【気象予報士試験】第1章 地上気象観測の知識【後編】

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【例題】

「地上気象観測に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
ア. 雲量が8のとき、天気は『曇り』となる。
イ. 有義波高とは、観測した波高を高い方から順に並べ、上位1/10の平均をとった値である。
ウ. 全天日射量は、直達日射量と散乱日射量の和である。
エ. アメダスのすべての観測所で、降水量、風向・風速、気温、日照時間、積雪深の5要素が観測されている。」

今回は、日照・日射、視程、雲、天気の種類といった目視観測の要素から、海上観測やアメダス(AMeDAS)といったシステムまで幅広く学びます。特に「雲量と天気の判定基準」や「大気混濁現象(霧やもや)の視程の定義」、「アメダスの観測要素」などは気象予報士試験で毎回のように出題される超重要ポイントです。前回と合わせて、しっかり基礎を固めましょう!

目次

  • 日照・日射の観測
  • 視程・大気の混濁の観測
  • 雲の観測(10種雲形)
  • 大気現象の分類と天気の種類
  • 海上観測
  • アメダス(地域気象観測システム)
  • 理解チェックテスト(5問)
  • 過去問チャレンジ(3問)
  • まとめ

1. 日照・日射の観測

日照・日射観測図

▲ 日照計の仕組みと全天日射量・日照率の概念図

  • 日照時間の定義:直達日射量が 120W/m² を超えている時間のことです(WMOの規定)。
  • ジョルダン型日照計:半円筒形の機器で、中にセットした感光紙(青写真用紙)に太陽光が当たってできる焦げ跡の長さで日照時間を測ります(かつて広く使われていました)。
  • 太陽電池式日照計:現在のアメダスなどで使用されています。光電効果を利用し、一定以上の強さの直達日射がある時間を電気的にカウントします。
  • アクチノメーター(天空輻射計):長波放射や短波放射を測定するための精密な機器です。
  • 日射量の単位:W/m²(ワット毎平方メートル)またはMJ/m²(メガジュール毎平方メートル)が用いられます。

【全天日射量の公式(試験頻出!)】

全天日射量 = 直達日射量 + 散乱日射量

  • 直達日射量:太陽から直接地上に届く放射のこと。
  • 散乱日射量:大気中の空気分子や雲、微粒子などによって散乱されてから地上に届く放射のこと。

💡 日照率の公式(計算問題に注意)

日照率(%)= 実際の日照時間 ÷ 可照時間 × 100

  • 可照時間:日の出から日没までの時間(地形による日陰などの障害がないものとした理論値)。
  • 例:可照時間が12時間で、実際の日照時間が8時間だった場合、日照率は「8 ÷ 12 × 100 = 約66.7%」となります。

2. 視程・大気の混濁の観測

視程・大気混濁分類図

▲ 霧・もや・煙霧の視程による分類比較

  • 視程の定義
    ・【昼間】目標物をはっきりと認知できる最大距離。
    ・【夜間】適切な強さの光源が認知できる最大距離。
  • 視程計:光の透過率を測る「透過率型視程計」や、空気中の粒子による散乱光を測る「前方散乱型視程計」があります。
  • 霧の種類:放射霧(夜間の放射冷却で発生)、移流霧(暖かく湿った空気が冷たい海面などに移動して発生)、前線霧、蒸気霧など。

【視程による大気混濁の分類(超重要・絶対暗記!)】

現象名 視程の目安 主な原因 相対湿度の目安
霧(きり) 1km未満
※濃霧は100m未満
微小な水滴 ほぼ 100%
もや 1km以上 10km未満 微小な水滴や湿った微粒子 75%以上
煙霧(えんむ) 10km未満 乾いた微粒子(煙・砂・ちり等) 75%未満が多い
砂じん嵐 数km未満 砂や塵が強風で激しく舞い上がる 低い

💡 濃霧注意報の基準

視程不良による交通機関等への影響を警戒する「濃霧注意報」は、一般的に「陸上で視程100m未満、海上で500m未満」が目安とされています(地域により異なります)。

3. 雲の観測(10種雲形)

