【第63回 気象予報士試験 一般知識】問5 地球の長波放射をわかりやすく解説
第63回気象予報士試験 一般知識 問5の解説です。今回は、地球の長波放射・放射平衡・雲頂からの放射量について整理します。
この問題は、単なる暗記ではなく、「何が長波放射を吸収するのか」「放射平衡で何と何が釣り合うのか」を正確に理解しているかが問われます。
この問題で重要なのは、次の3点です。
- 長波放射は主に温室効果気体に吸収される
- 放射平衡で釣り合うのは「入射太陽放射」そのものではなく「吸収された太陽放射」
- 放射量は温度が高いほど大きい
特に(b)は、「放射平衡」という言葉だけで正しいと判断しないことが大切です。
■ 問題文
地球の長波放射について述べた次の文(a)~(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から1つ選べ。
(a) 地球大気中で長波放射は主に二酸化炭素分子と酸素分子によって吸収される。
(b) 地球は全体としてほぼ放射平衡の状態にあり、地球の大気上端から外向きに射出される長波放射量は、地球の大気上端に入射する太陽放射量にほぼ等しい。
(c) 海洋上の背の高い積乱雲の雲頂から放射される単位面積当たりの長波放射量は、その周囲の海面から放射される単位面積当たりの長波放射量よりも大きい。
| (a) | (b) | (c) | |
|---|---|---|---|
| ① | 正 | 正 | 正 |
| ② | 正 | 誤 | 正 |
| ③ | 正 | 誤 | 誤 |
| ④ | 誤 | 正 | 誤 |
| ⑤ | 誤 | 誤 | 誤 |
■ 解答
⑤
■ 解き方の方針
この問題では、まず短波放射と長波放射の違いを整理しましょう。
- 短波放射:太陽から地球へ入ってくる放射
- 長波放射:地球や大気から宇宙へ出ていく赤外放射
そして、長波放射を吸収する気体、放射平衡で釣り合う量、雲頂と海面の温度差を確認していきます。
■ (a) 長波放射を吸収する気体
(a)は誤りです。
地球大気中で長波放射を主に吸収するのは、次のような温室効果気体です。
- 水蒸気
- 二酸化炭素
- オゾン
- メタン
問題文では「二酸化炭素分子と酸素分子」とされています。
二酸化炭素は長波放射を吸収しますが、酸素分子(O₂)は赤外線吸収にほとんど寄与しません。
したがって、(a)は誤りです。
受験生がつまずきやすいポイント
酸素は大気中に多く含まれるため、長波放射もよく吸収しそうに感じます。
しかし、長波放射をよく吸収するのは、主に水蒸気や二酸化炭素などの温室効果気体です。
「大気中に多い気体」と「赤外線をよく吸収する気体」は別物として整理しましょう。
■ (b) 放射平衡と太陽放射量
(b)は誤りです。
地球は全体として、長い時間で見るとほぼ放射平衡の状態にあります。
ここまでは大きく間違っていません。
しかし、問題文では、
外向き長波放射量 = 大気上端に入射する太陽放射量
のように書かれています。
ここが誤りです。
太陽放射の一部は、雲・大気・地表面によって反射されます。
そのため、地球が放射平衡で釣り合うのは、
外向き長波放射量 ≒ 吸収された太陽放射量
です。
入射した太陽放射すべてと等しくなるわけではありません。
超重要つまずきポイント!
「地球は放射平衡」だからといって、
入ってきた太陽放射量 = 出ていく長波放射量
と考えてしまうと誤りです。
実際には、太陽放射の一部は反射されるため、釣り合うのは吸収された太陽放射です。
この問題では、「入射する太陽放射量」という表現が引っかけになっています。
■ (c) 積乱雲の雲頂と海面からの長波放射
(c)は誤りです。
長波放射量は、物体の温度が高いほど大きくなります。
これはステファン=ボルツマンの法則で表されます。
E = σT4
つまり、温度Tが高いほど放射量Eは大きくなります。
背の高い積乱雲の雲頂は、上空にあるため非常に低温です。
一方、周囲の海面は雲頂よりも高温です。
そのため、単位面積あたりの長波放射量は、
海面 > 積乱雲の雲頂
となります。
問題文では「雲頂の方が大きい」とされているため、誤りです。
ここがポイント!
長波放射量は、温度で考えます。
背の高い積乱雲の雲頂は冷たいので、放射量は小さくなります。
「雲が大きいから放射量も大きい」と考えないように注意しましょう。
■ まとめ
- (a) 誤:酸素分子は長波放射の吸収にほとんど寄与しない
- (b) 誤:釣り合うのは「入射太陽放射」ではなく「吸収された太陽放射」
- (c) 誤:低温の雲頂より、高温の海面の方が長波放射量は大きい
したがって、正しい組み合わせは⑤です。
この問題で必ず押さえたいこと
この問題は、以下の3つを混同しないことが重要です。
- 短波放射と長波放射
- 入射太陽放射と吸収太陽放射
- 雲の大きさと雲頂温度
特に(b)は、文章の前半だけで判断せず、後半の「入射する太陽放射量」という表現まで確認しましょう。
※ 本記事では、一般財団法人 気象業務支援センターより利用許諾を受けて、気象予報士試験問題を掲載しています。
問題文の著作権は一般財団法人 気象業務支援センターに帰属します。
以上、第63回 一般知識 問5の解説でした!
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