【第60回 気象予報士試験 専門知識】問10 台風の構造と強さの分類をわかりやすく解説

こんにちは!今回は第60回気象予報士試験 専門知識 問10を解説します!

この問題は、発達した台風について、風の鉛直分布対流圏上層の吹き出し暖気核台風の強さの分類を問う問題です。

台風は「反時計回りに風が吹く」「中心気圧が低い」といったイメージで覚えがちですが、試験ではもう少し細かく、どの高度でどの成分の風が強いのか強さの分類基準が問われます。

この問題で重要なポイント

  • 台風の風は、接線成分と動径成分に分けて考える
  • 接線成分は、自由大気下層の高度2〜3km付近で最大になりやすい
  • 動径成分は、大気境界層内の高度1km以下で大きくなりやすい
  • 対流圏上層では、中心付近から外側へ吹き出す流れがある
  • 北半球では、外向きの流れはコリオリ力を受けて時計回りに曲げられる
  • 発達した台風の中心付近には暖気核がある
  • 台風の強さは中心気圧ではなく、最大風速で分類される

■ 問題文

台風について述べた次の文(a)〜(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。

(a) 発達した台風において、風の接線成分と動径成分は、ともに大気境界層の上の自由大気下層で最大となる。

(b) 発達した台風の対流圏界面に近い対流圏上層では、空気が台風の中心から外側に流れ出し、中心から離れたところでは反時計回りに風が吹いている。

(c) 発達した台風の中心付近では対流圏の下層から上層まで気温が周囲よりも高く、台風中心の低い気圧に対応している。

(d) 台風の強さは中心気圧によって分類され、中心気圧が900hPa未満の台風は、最も強い階級である「猛烈な台風」に属する。

選択肢 (a) (b) (c) (d)

