【第55回 気象予報士試験 一般知識】問6 角運動量保存則とハドレー循環の上層風をわかりやすく解説

こんにちは!今回は第55回 気象予報士試験 一般知識 問6を解説します!

この問題は、赤道から高緯度へ移動する空気塊について、角運動量保存則を使って東西風速を求める問題です。

受験生がつまずきやすいのは、単に「角運動量=mRU」としてしまい、緯度が変わると回転半径がRcosφになることを見落とすところです。

この問題で重要なポイント

  • 緯度φでは、地軸からの距離はRcosφになる。
  • 角運動量は「質量 × 回転半径 × 速度」で考える。
  • 空気塊の東向き速度は、地球自転による速度と相対風速Uの和で考える。
  • したがって速度部分は ΩRcosφ + U となる。
  • 角運動量は mRcosφ(ΩRcosφ + U) で表される。
  • 赤道で静止していた空気塊は、北緯30°へ移動すると強い西風をもつ。
  • 計算結果は約130m/sとなる。

■ 問題文

ハドレー循環の上層風のように赤道から極向きに移動する空気塊を想定し,その運動について述べた次の文章の空欄(a),(b)に入る適切な式と数値の組み合わせを,下記の①〜⑤の中から1つ選べ。

ただし,赤道における地球の自転速度を470m/s,cos30°=0.87,1/cos30°=1.15とする。

緯度φにあって,質量m,東西方向の速度Uをもつ空気塊に対する角運動量保存則は,地球の半径と自転角速度をそれぞれR,Ωとすると,(a)=一定,と表現できる。

赤道上空で地表面に対し相対的に静止していた空気塊が角運動量を保存しながら北緯30°まで北上した時の地表面に対する東西風速は,この式に基づくと約(b)m/sとなる。

選択肢 (a) (b)
mRU60
mR(ΩRcosφ + U)60
mR(ΩRcosφ + U)130
mRcosφ(ΩRcosφ + U)60
mRcosφ(ΩRcosφ + U)130

■ 解答

(a) mRcosφ(ΩRcosφ + U)
(b) 130

■ 解き方の方針

この問題は、次の3段階で考えると整理できます。

緯度φに移動する

地軸からの距離が短くなる

回転半径はRcosφ

角運動量

質量 × 回転半径 × 絶対速度

角運動量を保存

高緯度へ行くと回転半径が小さくなる

東向きの相対風速Uが大きくなる

■ 図でイメージする

緯度と回転半径の関係を示す図

赤道では、地軸からの距離はほぼ地球半径Rです。

しかし、緯度φでは、地軸からの距離はRcosφになります。

ここを見落とすと、選択肢③を選びやすくなります。

■ (a) 角運動量保存則の式

角運動量は、ざっくり言うと次の形で考えます。

角運動量

質量 × 回転半径 × 速度

緯度φでは、回転半径はRcosφです。

次に速度を考えます。

緯度φにおける地球自転による東向き速度は、ΩRcosφです。

さらに、空気塊は地表面に対する東西方向の速度Uをもつので、空気塊の絶対的な東向き速度は次のようになります。

ΩRcosφ + U

したがって、角運動量は次のように表されます。

mRcosφ(ΩRcosφ + U)
= 一定

よって、(a)はmRcosφ(ΩRcosφ + U)です。

■ (b) 北緯30°での東西風速を求める

赤道上空で、空気塊は地表面に対して相対的に静止していました。

つまり、赤道での相対風速Uは0です。

赤道ではcos0°=1なので、赤道での角運動量は次のように考えられます。

mR × ΩR

一方、北緯30°では、角運動量は次のようになります。

mRcos30°(ΩRcos30° + U)

角運動量が保存されるので、両者は等しくなります。

mRΩR

mRcos30°(ΩRcos30° + U)

ここで、赤道における地球の自転速度は ΩR=470m/s です。

計算すると、北緯30°での相対的な東西風速Uは次のようになります。

U = 470 × (1/cos30° − cos30°)

問題文より、1/cos30°=1.15,cos30°=0.87なので、

U = 470 × (1.15 − 0.87)

U = 470 × 0.28

U = 131.6m/s

したがって、約130m/sです。

よって、(b)は130です。

■ なぜ高緯度へ行くと強い西風になるのか

ここが腹落ちポイントです

赤道付近では、地軸からの距離が大きいため、地球自転による東向き速度も大きくなります。

その空気塊が角運動量を保ったまま北緯30°へ移動すると、地軸からの距離が小さくなります。

回転半径が小さくなる

同じ角運動量を保つには

東向き速度が大きくなる

その結果、地表面から見ると空気塊は強い西風、つまり東向きの風速をもつことになります。

■ 選択肢確認表

選択肢 判定 理由
回転半径Rcosφと地球自転による速度を考慮できていない。
速度部分はあるが、回転半径がRcosφではなくRになっている。
130m/sは正しいが、(a)の式で回転半径Rcosφが抜けている。
(a)の式は正しいが、風速は約60m/sではなく約130m/s。
角運動量の式も、北緯30°での東西風速も正しい。

■ 受験生がつまずくポイント

1. 回転半径をRのままにしてしまう

緯度φでは地軸からの距離はRではなくRcosφです。角運動量ではこの回転半径が重要です。

2. ΩRcosφとUを分けて考えられない

ΩRcosφは地球自転による速度、Uは地表面に対する空気塊の相対速度です。空気塊の絶対速度はΩRcosφ + Uです。

3. 60m/sを選びたくなる

cos30°の扱いを間違えると60m/sに近い値になります。今回は1/cos30° − cos30°を使うのがポイントです。

4. ハドレー循環の上層風と西風の関係がイメージできない

赤道付近の大きな角運動量を保った空気が高緯度へ移動すると、回転半径が小さくなるため東向き速度が大きくなります。これが上層で強い西風になる理由です。

■ まとめ

  • 緯度φでの回転半径はRcosφ。
  • 地球自転による速度はΩRcosφ。
  • 空気塊の絶対速度はΩRcosφ + U。
  • 角運動量保存則はmRcosφ(ΩRcosφ + U)=一定。
  • 赤道で静止していた空気塊が北緯30°へ移動すると、Uは約130m/s。
  • (a) mRcosφ(ΩRcosφ + U)、(b) 130。

正解は⑤

この問題で必ず押さえたいこと

緯度φ

回転半径はRcosφ

空気塊の絶対速度

ΩRcosφ + U

角運動量

mRcosφ(ΩRcosφ + U)

赤道から北緯30°へ移動

U = 470 × (1.15 − 0.87)

約130m/s

※ 本記事では、一般財団法人 気象業務支援センターより利用許諾を受けて、気象予報士試験問題を掲載しています。
問題文の著作権は一般財団法人 気象業務支援センターに帰属します。

以上、第55回 一般知識 問6の解説でした!

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