【第58回 気象予報士試験 専門知識】問5 数値予報のパラメタリゼーションをわかりやすく解説

こんにちは!今回は第58回 気象予報士試験 専門知識 問5を解説します!

この問題は、数値予報モデルで用いられるパラメタリゼーションについての正誤問題です。

パラメタリゼーションは、専門知識では頻出ですが、言葉だけ聞くとかなり難しく感じます。

ただし、考え方はシンプルです。

数値予報モデルの格子より小さい現象は、そのままモデルで表現できません。そこで、その小さな現象が格子点の気温・風・水蒸気などに与える影響を見積もって、モデルに反映させます。

これがパラメタリゼーションです。

この問題で重要なポイント

  • パラメタリゼーションは、格子スケールより小さい現象の効果を見積もる方法である。
  • 小さい現象そのものを直接表現するのではなく、格子点の物理量への影響として表す。
  • パラメタリゼーションは、予報時間の計算と同時に用いられる。
  • すべての予報時刻を計算し終えてから、あとでまとめて補正するものではない。
  • 大気境界層の乱流による運動量・熱の輸送は、パラメタリゼーションの対象である。
  • 積雲対流パラメタリゼーションは、全球モデルだけでなくメソモデルでも用いられる場合がある。
  • 「格子で表せない現象をどう扱うか」がこの問題の本質である。

■ 問題文

気象庁が行っている数値予報のパラメタリゼーションについて述べた次の文(a)〜(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。

(a) パラメタリゼーションは、数値予報モデルの格子スケールより小さい現象が格子点の物理量に影響する効果を見積もって、格子点の物理量に反映させることをいう。

(b) 数値予報モデルでは、すべての予報対象期間について格子点の気象要素の値が出力された後から、パラメタリゼーションを用いて小さいスケールの現象の効果を格子点の値に反映している。

(c) メソモデルでは、大気境界層における乱流による運動量や熱の輸送の効果については、パラメタリゼーションを用いていない。

(d) 積雲対流パラメタリゼーションは、全球モデルに用いられているが、メソモデルには用いられていない。

選択肢 (a) (b) (c) (d)

