【第56回 気象予報士試験 一般知識】問9 積乱雲とマルチセル型メソ対流系をわかりやすく解説

こんにちは!今回は第56回 気象予報士試験 一般知識 問9を解説します!

この問題は、孤立した積乱雲と、複数の積乱雲が組織化したマルチセル型のメソ対流系を比較する問題です。

ポイントは、積乱雲1個の寿命だけでなく、なぜマルチセル型では新しい積乱雲が次々に発生して長寿命になるのかを理解することです。

この問題で重要なポイント

  • 孤立した積乱雲の寿命は、一般に10〜20分より長い。
  • 孤立した積乱雲は、降水粒子の荷重や蒸発冷却による下降流で衰退しやすい。
  • 下降流が強まると、上昇流が維持されにくくなる。
  • マルチセル型の対流系は、一般に鉛直シアがある環境で形成されやすい。
  • 下降流が地表付近に吹き出すと、冷たい外出流ができる。
  • 外出流が周囲の高温多湿な空気を持ち上げ、新しい積乱雲を発生させる。
  • 新旧の積乱雲が世代交代することで、対流系全体は長寿命になる。

■ 問題文

孤立した積乱雲と複数の積乱雲が組織化したマルチセル型のメソ対流系を比較して述べた次の文章の下線部(a)〜(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。

孤立した積乱雲は、発生から衰弱までの時間が一般に(a) 10分間から20分間程度である。

このように寿命が短い主な理由は、積乱雲の発達が進むとともに、積乱雲の内部においても(b) 降水粒子の荷重や融解・蒸発にともなう冷却により、上昇流が維持できなくなるためである。

組織化されたマルチセル型のメソ対流系は、孤立した積乱雲が発生するときよりも、一般風の鉛直シアーが(c) 小さいときに形成されることが多い。

マルチセル型のメソ対流系では、(d) 対流系内の積乱雲の下降流域から吹き出した気流が周辺の高温高湿な気流とぶつかって空気を持ち上げ、新たな対流雲が発生・発達して積乱雲に成長し、世代交代が持続的に起きる。

この結果、マルチセル型のメソ対流系は孤立した積乱雲より長寿命となる。

選択肢 (a) (b) (c) (d)

■ 解答

(a) 誤
(b) 正
(c) 誤
(d) 正

■ 解き方の方針

この問題では、積乱雲を単独の積乱雲組織化した積乱雲群に分けて考えます。

孤立した積乱雲

上昇流が弱まると衰退

寿命は比較的短い

マルチセル型対流系

下降流の吹き出し

周囲の暖湿気を持ち上げる

新しい積乱雲が発生

つまり、1つ1つの積乱雲は寿命が短くても、対流系全体としては世代交代によって長く続きます。

■ (a) 孤立した積乱雲の寿命は10〜20分程度か

(a)は誤りです。

孤立した積乱雲の寿命は、一般に10〜20分程度よりも長く、発生から成熟・衰弱まででおおむね数十分程度を考えます。

10〜20分という表現は、積乱雲全体のライフサイクルとしては短すぎます。

ここが受験生のつまずきポイントです

積乱雲

すぐ発達してすぐ消える?

確かに積乱雲は短寿命ですが、発生から衰弱までが一般に10〜20分程度とするのは短すぎます。

したがって、(a)は誤りです。

■ (b) 降水粒子の荷重や冷却で上昇流が維持できなくなるか

(b)は正しいです。

積乱雲が発達すると、雲の中で雨粒や氷粒などの降水粒子が増えていきます。

これらの降水粒子の重さは、上昇流にとって負担になります。

さらに、降水粒子の融解や雨滴の蒸発によって周囲の空気が冷やされると、冷たく重い空気が下降しやすくなります。

孤立積乱雲が衰退する流れ

降水粒子が増える

荷重が大きくなる

融解・蒸発

冷却

下降流が強まる

下降流

上昇流を妨げる

衰退

したがって、(b)は正しいです。

■ (c) マルチセル型は鉛直シアが小さいときに形成されやすいか

(c)は誤りです。

マルチセル型のメソ対流系は、一般にある程度の鉛直シアがある環境で形成されやすくなります。

鉛直シアがあると、上昇流域と下降流域が分離しやすくなります。

これにより、下降流が上昇流をすぐにつぶしてしまうのを防ぎ、新しいセルが発生しやすくなります。

ここはかなり狙われやすいです

鉛直シアが小さい

組織化しやすい?

ではなく

鉛直シアがある

上昇流と下降流が分かれやすい

マルチセル化しやすい

したがって、(c)は誤りです。

■ (d) 下降流の吹き出しが周囲の暖湿気を持ち上げるか

(d)は正しいです。

積乱雲内で下降流が地表付近に達すると、冷たい空気が周囲へ吹き出します。

この冷たい外出流が、周囲の高温多湿な空気とぶつかると、その空気を持ち上げます。

持ち上げられた高温多湿な空気は上昇し、新しい対流雲を発生させます。

マルチセル型が長続きする仕組み

古い積乱雲

下降流が発生

冷たい外出流

周囲へ吹き出す

高温多湿な空気と衝突

持ち上げる

新しい積乱雲が発生

世代交代

したがって、(d)は正しいです。

■ 選択肢確認表

項目 判定 理由
(a) 孤立した積乱雲の寿命として10〜20分程度は短すぎる。
(b) 降水粒子の荷重や融解・蒸発による冷却で下降流が強まり、上昇流が維持されにくくなる。
(c) マルチセル型は、一般に鉛直シアがある環境で形成されやすい。
(d) 下降流からの外出流が周囲の高温多湿な空気を持ち上げ、新たな積乱雲を発生させる。

以上より、正しい組み合わせはです。

■ 受験生がつまずくポイント

1. 積乱雲の寿命を短く見積もりすぎる

積乱雲は短寿命ですが、10〜20分程度とすると短すぎます。

問題文の数字が極端でないかを確認しましょう。

2. 「下降流=ただ雨が降るだけ」と考えてしまう

下降流は、積乱雲の衰退にも、新しい積乱雲の発生にも関係します。

単独の積乱雲では上昇流を弱めますが、マルチセル型では周囲の暖湿気を持ち上げるきっかけにもなります。

3. 鉛直シアが小さいほど組織化しやすいと誤解する

マルチセル型では、ある程度の鉛直シアがあることで上昇流と下降流が分離しやすくなります。

4. 1つの積乱雲の寿命と対流系全体の寿命を混同する

1つ1つのセルは寿命が短くても、新しいセルが次々に発生すれば、対流系全体は長く続きます。

■ まとめ

  • 孤立した積乱雲の寿命を10〜20分程度とするのは短すぎる。
  • 降水粒子の荷重や冷却による下降流は、上昇流を弱める。
  • マルチセル型は、鉛直シアがある環境で形成されやすい。
  • 下降流の吹き出しが周囲の高温多湿な空気を持ち上げ、新しい積乱雲を発生させる。
  • (a)誤、(b)正、(c)誤、(d)正。

正解は③

この問題で必ず押さえたいこと

孤立した積乱雲

下降流が上昇流を妨げる

衰退

マルチセル型

鉛直シアで組織化しやすい

下降流の吹き出し

暖湿気を持ち上げる

新しい積乱雲

世代交代

対流系全体は長寿命

※ 本記事では、一般財団法人 気象業務支援センターより利用許諾を受けて、気象予報士試験問題を掲載しています。
問題文の著作権は一般財団法人 気象業務支援センターに帰属します。

以上、第56回 一般知識 問9の解説でした!

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