【第63回 気象予報士試験 実技1】問1を徹底解説|ドライスロット・クラウドクラスター・850hPa温度移流の読み取り
こんにちは!今回は第63回 気象予報士試験 実技1 問1を解説します!
今回の問1では、
- 地上天気図から低気圧の移動速度・気圧変化を読む
- 海上強風警報を読み取る
- 衛星赤外画像からドライスロットを判定する
- クラウドクラスターを判定する
- 850hPa面の寒気移流・暖気移流を判断する
- 温度移流の強さと気温変化率を計算する
など、実技試験で重要な「実況図・衛星画像・高層天気図を対応させる力」が問われています。
特に、 「風向と等温線の関係から温度移流を判断する」 という考え方は、実技試験で頻出です。
実技試験記述5型
基本セット:どこで(場所・高さ・時刻)+ なぜ(原因・背景場)+ 何が起きている(現象)
- 分布型:「A側では○○であり、一方B側では△△となっている。」
- 時間変化型:「◯時にはAであったが、△時にはBとなり、AからBへと変化した。」
- メカニズム型:「〜ため、□□が強まり、その結果△△となる。」
- リスク型:「〜ため、◯◯のおそれがあり、△△への注意・警戒が必要である。」
- 構造型:「◯◯付近の◇◇hPaで、ここが前線面に対応する。」
記述式問題の考え方はこちらの記事も参考にしてください!
⇒ 【実技試験講義No.1】気象予報士試験実技試験記述5型 – 独学資格塾
■ 問1(1) 地上天気図・衛星画像から気象概況を読む
問題文
4月30日21時の日本付近の気象概況について、地上天気図と気象衛星赤外画像を用いて、低気圧の移動、根室の実況、海上警報、衛星画像上の雲域の特徴を読み取る問題です。
模範解答
| ① 5 | ② 2 | ③ やや強い | ④ 3 |
| ⑤ +3.4 | ⑥ 海上強風 | ⑦ ドライスロット | ⑧ クラウドクラスター |
◇ 解説
①② 千島近海の低気圧の移動速度と24時間後の位置
図1の地上天気図では、千島近海に前線を伴った低気圧があります。
この低気圧は「SLW」と示されており、これはゆっくり移動を意味します。
したがって、移動速度は5ノット以下です。
5ノットで24時間北上すると、
5 × 24 = 120海里
進みます。
緯度1°は約60海里なので、
120 ÷ 60 = 2°
となります。
そのため、24時間後の中心位置は現在位置から北に0〜2°の範囲内と判断できます。
つまずきポイント
実技試験では、緯度方向の距離換算として、
緯度1° ≒ 60海里
をよく使います。
ノットは「海里/時」なので、ノット × 時間 = 海里で計算できます。
③〜⑤ 根室の実況
根室では25ノットの風を観測しています。
25ノットは、選択肢の中ではやや強い風に該当します。
また、根室の実況では、3時間気圧変化量が+3.4hPaとなっています。
したがって、
- ④ 3時間前
- ⑤ +3.4hPa
です。
ここがポイント!
気圧変化量は、符号を必ず確認します。
今回は+3.4hPaなので、気圧は3時間前に比べて上昇しています。
⑥ 海上強風警報
千島近海の低気圧と東シナ海の低気圧には、海上強風警報が発表されています。
海上強風警報は、海上で強風が予想される場合に発表される警報です。
海上警報の整理
- GW:海上強風警報
- SW:海上暴風警報
- TW:海上台風警報
- FOG:海上濃霧警報
⑦ ドライスロット
図2の気象衛星赤外画像では、千島近海の低気圧中心付近に向かって、上・中層雲のない領域が巻き込むようにのびています。
これはドライスロットです。
ドライスロットとは、低気圧の南側から乾燥した空気が巻き込むことで、雲が少なく見える領域です。
温帯低気圧が発達し、閉塞期に近づくとよく見られる特徴です。
この図で確認するポイント
- 低気圧中心へ向かって雲のない領域が巻き込んでいるか
- 雲域がらせん状になっているか
- 低気圧が成熟期〜閉塞期にあるか
つまずきポイント
ドライスロットは「晴れている場所」というより、低気圧へ乾燥空気が巻き込んでいるサインです。
温帯低気圧の発達段階と結びつけて理解しましょう。
⑧ クラウドクラスター
図2では、東シナ海の低気圧の中心付近とその東側に、白くまとまった対流雲域が見られます。
これはクラウドクラスターです。
クラウドクラスターは、積乱雲などの対流雲が集団化した雲域で、大雨や雷を伴うことがあります。
クラウドクラスターとは?
