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【例題】
「風の観測および定義に関する記述として正しいものはどれか。
ア. 瞬間風速は、観測時刻前10分間の風速の平均値のことである。
イ. 気象庁の天気予報で用いられる「強風」とは、平均風速が10m/s以上の風のことである。
ウ. 地上気象観測における風速計の標準的な設置高度は、地上1.5mである。
エ. ビューフォート風力階級は、風速を0から10までの11階級に分類したものである。」
気象予報士試験の「専門知識」科目において、観測の基礎となる第1章は最も重要な土台です。前編では、観測のベースとなる気温、風、降水、湿度、気圧の観測基準や定義、機器の仕組みについて学びます。細かい数字(高度や風速の基準など)が試験で頻出するため、正確に暗記していきましょう!
目次
- 地上気象観測の概要
- 気温の観測
- 風の観測
- 降水量・積雪の観測
- 相対湿度・露点温度の観測
- 地上気圧の観測
- 理解チェックテスト(5問)
- 過去問チャレンジ(3問)
- まとめ
1. 地上気象観測の概要
- 目的:天気予報の作成、防災情報の発表、気候変動の監視、国際的な航空気象の安全確保など、多岐にわたります。
- 観測要素:気温、風向・風速、降水量、積雪深、湿度、気圧、日照・日射、視程、雲、大気現象、海面状態。
- WMO(世界気象機関)が、世界中で統一されたデータを利用できるように観測基準(機器の設置高度など)を厳格に規定しています。
- 地上気象観測の水平解像度:局地スケール(数km)からメソスケール(数十km)にかけての現象を捉えることを目的としています。
💡 観測データの共有
各国の観測データは「国際気象通報式(SYNOP:シノップ)」と呼ばれる世界共通のフォーマットに変換され、全球通信システム(GTS)を通じて世界中にリアルタイムで共有されます。
2. 気温の観測
▲ 気温観測の概要(百葉箱の設置・温度計の種類・最高最低気温の時間変化)
- 観測高度:WMOの規定では地上1.25〜2.0mですが、日本(気象庁)は地上1.5mを標準としています。
- 百葉箱(スティーブンソンスクリーン):白色で塗られ、ルーバー(よろい戸)構造になっています。これにより直射日光や雨雪を遮りつつ、風通し(通風)を確保して正確な気温を測ります。
- 温度計の種類:ガラス製棒状温度計、バイメタル温度計(金属の熱膨張差を利用した自記温度計)、白金抵抗温度計(電気式で現在のアメダス等で主流)があります。
【最高気温・最低気温の定義】
- 天気予報での「最高気温」:午前0時〜24時ではなく、当日の日中(午前9時〜午後6時など、通常は正午〜翌日正午に近い考え方ですが、予報用語としては当日の日中の最高値)を指します。
- 統計上の「日最高気温」:0時〜24時までのうちの最高値。
- 日最低気温:一般的に放射冷却が進む日の出直前に出現しやすい特徴があります。
- 日本の記録:最高気温は 41.1°C(2020年8月 浜松市など)、最低気温は -41.0°C(1902年1月 旭川市)です。
- 気温の日較差(1日の最高と最低の差):海より陸(内陸)で大きく、曇天時より晴天時に大きくなります。
- 近年の温暖化傾向:地球温暖化に加えて、都市化によるヒートアイランド現象の影響も加わっています。
💡 気温の変化要因と温度換算
気温は「放射収支」「移流(暖かい/冷たい空気の流入)」「非断熱過程(潜熱など)」「フェーン現象」によって変化します。
- 華氏換算:°F = °C × 9/5 + 32
- 絶対温度換算:K = °C + 273.15
3. 風の観測
▲ 風の観測機器とビューフォート風力階級
- 風向:北から時計回りに16方位(N, NNE, NE…)で表します。風速が0.2m/s未満の場合は「静穏(Calm)」とします。
- 風速計の種類:風杯型(お椀が回転するタイプ)、風車型、超音波式(現在のアメダスで採用、可動部がなく寒冷地にも強い)など。
- 設置高度:WMOの基準に従い、地上10mが標準です。
【風速の3つの定義(試験頻出!)】
- 平均風速:観測時刻の前10分間の平均値。(単に「風速」という場合はこれを指します)
- 最大風速:観測期間中の、10分間平均風速の最大値。
-
