【第62回 気象予報士試験 専門知識】問2 ウィンドプロファイラの風向・風速をわかりやすく解説
こんにちは!今回は第62回気象予報士試験 専門知識 問2を解説します!
この問題は、ウィンドプロファイラで観測されたドップラー速度から、上空の風向・風速を読み取る問題です。
一見すると計算問題に見えますが、本質は風向は「風が吹いてくる方向」であることと、風速比較ではsin10°が共通になることを見抜く問題です。
この問題で重要なポイント
- ウィンドプロファイラは電波のドップラー効果で上空の風を観測する
- ドップラー速度は、観測点から遠ざかる方向を正とする
- 風向は「空気が進む方向」ではなく「風が吹いてくる方向」
- 真上から10°傾けたビームなので、ドップラー速度=水平風成分×sin10°
- 風速比較では、両方ともsin10°で割るので、4√2と5を比較すればよい
■ 問題文
気象庁のウィンドプロファイラは、真上および真上から東西南北に10°程度傾けた、5つの方向に電波を発射し、散乱されて戻ってくる電波のドップラー効果を利用して上空の風向・風速を測定している。
表は、晴れた日の時刻Aおよび時刻Bにおいて、ある高度で測定された各方向のドップラー速度を示したものである。この表に基づき、時刻Aおよび時刻Bそれぞれにおける風向と、時刻Aの風速VAと時刻Bの風速VBの大小関係を示した式の組み合わせとして、適切なものを下記の①〜⑤の中から1つ選べ。
ただし、ドップラー速度は観測点から遠ざかる方向を正とし、真上から東西南北に傾けた電波の発射角度は4方向とも10°とする。また、√2=1.4、sin10°=0.17とする。
| 時刻\方向 | 電波を発射する方向と ドップラー速度(m/s) |
||||
|---|---|---|---|---|---|
| 北 | 東 | 南 | 西 | 真上 | |
| 時刻A | 4 | -4 | -4 | 4 | 0 |
| 時刻B | 5 | 0 | -5 | 0 | 0 |
| 時刻Aの風向 | 時刻Bの風向 | 時刻Aと時刻Bの風速の大小関係 | |
|---|---|---|---|
| ① | 南東 | 南 | VA > VB |
| ② | 南東 | 南 | VA < VB |
| ③ | 北西 | 南 | VA > VB |
| ④ | 北西 | 北 | VA > VB |
| ⑤ | 北西 | 北 | VA < VB |
■ 解答
①
時刻Aの風向:南東
時刻Bの風向:南
風速の大小関係:VA > VB
■ 解き方の方針
この問題は、次の順番で解くと整理しやすいです。
① ドップラー速度の正負を見る
↓
② 空気がどちらへ進んでいるか考える
↓
③ 風向はその反対側で答える
↓
④ 風速は4√2と5を比較する
特に注意したいのは、空気が進む方向と風向は反対になることです。
空気が北西へ進んでいれば、風は南東から吹いているので、風向は南東です。
■ ウィンドプロファイラとは?
ウィンドプロファイラは、上空に電波を発射し、空気中の乱れなどによって散乱されて戻ってくる電波を利用して、上空の風向・風速を測定する装置です。
このとき使われるのがドップラー効果です。
電波を発射し、戻ってくる電波の周波数のずれを調べることで、空気が観測点から遠ざかっているのか、観測点に近づいているのかを判断します。
ウィンドプロファイラのイメージ
電波を上空へ発射
↓
空気中の乱れで散乱
↓
戻ってきた電波のドップラー効果を調べる
↓
上空の風向・風速を求める
ラジオゾンデのように直接上空へ観測器を飛ばすのではなく、電波を使って上空の風を推定している、と考えるとわかりやすいです。
■ ドップラー速度の正負を確認する
この問題では、ドップラー速度について次の条件が与えられています。
ドップラー速度が正
↓
観測点から遠ざかる方向
ドップラー速度が負
↓
観測点に近づく方向
たとえば、北方向のビームでドップラー速度が正なら、空気は観測点から北方向へ遠ざかっていると考えます。
逆に、南方向のビームでドップラー速度が負なら、南方向から観測点へ近づいているので、これも北向きの流れを示します。
ここでつまずきやすい!
「北方向が正」「南方向が負」は、どちらも北向きの空気の流れを意味します。
北ビームで正
↓
北へ遠ざかる
南ビームで負
↓
南から近づく
どちらも
↓
北向き成分
■ 時刻Aの風向を考える
時刻Aのドップラー速度は、北方向が4、東方向が-4、南方向が-4、西方向が4です。
| 方向 | ドップラー速度 | 読み取り |
|---|---|---|
| 北 | 4 | 北方向へ遠ざかるので、北向き成分がある |
| 南 | -4 | 南方向から近づくので、北向き成分がある |
| 東 | -4 | 東方向から近づくので、西向き成分がある |
| 西 | 4 | 西方向へ遠ざかるので、西向き成分がある |
したがって、時刻Aでは空気の流れに北向き成分と西向き成分があります。
北向き成分
+
西向き成分
↓
空気は北西へ進む
しかし、風向は「空気が進む方向」ではありません。
風向は風が吹いてくる方向です。
空気が北西へ進んでいるということは、風は反対側の南東から吹いていることになります。
最大のひっかけポイント
空気の進む向き:北西
↓
風が吹いてくる向き:南東
↓
風向:南東
ここを逆にすると、時刻Aを「北西風」と判断してしまいます。
したがって、時刻Aの風向は南東です。
■ 時刻Bの風向を考える
時刻Bのドップラー速度は、北方向が5、南方向が-5、東方向と西方向は0です。
| 方向 | ドップラー速度 | 読み取り |
|---|---|---|
| 北 | 5 | 北方向へ遠ざかるので、北向き成分がある |
| 南 | -5 | 南方向から近づくので、北向き成分がある |
| 東 | 0 | 東西方向の成分はない |
| 西 | 0 | 東西方向の成分はない |
したがって、時刻Bでは空気は北へ進んでいると判断できます。
空気が北へ進んでいるので、風は反対側の南から吹いています。
空気の進む向き:北
↓
風が吹いてくる向き:南
↓
風向:南
したがって、時刻Bの風向は南です。
■ なぜsin10°で割るのか?
