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【例題】
「気象庁が行う気象レーダー観測について、正しいものはどれか。
① 電波が伝わる経路の途中に強い降水域があると、この降水域より遠方にある降水エコーは実際よりも強く観測される
② 霧雨は降水エコーとしてほとんど観測されない
③
ドップラーレーダーは降水粒子で反射された電波の周波数偏移を測定することにより、粒子の移動速度のレーダービームに直交する方向の水平成分を求めている
④ 気象レーダーの電波はパルス的に発射され、戻ってくるまでの時間から降水粒子の種類を判別する」
今回は、電波を使った3種類の観測装置──気象レーダー、気象ドップラーレーダー、ウィンドプロファイラ──の仕組みと特徴を学びます。これらはメソスケール現象の解析と数値予報に不可欠な観測手段であり、近年のXバンドMPレーダーの普及など最新技術も試験に登場します。降水エコーの読み方からドップラー速度の解析まで、実技試験でも問われる重要分野を丁寧に解説します!
目次
- 気象レーダー観測の基本原理
- 気象レーダーの観測網とシャドウ域
- 降水エコーの形状と強度
- 気象レーダー観測の注意点(グランドエコー・ブライトバンドなど)
- Xバンド・マルチパラメータ(X-MP)レーダー
- 気象ドップラーレーダーの原理と観測
- ドップラーレーダーの主な検出対象(メソサイクロン・ウインドシア・ダウンバースト)
- ウィンドプロファイラの観測原理と観測網
- ウィンドプロファイラのデータ解析(前線・台風事例)
- 理解チェックテスト(5問)
- 過去問チャレンジ(3問)
- まとめ
1. 気象レーダー観測の基本原理
▲ 気象レーダーの観測原理・観測網・Z-R関係
- 気象レーダーはアンテナからマイクロ波(波長5.7cm、周波数5.3GHz)をパルス間隔3.85ms、パルス幅2.5μsで発射し、降水粒子からの後方散乱電波の受信電力と経過時間を解析して降水強度・分布を求める
- 目的:降水域・降水強度の把握(直接的な実況観測)。メソスケール現象の解析も可能
- 観測の目標高度は高度2km付近(地上からの電波は球体の地球の曲率影響で、遠方ほど高高度を観測)
- 水平分解能1km、5分毎に観測を繰り返す(アメダスよりも高分解能・短時間)
-
レーダー方程式の重要項目:
- 平均受信電力(Pr):降水強度が強いほど大きい
- レーダー反射因子(Z):大きいほど受信電力大
- 距離(r):距離の2乗に反比例
- 波長(λ):波長の2乗に反比例(短いほど後方散乱強く、減衰も大)
- パルス幅(τ):長いほど受信電力大だが、距離精度が低下
- 降水粒子の後方散乱断面積は降水粒子の直径の6乗に比例(レイリー散乱原理)→直径が大きい粒子ほど強く観測される
【Z-R関係とは】
レーダー反射因子Zと降水強度Rの間の関係式。降水の性状(対流性・層状性)により係数を変えて精度よい降水強度を算出する。
2. 気象レーダーの観測網とシャドウ域
- 気象庁の気象レーダー設置地点は全国約20か所(2013年3月時点でドップラー機能を全設置)
- 1地点の観測範囲:理論上360度の200〜300km以内
- シャドウ域:山岳・建造物などの障害物によってレーダーが観測できない領域。レーダー位置から遠くなるほど扇状に広がる
- 全国レーダーのエコー図を組み合わせた合成エコー図で全国の降水状況を把握
3. 降水エコーの形状と強度
降水エコーの形状と強度から降水の性状を判断できます。
| エコーの特徴 | 降水の種類 | 主な事例 |
|---|---|---|
| 対流性エコー | 範囲が狭く独立(団塊状)、強度変化大、帯状のとき下層に収束性シアラインあり | 積乱雲・雷雨 |
| 層状性エコー | 広い範囲に均一で薄い分布、10mm/h以下(大半は数mm/h以下)、強度変化小 | 乱層雲・前線性降水 |
| 筋状エコー | 多重の筋状分布、5〜6mm/h程度、西高東低時に日本海側 | 冬型の寒気吹き出し(雪) |
💡 降水強度の目安(一般感覚)
- 4mm/h未満:弱い雨
- 4〜16mm/h未満:並〜やや強い雨
- 16mm/h以上:強い雨
4. 気象レーダー観測の注意点
【気象レーダーで観測される異常エコー】
| 現象 | 内容 |
|---|---|
| グランドエコー | 山岳・地形による後方散乱エコー。除去処理されるが完全ではない |
