【第56回 気象予報士試験 専門知識】問9 霧の種類と発生条件をわかりやすく解説

こんにちは!今回は第56回 気象予報士試験 専門知識 問9を解説します!

この問題は、霧の定義と、放射霧・上昇霧・移流霧の発生メカニズムについて問う問題です。

受験生がつまずきやすいのは、「移流霧」という名前から、単純に別の場所で発生した霧が流れてくるものだと思ってしまうところです。

しかし、移流霧は「霧そのものが移動してくる」という意味ではありません。 暖かく湿った空気が、冷たい地表面や海面へ移流して、下から冷やされることで発生する霧です。

この問題で重要なポイント

  • 霧は、ごく小さな水滴が浮遊し、水平視程が1km未満となる現象である。
  • もやは視程1km以上10km未満で区別される。
  • 放射霧は、地表面の放射冷却によって地表付近の空気が冷やされて発生する。
  • 放射霧は、晴れて風が弱い夜から朝に発生しやすい。
  • 上昇霧・滑昇霧は、湿った空気が斜面を上昇し、断熱膨張で冷却されて発生する。
  • 移流霧は、暖かく湿った空気が冷たい地表面・海面上へ移動し、下から冷やされて発生する。
  • 「別の場所で発生した霧が移動してきたもの」が移流霧ではない。

■ 問題文

霧について述べた次の文(a)〜(d)の正誤について、下記の①〜⑤の中から正しいものを1つ選べ。

(a) 地上気象観測の大気現象の分類では、ごく小さな水滴が大気中に浮遊し、そのため水平視程が1km未満になっている現象を「霧」という。

(b) 「放射霧」は、主に陸上で風が弱いとき、地表面の放射冷却によって地表面に接した気塊の気温が低くなり、水蒸気が過飽和の状態になることによって発生する。

(c) 「上昇霧(滑昇霧)」は、湿った気塊が斜面を上昇するとき、断熱膨張による冷却で気塊が冷え、水蒸気が過飽和の状態になることによって発生する。

(d) 「移流霧」は、別の場所で発生した霧が風によって移動してきたものをいう。

選択肢 内容
(a)のみ誤り
(b)のみ誤り
(c)のみ誤り
(d)のみ誤り
すべて正しい

■ 解答

(d) のみ誤り

■ 解き方の方針

この問題は、霧の種類を名前だけで判断せず、何によって空気が冷やされるのかに注目して解きます。

霧の発生

空気が冷える

水蒸気が過飽和になる

小さな水滴が浮遊する

視程が悪くなる

本番では、次のように整理すると解きやすいです。

霧の種類 冷え方 発生イメージ
放射霧 地表面の放射冷却 晴れて風が弱い夜〜朝
上昇霧・滑昇霧 斜面上昇による断熱膨張 湿った空気が山を上る
移流霧 冷たい地表面・海面で下から冷却 暖湿気が冷たい面へ流れ込む

特に(d)は、「移流」という言葉に引っかけがあります。

移流霧は、霧が移流するのではなく、暖かく湿った空気が移流して冷やされることで発生します。

■ (a) 霧は水平視程1km未満?

(a)は正しいです。

地上気象観測では、霧はごく小さな水滴が大気中に浮遊し、そのため水平視程が1km未満になっている現象をいいます。

霧・もや・煙霧の区別

現象 主な原因 視程の目安
微小な水滴 1km未満
もや 微小な水滴・湿った微粒子 1km以上10km未満
煙霧 乾いた微粒子 10km未満

ここで大切なのは、霧は単に「白く見える現象」ではなく、視程1km未満という基準で分類されることです。

ここがひっかけ

「霧」と「もや」は感覚で区別するのではなく、水平視程で区別します。

試験では、霧=視程1km未満を必ず押さえておきましょう。

したがって、(a)は正しいです。

■ (b) 放射霧は放射冷却で発生する?

(b)は正しいです。

放射霧は、主に陸上で風が弱いときに発生しやすい霧です。

夜間、地表面が放射冷却によって冷えると、地表面に接した空気も下から冷やされます。 その結果、空気中の水蒸気が過飽和となり、小さな水滴が発生します。 これが放射霧です。

放射霧の発生イメージ

晴れて風が弱い夜

地表面が放射冷却

地表付近の空気が冷える

水蒸気が過飽和

放射霧

ここで「風が弱い」という条件も重要です。 風が強いと空気がかき混ぜられて、地表付近だけが強く冷える状態が作られにくくなります。

試験での覚え方

放射霧は、放射冷却で地表が冷える → 接している空気が冷える → 霧になると考えます。

「晴天・弱風・夜間から朝」は、放射霧の典型条件です。

したがって、(b)は正しいです。

■ (c) 上昇霧は断熱膨張による冷却で発生する?

(c)は正しいです。

上昇霧、または滑昇霧は、湿った空気が斜面を上昇するときに発生します。

空気が斜面に沿って上昇すると、周囲の気圧が低くなるため、空気は膨張します。 膨張すると空気は冷えます。 これを断熱膨張による冷却といいます。

上昇霧・滑昇霧の発生イメージ

湿った空気

斜面を上昇

気圧が低下

断熱膨張

気温低下

水蒸気が過飽和

上昇霧・滑昇霧

ここは、山越え問題や雲の発生ともつながる重要テーマです。

湿った空気が上昇して冷えれば、相対湿度が高まり、やがて飽和して水滴ができます。 それが地表付近や斜面付近で起きると、霧として観測されます。

ここがひっかけ

上昇霧は、雨が降ってできる霧ではありません。

ポイントは、斜面上昇 → 断熱膨張 → 冷却 → 過飽和です。

したがって、(c)は正しいです。

■ (d) 移流霧は別の場所で発生した霧が移動してきたもの?

