【第60回 気象予報士試験 専門知識】問11 水蒸気画像の暗域・明域とトラフの深まりをわかりやすく解説

こんにちは!今回は第60回気象予報士試験 専門知識 問11を解説します!

この問題は、気象衛星ひまわりの水蒸気画像についての問題です。

ポイントは、水蒸気画像が何を見ている画像なのか、そして暗域・明域・強風軸・トラフの深まりをどう結びつけるかです。

この問題で重要なポイント

  • 水蒸気画像は、大気の窓ではなく水蒸気の吸収帯を利用している
  • 主に対流圏上・中層の水蒸気分布を表す
  • 暗域は、対流圏上・中層の乾燥域に対応しやすい
  • 明域は、対流圏上・中層の湿潤域に対応しやすい
  • 暗域と明域の境界付近は、強風軸に対応することがある
  • 暗域が明瞭化することは、下降流や乾燥空気の流入を示すことがある
  • 暗域の強まりは、トラフの深まりを示唆することがある

■ 問題文

図Aは10月のある日の気象衛星ひまわりの水蒸気画像であり、図Bはその24時間後の画像である。 図には暗域(破線)と地上低気圧の中心(L)が示されている。 これらの画像について述べた次の文(a)〜(d)の下線部の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。

(a) 水蒸気画像は、「大気の窓」と呼ばれる水蒸気の吸収の影響の少ない波長領域における放射量を画像化したもので、その明暗は対流圏上・中層の水蒸気量の多寡に対応している。

(b) 図A及び図Bの暗域の部分では、対流圏の上・中層で、周辺より温度が高く、乾燥していると判断される。

(c) 水蒸気画像で白くあるいは灰色に見える領域は、「暗域」に対して「明域」と呼ばれている。図A及び図Bにおいて、暗域とその南側の明域の境界付近は、強風軸に対応していると判断される。

(d) 図Aの暗域は、24時間後の図Bでは東端部分を黄海から華北にかけて暗化している。暗化域は強い下降流の場に対応しており、この変化はトラフの深まりを示唆している。

図
選択肢 (a) (b) (c) (d)

