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【例題】
「成層圏・中間圏の大規模運動に関する記述として正しいものはどれか。
ア. 成層圏では夏冬を問わず西風(偏西風)が卓越する
イ. 成層圏突然昇温は北半球の夏季に起こりやすく、極渦が強化される
ウ. 準2年周期振動(QBO)は赤道付近の成層圏で東西風が約26ヶ月周期で交互に入れ替わる現象である
エ. オゾンホールは北極上空の夏季に発生し、フロン類とは無関係である」
今回は対流圏より上の世界、成層圏(高度約10〜50km)と中間圏(約50〜80km)・熱圏の大規模運動を学びます。気温の高度分布、東西風の季節変化(夏は東風・冬は西風)、成層圏突然昇温(SSW)、準2年周期振動(QBO)、オゾン層の化学とオゾンホールのメカニズムまで、気象予報士試験の最高難度テーマをわかりやすく解説します。
目次
- 成層圏・中間圏・熱圏の気温分布
- 成層圏の東西風(夏季東風・冬季西風)と極夜ジェット
- 成層圏突然昇温(SSW)のメカニズム
- 準2年周期振動(QBO)
- オゾン層の生成・破壊の化学
- フロン類によるオゾン破壊
- オゾンホールの発生メカニズム(南極・北極)
- 理解チェックテスト(5問)
- 過去問チャレンジ(3問)
- まとめ
1. 成層圏・中間圏・熱圏の気温分布
- 対流圏(地表〜約10km):高度が上がるほど気温が下がる(対流不安定)
- 成層圏(約10〜50km):高度が上がるほど気温が上がる(対流安定)→ オゾンが紫外線を吸収して加熱されるため
- 対流圏界面(圏界面):最も気温が低い(約−60℃)、「コールドトラップ」とも呼ばれる
- 成層圏界面(成層圏の上端):約50km、気温が最も高い(約0℃)
- 中間圏(約50〜80km):高度が上がるほど気温が低下
- 中間圏界面:約80km、気温が最も低い(約−80℃)
- 熱圏(80km以上):紫外線・X線の吸収により急激に温度上昇(数百〜千℃以上)
📌 高さと気温の関係のポイント
| 高度帯 | 高度範囲 | 気温変化 | 主要加熱源 |
|---|---|---|---|
| 対流圏 | 0〜10km | 上昇→気温低下 | 地表からの熱 |
| 成層圏 | 10〜50km | 上昇→気温上昇 | オゾンによる紫外線吸収 |
| 中間圏 | 50〜80km | 上昇→気温低下 | (加熱源なし) |
| 熱圏 | 80km〜 | 上昇→急激に温度上昇 | UV・X線吸収 |
2. 成層圏の東西風(夏季東風・冬季西風)と極夜ジェット
- 対流圏:偏西風(西風)が卓越(特に30°N/S付近の亜熱帯ジェット)
-
成層圏(高度20〜90km):
- 夏季:東風(東から西へ)卓越
- 冬季:西風(西から東へ)卓越
- ※対流圏の偏西風とは季節ごとに逆転する関係
- 極夜ジェット(Polar Night Jet):冬半球の高緯度に形成される強い西風ジェット(極渦に伴う)
- 高度90km以上では再び逆転(夏季西風・冬季東風)
3. 成層圏突然昇温(SSW: Sudden Stratospheric Warming)
- 定義:冬季の極成層圏において、数日以内に10℃以上もの急激な昇温が生じる現象
- 発生時期:北半球の冬季(12〜2月頃)に主に発生。南半球ではまれ
-
メカニズム:
- 対流圏の惑星波(プラネタリー波・ロスビー波)が成層圏に伝播・侵入
- 成層圏内で惑星波が砕波(breaking)
- 砕波によって残留循環が強化→極成層圏の気温が急激に上昇(昇温)
- 同時に極渦が弱化・分裂する
- 北半球で多い理由:北半球は地形の凸凹(山脈・大陸配置)が多く、惑星波が発生しやすい
- 影響:SSW後、偏西風の変調が対流圏にも影響→異常気象につながることがある
📌 成層圏突然昇温(SSW)のポイント
冬季の北半球で発生しやすい。惑星波の砕波が原因で、極成層圏が急激に昇温し、極渦が弱化・分裂する。
4. 準2年周期振動(QBO: Quasi-Biennial Oscillation)
- 定義:赤道付近の成層圏(高度20〜30km)で、東西風が約26ヶ月(約2年2ヶ月)の周期で東風↔西風と交互に入れ替わる現象
- 発生場所:赤道付近(低緯度)の成層圏
- 周期:約26〜28ヶ月(約2年)
- メカニズム:対流圏で発生した重力波・赤道波が成層圏に伝播し、波と平均流の相互作用によって生じる
- 気候への影響:モンスーン・熱帯低気圧活動・北極振動などに影響する
📝 QBOの覚え方:赤道・成層圏・約26ヶ月・東風↔西風
5. オゾン層の生成・破壊の化学
