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【例題】
「北半球において、低気圧を取り囲む等圧線に平行に吹く風(地衡風)の向きとして正しいものはどれか。
ア. 低気圧の中心に向かって吹く イ. 低気圧の中心を左手に見ながら吹く ウ.
低気圧の中心を右手に見ながら吹く(反時計回り) エ. 低気圧の中心から外に向かって吹く」
第6章では、大気がどのように動くのかを規定する「力」と「風」について学びます。気圧傾度力・コリオリ力・遠心力・摩擦力という4つの力の働きを理解し、地衡風・傾度風・地上風などの風のバランスを把握することが重要です。さらに温度風・収束発散・渦度・絶対渦度保存則まで、試験に頻出の大気力学の基礎を初学者にもわかりやすく解説します。
目次
- 気圧と気圧傾度(等圧線・高層天気図・気圧傾度)
- 大気に働く力(気圧傾度力・コリオリ力・遠心力・摩擦力)
- 風の種類(地衡風・傾度風・地上風)
- 温度風
- 収束・発散と鉛直流
- 渦度と絶対渦度保存則
- 理解チェックテスト(5問)
- 実際の過去問チャレンジ(3問)
- この章のまとめ
1. 気圧と気圧傾度
等圧線に平行に吹く地衡風と、気圧傾度力・コリオリ力のバランス
気圧と等圧線
気圧(大気圧)とは、空気の重さによる圧力のことです。気圧の単位はhPa(ヘクトパスカル)で、海面気圧の平均値は約1013hPaです。
天気図では、気圧の等しい地点を結んだ線を等圧線(とうあつせん)と呼び、4hPa間隔で引かれます。等圧線の間隔が狭いほど気圧傾度(気圧の変化率)が大きく、強い風が吹きます。
高層天気図と等圧面
地表の天気図(地上天気図)では等圧線を使いますが、高層天気図では特定の気圧面(等圧面)の高度を等高線で示します。高層天気図での等高線は地上天気図の等圧線に対応し、等高線の間隔が狭い(高度の傾きが大きい)ほど風が強くなります。
📌 気圧傾度(気圧傾度力の大きさに関係)
気圧傾度 = 気圧差 / 距離
気圧傾度が大きい(等圧線の間隔が狭い)⇒ 気圧傾度力が大きい ⇒ 強い風
- 等圧線が密 → 気圧傾度大 → 風強い
- 等圧線が疎 → 気圧傾度小 → 風弱い
2. 大気に働く力
気圧傾度力(きあつけいどりょく)
気圧の高いほうから低いほうへ向かって作用する力を気圧傾度力といいます。これが風の「原動力」です。
F_p = – (1/ρ) × (ΔP/Δn)
ρ: 空気密度 ΔP/Δn: 気圧傾度(距離あたりの気圧差)
コリオリ力(転向力)
地球の自転によって生じる見かけの力をコリオリ力(転向力)といいます。
- 北半球では風の進行方向の右向きに作用(右に曲げる力)
- 南半球では風の進行方向の左向きに作用
- コリオリパラメータ: f = 2Ω sinφ(Ω:地球の自転角速度、φ:緯度)
- 赤道(φ=0°)ではf=0でコリオリ力がゼロ、高緯度ほど大きい
- 風速が大きいほど、コリオリ力も大きくなる
- 静止している物体には働かない
遠心力
曲線運動をしている物体に働く見かけの力で、曲率の中心から外側に向かって作用します。傾度風を考えるときに重要です。
遠心力 = V² / r (V:風速、r:等圧線の曲率半径)
摩擦力
地表面との摩擦によって生じる力で、風向と逆方向に作用して風速を弱めます。高度が上がるほど小さくなり、大気境界層(地上から約1~2km)の内側で特に重要です。
📌 4つの力のまとめ
- 気圧傾度力: 高圧→低圧方向(風の原動力)
- コリオリ力: 北半球で進行方向右向き、赤道0・高緯度大
- 遠心力: 曲線の中心から外向き(傾度風で考慮)
- 摩擦力: 風向と逆向き、地上付近のみ重要
3. 風の種類
