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【例題】

「東京(北緯35度)における夏至の日の南中高度角として正しいものはどれか。
ア. 31.5度 イ. 55度 ウ. 78.5度 エ. 90度」

今回は、地球の気象現象すべてのエネルギー源となる「太陽放射」や、地球が放出する「地球放射」について学びます。黒体の法則(ステファン・ボルツマンの法則・ウィーンの変位則)から、温室効果によるエネルギー収支、空が青く見える理由(散乱)まで、大気における放射プロセスを初学者にもわかりやすく解説します。

目次

  • エアロゾルと太陽放射(太陽定数、緯度変化、南中高度角)
  • 黒体放射(ステファン・ボルツマンの法則・ウィーンの変位則・距離の逆2乗則)
  • 放射平衡温度と温室効果(エネルギー収支・温室効果気体・放射対流平衡)
  • アルベドと散乱(アルベド値表・レイリー散乱・ミー散乱・幾何光学的散乱)
  • 理解チェックテスト(5問)
  • 実際の過去問チャレンジ(3問)
  • この章のまとめ

1. エアロゾルと太陽放射

太陽放射と地球のエネルギー収支、南中高度角の概念図

太陽から地球へ降り注ぐ太陽放射エネルギーと緯度・季節による違いのイメージ

太陽定数とは

地球は太陽からエネルギーを受け取っており、それを表したものが太陽定数です。 大気上端で太陽光線に垂直な方向の1m²の面積が1秒間あたりに受ける放射エネルギー量のことで、その値は 1.37kW/m²(= 1370W/m²) となります。

太陽放射の緯度による違いと近日点・遠日点

大気上端が受け取る太陽放射エネルギー量は、緯度によって変化します。年間を通してみると赤道付近(低緯度)が最も多くエネルギーを受け取ります。

また、地球は太陽のまわりを公転していますが、その軌道は完全な円ではなく楕円であるため、季節によって太陽と地球の距離が変わります。

  • 近日点(きんじつてん): 太陽と地球が最も近くなる位置。毎年1月3日頃(北半球の冬至の頃)。
  • 遠日点(えんじつてん): 太陽と地球が最も遠くなる位置。毎年7月3日頃(北半球の夏至の頃)。

このため、実は「北半球の夏至の北極」よりも「南半球の冬至(12月頃)の南極」のほうが、近日点に近い分だけ1日あたりの受取エネルギー量が大きくなります。なお、極地方の夏には1日中太陽が沈まない白夜(びゃくや)となり、冬には太陽が昇らない極夜(きょくや)となります。

📌 南中高度角の求め方

太陽が最も高く昇ったときの高度を南中高度(なんちゅうこうど)といい、その角度を南中高度角(θ)と呼びます。以下の式で求められます。

南中高度角(θ) = 90° − 緯度(φ) + 赤緯(δ)

赤緯(せきい:δ)とは、地球の赤道面と太陽光線のなす角度のことです。

  • 春分・秋分(3/21頃・9/23頃): 0度
  • 夏至(6/22頃): +23.5度
  • 冬至(12/22頃): −23.5度

【例】東京(北緯35度)の南中高度角
・夏至: 90° − 35° + 23.5° = 78.5度
・冬至: 90° − 35° − 23.5° = 31.5度

地表面が受け取るエネルギー量

太陽光線が斜めから差し込むほど、同じエネルギーが広い面積に分散されるため、単位面積あたりの受取量は減少します。地表面が受け取るエネルギー量は、太陽高度角をαとすると 太陽定数 × sinα で表されます。

直達日射量・全天日射量と日傘効果

  • 直達日射量: 散乱や反射されずに直接地表面に届いた太陽光線。
  • 散乱日射量: 大気中の粒で散乱されて地表面に届く光。
  • 全天日射量: 直達日射量と散乱日射量を足したもの。

気象観測において「日照時間」として計測されるのは、120W/m²以上の直達日射量があった時間です。 火山噴火などで空気中にエアロゾルが増加すると、太陽光線が散乱されて直達日射量が減少します。これを日傘効果といい、地表付近の気温低下をもたらします。