| シークラッター | 強風時の波しぶきによるエコー。移動するため除去不可 |
| エンゼルエコー(晴天エコー) | 大気屈折率の乱れ(寒気と暖気の境界面)による後方散乱。動径方向の列状エコーや円弧状・環状に現れることあり。移動するため除去不可 |
| ブライトバンド | 0℃層付近で融解中の雪の表面が水膜に覆われ後方散乱強化→強い環状エコー。水は雪より5倍後方散乱が強い。層状性降水で顕著 |
- 降水粒子による電波の減衰効果は補正できない(遠方の強い降水域後方はエコーが実際より弱く観測される)
- 気象レーダーで降水の種類(雨・雪)の判別はできない(地上・下層の気温で推定)
- 下層の風が強いとき、降水エコー域と実際の降水場所がずれることあり
- 霧雨(直径0.5mm以下)はほとんど観測されない
5. Xバンド・マルチパラメータ(X-MP)レーダー
▲ X-MPレーダーの観測原理(偏波解析)と従来レーダーとの比較
X-MPレーダーは、水平偏波と垂直偏波を同時射出し、その受信電力差と位相のズレ(偏波間位相差)を解析することで降水強度を高精度で推定する。
【従来レーダーとX-MPレーダーの比較】
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 波長 | 約3cm(Xバンド、9.7〜9.8GHz) |
| 水平分解能 | 250m(従来の4倍精度) |
| 観測範囲 | 60〜80km(複数設置で拡大可能) |
| 観測間隔 | 1分毎(国土交通省XバンドMPは1〜2分で配信) |
| アンテナサイズ | 小型(2m程度)で設置コスト低 |
| 主なメリット | 降水粒子による電波減衰の影響が小さい(電波が届く限り精度維持)、強雨時も精度よい観測が可能、解析雨量作成に地上補正不要 |
| 主なデメリット | 波長が短く大気・降水粒子による減衰が強い、強雨域後方では電波が消散して観測不可になることあり |
💡 X-MPレーダーの観測原理(3つの解析因子)
- ①水平偏波と垂直偏波の受信電力差(大きな雨粒は扁平→水平偏波が強く後方散乱)
- ②両偏波の受信電力の大小(降水強度が強いほど大)
- ③両偏波の位相差(雨強→位相のズレが拡大→250m単位で精度よく解析)
6. 気象ドップラーレーダーの原理と観測
▲ ドップラー効果の原理・動径速度解析・主な検出対象
- ドップラー効果:電波の周波数は不変だが、目標物(降水粒子)がアンテナに近づく場合は受信周波数が増加、遠ざかる場合は減少。この周波数偏移(ドップラー周波数)を解析して大気の動径速度成分を求める
-
動径速度:アンテナ位置を基準にした大気の近づく成分(−)・遠ざかる成分(+)の速度
- 動径速度0の場合でも大気が静止しているとは限らない(円周運動していればドップラー速度は0)
- 観測できるのは降水時のみ(降水粒子が電波の散乱体となるため)
- 気象ドップラーレーダー観測はすべての一般気象レーダー設置地点で同時に実施されている
【ドップラーレーダーと大気の流れ(パターン別)】
| 大気の流れパターン | 特徴 | 解析できること |
|---|---|---|
| 発散(Divergence) | アンテナ周辺から外向きに遠ざかる成分が支配的 | 下降流・高気圧性循環など |
| 収束(Convergence) | アンテナ周辺に内向きに近づく成分が支配的 | 上昇流・積乱雲発達域など |
| 低気圧性循環 | アンテナから見て近づく成分と遠ざかる成分が特定方向に分かれる | 台風・メソサイクロンなど |
7. ドップラーレーダーの主な検出対象
① メソサイクロンの検出
- 直径数km〜十数kmの積乱雲が低気圧性回転をしているものをメソサイクロンという
- ドップラーレーダーでの連続観測で検出可能。竜巻はメソサイクロン下部の強い上昇流中で発生しやすい
- 竜巻本体(直径数十m〜最大1km)の直接検出は困難
② ウインドシア(Wind Shear)の検出
- 狭い範囲で風向・風速が急変する場所。鉛直方向の変化を鉛直シア、水平方向の変化を水平シアという
- 航空機の離着陸時に最も危険。寒冷前線付近・海風前線・ダウンバーストの下降流域で顕著
③ ダウンバーストの検出
- 発達した積乱雲の下で激しい下降気流が地表に向かい、放射状に広がる突風(50〜75m/s)
- ドップラー画像では、特定領域を中心に近づく成分と遠ざかる成分が反対方向に広がるパターンが現れる