高気圧(時計回り)と低気圧(反時計回り)の傾度風と、摩擦で変化する地上風
地衡風(ちこうふう)
気圧傾度力とコリオリ力がつり合っているときに吹く風を地衡風といいます。
- 等圧線(等高線)に平行に吹く
- 北半球では低圧側を左手、高圧側を右手に見ながら吹く(反時計回りに囲む)
- ビュイ・バロットの法則:北半球では、風を背にして立つと低気圧は左手方向にある
- 地衡風の速さ: Vg = (1/ρf) × |ΔP/Δn|
📌 ビュイ・バロットの法則
北半球では「風を背にして立つと、低気圧は左手前方にある」
(南半球では右手前方)
傾度風(けいどふう)
等圧線が円形のとき(高気圧・低気圧)に、気圧傾度力・コリオリ力・遠心力がつり合って吹く風を傾度風といいます。
- 低気圧(北半球): 反時計回り(気圧傾度力 = コリオリ力 + 遠心力)
- 高気圧(北半球): 時計回り(気圧傾度力 + 遠心力 = コリオリ力)
- 同じ気圧傾度なら、低気圧の風 < 地衡風 < 高気圧の風(高気圧では超地衡風)
地上風(摩擦風)
地上付近では摩擦力が加わるため、等圧線を横切って低圧側へ斜めに吹きます。
- 北半球の低気圧:反時計回りかつ中心に向かって流れ込む(収束)
- 北半球の高気圧:時計回りかつ外側に吹き出す(発散)
- 地上の風は上空の風より弱く、等圧線に対して角度(30°程度)をもつ
4. 温度風
寒気と暖気の水平温度差によって生じる温度風(地衡風の高度による変化)
温度風(おんどふう)とは、上層の地衡風と下層の地衡風のベクトル差のことです。水平方向の温度差(温度傾度)があると、高度とともに地衡風が変化し、その変化分が温度風となります。
📌 温度風のポイント
- 温度風 = 上層の地衡風 – 下層の地衡風(ベクトル差)
- 温度風は等温線(等厚線)に平行に吹く
- 北半球では寒気を左手、暖気を右手に見て吹く
温度風の特徴
- 水平温度差(南北方向の温度傾度)が大きいほど温度風は強い
- 北半球の中緯度上空に強い偏西風(ジェット気流)が吹くのは、南北の温度差によって生じた強い温度風のため
- 風の順転(時計回り変化):下層から上層に向けて風向が時計回りに変化→暖気移流
- 風の逆転(反時計回り変化):下層から上層に向けて風向が反時計回りに変化→寒気移流
5. 収束・発散と鉛直流
収束(上昇流・雲の発生)、発散(下降流・晴天)と渦度の正・負の関係
収束と発散
空気が集まる現象を収束(しゅうそく)、空気が広がる現象を発散(はっさん)といいます。
- 低気圧の地上付近:収束 → 上昇流 → 雲の発生・降水
- 高気圧の地上付近:発散 → 下降流 → 晴天
発散と収束の鉛直方向への影響(連続の式)
大気は非圧縮性とみなすと、質量保存則から次のような鉛直方向の動きが生まれます:
- 地上で収束 → 上昇流 → 上空で発散
- 地上で発散 → 下降流 → 上空で収束
📝 下層収束・上層発散と低気圧の発達
低気圧が発達するには、下層で収束して上昇流が起き、上空で発散が必要です。
上空(対流圏上部)で強い発散が起こると低気圧が発達(深まる)し、上空で収束が起こると低気圧が衰弱(埋まる)します。
6. 渦度と絶対渦度保存則
渦度(うずど)
空気塊の回転の強さと向きを表す量を渦度(ζ: ゼータ)といいます。
- 正の渦度(正渦度):反時計回りの回転 → 北半球の低気圧に対応(気象学的慣習)
- 負の渦度(負渦度):時計回りの回転 → 北半球の高気圧に対応
- 渦度は水平シア(風速のずれ)や流線の曲率からも生じます
📌 相対渦度と絶対渦度
- 相対渦度(ζ):地球に対する大気の回転
- 惑星渦度(f):地球自転による渦度 = コリオリパラメータ = 2Ω sinφ
- 絶対渦度(η):η = ζ + f(相対渦度 + 惑星渦度)