(d)は誤りです。

ここがこの問題の最大のひっかけです。

「移流霧」という名前を見ると、別の場所で発生した霧が風で流れてくる現象のように感じます。 しかし、気象学でいう移流霧はそうではありません。

移流霧は、暖かく湿った空気が、冷たい地表面や海面の上に移動してきて、下から冷やされることで発生する霧です。

移流霧の正しいイメージ

暖かく湿った空気

冷たい地表面・海面へ移動

下から冷やされる

水蒸気が過飽和

移流霧

つまり、移動してくる主役は「霧」ではなく、暖かく湿った空気です。

受験生が間違えやすいポイント

× 別の場所で発生した霧が風で移動してくる
〇 暖かく湿った空気が冷たい面へ移流して、そこで冷やされて霧が発生する

したがって、(d)は誤りです。

■ 補足講義:霧は「水蒸気が増える」だけで発生するわけではない

霧の発生は、基本的に空気が飽和することで起こります。

飽和する方法は大きく分けると、次の2つです。

方法 内容
空気を冷やす 飽和水蒸気量が小さくなり、相対湿度が上がる 放射霧・移流霧・上昇霧
水蒸気を増やす 空気中の水蒸気量が増えて飽和に近づく 蒸気霧など

今回の問題に出てくる放射霧・上昇霧・移流霧は、いずれも空気が冷やされて過飽和になるという流れで説明できます。

空気が冷える

飽和水蒸気量が減る

相対湿度が上がる

飽和・過飽和

霧が発生

■ 選択肢確認表

選択肢 判定 理由
(a) 霧は、ごく小さな水滴が大気中に浮遊し、水平視程が1km未満となる現象であるため。
(b) 放射霧は、主に陸上で風が弱いとき、地表面の放射冷却によって地表付近の空気が冷やされ、水蒸気が過飽和となって発生するため。
(c) 上昇霧・滑昇霧は、湿った空気が斜面を上昇し、断熱膨張による冷却で過飽和となって発生するため。
(d) 移流霧は、別の場所で発生した霧が移動してくるものではなく、暖かく湿った空気が冷たい地表面や海面上へ移動し、下から冷やされて発生する霧であるため。

以上より、誤っているのは(d)のみです。

したがって、正解はです。

■ 受験生がつまずくポイント

1. 「霧」と「もや」を感覚で区別してしまう

試験では、霧は視程1km未満、もやは視程1km以上10km未満と整理します。白く見えるかどうかではなく、水平視程で判断するのがポイントです。

2. 放射霧を「寒い日に出る霧」とだけ覚えてしまう

放射霧は、地表面の放射冷却によって地表付近の空気が冷やされることで発生します。晴れて風が弱い夜から朝に発生しやすい理由までセットで覚える必要があります。

3. 上昇霧を「山に雲がかかる現象」とだけ覚えてしまう

大切なのは、湿った空気が斜面を上昇し、断熱膨張によって冷えることです。上昇、膨張、冷却、過飽和という流れで理解しましょう。

4. 移流霧を「霧が移動する現象」と勘違いしてしまう

この問題の最大のひっかけです。移流霧では、霧そのものが移動してくるのではなく、暖かく湿った空気が冷たい面へ移動し、そこで冷やされて霧が発生します。

5. 霧の種類を名前だけで暗記してしまう

名前だけで覚えると、移流霧のような問題で引っかかります。必ず「何によって冷やされるのか」で整理しましょう。

6. 「過飽和」の意味があいまいなまま読んでしまう

過飽和とは、その温度で空気が含むことのできる水蒸気量を超えた状態です。空気が冷えると飽和水蒸気量が小さくなるため、同じ水蒸気量でも飽和・過飽和になりやすくなります。

■ まとめ

  • 霧は、ごく小さな水滴が浮遊し、水平視程が1km未満となる現象である。
  • 放射霧は、地表面の放射冷却で地表付近の空気が冷やされて発生する。
  • 上昇霧・滑昇霧は、湿った空気が斜面を上昇し、断熱膨張で冷やされて発生する。
  • 移流霧は、暖かく湿った空気が冷たい地表面や海面上へ移動して、下から冷やされて発生する。
  • 「別の場所で発生した霧が移動してきたもの」が移流霧ではない。

正解は④

この問題で必ず押さえたいこと



微小な水滴が浮遊

水平視程1km未満

放射霧

放射冷却

地表付近の空気が冷える

過飽和

上昇霧・滑昇霧

斜面上昇

断熱膨張

冷却

過飽和

移流霧

暖かく湿った空気が移動

冷たい地表面・海面で下から冷却

過飽和

霧が発生

※ 本記事では、一般財団法人 気象業務支援センターより利用許諾を受けて、気象予報士試験問題を掲載しています。
問題文の著作権は一般財団法人 気象業務支援センターに帰属します。

以上、第56回 専門知識 問9の解説でした!

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