💡 風の鉛直シアが大きい気層の検出
電波の仰角を数度に設定して観測すると、下層に寒気層(北東気流など)、上層に異質の気層が入る転移層での風の鉛直シアが大きい気層を検出できる。具体的には北東気流型や南岸低気圧時の関東平野下層寒気層の上面高度の解析に活用される。
8. ウィンドプロファイラの観測原理と観測網
▲ ウィンドプロファイラの観測原理(5方向ビーム)・WINDAS観測網・時間高度断面図例
- ウィンドプロファイラ:鉛直上方と4方向斜め(計5本の電波ビーム)を上向きにパルス発射し、大気の屈折率の揺らぎや降水粒子からの後方散乱電波の周波数変化(ドップラー解析)から3次元風(風向・風速・鉛直流)を観測するリモートセンシング装置
- 観測網(WINDAS):全国33か所設置、平均間隔140km(2014年3月現在)。気象庁ウィンドプロファイラ中央監視局が管理
- 観測間隔:10分間隔で発表。高度間隔は300m毎
-
観測高度の上限:
- 大気が乾燥しているとき:高度3〜6km
- 大気が湿潤なとき(暖候期):最大高度7〜12km
- 目的:メソスケール現象(メソα:200〜2000km、メソβ:20〜200km)の解析と数値予報への利用
- 電波周波数:1.3GHz付近(波長約20cm)→長波長のため気象レーダー(波長5cm)より大気・降水粒子による減衰が相対的に小さい
【ウィンドプロファイラの品質管理(除去する誤データ)】
- ①渡り鳥エコー
- ②地形エコー(サイドローブによる山岳反射→速度0のデータを除去)
- ③局所的に周辺と矛盾するデータ(時間・高度方向の連続性なし→除去)
- ④非現実的な大きな鉛直シアのデータ(300m間隔で50kt変化など→除去)
- ⑤降水域の始まりや終わりの頃の観測データ(電波断面積が均一でないため→除去)
9. ウィンドプロファイラのデータ解析
活発な寒冷前線の通過
- 水平シア解析:時間軸方向(横)に風向・風速の変化を見る→風向の急変期間に寒冷前線が通過したと判定
- 鉛直シア解析:高度軸方向(縦)に風向・風速の変化を見る→風の鉛直シアが大きい高度が転移層(前線面)
💡 前線解析のポイント
- 寒冷前線面:下部に北成分の風(寒気層)、上部に南成分の風(暖気層)→風向の鉛直シアが大きい高度が前線面
- 温暖前線の接近:時間が経過するにつれて風の鉛直シアが大きい層(転移層)の高度が低下していく(前線面が下降)
降水時の観測データ解析
- 鉛直流データでm/sオーダーの下降気流は降水粒子の落下速度を観測(大気自体の鉛直流はほぼ無視できる大きさ)
- 雪の落下速度:おおむね1m/s内外、雨の落下速度:数m/s
- 下降気流が1m/s前後から数m/sに変わる高度は融解層(雪→雨)の判定に使える
台風接近時の解析
- 台風が観測地点の南を東進する場合、下層(地表〜高度1km付近)に北東の風(寒気層)が流入
- 寒気層の上(転移層B層)では風向の鉛直シアが大きくなる
- 台風中心の位置:各レーダー地点での風ベクトルの左手側の方位に台風中心がある
10. 📋 理解チェックテスト(5問)
【問1】
気象レーダー観測の基本について。気象レーダーの電波(波長5.7cm)が後方散乱断面積として観測できる降水粒子について、正しい記述はどれか。
① 霧雨(直径0.5mm以下)は容易に観測できる
② 降水粒子の後方散乱断面積は降水粒子の直径の3乗に比例する
③ 同じ降水量の場合、対流性の雨粒のほうが層状性の雨粒より平均受信電力が大きい
④ 雪は水より後方散乱断面積が5倍大きい
💡 解答・解説
正解:③
霧雨(直径0.5mm以下)は後方散乱が極めて小さく観測困難(①誤り)。後方散乱断面積は直径の6乗に比例(②誤り)。対流性の雨粒は層状性より粒径が大きく、直径の6乗比例則により受信電力が大きい(③正しい)。水は雪より後方散乱が5倍強い(④誤り)。
【問2】
気象ドップラーレーダーの動径速度について、正しいものはどれか。
① 動径速度が0のとき、大気は静止している
② 動径速度はアンテナ位置を基準として、近づく成分をプラス(+)と定義する
③ ドップラーレーダーは降水のない晴天でも観測が可能である
④ ドップラーレーダーで解析できるのは動径方向(アンテナ向き)の速度成分である
💡 解答・解説
正解:④