絶対渦度保存則
摩擦や熱的強制がない場合、空気塊の絶対渦度は保存されます(一定に保たれる)。
η = ζ + f = 一定(保存量)
この法則の重要な応用:
- 空気塊が低緯度から高緯度に移動:f増加 → ζ減少(負渦度増加)→ 反時計回りに曲がる
- 空気塊が高緯度から低緯度に移動:f減少 → ζ増加(正渦度増加)→ 時計回りに曲がる
- 山脈を越えた気流:山脈の東側で正渦度が生じる(低気圧性回転傾向)
📝 ロスビー波との関係
絶対渦度保存則は大気の波動(ロスビー波・プラネタリー波)の成因を説明します。
偏西風が北上すると正渦度を獲得し南に折れ、南下すると負渦度を獲得し北に折れる、という蛇行運動を繰り返します。
7. 理解チェックテスト(5問)
【問1】(冒頭例題再掲)
北半球において、低気圧を取り囲む等圧線に平行に吹く風(地衡風)の向きとして正しいものはどれか。
ア. 低気圧の中心に向かって吹く
イ. 低気圧の中心を左手に見ながら吹く
ウ. 低気圧の中心を右手に見ながら吹く(反時計回り)
エ. 低気圧の中心から外に向かって吹く
✅ 問1の解答・解説
正解:ウ(反時計回り)
解説: 北半球の地衡風は、低気圧(低圧側)を右手に見ながら等圧線に平行に吹きます。これは低気圧の周りを反時計回りに吹くことを意味します。選択肢ウが正解です。気圧傾度力(高→低方向)とコリオリ力(右向き)がつり合うため、等圧線に平行な反時計回りの流れになります。
【問2】
コリオリ力(転向力)に関する記述として正しいものはどれか。
ア. 静止している物体にも働く
イ. 赤道付近で最も大きく、高緯度ほど小さくなる
ウ. 北半球では風の進行方向の右向きに作用する
エ. 風速が大きいほど小さくなる
💡 解答・解説
正解:ウ
解説:コリオリ力は北半球では進行方向の右向きに作用します。①静止物体には働かない(速度に比例)、②赤道でゼロで高緯度ほど大きい(f = 2Ω sinφ)、④風速が大きいほどコリオリ力も大きい(速度に比例)が正しいため、アイエは誤り。
【問3】
絶対渦度保存則において、北半球の空気塊が低緯度から高緯度へ移動した場合の変化として正しいものはどれか。
ア. 惑星渦度が減少し、相対渦度が増加する(低気圧性傾向)
イ. 惑星渦度が増加し、相対渦度が減少する(高気圧性傾向)
ウ. 絶対渦度が減少する
エ. 相対渦度・惑星渦度ともに変化しない
💡 解答・解説
正解:イ
解説:高緯度ほどコリオリパラメータf(=惑星渦度)は大きくなります。絶対渦度(η = ζ + f)が保存されているため、f増加 → ζ(相対渦度)減少(負渦度、高気圧性)になります。
【問4】
温度風に関する記述として誤っているものはどれか。
ア. 温度風は上層の地衡風と下層の地衡風のベクトル差である
イ. 温度風は等温線(等厚線)に平行に吹く
ウ. 北半球の中緯度では温度風の影響でジェット気流が形成される
エ. 温度風は南北の温度差が小さいほど強くなる
💡 解答・解説
正解:エ
解説:温度風は水平温度差(南北温度傾度)が大きいほど強くなります。南北温度差が大きい冬季にジェット気流が強まるのはこのためです。
【問5】
地上付近(大気境界層内)の風の特徴として正しいものはどれか。
ア. 摩擦力がないため、等圧線に完全に平行に吹く
イ. 等圧線を横切って高圧側から低圧側へ吹く
ウ. 上空の地衡風より速い
エ. 低気圧の周りでは時計回りに吹く(北半球)
💡 解答・解説
正解:イ
解説:地上付近では摩擦力が加わるため、等圧線を横切って低圧側(高圧から低圧方向)へ吹き込みます。摩擦により風速は地衡風より弱く(ウは誤)、北半球の低気圧は反時計回りです(エは誤)。
8. 📋 実際の過去問チャレンジ(3問)