瞬間風速:0.25秒(または3秒)というごく短時間の平均値。
※最大瞬間風速は平均風速の約1.5〜3倍になることが一般的です。
ビューフォート風力階級表(Beaufort Scale)
風の強さを目視などで判定するための0〜12の13段階の階級です。風速32.7m/s以上が最大の階級12となります。
| 階級 | 風速範囲(m/s) | 名称(状態) |
|---|---|---|
| 0 | < 0.3 | 静穏(煙がまっすぐ上に昇る) |
| 1 | 0.3 – 1.5 | 軽風(煙はなびくが風向計は動かない) |
| 2 | 1.6 – 3.3 | 軽風(顔に風を感じる。木の葉が動く) |
| 3 | 3.4 – 5.4 | 軟風(木の葉や細い枝がたえず動く) |
| 4 | 5.5 – 7.9 | 和風(砂埃がたち、小枝が動く) |
| 5 | 8.0 – 10.7 | 疾風(葉の茂った木が揺れる) |
| 6 | 10.8 – 13.8 | 雄風(大枝が揺れる。電線が鳴る) |
| 7 | 13.9 – 17.1 | 強風(樹木全体が揺れる。風に向かって歩きにくい) |
| 8 | 17.2 – 20.7 | 疾強風(小枝が折れる。風に向かって歩けない) |
| 9 | 20.8 – 24.4 | 大強風(瓦が飛ぶなどの被害が出始める) |
| 10 | 24.5 – 28.4 | 全強風(樹木が根こぎになる。家屋に大きな被害) |
| 11 | 28.5 – 32.6 | 暴風(極めてまれ。重大な被害) |
| 12 | ≥ 32.7 | 颶風(ハリケーン。破壊的な被害) |
💡 用語の使い分け(強風・暴風・突風)
- 強風:平均風速 10m/s以上(天気予報基準)、または 15m/s以上(気象情報基準)。
- 暴風:平均風速 25m/s以上(または最大瞬間風速35m/s以上)。
- 突風:竜巻やダウンバースト、ガストフロントなどに伴う短時間の激しい風。
- ※飛行場の風観測:航空機の離着陸の安全確保のため、風は「滑走路に沿った方向」と「直角な方向(横風)」に分けて観測・報告されます。
4. 降水量・積雪の観測
▲ 降水量の観測(転倒升型雨量計の仕組みと降水強度分類)
- 降水量の単位:mm(ミリメートル)。降った雨がどこにも流れ去らずに平らな場所に溜まった時の深さです(1m²に1mmの雨=1リットルの水)。
- 降水強度:1時間あたりに換算した降水量(mm/h)。
- 転倒升(てんとうます)型雨量計:日本で広く使われています。漏斗で受けた雨水が内部の「升」に溜まり、0.5mm分溜まるごとにシーソーのように転倒し、その回数を電気信号でカウントする仕組みです。
- 設置環境:受水口の上端が地面から30〜50cmになるように設置します。周囲の障害物からは、その障害物の高さの2倍以上の距離を離す必要があります(風の乱れによる誤差を防ぐため)。
【降水強度の分類(試験で頻出)】
- 小雨 < 1 mm/h (※1mm未満)
- 並雨 1 〜 10 mm/h未満
- 強い雨 20 mm/h以上 30 mm/h未満(どしゃ降り)
- 激しい雨 30 mm/h以上 50 mm/h未満(バケツをひっくり返したよう)
- 非常に激しい雨 50 mm/h以上 80 mm/h未満(滝のように降る)
- 猛烈な雨 80 mm/h以上(息苦しくなるような圧迫感)
※1時間50mm以上になると、マンホールから水が噴出したり土砂崩れや都市型水害の危険が急増します。
- 降水粒子の種類:rain (雨)、drizzle (霧雨:直径0.5mm未満)、snow (雪)、sleet (みぞれ:雨と雪が混ざったもの)、hail (ひょう:直径5mm以上の氷の粒)、graupel (あられ:直径5mm未満の氷の粒)。
- 観測発表時刻:降水量のデータは毎正時(00分)を基準とします。アメダスでは10分ごとのデータも提供されます。
- 積雪の観測:超音波式またはレーザー式の積雪計を用いて「積雪深(現在の雪の深さ)」や「新積雪(過去24時間に新たに積もった雪の量)」を観測します。
5. 相対湿度・露点温度の観測
-
相対湿度(RH):現在の空気中の水蒸気量(水蒸気圧)が、その気温での飽和水蒸気量(飽和水蒸気圧)に対して何%にあたるかを示した値です。