■ 解答

(a) 誤
(b) 誤
(c) 正
(d) 正

■ 解き方の方針

この問題は、水蒸気画像の基本を次のように整理すると解きやすいです。

水蒸気画像

対流圏上・中層の水蒸気分布を見る

暗域

乾燥域・下降流域に対応しやすい

明域

湿潤域・上昇流域に対応しやすい

暗域と明域の境界

強風軸に対応することがある

特に(a)の「大気の窓」、(b)の「温度が高い」という表現がひっかけです。

■ (a) 水蒸気画像は大気の窓を利用しているか

(a)は誤りです。

水蒸気画像は、水蒸気による吸収の影響が大きい波長帯を利用して、主に対流圏上・中層の水蒸気分布を見ています。

問題文では「大気の窓」と呼ばれる、水蒸気の吸収の影響が少ない波長領域としているため、ここが誤りです。

ここがひっかけです。

大気の窓

水蒸気などによる吸収が少ない波長帯

水蒸気画像

水蒸気の吸収帯を利用

対流圏上・中層の水蒸気を見やすい

したがって、(a)は誤りです。

■ (b) 暗域は周辺より温度が高く、乾燥していると判断するか

(b)は誤りです。

暗域は、対流圏上・中層の乾燥域に対応しやすいです。 この点は正しいです。

しかし、問題文の「周辺より温度が高い」という表現が不適切です。

水蒸気画像で見ているのは、単純な大気の温度そのものではなく、衛星が観測する輝度温度です。

暗域の正しい見方

暗く見える

輝度温度が高い

上・中層が乾燥している

より低い高度からの放射が見えやすい

「乾燥している」はよいのですが、「周辺より温度が高い」と実際の大気温度の話のように表現している点が不適切です。

したがって、(b)は誤りです。

■ (c) 暗域と南側の明域の境界付近は強風軸に対応するか

(c)は正しいです。

水蒸気画像で白色や灰色に見える湿った領域は、暗域に対して明域と呼ばれます。

暗域と明域の境界付近は、水蒸気量の勾配が大きく、上空の流れが強い場所に対応することがあります。

図A・図Bでは、暗域の南側の明域との境界付近が、強風軸に対応していると判断できます。

水蒸気画像と強風軸のイメージ

暗域

乾燥した空気

明域

湿った空気

暗域と明域の境界

水蒸気の勾配が大きい

強風軸に対応しやすい

したがって、(c)は正しいです。

■ (d) 暗域の暗化はトラフの深まりを示唆するか

(d)は正しいです。

図Aから24時間後の図Bでは、暗域の東端部分が黄海から華北にかけてより暗くなっています。 これを暗化といいます。

暗化域は、対流圏上・中層で乾燥空気が流入したり、下降流が強まったりしている場に対応することがあります。

暗化域のイメージ

暗域がさらに暗くなる

上・中層の乾燥が強まる

下降流が強い場

トラフの深まりを示唆

そのため、この変化はトラフの深まりを示唆していると判断できます。

したがって、(d)は正しいです。

■ 選択肢確認表

項目 判定 理由
(a) 水蒸気画像は大気の窓ではなく、水蒸気の吸収帯を利用しているため。
(b) 暗域は乾燥域に対応するが、「周辺より温度が高い」ではなく、輝度温度が高いと表現すべきため。
(c) 暗域と明域の境界付近は、水蒸気分布の境界であり、強風軸に対応しやすいため。
(d) 暗域の暗化は下降流や乾燥空気の強まりを示し、トラフの深まりを示唆するため。

以上より、正しい組み合わせはです。

■ 受験生がつまずくポイント

1. 水蒸気画像を「大気の窓」と混同する

水蒸気画像は、水蒸気による吸収が大きい波長帯を利用します。

「大気の窓」は吸収が少ない波長帯なので、水蒸気画像の説明としては不適切です。

2. 暗域を単純に「温度が高い場所」と覚えてしまう

水蒸気画像の暗域は、輝度温度が高い領域です。

これは上・中層が乾燥していて、より低い高度からの放射が衛星に届きやすいことを反映しています。 実際の大気温度が周囲より高い、と単純に言うのは不適切です。

3. 暗域と明域の境界を見落とす

水蒸気画像では、暗域そのものだけでなく、暗域と明域の境界が重要です。

この境界付近は上空の強い流れ、つまり強風軸に対応することがあります。

4. 暗化域の意味が分かりにくい

暗域が時間とともにさらに暗くなる場合、上・中層で乾燥空気の流入や下降流が強まっている可能性があります。

これはトラフの深まりと結びつけて判断されることがあります。

5. 衛星画像の明暗を「水蒸気量だけ」で読んでしまう

水蒸気画像の明暗は、単に水蒸気量だけで決まるわけではありません。

どの高度からの放射を見ているのか、輝度温度がどう変わるのか、という視点も必要です。

■ まとめ

  • 水蒸気画像は、水蒸気の吸収帯を利用している
  • 主に対流圏上・中層の水蒸気分布を把握する画像である
  • 暗域は、対流圏上・中層の乾燥域に対応しやすい
  • ただし「周辺より温度が高い」ではなく「輝度温度が高い」と理解する
  • 暗域と明域の境界付近は、強風軸に対応することがある
  • 暗域の暗化は、下降流や乾燥空気の強まりを示し、トラフの深まりを示唆する

正解は④

(a) 誤
(b) 誤
(c) 正
(d) 正

この問題で必ず押さえたいこと

水蒸気画像

水蒸気の吸収帯を利用

対流圏上・中層の水蒸気分布を見る

暗域

上・中層の乾燥域

下降流や乾燥空気の流入に対応しやすい

暗域と明域の境界

強風軸に対応しやすい

水蒸気画像の問題では、「大気の窓ではない」「暗域=乾燥域」「境界=強風軸」をセットで押さえましょう。

※ 本記事では、一般財団法人 気象業務支援センターより利用許諾を受けて、気象予報士試験問題を掲載しています。
問題文の著作権は一般財団法人 気象業務支援センターに帰属します。

以上、第60回 専門知識 問11の解説でした!

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