2. 黒体放射

黒体放射(ステファン・ボルツマンの法則とウィーンの変位則)の概念図

黒体放射の法則:温度と放射強度・波長の関係

絶対零度(-273℃=0K)でない限り、すべての物体は電磁波(放射エネルギー)を放出しています。入射した電磁波を100%吸収し、かつ最も効率よく放射する理想的な物体を黒体(こくたい)と呼びます。太陽や地球はほぼ黒体とみなすことができます。

ステファン・ボルツマンの法則

黒体の放射強度は、絶対温度の4乗に比例するという法則です。

I = σT⁴

I: 放射強度(W/m²)
σ: ステファン・ボルツマン定数(5.67×10⁻⁸ W/m²・K⁴)
T: 絶対温度(K)

※絶対温度が2倍になれば、放射強度は 2⁴ = 16倍 になります。

ウィーンの変位則

黒体が放射する電磁波のうち、エネルギーが最大となる波長(λmax)は、絶対温度(T)に反比例するという法則です。

λmax = 2897 / T

  • 太陽(表面温度 約6000K): λmax ≈ 0.5μm(可視光線の領域)
  • 地球(表面温度 約300K): λmax ≈ 9.7μm(赤外線の領域)

このように、温度が高い太陽から出る放射(短波放射)と、温度が低い地球から出る放射(長波放射=赤外放射)では、電磁波の波長が大きく異なります。

距離の逆2乗則

放射する物体からの距離が遠くなればなるほど、入射する電磁波のエネルギー量は小さくなります。具体的には、放射強度は距離の2乗に反比例します。(距離が2倍になれば、強度は1/4になります)

3. 放射平衡温度と温室効果

地球のエネルギー収支と温室効果の概念図

地球のエネルギー収支と温室効果による下向き再放射のメカニズム

地球のエネルギー収支

大気上端に入射する太陽放射を「100」とすると、次のような経路をたどります。

  • 30: 雲や地表面で反射され、そのまま宇宙に戻る(プラネタリーアルベド)。
  • 20: 大気などによって吸収される。
  • 50: 大気を透過し、地表面によって吸収される。

地球が受け取るエネルギー(大気20 + 地表50 = 70)と釣り合うように、地球からは70の地球放射が宇宙空間へ放出されており、エネルギーの出入りは等しくなっています。

温室効果

地球表面から放出される地球放射(赤外線)は、そのまま宇宙へ逃げるわけではなく、大部分が地球の大気に吸収されます。この赤外線を吸収する気体を温室効果気体と呼びます。

代表的な温室効果気体には、水蒸気(H₂O)、二酸化炭素(CO₂)、メタン(CH₄)、一酸化二窒素(N₂O)、フロン、オゾン(O₃)などがあります。(※同一分子数で比べた場合、メタンはCO₂の25倍の温室効果を持ちます)

これらの気体は赤外線を吸収した後、上向きだけでなく下向きにも再放射を行います。この下向きの放射によって地表面付近が暖められる現象が温室効果です。

📝 大気の窓領域

地球放射(赤外線)の大部分は大気に吸収されますが、波長が 8〜12μm の領域だけは大気による吸収が弱く、宇宙へ逃げやすくなっています。これを「大気の窓領域」と呼びます。

放射平衡温度と実際の気温

太陽からの入射と地球からの放射が釣り合っている状態の温度を放射平衡温度といい、計算上は 255K(−18℃) となります。しかし、温室効果の働きにより、実際の地表面付近の平均気温は 288K(15℃) に保たれています。

また、放射による熱のやり取りだけで大気の温度分布を考えると、大気は非常に不安定になります。実際には、下層の暖かい空気が上昇し、上層の冷たい空気が下降する「対流」が起こり、気温差を小さくしています。これを放射対流平衡と呼びます。

4. アルベドと散乱

アルベド(反射率)

物体に入射してくる放射量に対して、反射する放射量の比率(%)をアルベドといいます。地球全体で考えた平均のアルベド(プラネタリーアルベド)は約30%です。

地表面の状態 アルベド(%)
新雪 79 〜 95
厚い雲 70 〜 80
旧雪 25 〜 75
砂・砂漠 25 〜 40
裸地・草地・森林地 10 〜 25
海面(高度角25°以上) 10 以下

