【過去問解説】第64回 実技1 問4

2025年11月6日

こんにちは!今回は気象予報士試験 第64回 実技1 問4を解説します!

◇模範解答

◇解説

図10上図は9日9時(実況)の地上気温分布を示しています。各地点の気温は0.1℃単位まで示されており(例:「258」は25.8℃、「261」は26.1℃を意味します)、高度300m未満の観測点のみ表示されています。26℃の等温線を引くには、これらの観測値の中から25.5~26.5℃程度の地点を結ぶ必要があります。具体的には、気温が26℃以上の地点と26℃未満の地点の境界線を見極め、その間を滑らかに繋ぎます。まず、図全体で26℃を超える暖域と下回る寒域を把握します。図を見ると、山陰地方の東寄り(松江付近)では気温が26℃台後半(例:松江付近で「263」は26.3℃)となっており、逆に中国山地を挟んだ西側(島根県西部~山口県北部沿岸など)では25℃台前半(例:「252」は25.2℃)の地点があります。また九州北部から瀬戸内海西部にかけても25~26℃前後の値が点在しています。


◇模範解答

シアーラインに沿ってその西側に、降水強度20mm/h以上のエコーが分布している。

風向: シアーラインの東側では東寄りの風、西側では北寄りの風となり、付近で風が収束している。  

  気温: シアーラインの東側は西側より高温で、シアーライン上で温度傾度が大きい。

シアーライン通過時刻: 斐川で約8時30分, 松江で約9時50分

  移動速度: 両地点間15kmを約1時間20分で通過 → 約11 km/h(東進)

境港への強雨エコー到達予想: 強雨域は境港の西約28kmに位置しており、シアーラインが東進する速度(約11 km/h)から計算して約2時間30分後11時30分頃に達すると推定

◇解説

① 図10下段には9日9時時点の地上風とシアーラインの位置が解析されています。シアーラインは斐川と松江を結ぶように南北に延びる太い実線で示されています。一方、図11は同時刻のレーダーエコー合成図で、降水強度20mm/h以上の強い降水域(赤~黄のエコー)が描かれています。これらを重ね合わせてみると、強い降水エコー(20mm/h以上)はシアーラインにほぼ沿って、かつやや西側に偏って分布していることがわかります。つまり収束線(シアーライン)のすぐ西側で対流雲が発達し、激しい雨が降っている状況です。この配置は、シアーライン上で収束した空気が西側(寒気側)に持ち上がり上昇流を生じさせて積乱雲を発達させている典型的なパターンと一致します。したがって、「シアーラインに沿ってその西側に強い降水エコーがある」と表現できれば満点です。

②次にシアーラインの東西での風と気温の違いを見ます。図10下段の地上風を見ると、シアーラインを挟んで東側(松江付近)では東寄りの風、西側(斐川付近)では北寄りの風が吹いています。風向が収束線に向かって逆向きに吹き込み、ちょうどシアーライン上でぶつかって風の収束帯を形成していることが読み取れます。地上気温については、図10上段の気温解析および図12の気温時系列から分析できます。シアーライン付近ではちょうど前項(1)で引いた26℃の等温線が通過するあたりに相当し、東側(松江側)の空気はそれより高温、西側(斐川側)は低温です。実際、松江の9時の気温は約26.3℃に対し、斐川では25℃台前半であり、約1~2℃の差があります(図12参照)。したがって東側ほど気温が高く、西側は低いという関係になります。さらにシアーラインそのものが狭い範囲で大きな温度差を伴っているため、線上で温度傾度(気温の変化の勾配)が大きくなっています。これはシアーラインが寒冷前線に類似した性質、すなわち暖かい空気と冷たい空気の境界であることを示唆します。以上をまとめると、「シアーラインの東側は東風で暖かく、西側は北風で涼しい。シアーライン上で風が収束し、温度傾度も大きい」という状態になります。