公式 RH = (現在の水蒸気圧 / 飽和水蒸気圧) × 100% - アスマン通風乾湿計:正確な湿度を測る機器です。「乾球温度計(通常の気温)」と「湿球温度計(水で湿らせたガーゼを巻いたもの)」の2つを備え、一定の風を送って測ります。水が蒸発する際の気化熱で湿球の温度が下がるため、この「乾湿差」から換算表を用いて相対湿度を求めます。
- 露点温度:空気を冷やしていき、水蒸気が結露し始める(相対湿度が100%になる)温度のことです。露点温度と気温が等しいとき、湿度は100%になります。
6. 地上気圧の観測
▲ アスマン通風乾湿計・トリチェリーの実験・気圧の海面更正
- 気圧の単位:hPa(ヘクトパスカル)。1hPa = 100Paです。
- 標準大気圧:1013.25 hPa。これは 1気圧(1 atm)や 760 mmHg と等しい値です。
- トリチェリーの実験:一端を閉じた約1mのガラス管に水銀を満たして逆さに立てると、水銀柱は約760mmの高さで止まり、上部には真空(トリチェリーの真空)ができるという実験です。これが気圧計の原理です。
- 気圧計の種類:真空の金属容器のへこみ具合を利用するアネロイド気圧計、精度が非常に高い水銀気圧計、シリコンなどの歪みを電気信号に変える電気式気圧計(アメダスで使用)があります。
【気圧の海面更正(超重要!)】
気象観測では、山の上の観測所と海辺の観測所の気圧をそのまま比較することはできません(高度が高いほど気圧が下がるため)。そこで、すべての観測所の気圧を海面(標高0m)での値に仮想的に引き直す作業を行います。
・これを「気圧の海面更正」と呼び、更正された値を「海面更正気圧」といいます。
・補正する量は、観測所の「高度」「気温」「湿度」などを考慮して計算されます(温度が高いと空気の密度が小さくなるため補正量が変わります)。
7. 📋 理解チェックテスト(5問)
【問1】
気温観測について正しい記述はどれか。
ア. 日本気象庁における気温の標準的な観測高度は地上10mである。
イ. 日最低気温は一般的に、日中の日射が最も弱くなる午後3時頃に記録されやすい。
ウ. 百葉箱は日射を防ぐために黒色に塗られ、風を通さない密閉構造になっている。
エ. 天気予報における「最高気温」は、0時から24時の間の最高値ではなく、主に日中の最高値を指している。
💡 解答・解説
正解:エ
アは誤り(気温の観測高度は地上1.5m。10mは風速)。イは誤り(日最低気温は日の出直前が多い)。ウは誤り(百葉箱は熱を吸収しにくい白色で、通風を確保するルーバー構造)。エが正しい記述です。
【問2】
ビューフォート風力階級において、最も大きい階級12(颶風:ハリケーン)の風速の基準として正しいものはどれか。
ア. 10.0 m/s 以上
イ. 15.0 m/s 以上
ウ. 25.0 m/s 以上
エ. 32.7 m/s 以上
💡 解答・解説
正解:エ
ビューフォート風力階級12は、風速 32.7 m/s
以上と定義されています。なお、25.0m/s以上は天気予報等の用語で「暴風」の基準となります。
【問3】
風の定義に関する次の文のうち、誤っているものはどれか。
ア. 「平均風速」とは、観測時刻の直前10分間の風速の平均値のことである。
イ. 「最大風速」とは、観測期間内における10分間平均風速の最大値のことである。
ウ. 「瞬間風速」とは、0.25秒や3秒などごく短時間の風速の平均値である。
エ. 一般的に、最大風速は最大瞬間風速の1.5倍から3倍程度になることが多い。
💡 解答・解説
正解:エ
エは関係が逆です。「瞬間風速」の方が平均風速よりも大きくなります。正しくは「最大瞬間風速は、最大風速(10分間平均)の1.5〜3倍程度になることが多い」です。
【問4】
降水量の観測について正しい記述はどれか。
ア. 転倒升型雨量計は、雨が10mm溜まるごとに升が転倒して計測する仕組みである。
イ. 気象情報の用語で「非常に激しい雨」とは、1時間雨量が50mm以上80mm未満の降水を指す。
ウ. 雨量計は周囲の障害物の影響を受けにくいため、建物のすぐそばに設置することが推奨されている。
エ. 降水量は体積(ミリリットル)の単位で発表される。
💡 解答・解説
正解:イ
アは誤り(一般的な転倒升は0.5mmごとに転倒します)。ウは誤り(障害物の高さの2倍以上離す必要があります)。エは誤り(降水量は深さである「mm」で表します)。イの強雨分類は試験頻出です!