積乱雲が集まって形成される大きな雲域です。
衛星画像では、白くまとまった雲塊として見えることが多く、強い対流活動のサインになります。
■ 問1(1)まとめ
- SLWは5ノット以下のゆっくりした移動を示す
- 5ノットで24時間進むと120海里=緯度2°
- 根室では25ノットのやや強い風を観測
- 3時間気圧変化は+3.4hPa
- 低気圧には海上強風警報が発表されている
- 低気圧中心へ巻き込む雲のない領域はドライスロット
- 白くまとまった対流雲域はクラウドクラスター
■ 問1(2) 850hPa面の温度移流
問題文
図3を用いて、地点A・地点Bにおける850hPa面の温度移流の種類、温度移流が強い地点、その理由、地点Bでの移流による気温変化率を答える問題です。
模範解答
① 地点A:寒気移流
地点B:暖気移流
② 地点B
理由:両地点の風速は同じだが、地点Bの方が風向に沿った水平温度傾度が大きいため。
③ +3℃/h
◇ 解説
① 温度移流の種類
温度移流は、風がどちらの温度の空気を運んでいるかで判断します。
地点Aでは、850hPaの風が北寄りで、低温側から高温側へ空気を運んでいます。
そのため、地点Aは寒気移流です。
一方、地点Bでは南南西風が吹いており、南側の暖かい空気を北東側へ運んでいます。
そのため、地点Bは暖気移流です。
つまずきポイント
風向は「風が吹いてくる方向」です。
南南西風なら、南南西側の空気が流れ込んでいます。
その空気が暖かければ暖気移流、冷たければ寒気移流です。
② 温度移流が強い地点
温度移流の強さは、
- 風速
- 風向に沿った水平温度傾度
で決まります。
地点Aと地点Bの風速はいずれも30ノットで同じです。
したがって、差が出るのは風向に沿った水平温度傾度です。
図3を見ると、地点Bの方が等温線間隔が狭く、風向に沿った温度変化が大きくなっています。
そのため、温度移流がより強いのは地点Bです。
記述式解答のポイント:メカニズム型
どこで:地点Bで
なぜ:両地点の風速は同じだが、地点Bの方が風向に沿った水平温度傾度が大きいため
何が起きている:地点Bの方が温度移流が強い
③ 地点Bの移流による気温変化率
地点Bでは、6℃と15℃の等温線の間隔を風向に沿って読むと、約90海里です。
地点Bの風速は30ノットです。
ノットは「海里/時」なので、90海里を進むのにかかる時間は、
90 ÷ 30 = 3時間
です。
6℃から15℃までの気温差は、
15 − 6 = 9℃
です。
この9℃の差を3時間で移流するため、
9 ÷ 3 = +3℃/h
となります。
暖気移流なので符号は+です。
計算でつまずきやすいポイント
- ノット=海里/時であることを忘れる
- 気温差を15−6で求める
- 暖気移流なので符号を+にする
- ℃/hで答える
■ 問1 全体まとめ
- 地上天気図では低気圧の移動速度・気圧変化・海上警報を読む
- SLWは5ノット以下の移動を示す
- ドライスロットは低気圧へ乾燥空気が巻き込むサイン
- クラウドクラスターは積乱雲群による雲塊
- 温度移流は風向と等温線の位置関係で判断する
- 温度移流の強さは風速と水平温度傾度で決まる
- 地点Bでは暖気移流により+3℃/hの気温変化率となる
※ 本記事では、一般財団法人 気象業務支援センターより利用許諾を受けて、気象予報士試験問題を掲載しています。
問題文の著作権は一般財団法人 気象業務支援センターに帰属します。
以上、第63回 気象予報士試験 実技1 問1の解説でした!
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