こんにちは!今回は気象予報士試験 第64回 実技1 問2を解説します!
(1)解説
◇模範解答
逆転層の下端高度: 860hPa
◇解説
名瀬(鹿児島県奄美大島)の高層気象観測データを示した状態曲線(エマグラム、図4)には、気温(実線)と露点温度(破線)の鉛直分布が描かれています。逆転層は気温が高度とともに一時的に上昇する層であり、エマグラム上では気温曲線が右(高温側)に折れ曲がる部分として表れます。図4を見ると、海面付近から高度を上げていったときに、まず約860hPa付近で気温の減率が小さくなり、わずかに気温が上昇する層が確認できます。この860hPa付近が最も下層に位置する逆転層の下端と判断できます。
(2)解説
◇模範解答
成層状態: 条件付不安定
理由: 気層の気温減率が乾燥断熱減率より小さく、湿潤断熱減率より大きいため
◇解説
図4の名瀬のエマグラム(状態曲線)を見ると、地表付近から大気下層にかけて逆温層(気温が高度とともに上昇する層)が存在し、その上で再び気温が低減しています。逆温層直上の860hPa付近から約700hPa付近までの気温の傾斜を確認すると、環境大気の鉛直気温勾配(実際の気温減率)は乾燥断熱減率より小さく、湿潤断熱減率より大きいことがわかります。この条件は、「条件付不安定」と呼ばれる大気の安定度です。すなわち、この気層では乾いた空気(不飽和の空気塊)に対しては安定(持ち上げても周囲より重くなり沈降する)が、空気塊が飽和して雲ができる(潜熱で浮力が増す)と不安定(周囲より軽くなり上昇を続ける)になる状態です。このような成層になっている背景には、台風周辺での下層暖湿気流の流入と上層の冷気との組み合わせがあり、下層が湿潤で上層が比較的乾燥していることで条件付不安定が生じています。また、名瀬付近では台風周辺の subsidence(沈降域)からの下降暖気流による加熱で安定層(逆転層)が形成された可能性があり、その逆転層直上から上は湿潤断熱減率を少し上回る程度の不安定な勾配に移行しています。
(3)解説
◇模範解答
持ち上げ凝結高度(LCL): 950hPa
空気塊が浮力を維持できなくなる高度(平衡高度):850hPa(±10hPa程度)
雲の種類:積雲(層積雲)
◇解説

図4の名瀬のエマグラムで、気温と露点温度の鉛直分布を用いて空気塊の軌跡をたどります。まず地上付近(900hPa)の空気塊を断熱的に持ち上げていくと、温度線と露点温度線が交わる高度が持ち上げ凝結高度(LCL)となります。この名瀬の状態では、その交点はおよそ950hPa付近に読み取れます。これが雲底高度(目視できる初期の雲底)に対応します。さらに空気塊をそのまま持ち上げ続けた場合、環境大気と空気塊の温度差(浮力)がどう変化するかを考えます。名瀬の状態曲線を見ると、LCLを超えてもすぐには周囲より暖かくならず、ある高度で空気塊の温度が環境と同じかそれ以下になり浮力を失います。その高度が**平衡高度(Equilibrium Level)で、今回は概ね850hPa前後(850〜860hPa付近)と推定されます。エマグラム上では、LCLから持ち上げた空気塊の湿潤断熱線が、環境大気の温度線と再び交わす高度として読み取れます(上昇限界高度)。この高度より上では空気塊が周囲より重くなり、自力で上昇できなくなる(浮力消失)状態です。
以上から、上昇する空気塊は対流圏下層の比較的浅い部分で雲を形成して浮力がなくなると考えられます。従って発生する雲も背の高い積乱雲にはならず、積雲やそれがまとまった層積雲程度の雲にとどまる可能性が高いと判断できます。台風周辺の湿潤な空気ではありますが、上空の安定層などの影響で対流が深く発達しない状況と言えるでしょう。
以上です!独自解説とAIを組み合わせ解答・解説を作成しています。訂正・ご意見あればコメントやご連絡いただけると幸いです。皆で最高の独学環境を作り上げていきましょう!
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