【第57回 気象予報士試験 一般知識】問9 緯度別の降水量・蒸発量・水蒸気輸送をわかりやすく解説
こんにちは!今回は第57回気象予報士試験 一般知識 問9を解説します!
この問題は、緯度ごとの降水量、蒸発量、そしてその差であるP−Eの分布を読み取る問題です。
ポイントは、グラフだけでなく、各緯度帯でどの大気循環が働いているかを結びつけることです。
この問題で重要なポイント
- 中緯度の降水は主に温帯低気圧や前線による
- 亜熱帯ではハドレー循環の下降流で乾燥しやすい
- 赤道付近では貿易風が収束し、積乱雲が発達しやすい
- P−Eが正なら、降水量が蒸発量を上回る
- P−Eが負なら、蒸発量が降水量を上回る
- 水蒸気輸送は、P−Eの分布と対応して考える
- 南半球の貿易風帯では、水蒸気は主に赤道側へ運ばれる
■ 問題文
図は緯度方向に平均した年降水量Pと年蒸発量Eならびに両者の差P−Eの緯度分布である。
この図のA〜Dで示す緯度帯について述べた次の文(a)〜(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。
(a) 緯度帯Aの降水量の極大は、主に熱帯域で発生した台風などの熱帯低気圧の降水により形成される。
(b) 緯度帯Bは大規模子午面循環であるハドレー循環の下降流域に対応しており、地上では亜熱帯高圧帯が見られる。
(c) 緯度帯Cでは南北両半球からの貿易風が収束して積乱雲が発生している。
(d) 緯度帯Dでは、水蒸気は主に極側に向かって輸送されている。
| 選択肢 | (a) | (b) | (c) | (d) |
|---|---|---|---|---|
| ① | 正 | 正 | 正 | 誤 |
| ② | 正 | 誤 | 誤 | 誤 |
| ③ | 誤 | 正 | 正 | 誤 |
| ④ | 誤 | 正 | 誤 | 正 |
| ⑤ | 誤 | 誤 | 正 | 正 |
■ 解答
③
(a) 誤
(b) 正
(c) 正
(d) 誤
■ 解き方の方針
この問題は、A〜Dをそれぞれ代表的な緯度帯に置き換えて考えると解きやすいです。
A:中緯度
↓
温帯低気圧・前線
B:亜熱帯
↓
ハドレー循環の下降流
C:赤道付近
↓
貿易風の収束・積乱雲
D:南半球の貿易風帯
↓
水蒸気は赤道側へ
■ (a) Aの降水極大は台風などの熱帯低気圧によるものか
(a)は誤りです。
Aは中緯度の降水量の極大に対応しています。
中緯度で降水量が多くなる主な原因は、台風などの熱帯低気圧ではなく、温帯低気圧や前線活動です。
ここが受験生のつまずきポイントです
降水量が多い
↓
台風?
中緯度では違う
中緯度の降水の主役は、偏西風帯で発達する温帯低気圧や前線です。
したがって、(a)は誤りです。
■ (b) Bはハドレー循環の下降流域か
(b)は正しいです。
Bは亜熱帯付近に対応します。
亜熱帯では、ハドレー循環の下降流が卓越します。
下降流では空気が断熱的に昇温し、相対湿度が下がりやすくなります。
そのため雲ができにくく、降水量は少なくなります。
亜熱帯高圧帯のイメージ
ハドレー循環
↓
亜熱帯で下降流
↓
断熱昇温
↓
乾燥
↓
亜熱帯高圧帯
したがって、(b)は正しいです。
■ (c) Cでは貿易風が収束して積乱雲が発生するか
(c)は正しいです。
Cは赤道付近の降水量の極大に対応しています。
赤道付近では、北半球の北東貿易風と南半球の南東貿易風が収束します。
この収束によって上昇流が発生し、積乱雲が発達しやすくなります。
赤道付近の降水極大
北東貿易風
+
南東貿易風
↓
赤道付近で収束
↓
上昇流
↓
積乱雲
↓
多雨
したがって、(c)は正しいです。
■ (d) Dでは水蒸気は主に極側へ輸送されるか
(d)は誤りです。
Dは南半球の低緯度〜亜熱帯付近に対応しています。
この緯度帯では、南東貿易風によって水蒸気は主に赤道側へ輸送されます。
つまり、問題文の「主に極側に向かって輸送される」は逆です。
水蒸気輸送で迷ったら
南半球の貿易風
↓
南東貿易風
↓
赤道へ向かう風
↓
水蒸気も赤道側へ
したがって、(d)は誤りです。
■ 選択肢確認表
| 項目 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| (a) | 誤 | 中緯度の降水極大は主に温帯低気圧や前線による |
| (b) | 正 | 亜熱帯はハドレー循環の下降流域で、亜熱帯高圧帯が見られる |
| (c) | 正 | 赤道付近では貿易風が収束し、積乱雲が発生しやすい |
| (d) | 誤 | 南半球の貿易風帯では水蒸気は主に赤道側へ輸送される |
以上より、正しい組み合わせは③です。
■ 受験生がつまずくポイント
1. 降水量の極大をすべて熱帯低気圧で説明してしまう
降水量が多いからといって、必ず台風が主役とは限りません。
中緯度では温帯低気圧や前線活動が重要です。
2. 亜熱帯高圧帯と乾燥域を結びつけられない
亜熱帯高圧帯は、ハドレー循環の下降流域です。
下降流では雲ができにくく、降水量が少なくなります。
3. 赤道付近の降水を「ただ暑いから」と考えてしまう
赤道付近の多雨は、日射が強いだけでなく、貿易風の収束による上昇流が重要です。
4. 水蒸気輸送の向きを間違える
南半球の貿易風帯では、風は赤道側へ向かいます。
そのため水蒸気も主に赤道側へ輸送されます。
5. P−Eの意味を忘れる
P−Eが正なら降水が蒸発を上回る場所、負なら蒸発が降水を上回る場所です。
この分布は、水蒸気の収束・発散を考える手がかりになります。
■ まとめ
- Aの中緯度降水極大は、主に温帯低気圧や前線活動による
- Bはハドレー循環の下降流域で、亜熱帯高圧帯に対応する
- Cは貿易風の収束域で、積乱雲が発達しやすい
- Dでは水蒸気は主に赤道側へ輸送される
- したがって、(a)誤、(b)正、(c)正、(d)誤
正解は③
この問題で必ず押さえたいこと
中緯度の降水
↓
温帯低気圧・前線
亜熱帯
↓
ハドレー循環の下降流
↓
乾燥
赤道付近
↓
貿易風の収束
↓
積乱雲・多雨
南半球の貿易風帯
↓
水蒸気は赤道側へ
※ 本記事では、一般財団法人 気象業務支援センターより利用許諾を受けて、気象予報士試験問題を掲載しています。
問題文の著作権は一般財団法人 気象業務支援センターに帰属します。
以上、第57回 一般知識 問9の解説でした!
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