10種雲形図

▲ 10種雲形と雲族の高度分類(上層雲・中層雲・下層雲・垂直発達雲)

  • 雲量:空全体を「10」として、雲の占める割合を0〜10の11段階で表します。
  • 雲底高度・雲高の通報:航空気象などでは、メートルまたはフィートで報告されます。
  • 積乱雲の特徴:強い上昇気流を伴い、雷、突風、ひょうをもたらします。発達すると対流圏界面に達し、上端が平らな「かなとこ雲(アンビル型)」を形成することがあります。

【天気の雲量判定(試験頻出、必ず暗記!)】

  • 快晴 雲量 0 〜 1
  • 晴れ 雲量 2 〜 8 (※「8」までは晴れです!)
  • 曇り 雲量 9 〜 10

【10種雲形の分類】

雲族(高さ) 和名(通称) 記号 特徴
上層雲
(5000m以上, 氷晶)
巻雲(すじ雲) Ci 白いすじ状。空の最も高いところにできる。
巻積雲(うろこ雲) Cc 小さいうろこ状の塊が並ぶ。
巻層雲(うす雲) Cs 空全体を覆う薄いベール。太陽や月の周りに「暈(かさ)」を作る。
中層雲
(2000-7000m)
高積雲(ひつじ雲) Ac 中くらいの塊が並ぶ。
高層雲(おぼろ雲) As すりガラス状の灰色のシートで、空を広く覆う。
乱層雲(雨雲) Ns 暗灰色で厚く、持続的な雨や雪を降らせる。
下層雲
(2000m未満, 水滴)
層積雲(くもり雲) Sc 大きな平べったい塊が並ぶ。最もよく見られる雲。
層雲(きり雲) St 霧状の最も低い雲。山肌などにへばりつく。
積雲(わた雲) Cu 綿あめ状で、晴天時にポッカリと浮かぶ。上に向かって成長する。
垂直発達雲 積乱雲(入道雲) Cb 下層から上層まで巨大に発達。雷や激しい雨、突風をもたらす。

4. 大気現象の分類と天気の種類

  • 大気現象の分類
    • 降水現象:雨、霧雨、雪、みぞれ、あられ、ひょう
    • 視程障害現象:霧、もや、煙霧、砂じん嵐、地ふぶき
    • 電気的現象:雷(Thunder)、電光(Lightning)
    • 光学的現象:虹(Rainbow)、日暈・月暈(Halo)、彩雲
    • 塵巻現象:つむじ風(Dust devil)、竜巻(Tornado)

💡 天気15種類(日本式)

快晴、晴れ、薄曇、曇、煙霧、砂じん嵐、地ふぶき、霧、霧雨、雨、みぞれ、雪、あられ、ひょう、雷

※天気を決定する優先順位は、概ね「降水現象 > 視程障害 > 電気的現象 > 雲量(晴れ/曇り)」となります。

【天気の判定基準のルール】

  • 雨が降っていれば雲量に関係なく天気は「雨」になります。
  • 雷が鳴っていれば天気は「雷」になります(雨が降っていても、雷が優先して記録される場合があります)。
  • 霧が出て視程が1km未満の場合、降水がなければ天気は「霧」になります。

5. 海上観測

  • 海上気象観測の目的:船舶の安全航行、海上警報の発表、海洋気象予報のため。
  • 観測手段:気象観測船、商船(ボランティア観測)、海洋気象ブイ、海洋プラットフォームなど。
  • 観測要素:気温、気圧、風向・風速、視程、雲、海面水温(SST)、波浪など。
  • 海上風の特徴:海面は陸上に比べて摩擦が少ないため、陸上より強く安定した風が吹きます。

💡 波の種類(風浪とうねり)

  • 風浪(ふうろう):その場で今吹いている風が直接海面を波立たせて作る波。波の先が尖っており、短周期で不規則です。
  • うねり:台風など遠くの海域で発生した波が伝わってきたものや、風が弱まった後に残っている波。波の峰が丸く、長周期で規則的です。