- オゾン(O₃):酸素原子3個からなる分子。上部成層圏(高度約15〜50km、最大は約25km)に集中
-
生成(Chapman反応):
- UV(波長240nm以下)がO₂を分解 → 2つの酸素原子O
- O + O₂ → O₃(オゾン生成)
-
破壊(自然):
- UV(波長240〜310nm)がO₃を分解 → O₂ + O
- これにより紫外線を吸収し、地球上の生物を保護
-
紫外線の種類:
- UV-C(〜280nm):成層圏でほぼ完全に吸収
- UV-B(280〜315nm):一部吸収
- UV-A(315〜400nm):ほとんど吸収されない
6. フロン類によるオゾン破壊
- フロン(CFC:クロロフルオロカーボン):冷蔵庫・エアコンの冷媒、スプレーとして使用された
- 特性:非常に安定(対流圏では分解されにくい)→ 成層圏まで輸送される
-
破壊メカニズム:
- 成層圏(高度40km付近)でUVによりCFCが分解 → 塩素原子Cl遊離
- Cl + O₃ → ClO + O₂(オゾン破壊)
- ClO + O → Cl + O₂(塩素が再生)→ 連鎖反応で繰り返しO₃を破壊
- 1個のCl原子で数万〜数十万個のO₃を破壊
- 代替フロン(HCFC、HFC):オゾン破壊能力は小さいが、温室効果ガス
7. オゾンホールの発生メカニズム(南極・北極)
- オゾンホール:南極上空のオゾン全量が著しく減少する現象(春季=9〜10月)
-
発生プロセス:
- 極夜(冬季):南極上空で極渦(Polar Vortex)が発達。外部との空気混合が遮断
- 極渦内の温度が極めて低くなる(−78℃以下)→ 極成層圏雲(PSC: Polar Stratospheric Clouds)形成
- PSC表面上で塩素が活性化される(不均一反応)
- 春季に太陽光が当たり始める(9〜10月)→ 活性塩素がUVで分解 → 連鎖反応的にO₃を破壊
- オゾンホール形成
- 南極で顕著な理由:極渦が強く安定している(陸地が少なく地形効果が弱い→惑星波が少ない→SSWが起きにくい)
- 北極では軽微な理由:極渦が弱く不安定(山脈・大陸の影響で惑星波が多い)→気温が南極ほど低下しない→PSCが少ない
- モントリオール議定書(1987年):フロン類の生産・使用を規制 → 回復傾向に
📌 南極・北極オゾンホールの比較
| 項目 | 南極(南半球) | 北極(北半球) |
|---|---|---|
| 極渦の強さ | 強い・安定 | 弱い・不安定(惑星波による) |
| SSWの頻度 | まれ | 多い |
| 極成層圏雲 (PSC) | 発生しやすい(極低温) | 発生しにくい |
| オゾンホール | 非常に顕著(春季 9〜10月) | 小規模・限定的 |
8. 📋 理解チェックテスト(5問)
【問1】(冒頭例題再掲)
「成層圏・中間圏の大規模運動に関する記述として正しいものはどれか。
ア. 成層圏では夏冬を問わず西風(偏西風)が卓越する
イ. 成層圏突然昇温は北半球の夏季に起こりやすく、極渦が強化される
ウ. 準2年周期振動(QBO)は赤道付近の成層圏で東西風が約26ヶ月周期で交互に入れ替わる現象である
エ. オゾンホールは北極上空の夏季に発生し、フロン類とは無関係である」
✅ 問1の解答・解説
正解:ウ(QBOは赤道付近の成層圏で約26ヶ月周期の東西風の入れ替わり)
【問2】成層圏の気温分布について正しいものはどれか。
ア. 成層圏は高さが増すほど気温が低下する層である
イ. 圏界面(対流圏と成層圏の境界)では気温が最も高くなる
ウ. オゾン層が紫外線を吸収することで成層圏の上部ほど気温が高くなる
エ. 中間圏では高さが増すほど気温が上昇する
💡 解答・解説
正解:ウ(成層圏はオゾンの紫外線吸収により上部ほど高温。ア誤(逆)、イ誤(圏界面は最低温)、エ誤(中間圏は高度上昇→気温低下))
【問3】成層圏突然昇温(SSW)に関する記述として正しいものはどれか。
ア. 北半球の夏季に主に発生し、対流圏の地形効果とは無関係である
イ. 南半球のほうが北半球より頻繁に発生する
ウ. 惑星波が成層圏内で砕波することで残留循環が強化され、極成層圏が急激に昇温する
エ. SSW発生時には極渦が強化・拡大する
💡 解答・解説
正解:ウ(惑星波の砕波→残留循環強化→極昇温。ア誤(冬季に発生)、イ誤(北半球で多い)、エ誤(極渦は弱化・分裂))
【問4】フロン類によるオゾン破壊について正しいものはどれか。
ア. フロンは対流圏で紫外線により分解されるため、成層圏には達しない
イ. フロンから遊離した塩素1個は1個のオゾン分子のみを破壊する