【過去問1: 大気に働く力の組み合わせ】
大気の運動に関する記述(a〜c)の正誤の組み合わせとして正しいものを選べ。
a. 気圧傾度力は、気圧の低い方から高い方へ向かって作用する。
b. コリオリ力は、地球の自転によって生じる見かけの力であり、北半球では風向を右へ変える。
c. 地衡風は、気圧傾度力とコリオリ力が釣り合った状態で等圧線に平行に吹く風である。
① a=正 b=正 c=正
② a=正 b=正 c=誤
③ a=誤 b=正 c=正
④ a=誤 b=誤 c=正
💡 解答・解説
正解:③(a=誤 b=正 c=正)
解説:aが誤りです。気圧傾度力は「気圧の高い方から低い方へ」向かって作用します(問題文は逆)。b・cは正しい記述です。
【過去問2: 渦度と絶対渦度保存則】
渦度と大気の運動に関する記述(a〜d)の正誤の組み合わせとして正しいものを選べ。
a. 北半球の低気圧に対応する渦度の符号は正(反時計回り)である。
b. 惑星渦度(コリオリパラメータ)は赤道でゼロ、高緯度で大きい。
c. 絶対渦度保存則では、空気塊が低緯度から高緯度へ移動すると正渦度が増加する。
d. 偏西風の南北蛇行はロスビー波として説明でき、絶対渦度保存則と関係がある。
① a=正 b=正 c=正 d=正
② a=正 b=正 c=誤 d=正
③ a=誤 b=正 c=正 d=誤
④ a=正 b=誤 c=誤 d=正
💡 解答・解説
正解:②(a=正 b=正 c=誤 d=正)
解説:cが誤りです。低緯度→高緯度への移動ではf増加→相対渦度ζ減少(負渦度増加、高気圧性)になります。
【過去問3: 地上風と地衡風の違い】
地上風と上空の地衡風の違いに関する記述(a〜d)の正誤の組み合わせとして正しいものを選べ。
a. 地衡風は等圧線に平行に吹き、気圧傾度力とコリオリ力が釣り合っている。
b. 地上風は摩擦力のため等圧線を横切り、低圧側へ向かって吹く。
c. 北半球では地上低気圧付近で収束が起こり、上昇流を引き起こす。
d. 地上風の速さは一般に地衡風より速い。
① a=正 b=正 c=正 d=正
② a=正 b=正 c=正 d=誤
③ a=正 b=誤 c=正 d=正
④ a=誤 b=正 c=誤 d=誤
💡 解答・解説
正解:②(a=正 b=正 c=正 d=誤)
解説:dが誤りです。地上風は摩擦によって地衡風より「遅く」なります。a・b・cはすべて正しい記述です。
9. この章のまとめ
- 気圧傾度力: 高圧→低圧方向(大きさは気圧差/距離、等圧線の間隔が密ほど強い)
- コリオリ力: 北半球で右向き。f = 2Ω sinφ。赤道でゼロ、高緯度で大。速度に比例。
- 地衡風: 気圧傾度力=コリオリ力。等圧線に平行。北半球では低圧を右に見ながら(反時計回り)。
- ビュイ・バロットの法則: 北半球では風を背にすると低気圧は左前方。
- 傾度風: 円形等圧線で気圧傾度力・コリオリ力・遠心力の3力つり合い。低気圧 < 地衡風 < 高気圧(超地衡風)。
- 地上風: 摩擦力加わり等圧線を横切る。低気圧:地上収束→上昇流。高気圧:地上発散→下降流。
- 温度風: 上・下層地衡風のベクトル差。等温線に平行、北半球は寒気を左に見て吹く。南北温度差大→温度風大→ジェット気流。
- 収束・発散: 地上低気圧→収束→上昇流→雲。上空発散→低気圧発達。
- 渦度: ζ正=反時計回り(低気圧性)、ζ負=時計回り(高気圧性)
- 絶対渦度保存則: η = ζ + f = 一定。低緯→高緯でf増・ζ減(高気圧性)。ロスビー波の基礎。
難易度: ★★★★★(コリオリ力・渦度・保存則は試験最頻出!)
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