【有義波高(Significant Wave Height)】

  • 定義:観測した波の高さを高い方から順に並べ、上位3分の1(1/3)の波高を平均した値です。
  • 天気予報で発表される「波の高さ○メートル」は、この「有義波高」を指しています。熟練した船員が目視で感じる波の高さに最も近いとされます。
  • 注意点:実際の海には有義波高よりはるかに高い波も存在し、最大波高は有義波高の約1.5倍から2倍になることがあります(一発大波に注意)。

6. アメダス(地域気象観測システム)

アメダス観測網図

▲ アメダスの観測網と観測要素(全国約1300か所・10分ごと自動観測)

  • AMeDAS とは、「Automated Meteorological Data Acquisition System」の略で、地域気象観測システムのことです。
  • 1974年(昭和49年)から気象庁が運用を開始しました。
  • 観測間隔10分ごとに自動観測し、データを送信しています。
  • 観測機器:転倒升型雨量計(降水)、超音波式風速計(風)、白金抵抗温度計(気温)、太陽電池式日照計(日照)などが用いられます。

【アメダスの設置数と観測要素(試験頻出・超重要!)】

観測所の種別 設置数(約) 平均間隔 観測要素
降水量のみ観測 約 1,300か所 約 17km 降水量のみ
4要素観測 約 840か所 約 21km 降水量 + 風向・風速 + 気温 + 日照時間
積雪深も観測(豪雪地帯等) 約 320か所 上記4要素 + 積雪深

💡 アメダスと地上気象観測(気象台等)の違い

  • アメダスは完全な自動観測(無人)です。
  • これに対し、気象台や測候所での「地上気象観測」は、目視観測(または自動化された目視相当の観測)も含みます。
  • そのため、アメダスでは「雲量」「視程」「大気現象(霧や雷など)」は観測していません(観測するのは降水、風、気温、日照、一部の積雪のみ)。

7. 📋 理解チェックテスト(5問)

【問1】

冒頭の例題の確認です。正しい記述はどれか。
ア. 雲量が8のとき、天気は『曇り』となる。
イ. 有義波高とは、観測した波高を高い方から順に並べ、上位1/10の平均をとった値である。
ウ. 全天日射量は、直達日射量と散乱日射量の和である。
エ. アメダスのすべての観測所で、降水量、風向・風速、気温、日照時間、積雪深の5要素が観測されている。

💡 解答・解説

正解:ウ
アは誤り(雲量8までは「晴れ」です)。イは誤り(有義波高は上位1/3の平均です)。エは誤り(すべての観測所ではなく、降水量のみの場所や4要素の場所があります)。ウが全天日射量の正しい定義です。

【問2】

WMOの規定による「日照時間」の定義として、正しい基準値はどれか。
ア. 全天日射量が 100 W/m² を超えている時間
イ. 直達日射量が 120 W/m² を超えている時間
ウ. 散乱日射量が 150 W/m² を超えている時間
エ. 全天日射量が 200 W/m² を超えている時間

💡 解答・解説

正解:イ
日照時間は「直達日射量が 120 W/m² を超えている時間」と定義されています。

【問3】

大気混濁現象における「霧」と「もや」の視程の区別として、正しいものはどれか。
ア. 視程1km未満が「霧」、視程1km以上10km未満が「もや」である。
イ. 視程5km未満が「霧」、視程5km以上20km未満が「もや」である。
ウ. 視程10km未満が「霧」、視程10km以上が「もや」である。
エ. 視程500m未満が「霧」、視程500m以上5km未満が「もや」である。

💡 解答・解説

正解:ア
霧は視程1km未満(濃霧は100m未満)、もやは視程1km以上10km未満です。また、乾いた粒子による視程10km未満の現象は「煙霧」です。

【問4】

次の10種雲形のうち、「上層雲」に分類されるものだけを集めた組み合わせはどれか。
ア. 巻雲・高積雲・巻層雲
イ. 巻雲・巻積雲・巻層雲
ウ. 高層雲・高積雲・乱層雲
エ. 層雲・積雲・層積雲