ウ. フロン(CFC)は非常に安定した分子で対流圏では分解されにくく、成層圏まで輸送されてから紫外線で分解される
エ. フロンによるオゾン破壊は紫外線がなくても常温で起こる
💡 解答・解説
正解:ウ(CFCは安定→成層圏で紫外線分解→Cl遊離→連鎖的O₃破壊)
【問5】南極オゾンホールが北極より顕著な理由として正しいものはどれか。
ア. 南極は北極より海面水温が高く、水蒸気量が多いため化学反応が促進される
イ. 南極の極渦は北極より強く安定しており、極成層圏の温度が非常に低くなりPSCが形成されやすい
ウ. 南極は北極より太陽放射が強く、オゾンの光分解が進むため
エ. 南極は北極より人間活動が多く、フロン排出量が多いため
💡 解答・解説
正解:イ(南極は極渦が強安定→超低温→PSC形成→塩素活性化→O₃大量破壊)
9. 📋 過去問チャレンジ(3問)
【過去問1】
「成層圏・中間圏の気温・風分布に関する記述(a〜d)の正誤の組み合わせとして正しいものを選べ。
a. 成層圏では高度が上がるにつれて気温が上昇し、これはオゾン層が紫外線を吸収するためである。
b. 成層圏の東西風は夏季に西風、冬季に東風が卓越する。
c. 準2年周期振動(QBO)は赤道付近の成層圏で東西風の向きが約26ヶ月の周期で交互に切り替わる現象である。
d. 成層圏突然昇温(SSW)は北半球の冬季に起こりやすく、惑星波の砕波によって生じる。
①a=正 b=正 c=正 d=正、②a=正 b=誤 c=正 d=正、③a=誤 b=正 c=正 d=誤、④a=正 b=正 c=誤 d=正」
💡 解答・解説
正解:②(bが誤り。成層圏は夏季に東風・冬季に西風が卓越)
【過去問2】
「オゾン層とオゾンホールに関する記述(a〜d)の正誤の組み合わせとして正しいものを選べ。
a. オゾン層は主に成層圏(高度約15〜50km)に存在し、有害な紫外線を吸収して地球上の生物を保護している。
b.
南極のオゾンホールは北極に比べて顕著であり、その主な理由は南極の極渦が強く安定しているため、極成層圏の温度が非常に低くなりPSCが形成されやすいことである。
c. フロン(CFC)は対流圏でも容易に分解されるため、成層圏への到達量は少ない。
d. 塩素1個が連鎖反応を通じて多数のオゾン分子を破壊することができる。
①a=正 b=正 c=正 d=正、②a=正 b=正 c=誤 d=正、③a=誤 b=正 c=誤 d=誤、④a=正 b=誤 c=正 d=誤」
💡 解答・解説
正解:②(cが誤り。CFCは対流圏で分解されにくく安定しているため成層圏に到達する)
【過去問3】
「成層圏突然昇温(SSW)に関する記述(a〜d)の正誤の組み合わせとして正しいものを選べ。
a. SSWは北半球の冬季に多く発生し、南半球ではまれである。
b. SSWの主な原因は、対流圏で発生した惑星波(プラネタリー波)が成層圏に伝播し砕波することによる。
c. SSWが発生すると極渦が強化され、北極周辺の成層圏気温がさらに低下する。
d.
北半球の方が南半球よりSSWが多い理由は、北半球には山脈や大陸配置など地形の凸凹が多く、惑星波が発生しやすいためである。
①a=正 b=正 c=正 d=正、②a=正 b=正 c=誤 d=正、③a=正 b=誤 c=正 d=誤、④a=誤 b=正 c=誤 d=正」
💡 解答・解説
正解:②(cが誤り。SSW発生時は極渦が弱化・分裂し、気温は上昇(昇温)する)
10. この章のまとめ
重要項目一覧:
- 気温分布:対流圏(気温↓)→圏界面(最低温)→成層圏(気温↑)→成層圏界面(最高温)→中間圏(気温↓)→中間圏界面(最低温)→熱圏(急激に↑)
- 成層圏の加熱源:オゾンによる紫外線吸収
- 東西風:成層圏では夏季東風・冬季西風(対流圏と逆の関係)
- 極夜ジェット:冬半球高緯度の強い西風
- SSW:冬季・北半球で多発、惑星波砕波→残留循環強化→極昇温→極渦弱化
- QBO:赤道付近の成層圏、東西風が約26ヶ月周期で交互に入れ替わる
- オゾン生成:UV(λ<240nm)でO₂分解→O+O₂→O₃
- フロン(CFC):対流圏で安定→成層圏でUV分解→Cl遊離→連鎖反応でO₃破壊
- オゾンホール:南極春季(9〜10月)に顕著、極渦強→超低温→PSC形成→塩素活性化
- 北極でオゾンホール軽微な理由:極渦が弱い(地形効果で惑星波多→SSW頻発→低温になりにくい)
- モントリオール議定書(1987年):フロン規制→回復傾向
難易度:★★★★★(SSW・QBO・オゾンホールは試験最頻出!)
この記事について
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