③シアーラインの通過時刻は、図12の各地点の風向変化から求めます。斐川と松江それぞれの時系列を見ると、風向が東寄りから北寄りに変化したタイミングがはっきり現れています。斐川では8時30分頃に風向が東風から北風へと急変しており、これがシアーライン通過の瞬間と考えられます。同様に松江では9時50分頃に東風から北風へのシフトが起こっています。したがって通過時刻は斐川8:30、松江9:50程度と読み取れます(問題文の指示によっては「8時半頃」「10時前」などの書き方でも可)。次にシアーラインの移動速度ですが、斐川と松江の距離は問題文に約15kmとあります。この15kmを斐川8:30から松江9:50まで1時間20分(=80分)で移動したことになります。80分は1.333…時間に相当するので、速度は15km/1.333h ≈ 11.25 km/hとなり、5km/h刻みでは約10~15km/h(11km/h前後)です

④ 最後に、強い降水エコーが境港に達するまでの時間を予測します。図11によれば、9日9時時点で境港の西方海上に強雨エコーが存在しています。境港とそのエコーとのおおよその距離を図上で測ると約28kmです。このエコーはシアーラインとともに東に移動すると考えられるため、シアーラインの東進速度11km/hで接近すると仮定します。28km離れた雨域が11km/hで進めば、約2.5時間(2時間半)で境港に達する計算になります。9日9時に予測を行ったなら、2時間半後は11時30分頃となります。従って答えは「11時30分頃」となりました。実際の気象においても、線状降水帯の移動速度や位置から到達予想時刻を計算するのは重要なスキルです。ここでは風の流れが一定と仮定しましたが、実際は降水エコーが発達・消滅する可能性もあり得ます。それでも、防災的観点からおおよその到達時刻を見積もることは試験でも現場でも重視されます。


◇模範解答

① 高い ② 上昇流 ③ 温度 ④ 暖気 ⑤ 寒気 ⑥ 厚い ⑦ 300hPa ⑧ 高 ⑨ 対流 ⑩ 混合

◇解説

①: 「シアーラインは水平方向の相当温位傾度の大きい領域の東側にあり、東側で相当温位は相対的に(①)」 とあります。図13上段を見ると、シアーライン(断面中の灰色の太線)の東側では相当温位が西側に比べて明らかに高い(暖かく湿っている)ことがわかります。従って①には「高い」が入ります。

②: 「相当温位傾度が大きい領域は西に傾きながら上空まで伸びており、その東縁付近で強い(②)となっています。」 図13下段を参照すると、相当温位傾度が大きい領域は高度5~6km付近まで西に傾斜しつつ伸びています。その東側の縁付近(ちょうどシアーライン直下に対応する辺り)を見てみると、700hPa付近を中心に強い負の鉛直流(-211hPa/hや-263hPa/hの極小値)が存在しています負の鉛直流とは上昇流を意味します。従って②には「上昇流」が入ります。すなわち傾斜したθe集中帯の東端付近で強い上昇が起きていることを述べています。この上昇流こそがシアーラインに沿った強雨をもたらしている対流です。

③: 「相当温位傾度の高い領域は湿数が比較的一様であることから、(③)傾度も大きいと考えられます。」 ここで「湿数が比較的一様」というのは、その領域内では湿潤度(飽和度)の変化が小さい=つまり乾燥している/湿っている度合いがあまり変わらないことを指します。湿数が一定に近いなら、相当温位の傾度がそのまま温度傾度に対応すると考えられます。つまり、水平方向の相当温位勾配が大きい=温度勾配も大きいということです。従って③には「温度」が入ります。

④・⑤: 「800hPaから950hPaの気層の温度移流は東側で(④)移流、西側で(⑤)移流です。」 温度移流とは暖気移流(温かい空気が流入してくる)か寒気移流(冷たい空気が流入してくる)かを指します。シアーラインの東側は南東~南風が吹き込んでおり暖かい空気を運んでいますので暖気移流です。一方、西側は北風で冷たい空気が流入する寒気移流になります。