動径速度が0でも大気がアンテナに対して円周運動している可能性がある(①誤り)。アンテナに近づく成分はマイナス(−)が定義(②誤り)。ドップラーレーダーの観測には降水粒子が必要(③誤り)。解析できるのは動径方向の速度成分のみ(④正しい)。
【問3】
気象レーダー観測の注意点について、正しいものはどれか。
① ブライトバンドは対流性降水の雲内で最も顕著に観測される
② グランドエコーは完全に除去することができる
③ エンゼルエコーは動かないため除去処理が可能である
④ 途中に強い降水域があると、その遠方の降水エコーは実際より弱く観測される
💡 解答・解説
正解:④
ブライトバンドは層状性降水で顕著(①誤り)。グランドエコーは完全には除去できない(②誤り)。エンゼルエコーは移動するため除去不可(③誤り)。降水粒子による電波の減衰効果は補正できず、遠方の降水エコーは弱く観測される(④正しい)。
【問4】
ウィンドプロファイラ観測について正しいものはどれか。
① ウィンドプロファイラは観測時に降水粒子が必要で、非降水時は観測できない
② 大気が乾燥しているときは観測高度の上限が高くなる
③ 降水時には降水粒子からの強い後方散乱により、上層まで観測できることが多い
④ ウィンドプロファイラはラジオゾンデと同様に直接観測方式である
💡 解答・解説
正解:③
ウィンドプロファイラは非降水時も大気の屈折率の揺らぎで観測可能(①誤り)。大気が乾燥しているとき観測高度は低くなる(②誤り)。降水時は降水粒子の後方散乱により中上層まで観測可能なことが多い(③正しい)。ウィンドプロファイラはリモートセンシングによる間接観測(④誤り)。
【問5】
X-MPレーダーについて、正しいものはどれか。
① X-MPレーダーの観測範囲は一般的な気象レーダーより広い
② X-MPレーダーの水平分解能は1kmである
③ X-MPレーダーは水平偏波と垂直偏波の位相差を解析することで降水強度を推定する
④ 強雨域では電波の減衰が大きいためX-MPレーダーは観測精度が低下する
💡 解答・解説
正解:③
X-MPレーダーの観測範囲は60〜80km(一般の200〜300kmより狭い)(①誤り)。水平分解能は250m(②誤り)。水平・垂直偏波の位相差解析で降水強度を精度よく推定(③正しい)。電波が消散しない限り精度を維持できるのがX-MPのメリット(④誤り)。
11. 📋 過去問チャレンジ(3問)
【平成24年度第1回 沖縄再試験 専門知識 問3】
気象庁が行う気象レーダー観測について述べた次の文(a)〜(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを選べ。
(a)
電波をパルス的に発射し、降水粒子に反射されて戻って来るまでの時間を測定することにより、降水粒子までの距離を求める。
(b)
電波が伝わる経路の途中に強い降水域があると、この降水域より遠方にある降水エコーは実際よりも強く観測される。
(c) 霧雨は、降水エコーとしてはほとんど観測されない。
(d)
ドップラーレーダーは、降水粒子で反射された電波の周波数偏移を測定することにより、粒子の移動速度のレーダービームに直交する方向の水平成分を求めている。
①(a)正 (b)誤 (c)正 (d)誤
②(a)正 (b)誤 (c)誤 (d)誤
③(a)誤 (b)正 (c)正 (d)誤
④(a)誤 (b)正 (c)誤 (d)正
⑤(a)誤 (b)誤 (c)正 (d)正
💡 解答・解説
正解:①((a)正 (b)誤 (c)正 (d)誤)
(a)正しい。気象レーダーはパルス電波を発射し戻ってくる時間から距離を算出する。
(b)誤り。途中に強い降水域があると電波が減衰し、遠方の降水エコーは実際より「弱く」観測される(強くではない)。
(c)正しい。霧雨は直径0.5mm以下の微小な水滴で後方散乱が極めて小さく、ほとんど観測されない。
(d)誤り。ドップラーレーダーは「レーダービームに平行な動径方向」の速度成分(近づく・遠ざかる成分)を求めるものであり、「直交する方向」ではない。
【平成25年度第1回 専門知識 問3】
2台のドップラーレーダーで得られた風の動径方向の速度成分から、その場の風向風速を計算する原理について述べた文章の空欄に入る語句の問題(ドップラー速度は風がレーダーから遠ざかる向きを正とする)。
標高が等しい二つの地点A、Bに設置されたドップラーレーダーを用いて同時観測。(a)点では両レーダーで観測された高度が異なるため計算不可。(b)点では観測されたドップラー速度に風の(c)成分が含まれないので計算不可。(d)点でAレーダーのドップラー速度が-10m/s、Bレーダーのドップラー速度が+10m/sだったとすると風は(e)と算出される。