■ 解答

(a) 正
(b) 誤
(c) 誤
(d) 誤

■ 解き方の方針

この問題は、パラメタリゼーションを次のように理解すると解きやすいです。

数値予報モデル

格子点で大気を表現する

でも
格子より小さい現象は
直接は表現できない

そこで
小さい現象の効果を見積もる

その効果を
格子点の物理量に反映する

この流れがわかっていれば、(a)は正しいと判断できます。

一方で、(b)〜(d)は「後から反映する」「境界層乱流は使わない」「メソモデルでは積雲対流パラメタリゼーションを使わない」といった言い切りが誤りです。

■ (a) パラメタリゼーションの定義

(a)は正しいです。

パラメタリゼーションとは、数値予報モデルの格子スケールより小さい現象が、格子点の物理量に与える効果を見積もって反映させることです。

たとえば、格子間隔が数km〜数十kmあるモデルでは、その格子より小さい乱流や雲の細かい構造をそのまま表すことはできません。

しかし、それらの小さい現象は、気温・湿度・風などに影響を与えます。

パラメタリゼーションのイメージ

格子より小さい現象

モデルでは直接表現しにくい

でも
大気の状態には影響する

その影響を見積もる

格子点の物理量に反映

したがって、(a)は正しいです。

■ (b) 予報対象期間の計算後にまとめて反映するのか

(b)は誤りです。

問題文では、すべての予報対象期間について格子点の気象要素が出力された後に、パラメタリゼーションを用いて小さいスケールの現象の効果を反映すると述べています。

しかし、これは正しくありません。

パラメタリゼーションは、予報計算がすべて終わった後にまとめて行う後処理ではありません。

数値予報モデルの時間積分の中で、各時刻の大気状態を計算しながら、小さいスケールの現象の効果を反映していきます。

ここが受験生のつまずきポイントです

パラメタリゼーションを「モデルの出力結果を補正する作業」と考えると、(b)を正しいと思ってしまいます。

しかし、パラメタリゼーションは単なる後処理ではありません。

予報計算が全部終わる

あとから小さい現象を足す

これは誤り

予報計算の途中で
小さい現象の効果を反映する

したがって、(b)は誤りです。

■ (c) メソモデルでは境界層乱流のパラメタリゼーションを用いていないのか

(c)は誤りです。

大気境界層では、地表面の摩擦や加熱の影響により、乱流が発生します。

この乱流は、運動量や熱、水蒸気などを鉛直方向に輸送します。

しかし、大気境界層の乱流は、モデルの格子で直接すべてを表現するには小さすぎる現象です。

そのため、メソモデルでも、大気境界層における乱流による運動量や熱の輸送の効果は、パラメタリゼーションによって扱われます。

大気境界層乱流のイメージ

地表面の摩擦・加熱

乱流が発生

乱流

運動量・熱・水蒸気を輸送

格子で直接表現しにくい

パラメタリゼーションで扱う

したがって、「メソモデルでは用いていない」とする(c)は誤りです。

■ (d) 積雲対流パラメタリゼーションはメソモデルでは用いられないのか

(d)は誤りです。

積雲対流パラメタリゼーションは、モデルの格子で直接表現しきれない積雲対流の効果を扱うためのものです。

全球モデルでは格子間隔が比較的大きいため、積雲対流パラメタリゼーションが重要になります。

一方、メソモデルでも、格子間隔や設定によっては、積雲対流を完全に直接表現できるわけではありません。

そのため、積雲対流パラメタリゼーションは、全球モデルだけでなくメソモデルにも用いられます。

ここも引っかかりやすいです

「メソモデルは細かいから、積雲対流を全部そのまま表現できる」と考えると、(d)を正しいと思ってしまいます。

しかし、メソモデルでも格子間隔より小さい対流の効果は残ります。

メソモデル

全球モデルより細かい

でも
すべての積雲対流を直接表現できるわけではない

だから
積雲対流パラメタリゼーションを用いる場合がある

したがって、(d)は誤りです。

■ 選択肢確認表

項目 判定 理由
(a) 格子スケールより小さい現象の効果を見積もり、格子点の物理量に反映させるのがパラメタリゼーションである。
(b) パラメタリゼーションは予報計算後の後処理ではなく、時間積分の中で用いられる。
(c) 大気境界層の乱流による運動量や熱の輸送は、メソモデルでもパラメタリゼーションで扱われる。
(d) 積雲対流パラメタリゼーションは全球モデルだけでなく、メソモデルにも用いられる。

以上より、正しい組み合わせはです。

■ 受験生がつまずくポイント

1. パラメタリゼーションを「後処理」と思ってしまう

パラメタリゼーションは、予報計算が終わった後に出力値を補正するだけのものではありません。時間積分の途中で、格子より小さい現象の効果を反映します。

2. メソモデルなら小さい現象を全部表現できると思ってしまう

メソモデルは全球モデルより格子間隔が小さいですが、それでも格子より小さい現象は存在します。その効果はパラメタリゼーションで扱います。

3. 境界層乱流を見落とす

地表面付近では、乱流による運動量・熱・水蒸気の輸送が重要です。これは数値予報モデルにとって重要なパラメタリゼーションの対象です。

4. 積雲対流パラメタリゼーションは全球モデル専用だと思ってしまう

積雲対流パラメタリゼーションは、全球モデルだけでなくメソモデルでも用いられます。「メソモデルには用いられていない」という言い切りは誤りです。

5. 「格子点の物理量に反映」という言葉の意味がぼんやりする

格子より小さい現象をそのまま描くのではなく、その現象が気温・風・水蒸気などに与える影響としてモデルに入れる、というイメージで理解しましょう。

■ まとめ

  • パラメタリゼーションは、格子スケールより小さい現象の効果を見積もる方法である。
  • その効果を格子点の気温・風・水蒸気などの物理量に反映する。
  • 予報計算後にまとめて行う後処理ではない。
  • 大気境界層乱流の効果は、メソモデルでもパラメタリゼーションで扱う。
  • 積雲対流パラメタリゼーションは、全球モデルだけでなくメソモデルにも用いられる。
  • (a)正、(b)誤、(c)誤、(d)誤。

正解は③

この問題で必ず押さえたいこと

パラメタリゼーション

格子より小さい現象の効果を見積もる

小さい現象そのものを
直接表現するのではない

その効果を
格子点の物理量に反映する

予報計算の後処理ではなく
計算の中で使われる

境界層乱流
積雲対流

どちらもパラメタリゼーションの重要テーマ

※ 本記事では、一般財団法人 気象業務支援センターより利用許諾を受けて、気象予報士試験問題を掲載しています。
問題文の著作権は一般財団法人 気象業務支援センターに帰属します。

以上、第58回 専門知識 問5の解説でした!

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