ここがこの問題で一番わかりにくいところです。
ウィンドプロファイラの電波は、真上ではなく、真上から10°傾けて発射されています。
そのため、観測されるドップラー速度は、水平風速そのものではありません。
実際に見えているのは、水平風速のうち、電波のビーム方向に投影された成分です。
ドップラー速度と水平風成分の関係
実際の水平風成分
↓
ビーム方向に投影される
↓
ドップラー速度として観測される
ビームは鉛直方向から10°傾いているので、水平風成分のうちビーム方向に見える部分は、
ドップラー速度 = 水平風成分 × sin10°
となります。
したがって、水平風成分を求めるには、
水平風成分 = ドップラー速度 ÷ sin10°
とします。
「なぜ割るのか」の考え方
ドップラー速度は、水平風成分の一部だけを見ている値です。
つまり、実際の水平風成分より小さく観測されています。
そのため、元の水平風成分に戻すには、sin10°で割る必要があります。
観測される値
= 実際の水平風成分の一部
だから
実際の水平風成分
= 観測値 ÷ sin10°
■ 風速VAとVBの大小関係
時刻Aでは、北向き成分と西向き成分がそれぞれあります。
それぞれのドップラー速度の大きさは4m/sなので、水平風成分は次のようになります。
北向き成分 = 4 ÷ sin10°
西向き成分 = 4 ÷ sin10°
したがって、時刻Aの風速VAは、2つの成分を合成して、
VA = √{(4/sin10°)^2 + (4/sin10°)^2}
= 4√2 ÷ sin10°
となります。
一方、時刻Bでは、北向き成分だけがあります。
ドップラー速度の大きさは5m/sなので、
VB = 5 ÷ sin10°
です。
試験テクニック:比較だけならsin10°は消せる
ここで、VAとVBを比べます。
VA = 4√2 ÷ sin10°
VB = 5 ÷ sin10°
どちらも同じsin10°で割っています。
つまり、大小比較だけなら、共通している「÷sin10°」は気にしなくて大丈夫です。
4√2 と 5 を比較するだけ
問題文より√2=1.4なので、
4√2 = 4 × 1.4 = 5.6
5.6 > 5
↓
VA > VB
実際の試験では、この考え方を使うと計算時間をかなり短縮できます。
したがって、風速の大小関係はVA > VBです。
■ 選択肢確認表
| 項目 | 答え | 理由 |
|---|---|---|
| 時刻Aの風向 | 南東 | 空気は北西へ進むため、風は南東から吹く |
| 時刻Bの風向 | 南 | 空気は北へ進むため、風は南から吹く |
| 風速の大小 | VA > VB | VA=4√2÷sin10°、VB=5÷sin10°で、4√2=5.6>5 |
以上より、正しい組み合わせは①です。
■ 受験生がつまずくポイント
1. ドップラー速度の正負で混乱する
この問題では、ドップラー速度は観測点から遠ざかる方向が正です。
正ならそのビーム方向へ遠ざかる、負ならそのビーム方向から観測点へ近づく、と考えましょう。
特に、北方向が正、南方向が負の場合は、どちらも北向き成分を示します。
2. 風向を空気が進む方向で答えてしまう
風向は、空気が進む方向ではなく、風が吹いてくる方向です。
空気が北西へ進む
↓
南東風
この問題で時刻Aを「北西風」としてしまうのが、典型的なミスです。
3. なぜsin10°で割るのかがわからない
ドップラー速度は、水平風成分そのものではありません。
ビーム方向に見えている成分だけです。
ビームが鉛直から10°傾いているので、
ドップラー速度 = 水平風成分 × sin10°
となり、水平風成分を求めるにはsin10°で割ります。
4. 風速比較で計算しすぎてしまう
VAもVBも、どちらもsin10°で割ります。
そのため、大小比較だけならsin10°を実際に計算する必要はありません。
VA:4√2
VB:5
↓
4√2=5.6
↓
VA > VB
■ まとめ
- ウィンドプロファイラは、電波のドップラー効果を利用して上空の風を観測する
- ドップラー速度は、観測点から遠ざかる方向を正とする
- 時刻Aでは、北向き成分と西向き成分があり、空気は北西へ進む
- 空気が北西へ進むので、風向は反対側の南東
- 時刻Bでは、空気は北へ進むので、風向は南
- 風速比較では、VA=4√2÷sin10°、VB=5÷sin10°となる
- 4√2=5.6>5なので、VA>VB
正解は①
時刻A:南東
時刻B:南
VA > VB
この問題で必ず押さえたいこと
ドップラー速度が正
= 観測点から遠ざかる
ドップラー速度が負
= 観測点へ近づく
空気が進む向き
= 風向ではない
風向
= 風が吹いてくる方向
風速比較
= 4√2 と 5 を比べる
この問題は、計算よりも考え方が重要です。
「風向は反対側」「sin10°は共通だから比較では消せる」の2つを押さえれば、試験本番でも落ち着いて解けます。
※ 本記事では、一般財団法人 気象業務支援センターより利用許諾を受けて、気象予報士試験問題を掲載しています。
問題文の著作権は一般財団法人 気象業務支援センターに帰属します。
以上、第62回 専門知識 問2の解説でした!
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皆で最高の独学環境を作っていきましょう!