⑥: 「相当温位が上空に向かって小さくなる対流不安定な層はシアーラインの東側の方が相対的に(⑥)い。」 相当温位が上に行くほど小さくなるということは、大気が対流的不安定、つまり下層の方が暖かく湿っていて上層が冷たく乾いている状態です。この層の厚みを比較しています。図13上段で、東経134°付近(シアーライン東側)と東経132°付近(西側)で、垂直減少がどこまで続くかを見ると、東側の方が高度方向に厚く不安定層が存在しています。

⑦: 「その厚さを東経134°と東経132°で比較するとそれぞれ500hPaと200hPaなのでその差は(⑦)に及びます。」 これは前述の不安定層の厚さの具体的数値です。東経134°(東側)では対流不安定層の上端が約500hPa、高度にして約5~6kmです。東経132°(西側)では約200hPa(高度12km付近)となっていますが、文脈から見ると「500hPaと200hPa」の差とあるので、おそらく500hPaと800hPaの差、あるいは500hPaと200hPaの差と解釈します。図13ではシアーライン東側の不安定層上端が500hPa、西側が800hPaくらいにも見えますが、問題文上は「500と200」となっているので、差は300hPaと答えるのが適当でしょう。したがって⑦には「300hPa」が入ります。この数値は「東側では西側より約300hPa分厚い対流不安定層がある」という意味です。

⑧: 「相当温位傾度の大きい東縁付近の上昇流域では、相当温位が周囲より(⑧)く、鉛直方向の相当温位の勾配が相対的に小さいです。」 これは上昇流が起こっている部分での空気の性質を述べています。上昇流域では対流により混合が起こり、周囲より高い相当温位の空気が持ち上げられてきます(下層の暖湿空気が上昇)。その結果、鉛直の相当温位勾配は小さくなります(上下がよく混ざるため)。したがって⑧には「高」い(相当温位が高い)が入ります。

⑨・⑩: 「これは(⑨)**によって大気が(⑩)**されたためと考えられます。」 上昇流域で相当温位の鉛直勾配が小さい(垂直に均一化している)のはなぜか、その理由です。上昇流、つまり対流活動そのものが大気を撹拌・均質化します。対流とは熱対流(大気の場合は熱的な浮力による鉛直混合)のことです。対流が起これば異なる高度の空気が入れ替わり混ざり合いますので、鉛直の温度・湿度の差が均されて勾配が小さくなります。従って⑨には「対流」、⑩には「混合」が入ります。「対流によって大気が混合されたため」という文章になり、意味が通ります。


◇模範解答

シアーライン通過後の北よりの非常に強い風( 暴風) 。

◇解説

気象警報は災害種別ごとに発表されますが、「大雨」「洪水」「大雪」「暴風」「暴風雪」「波浪」「高潮」などの区分があります。この中で大気そのものの現象と言えるものは、「大雨」「大雪」「暴風」「暴風雪」です。これらは直接大気の状態や気象そのもの(降水や風)に対応する警報です。一方、「洪水」「波浪」「高潮」は大気現象が誘因ではありますが、現象自体は河川水位や海の状態に関するもので水象・海象現象と言えます。設問は「災害をもたらす大気現象」に着目するよう指示しているため、後者の洪水・波浪・高潮は除外されます。

台風の時期(夏季)に問題となるのは主に大雨暴風ですが、今回の気圧配置では豪雨の予想域が山陰沖(海上)であったため、直接的に人的被害を及ぼす可能性が高いのは暴風であると考えられます。実際、図1の地上天気図でも「SW(南西)海上暴風警報」が発表されていたことが問1で触れられており、台風AA号に対して海上の暴風が警戒されていました。大雨警報も陸上では発表されていなかったか、発表されていても被害が出るほどの豪雨は陸上では見込まれていなかった可能性があります。以上を踏まえ、本設問では「暴風」を警戒する文章を答えるのが適切です。


以上です!独自解説とAIを組み合わせ解答・解説を作成しています。訂正・ご意見あればコメントやご連絡いただけると幸いです。皆で最高の独学環境を作り上げていきましょう!

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