💡 解答・解説

正解:イ
上層雲は「巻」がつく3つの雲(巻雲・巻積雲・巻層雲)です。ウは中層雲、エは下層雲のグループです。

【問5】

アメダスに関する次の記述の正誤を答えよ。
「アメダスは全国の約1300か所に設置されており、そのうちの約840か所では、降水量、風向・風速、気温、日照時間の4要素に加えて、視程と雲量も自動で観測している。」

💡 解答・解説

正解:誤り
アメダスは無人の自動観測システムであり、「視程」や「雲量」の観測は行っていません。これらは気象台などで行われる観測要素です。

8. 📋 過去問チャレンジ(3問)

【第47回 平成27年度第1回試験 専門知識】

雲の分類と特徴に関する以下の(a)〜(c)の記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。
(a) 巻積雲、高積雲、層積雲は、いずれも主に水滴からなる雲である。
(b) 乱層雲は、厚い雲層から連続的な雨または雪を降らせることが多い。
(c) 積乱雲は、強い上昇気流によって垂直に著しく発達し、雷や突風を伴う。

① (a)誤 (b)正 (c)正
② (a)正 (b)誤 (c)正
③ (a)正 (b)正 (c)誤
④ (a)誤 (b)誤 (c)正

💡 解答・解説

正解:①
(a)は誤りです。巻積雲は高度5000m以上の上層雲であり、主に「氷晶(氷の粒)」からなります。高積雲や層積雲は主に水滴です。(b)と(c)は正しい記述です。

【第50回 平成29年度第1回試験 専門知識】

視程と大気混濁現象に関する記述として正しいものを選べ。
① もやと煙霧は、ともに視程が1km未満になる現象である。
② 霧は、相対湿度が概ね75%未満の乾いた状態で微小な水滴が浮遊する現象である。
③ 昼間の視程とは、目標物をはっきりと認知できる最大距離のことである。
④ 濃霧注意報は、視程が10km未満になると予想される場合に発表される。

💡 解答・解説

正解:③
①は誤り(もやと煙霧は視程1km以上10km未満)。②は誤り(霧は水滴であり相対湿度はほぼ100%)。④は誤り(濃霧注意報の目安は陸上で視程100m未満など)。③の視程の定義が正解です。

【第52回 平成30年度第1回試験 専門知識】

地域気象観測システム(アメダス)に関する記述として適切なものはどれか。
① アメダスは全国約10,000か所に設置され、1時間ごとにデータを送信している。
② アメダスでは、大気現象(雷や竜巻など)の目視観測も自動化システムを用いて行っている。
③ アメダスのすべての観測所で、日照時間の観測が行われている。
④ 全国約1300か所のうち、風向・風速、気温、日照時間も観測しているのは約840か所であり、積雪深の観測は一部の観測所のみで行われている。

💡 解答・解説

正解:④
①は誤り(約1300か所で10分ごと)。②は誤り(アメダスは目視観測や大気現象の観測はしません)。③は誤り(降水量のみの観測所が約500か所あります)。④が正しい設置状況の説明です。

9. まとめ

重要項目一覧:

  • 日照時間:直達日射量が 120W/m² 以上の時間。
  • 全天日射量:直達日射量 + 散乱日射量。
  • 視程の分類:霧(1km未満)、もや(1km〜10km未満・湿潤)、煙霧(10km未満・乾燥)。
  • 天気の雲量:快晴(0〜1)、晴れ(2〜8)、曇り(9〜10)。
  • 有義波高:高い方から上位1/3の波の平均の高さ。
  • アメダス:約1300か所(降水)、約840か所(4要素)。10分間隔で自動観測。視程・雲量・大気現象は観測しない。

難易度:★★☆☆☆(分類の境界値や定義を正確に覚えれば得点源になります!)

この記事について

気象予報士試験の合格を目指す方のために、専門知識を初学者向けにわかりやすく解説しています。一緒に合格を目指しましょう!

【気象予報士試験講義No.12】地上気象観測の知識②|日照・視程・雲・大気現象・海上観測・アメダスをゼロから学ぼう!

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