【問5】
気圧の海面更正について正しいものはどれか。
ア. 海面更正とは、船上で観測した気圧を陸上の気圧に補正することである。
イ. 標高が高い観測所で測った気圧は、海面更正を行うと元の値よりも小さくなる。
ウ. 海面更正の計算には、観測所の高度や気温などが用いられる。
エ. 海面更正気圧は、常に標準大気圧である1013.25hPaになるように補正される。
💡 解答・解説
正解:ウ
海面更正とは、標高の異なる観測地点の気圧を比較するため、海面(標高0m)での気圧に換算することです。上空ほど気圧は下がるため、標高が高い場所の気圧を標高0mに換算すると、値は「大きく」なります(イは誤り)。計算には高度や気温が必要です(ウが正解)。
8. 📋 過去問チャレンジ(3問)
【第44回 平成24年度第1回試験 専門知識】
気温の観測に関する記述として誤っているものを選べ。
① 日本の気象庁が地上気象観測で標準としている気温計の高さは、地上1.5mである。
② 気温の日較差は、一般に内陸部よりも沿岸部の方が小さくなる。
③ 統計上の日最高気温は、午前0時から24時までの間の最高値として定義される。
④ 百葉箱の内部は、放射冷却を防ぐために風を通さない密閉構造となっている。
💡 解答・解説
正解:④
百葉箱は風通しを良くして外気と同じ温度を測るために、よろい戸(ルーバー)構造になっています。密閉構造ではありません。
【第48回 平成28年度第1回試験 専門知識】
風の観測に関する記述として正しいものはどれか。
① 瞬間風速は、10分間の風速の平均値である。
② 航空機の運航のために飛行場で行われる風の観測では、滑走路に直角な方向の風(横風)は考慮されない。
③ 強風注意報の基準となる風は、一般に「平均風速」を用いて判断される。
④ 地上気象観測において、風速計は地上1.5mの高さに設置することがWMOにより定められている。
💡 解答・解説
正解:③
①は誤り(10分平均は「平均風速」です)。②は誤り(横風は離着陸の安全に直結するため極めて重要です)。③が正しい記述です。④は誤り(風速計の標準高度は地上10mです。1.5mは温度計)。
【第51回 平成29年度第2回試験 専門知識】
降水量の観測に関する記述として正しいものを選べ。
① 雨量計の受水口は、風の影響を完全に無くすため、建物の壁に密着させて設置する。
② 転倒升型雨量計は、升に一定量(通常0.5mm)の雨水が溜まるごとに升が転倒して計測する仕組みである。
③ 「非常に激しい雨」とは、1時間降水量が30mm以上50mm未満の雨のことである。
④ 降水量は、1平方メートルあたりに降った雨の体積(リットル)をそのままミリリットルの単位で記録する。
💡 解答・解説
正解:②
①は誤り(障害物の高さの2倍以上離す)。③は誤り(30〜50mmは「激しい雨」であり、「非常に激しい雨」は50〜80mm)。④は誤り(体積ではなく、深さの「mm」で記録します)。転倒升型雨量計の仕組みを述べた②が正解です。
9. まとめ
重要項目一覧:
- 設置高度:温度計・湿度計は地上 1.5m、風速計は地上 10m。
- 風速の定義:平均風速=前10分間の平均。瞬間風速=3秒などの超短時間平均。
- 風の強さ:強風=10m/s以上(予報)または15m/s以上(情報)、暴風=25m/s以上。
- 降水強度:強い雨(20mm/h〜)、激しい雨(30mm/h〜)、非常に激しい雨(50mm/h〜)、猛烈な雨(80mm/h〜)。
- 気圧と海面更正:標準大気圧=1013.25hPa。標高の違いを補正して海面(0m)の気圧に換算するのが海面更正。
- 湿度:アスマン通風乾湿計を用いて、乾球と湿球の温度差から相対湿度を算出。
難易度:★★☆☆☆(基本用語と数字の定義を正確にリンクさせましょう!)
この記事について
気象予報士試験の合格を目指す方のために、専門知識を初学者向けにわかりやすく解説しています。一緒に合格を目指しましょう!