散乱の3つの種類

散乱の3種類(レイリー散乱・ミー散乱・幾何光学的散乱)の概念図

レイリー散乱(空が青い)、ミー散乱(雲が白い)、幾何光学的散乱(虹)の仕組み

太陽光線が大気中の粒にぶつかって様々な方向に曲がる現象を散乱といい、光の波長と粒子の大きさの関係によって3種類に分けられます。

  • ① レイリー散乱:波長 > 粒子半径
    空気分子(窒素や酸素など)による散乱。散乱光の強度は波長の4乗に反比例(波長が短いほど強く散乱される)します。波長の短い青い光が強く散乱されるため空は青く見え、夕方は大気を通る距離が長くなり青い光が散乱し尽くされて赤い光だけが届くため夕焼けは赤く見えます。
  • ② ミー散乱:波長 ≒ 粒子半径
    雲粒やエアロゾルによる散乱。散乱強度は波長にあまり依存せず、すべての色が均等に散乱されるため、混ざり合って雲は白く見えます(空が白濁する原因)。
  • ③ 幾何光学的散乱:波長 < 粒子半径
    雨粒などの大きな粒子による散乱。雨粒の中で光が屈折・反射することで、光の波長(色)ごとに分光され、虹が見える原因となります。

📝 紫外線の種類

紫外線(UV)は波長によって3種類に分けられます。

  • UV-C (0.1〜0.28μm): 生物への影響が最も大きいが、上空のオゾン等に全て吸収され地表には届かない。
  • UV-B (0.28〜0.315μm): 日焼けの主な原因。大気に吸収されるが、全紫外線の約5%が地表に届く。
  • UV-A (0.315〜0.4μm): 生物への影響は小さい。大気にあまり吸収されず、地表に届く紫外線の約95%を占める。

5. 理解チェックテスト(5問)

【問1】(冒頭例題再掲)

東京(北緯35度)における夏至の日の南中高度角として正しいものはどれか。

ア. 31.5度
イ. 55度
ウ. 78.5度
エ. 90度

✅ 問1の解答・解説

正解:ウ(78.5度)

解説: 南中高度角の公式「90° − 緯度 + 赤緯」を用います。東京の緯度は35度、夏至の赤緯は+23.5度です。
90° − 35° + 23.5° = 78.5度 となります。

【問2】

地球の大気上端で太陽光線に垂直な1m²の面積が1秒間に受ける太陽エネルギー量(太陽定数)はいくらか。

ア. 1.37W/m² イ. 137W/m² ウ. 1.37kW/m² エ. 13.7kW/m²

💡 解答・解説

正解:ウ

解説:太陽定数は 1.37kW/m²(1370W/m²)です。非常に重要な定数ですので正確に覚えておきましょう。

【問3】

ステファン・ボルツマンの法則によれば、黒体の絶対温度が2倍になると放射強度は何倍になるか。

ア. 2倍 イ. 4倍 ウ. 8倍 エ. 16倍

💡 解答・解説

正解:エ

解説:ステファン・ボルツマンの法則(I = σT⁴)により、放射強度は絶対温度の4乗に比例します。したがって、温度が2倍になれば 2⁴ = 16倍 となります。

【問4】

ウィーンの変位則において、表面温度が約6000Kの太陽から放射される電磁波の波長が最大となる領域はどれか。

ア. X線領域 イ. 紫外線領域 ウ. 可視光線領域 エ. 赤外線領域

💡 解答・解説

正解:ウ

解説:太陽(約6000K)のエネルギーが最大となる波長は約0.5μmであり、これは可視光線の領域です。一方、地球(約300K)は約9.7μmで赤外線の領域になります。

【問5】

昼間の空が青く見える理由として最も適切なものはどれか。

ア. レイリー散乱により波長の短い青い光が強く散乱されるため。
イ. ミー散乱によりすべての波長の光が均等に散乱されるため。
ウ. オゾン層が赤い光を吸収するため。
エ. 海の青色が空に反射しているため。

💡 解答・解説

正解:ア

解説:空が青く見えるのは「レイリー散乱」によるものです。空気分子は非常に小さいため、波長の短い青い光ほど強く散乱され、空全体に青い光が広がります。

6. 📋 実際の過去問チャレンジ(3問)

ここでは実際の気象予報士試験(学科一般)から、第5章に関連する過去問の類似問題を掲載します。

【過去問1:黒体放射の法則】

黒体放射に関する次の記述(a〜c)の正誤の組み合わせとして正しいものを選べ。

a. ステファン・ボルツマンの法則によれば、黒体の放射強度はその絶対温度の4乗に比例する。
b. ウィーンの変位則によれば、太陽放射のエネルギーが最大となる波長は約0.5μmであり、可視光線の領域にある。
c. 地球放射は太陽放射に比べて波長が長いため、長波放射と呼ばれる。