■ 解答

(a) 誤
(b) 誤
(c) 正
(d) 誤

■ 解き方の方針

この問題では、台風の構造を次の4つに分けて考えると整理しやすいです。

(a)
接線風と動径風の最大高度

(b)
対流圏上層の吹き出しの向き

(c)
台風中心の暖気核

(d)
台風の強さの分類基準

受験生がつまずきやすいのは、台風の「回転の向き」と「上層で外へ吹き出す流れの向き」を混同することです。

北半球の台風の下層循環は反時計回りですが、上層で外へ吹き出す流れは、中心から離れるにつれてコリオリ力を受け、時計回りの成分を持ちます。

■ (a) 接線成分と動径成分はともに自由大気下層で最大か

(a)は誤りです。

台風の風は、中心の周りを回る接線成分と、中心に向かうまたは外へ向かう動径成分に分けて考えます。

発達した台風では、接線成分の風速は、大気境界層のすぐ上、つまり自由大気下層の高度2〜3km付近で最大になりやすいです。

一方、動径成分は摩擦の影響を強く受ける大気境界層内で大きくなります。 下層では摩擦によって風が等圧線を横切り、中心へ向かう流れが強まるためです。

ここがひっかけです。

接線成分

自由大気下層で最大

動径成分

大気境界層内で最大

「ともに自由大気下層」ではない

したがって、(a)は誤りです。

■ (b) 対流圏上層では中心から外側に流れ出し、反時計回りに吹くか

(b)は誤りです。

発達した台風では、下層で中心へ向かって空気が流れ込み、中心付近で上昇します。 上昇した空気は、対流圏上層で外側へ吹き出します。

ここまでは正しいイメージです。

しかし、北半球では、外側へ向かう空気もコリオリ力を受けます。 空気の進行方向に対して右向きの力を受けるため、中心から離れたところでは時計回りの流れになります。

上層吹き出しのイメージ

中心付近で上昇

対流圏上層で外側へ流出

北半球では右向きに曲げられる

中心から離れると時計回り

問題文では「反時計回り」としているため不適切です。

したがって、(b)は誤りです。

■ (c) 台風中心付近は周囲より暖かく、低い気圧に対応するか

(c)は正しいです。

発達した台風の中心付近には、周囲より気温が高い領域があります。 これを暖気核といいます。

台風では、活発な対流による潜熱の放出や、中心付近の下降流に伴う断熱昇温などにより、中心付近が周囲より暖かくなります。

この暖気核は、台風中心の低い気圧と対応しています。

台風の暖気核

活発な対流

潜熱放出

中心付近が暖かい

暖気核

中心の低い気圧に対応

したがって、(c)は正しいです。

■ (d) 台風の強さは中心気圧で分類されるか

(d)は誤りです。

台風の強さは、中心気圧ではなく、最大風速によって分類されます。

「中心気圧が低い台風ほど強い」というイメージはありますが、気象庁の台風の強さの階級は中心気圧では分類されません。

ここは必ず押さえたいポイントです。

台風の強さ

中心気圧ではなく
最大風速で分類

「猛烈な台風」は、最大風速が54m/s以上の台風です。 中心気圧900hPa未満という基準ではありません。

したがって、(d)は誤りです。

■ 選択肢確認表

項目 判定 理由
(a) 接線成分は自由大気下層で最大になりやすいが、動径成分は摩擦の影響を受ける大気境界層内で最大になりやすいため。
(b) 対流圏上層の吹き出しは、中心から離れると北半球では時計回りの成分を持つため。
(c) 発達した台風の中心付近には周囲より暖かい暖気核があり、中心の低い気圧に対応するため。
(d) 台風の強さは中心気圧ではなく、最大風速によって分類されるため。

以上より、正しい組み合わせはです。

■ 受験生がつまずくポイント

1. 接線成分と動径成分を同じ高度で最大と考えてしまう

接線成分は台風中心を回る風、動径成分は中心へ向かうまたは外へ向かう風です。

接線成分は自由大気下層で最大になりやすい一方、動径成分は摩擦が効く大気境界層内で大きくなります。

2. 台風は全部反時計回りだと思ってしまう

北半球の台風の下層循環は反時計回りです。

しかし、対流圏上層の吹き出しでは、中心から外側へ出た空気がコリオリ力で右に曲げられ、時計回りの流れになります。 下層と上層を分けて考えましょう。

3. 暖気核と低気圧の関係がイメージしにくい

発達した台風は暖気核を持つ低気圧です。

中心付近で周囲より気温が高いことが、台風中心の低い気圧構造に対応しています。

4. 台風の強さを中心気圧で分類すると覚えてしまう

台風情報では中心気圧がよく示されるため、中心気圧で強さを分類していると誤解しやすいです。

しかし、気象庁の台風の強さの分類は最大風速で決まります。

5. 「900hPa未満なら猛烈」と思い込んでしまう

中心気圧900hPa未満なら非常に発達した台風である可能性は高いですが、分類基準は中心気圧ではありません。

「猛烈な台風」は最大風速54m/s以上です。 数値だけの暗記ではなく、何の数値なのかを確認しましょう。

■ まとめ

  • 接線成分は自由大気下層で最大になりやすい
  • 動径成分は大気境界層内で最大になりやすい
  • 対流圏上層では、中心付近から外側へ空気が吹き出す
  • 北半球では、上層の吹き出しは中心から離れると時計回りの成分を持つ
  • 発達した台風の中心付近には暖気核がある
  • 台風の強さは中心気圧ではなく最大風速で分類される
  • 猛烈な台風は最大風速54m/s以上である

正解は⑤

(a) 誤
(b) 誤
(c) 正
(d) 誤

この問題で必ず押さえたいこと

台風の風

接線成分と動径成分に分ける

接線成分

自由大気下層で最大

動径成分

大気境界層内で最大

台風の強さ

中心気圧ではない

最大風速で分類

台風の問題では、下層・上層の流れの違い分類基準が特に狙われます。 「反時計回り」「中心気圧が低い」というイメージだけで判断しないようにしましょう。

※ 本記事では、一般財団法人 気象業務支援センターより利用許諾を受けて、気象予報士試験問題を掲載しています。
問題文の著作権は一般財団法人 気象業務支援センターに帰属します。

以上、第60回 専門知識 問10の解説でした!

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