①(a)ア (b)ウ (c)南北 (d)イ (e)西の風14m/s
②(a)ア (b)ウ (c)東西 (d)イ (e)東の風14m/s
③(a)ウ (b)ア (c)東西 (d)イ (e)西の風20m/s
④(a)ウ (b)イ (c)南北 (d)ア (e)東の風14m/s
⑤(a)ウ (b)イ (c)南北 (d)ア (e)東の風20m/s
💡 解答・解説
正解:⑤((a)ウ (b)イ (c)南北 (d)ア (e)東の風20m/s)
(a)はウ(東西に並んだレーダーA・Bの中間点より遠方のウは、A・Bから見た観測高度が異なる)。(b)はイ(A-B軸上に存在するイでは、風速ベクトルの東西成分しか動径速度に現れず(c)南北成分が解析できない)。(d)点はア(正三角形の頂点→三角関数でAレーダーに対する動径速度-10m/sは東風→東風20m/sの
sin30°=10m/sと一致)。
【平成25年度第1回 専門知識 問2】
気象庁で行われているウィンドプロファイラ観測について述べた次の文(a)〜(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを選べ。
(a)
ウィンドプロファイラは、上空に向かって発射した電波が大気の乱れ等で散乱されて戻ってくるときの周波数偏移を利用して上空の風を測定する装置である。
(b) ウィンドプロファイラでは、降水のないときには高度3〜6km付近までの観測が可能である。
(c) 大気が乾燥しているときは電波の散乱が弱いので、高気圧の圏内では観測可能な高度が低くなる傾向がある。
(d) 降水時には降水粒子による電波の減衰が大きいため、非降水時よりも観測可能な高度が低くなる傾向がある。
①(a)正(b)正(c)正(d)誤
②(a)正(b)正(c)誤(d)正
③(a)正(b)誤(c)誤(d)正
④(a)誤(b)正(c)正(d)誤
⑤(a)誤(b)誤(c)誤(d)正
💡 解答・解説
正解:①((a)正 (b)正 (c)正 (d)誤)
(a)正しい。周波数偏移(ドップラー効果)を利用して風を測定。
(b)正しい。非降水時は大気の屈折率の揺らぎのみを頼るため高度3〜6km程度が上限。
(c)正しい。乾燥しているときは屈折率の揺らぎが少なく、電波の散乱が弱いため観測高度が低くなる傾向。高気圧圏内は下降気流により乾燥しやすい。
(d)誤り。降水時は降水粒子からの強い後方散乱があるため、観測可能な高度が高くなる傾向(ウィンドプロファイラの電波波長は約20cmで降水粒子による減衰は相対的に小さい)。
12. まとめ
重要項目一覧:
- 気象レーダー:波長5.7cm(5.3GHz)のマイクロ波を発射、水平分解能1km・5分毎観測、観測範囲200〜300km
- 後方散乱断面積:降水粒子の直径の6乗に比例(レイリー散乱)→大粒子ほど強く観測される
- 電波減衰:途中の降水粒子による減衰は補正不可。遠方の強い降水域はエコーが弱く観測される
- 異常エコー:グランドエコー(除去処理済)、シークラッター・エンゼルエコー(移動するため除去不可)、ブライトバンド(0℃層付近、融解中の雪→層状性降水で顕著)
- X-MPレーダー:波長3cm、水平分解能250m、観測範囲60〜80km、1分毎観測。偏波解析で精度高い降水強度推定
- ドップラーレーダー:動径速度(近づく:−、遠ざかる:+)を解析。メソサイクロン・ウインドシア・ダウンバーストを検出
- ウィンドプロファイラ(WINDAS):全国33か所(平均140km)、10分間隔・高度300m毎、電波周波数1.3GHz(波長約20cm)
- 観測高度上限:乾燥時3〜6km、湿潤時最大7〜12km
- 品質管理:渡り鳥エコー・地形エコー・非現実的なシア・降水境界データを除去
- 寒冷前線解析:時間軸方向の風向急変(水平シア)→前線通過時刻、高度軸方向の風向急変(鉛直シア)→前線面高度
難易度:★★★★☆(ドップラー速度の動径方向の理解と、ウィンドプロファイラのデータ解析が実技試験でも頻出です!)
この記事について
気象予報士試験の合格を目指す方のために、専門知識を初学者向けにわかりやすく解説しています。レーダー観測の分野は実技試験でも頻出で、ドップラー速度の解析パターンを確実に理解しましょう!