① a=正 b=正 c=正
② a=正 b=正 c=誤
③ a=正 b=誤 c=正
④ a=誤 b=正 c=誤

💡 解答・解説

正解:①(a=正 b=正 c=正)

解説:すべて正しい記述です。放射の2大基本法則(ステファン・ボルツマンの法則とウィーンの変位則)、そして短波放射(太陽)と長波放射(地球)の違いは確実に押さえましょう。

【過去問2:地球のエネルギー収支と温室効果】

地球の放射エネルギーに関する次の記述(a〜d)の正誤の組み合わせとして正しいものを選べ。

a. 大気上端に入射する太陽放射量の約30%は、雲や地表面などで反射され宇宙空間に戻っている。
b. 大気に含まれる温室効果気体には、水蒸気、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素などがある。
c. 地球の放射平衡温度を温室効果を考慮せずに計算すると、約288K(15℃)になる。
d. 「大気の窓領域」と呼ばれる波長8〜12μmの赤外線領域は、大気に吸収されにくい。

① a=正 b=正 c=正 d=正
② a=正 b=正 c=誤 d=正
③ a=正 b=誤 c=正 d=誤
④ a=誤 b=正 c=誤 d=正

💡 解答・解説

正解:②(a=正 b=正 c=誤 d=正)

解説:cが誤りです。温室効果を考慮しない放射平衡温度は255K(−18℃)です。温室効果の働きによって実際の平均気温が288K(15℃)まで上昇しています。

【過去問3:光の散乱】

大気中の光の散乱に関する次の記述(a〜d)の正誤の組み合わせとして正しいものを選べ。

a. レイリー散乱では、散乱光の強度は入射する電磁波の波長の4乗に反比例する。
b. 空が青く見えるのは、レイリー散乱によって波長の短い青い光が強く散乱されるためである。
c. ミー散乱では、レイリー散乱と同様に散乱強度は波長の4乗に反比例する。
d. 雨粒による幾何光学的散乱によって、太陽光が分散されて虹が見える。

① a=正 b=正 c=正 d=正
② a=正 b=正 c=誤 d=正
③ a=正 b=誤 c=誤 d=正
④ a=誤 b=正 c=正 d=誤

💡 解答・解説

正解:②(a=正 b=正 c=誤 d=正)

解説:cが誤りです。ミー散乱は波長への依存性が小さく、すべての波長が均等に散乱されるため、色が混ざって白く見えます(雲が白く見える理由)。

7. この章のまとめ

  • 太陽定数: 大気上端でのエネルギー受取量。1.37kW/m²。地表面では 太陽定数 × sinα。
  • 南中高度角: 90° − 緯度 + 赤緯(夏至の赤緯は+23.5°、冬至は-23.5°)。
  • ステファン・ボルツマンの法則: I = σT⁴(放射強度は絶対温度の4乗に比例)。
  • ウィーンの変位則: λmax = 2897 / T(最大波長は温度に反比例。太陽は可視光、地球は赤外線)。
  • 地球のエネルギー収支: 反射30(アルベド)、大気吸収20、地表吸収50。地球放射は70でバランス。
  • 温室効果: H₂O、CO₂、CH₄などが地球放射を吸収し、下向き再放射で地表を暖める。放射平衡温度255K → 実際288K。
  • 大気の窓領域: 波長8〜12μm。大気に吸収されず宇宙に逃げやすい。
  • 散乱の3種: レイリー散乱(空気分子、空が青い)、ミー散乱(雲粒、雲が白い)、幾何光学的散乱(雨粒、虹)。
  • アルベド: 反射率。新雪が最も高い(79〜95%)。プラネタリーアルベドは約30%。

難易度: ★★★★☆(放射法則の数式と散乱の種類の区別が重要!)

この記事について

気象予報士試験の合格を目指す方のために、専門知識を初学者向けにわかりやすく解説しています。一緒に合格を目指しましょう!

【気象予報士試験講義No.5】大気における放射|太陽放射・黒体・温室効果・散乱をゼロから学ぼう!

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