係
8日9時の地上低気圧中心の直上における500hPa面高度は、図4からおよそ5620mと読み取れます。
低気圧は、500hPa高度の高い側を右に見ながら、500hPaの等高度線におおむね沿って進みます。
ただし、完全に等高度線と平行ではなく、進行方向は等高度線の走向よりわずかに左側、つまり高度の高い側から低い側へそれるように移動します。
また、9日9時には、低気圧中心直上の500hPa高度は、8日9時に比べて100m低くなると予想されます。
同じ24時間で地上中心気圧は8hPa低下しています。地上付近では1hPaの気圧差がおよそ8mの高度差に相当するので、8hPaは約64mに相当します。
一方、500hPa高度の低下量は100mであり、地上気圧変化に相当する高度変化量より大きいです。
これは、地上から500hPaまでの気柱の平均気温が下がることを示しています。
記述式解答のポイント:メカニズム型
どこで:対馬海峡から北海道へ進む低気圧で
なぜ:500hPa高度場に沿って進みつつ、低高度側へややそれるため
何が起きている:低気圧中心直上の500hPa高度が低下し、気柱の平均気温も下がる
■ 問2(1)まとめ
- 低気圧は北東へ45ノットで進む
- 初期時刻の低気圧直上500hPa高度は5620m
- 低気圧は高度の高い側を右に見て進む
- 進行方向は等高度線よりやや左側へずれる
- 500hPa高度は100m低くなる
- 地上中心気圧の変化量は8hPa
- 気柱の平均気温は下がる
■ 問2(2) 850hPa面の前線解析
模範解答
等温線の値:9℃
◇ 解説
図6左下の850hPa気温・風、700hPa鉛直流の12時間予想図を使います。
まず、新潟付近に閉じた等温線が見られます。この値は、
9℃
です。
次に、850hPa面の気温分布に着目して、温暖前線と寒冷前線を描きます。
前線解析では、主に次の点を確認します。
前線解析の基本手順
- 850hPaの等温線集中帯を見る
- 低気圧中心の位置を確認する
- 風向シアーを確認する
- 地上前線との対応を確認する
- 温暖前線・寒冷前線を滑らかに描く
温暖前線は、低気圧中心から東〜北東側の等温線集中帯に沿って描きます。
寒冷前線は、低気圧中心から南西側へ、気温傾度の大きい帯に沿って描きます。
この問題では、地上前線をそのまま写すのではなく、850hPa面の気温分布に基づいて前線を解析することが重要です。
つまずきポイント
850hPaの前線は、地上前線と完全には一致しません。
前線面は傾いているため、850hPaの等温線集中帯を優先して読み取りましょう。
■ 問2(3) 温暖前線の通過時刻と未通過地点
模範解答
勝浦の通過時刻:8日18時〜19時
通過していない地点:御前崎、石廊崎、東京
◇ 解説
図9の各地点における気温と風の時系列図から、地上の温暖前線通過時刻を判断します。
温暖前線通過時には、一般に、
- 気温の上昇
- 風向の変化
- 暖域への移行
が見られます。
潮岬では8日16時〜17時に温暖前線が通過したとみられています。
勝浦では、同様の気温上昇と風向変化が、
8日18時〜19時
に見られます。
したがって、勝浦の温暖前線通過時刻は18時〜19時です。
また、8日21時時点でも地上の温暖前線が通過していない地点は、
御前崎、石廊崎、東京
です。
つまずきポイント
この問題では、気温だけでなく風向変化も必ず確認します。
温暖前線通過後は暖域に入るため、気温が上昇し、南寄りの風へ変化しやすくなります。
■ 問2(3)まとめ
- 温暖前線通過は気温上昇と風向変化で判断する
- 勝浦では8日18時〜19時に通過
- 8日21時時点で未通過なのは御前崎・石廊崎・東京
■ 問2(4) 関東地方のシアーライン
模範解答
② シアーラインの西側は風が弱く相対的に低温であり、東側は南よりの風で相対的に高温である。
③ 関東地方に見られるシアーラインは、地上付近の寒気層によって北上が妨げられている温暖前線である。
◇ 解説
① シアーラインの作図
図10の関東地方のアメダス実況図を見ると、風向・風速が急に変化する境界が見られます。
この境界がシアーラインです。
作図では、風向が大きく変化している地点を結び、解答図の枠線まで実線で描きます。
作図で差がつくポイント
シアーラインは、気温の境界だけでなく、風向・風速の急変を基準に描きます。
風向が変わる境目を滑らかにつなぎましょう。
② シアーライン両側の風と気温
シアーラインの西側では、風が弱く、気温も相対的に低くなっています。
一方、東側では南よりの風が吹き、相対的に高温となっています。
したがって、答案では、
西側は弱風・低温、東側は南よりの風・高温
と対比して書きます。
記述式解答のポイント:分布型
どこで:関東地方のシアーラインの西側・東側で
何が起きている:西側は弱風で低温、東側は南よりの風で高温
③ シアーラインと温暖前線の関係
8日21時の関東地方では、850hPa面では温暖前線が本州付近を通過しています。
しかし、地上付近では関東平野に寒気層が残っており、この寒気層によって温暖前線の北上が妨げられています。
その結果、地上付近では局地的な風向・気温の境界としてシアーラインが現れています。
つまり、このシアーラインは、
地上付近の寒気層によって北上が妨げられている温暖前線
と考えられます。
記述式解答のポイント:構造型
どこで:関東地方で
なぜ:地上付近の寒気層が温暖前線の北上を妨げているため
何が起きている:シアーラインとして現れている
超重要ポイント
関東地方では、地形や冷気滞留の影響で、上空では暖気が入っていても地上付近に寒気が残ることがあります。
このため、温暖前線が地上ではシアーラインとして解析されることがあります。
■ 問2(5) 東海地方の強い上昇流
模範解答
① 321K以上の暖湿気塊が55ノットの南風により侵入し、陸上で25ノットに弱まる。
②
要因1:暖湿空気が、山地の南斜面に吹きつける。
要因2:暖湿空気が、温暖前線面に乗り上げる。
◇ 解説
図6左下では、東海地方に強い上昇流域が予想されています。
この上昇流域に関係する850hPa面の相当温位と風を見ると、南から暖かく湿った空気が強く流れ込んでいます。
図8上では、
321K以上の暖湿気塊
が、
55ノットの南風
によって東海地方へ侵入しています。
ただし、陸上では風速が25ノット程度に弱まっています。
この暖湿気流が強い上昇流を生む要因は2つあります。
- 暖湿空気が山地の南斜面に吹きつけ、地形性上昇が起こる
- 暖湿空気が温暖前線面に乗り上げ、前線面に沿って上昇する
記述式解答のポイント:メカニズム型
どこで:東海地方で
なぜ:321K以上の暖湿気塊が55ノットの南風で流入し、山地と温暖前線面で持ち上げられるため
何が起きている:強い上昇流が発生している
つまずきポイント
強い上昇流の理由は1つだけではありません。
この問題では、山地による強制上昇と温暖前線面での乗り上げの2つを答える必要があります。
■ 問2 全体まとめ
- 低気圧は北東へ45ノットで進む
- 低気圧は500hPa高度場に沿いながら低高度側へ進む
- 新潟付近の閉じた850hPa等温線は9℃
- 前線解析では850hPaの等温線集中帯を見る
- 勝浦の温暖前線通過時刻は8日18時〜19時
- 8日21時時点で未通過なのは御前崎・石廊崎・東京
- 関東のシアーラインは、地上寒気層に北上を妨げられた温暖前線
- 東海地方では321K以上の暖湿気塊が55ノットの南風で流入
- 山地の南斜面への吹きつけと温暖前線面への乗り上げで強い上昇流が発生する
※ 本記事では、一般財団法人 気象業務支援センターより利用許諾を受けて、気象予報士試験問題を掲載しています。
問題文の著作権は一般財団法人 気象業務支援センターに帰属します。
以上、第55回 気象予報士試験 実技1 問2の解説でした!
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