【第54回 気象予報士試験 実技2】問2を徹底解説|台風の温帯低気圧化・温暖前線解析・大雨の要因
こんにちは!今回は第54回 気象予報士試験 実技2 問2を解説します!
問2では、九州に接近していた台風が、24日21時から26日21時にかけてどのように構造を変化させるかを解析します。
中心となるテーマは、
- 台風の鉛直軸のずれ
- 暖気核の変化
- 湿潤域と乾燥域の非対称化
- 強風域の中心から外側への移動
- 台風の温帯低気圧化
- 850hPa面の温暖前線の作図
- 前線性上昇と地形性上昇による大雨
です。
この問題で受験生が止まりやすいのは、各時刻の図を別々に見てしまい、台風の構造が時間とともにどう変わったかを整理できないことです。
実技試験では、単に「温帯低気圧化した」と覚えるのではなく、
- どの中心がずれたのか
- 暖気核が残っているか
- 湿潤域と強風域がどのように非対称になったか
- 前線がどこに形成されたか
を資料から具体的に説明できるようにしておく必要があります。
この問題で重要なポイント
- 台風の構造変化は、地上・500hPa・700hPa・850hPaを縦につないで読む
- 500hPa渦度極大点と地上中心の位置関係を比較する
- 500hPa気温極大点の有無から上層の暖気核を確認する
- 850hPa低気圧性循環中心と相当温位極大点を分けて読む
- 700hPa湿数分布の非対称化から乾燥空気の流入を読む
- 強風域が中心付近から離れて弧状に分布する変化に注目する
- 温帯低気圧化は1つの要素ではなく、複数の構造変化から判断する
- 前線作図は500hPa解析から始め、閉塞の有無を確認する
- 850hPa等相当温位線の集中帯と風のシアを重ねて温暖前線を決める
- 大雨の要因は、前線性上昇と地形性上昇を分けて記述する
記述式問題の考え方はこちらの記事も参考にしてください!
⇒ 【実技試験講義No.1】気象予報士試験実技試験記述5型
■ 問2の問題文
問題文
図8〜図11は24日21時を初期時刻とする24時間・48時間予想図、図12は地形図である。これらと、図1〜図5および図7を用いて以下の問いに答えよ。なお、ここで地上のじょう乱の中心を「地上中心」と呼ぶ。
問2(1)
24日21時に九州に接近中の台風の構造に関わる諸元の推移をまとめた次の表の空欄①〜⑥に入る適切な語句または数値を答えよ。
ただし、①②⑥は8方位または「同位置」、④⑤は8方位で答えよ。☆については、適当な文章を45字程度で述べよ。
| 項目 | 24日21時 | 25日21時 | 26日21時 |
|---|---|---|---|
| 500hPa渦度極大点の地上中心から見た方角 | 同位置 | (①) | (②) |
| 中心付近の500hPa気温極大の有無 | 有 | (③) | 無 |
| 700hPa湿数分布 | 図の掲載なし | 中心の西側から北側、東側にかけて湿潤。中心付近で相対的に乾燥。 | 中心の西側から北側、(④)側にかけて湿潤。中心付近と中心の(⑤)側で相対的に乾燥。 |
| 850hPaの低気圧性循環中心の地上中心から見た方角 | 同位置 | 同位置 | (⑥) |
| 850hPa風速50ノット以上の領域 | 中心の南東側に広く分布 | 中心の西側、北側、東側、南東側で中心から200km以内と、この領域の北東部分から南東側に600kmまで弧状に分布 | (☆) |
| 850hPa相当温位極大値 | 360K | 357K | 354K |
| 850hPa相当温位極大点の地上中心から見た方角 | 同位置 | 同位置 | 同位置 |
問2(2)
問2(1)を踏まえて、この台風の24日21時から26日21時にかけての構造変化について述べた次の文章の空欄ⓐ〜ⓗに入る適切な語句を答えよ。
この台風は、24日21時には、気象衛星画像で中心に(ⓐ)があり、500hPaと850hPaで中心部に(ⓑ)がみられ、500hPaの(ⓒ)、850hPaの(ⓓ)と(ⓔ)がいずれも地上中心と同位置にあって、熱帯じょう乱特有の特徴を備えている。
ただし、850hPa面の(ⓕ)は進行方向の右側と左側で差が大きくなっている。
25日21時には、この台風に伴う700hPaの湿数分布の形は非対称となる予想である。
さらに、26日21時の500hPaでは、(ⓒ)が地上中心とは異なる位置に予想され、(ⓖ)も地上中心付近には見られなくなる。
これらの特徴は、台風の(ⓗ)が進行することを示している。
ただし、850hPaの(ⓓ)と(ⓔ)は26日21時においても地上中心と同位置に予想されており、この台風はその時点で熱帯じょう乱としての性質を残しているとみられる。
問2(3)
図11によれば、25日から26日にかけて、日本付近で前線が明瞭になると予想される。
解答図の太枠線で囲まれた範囲について、25日21時における850hPa面の温暖前線を、前線記号を用いて記入せよ。
問2(4)
図8(上)において、紀伊半島から四国にかけて表現されている降水域には南海上からの暖気流が関わっており、降水量が多くなると予想される。
この降水量の増加に関わると考えられる2つの要因を、図11と図12に基づき、書き出しを含めて、いずれも25字程度で述べよ。
■ 問2(1) 台風の構造に関わる諸元の推移
模範解答
| 空欄 | 解答 |
|---|---|
| ① | 同位置 |
| ② | 北(北西) |
| ③ | 有 |
| ④ | 南東 |
| ⑤ | 南 |
| ⑥ | 同位置 |
☆ 850hPa風速50ノット以上の領域:
中心の北西側から北東側,南東側にかけて,中心から100〜300km離れて弧状に分布。
(42字)
本番での解き方
問2(1)では、1つの時刻の図をすべて見てから次の時刻へ進むより、同じ要素を時間方向に追う方が構造変化を見つけやすくなります。
24日 → 25日 → 26日を比較
↓
500hPa気温極大の有無を比較
↓
700hPa湿潤域・乾燥域を比較
↓
850hPa循環中心を比較
↓
850hPa強風域を比較
↓
850hPa相当温位極大点と極大値を比較
◇ ① 25日21時の500hPa渦度極大点は地上中心と同位置
図9(上)で、25日21時の地上中心と500hPa渦度極大点の位置を比較します。
地上中心付近に正渦度極大があり、両者はほぼ重なっています。
したがって①は、
同位置
です。
渦度極大点は何を表すのか
500hPaの正渦度極大点は、中層における低気圧性回転の強い位置を表します。
熱帯低気圧として鉛直軸がそろっている段階では、
↓
850hPa低気圧性循環中心
↓
500hPa渦度極大点
がほぼ同じ位置に並びます。
◇ ② 26日21時の500hPa渦度極大点は北または北西
図9(下)では、26日21時の500hPa渦度極大点が地上中心からずれています。
その位置は、地上中心から見て北側、読み取り方によっては北西側です。
北(北西)
このずれは、台風の鉛直軸が傾き始め、上層のじょう乱と地上中心が一致しなくなったことを示します。
「少しずれている」ではなく方角で答える
この空欄は8方位または「同位置」で答える問題です。
地上中心を基準にして、500hPa渦度極大点がどちら側にあるかを答えます。
500hPa図だけを見て方角を決めず、図8の地上中心と同じ時刻で比較してください。
◇ ③ 25日21時にも500hPa気温極大が有る
図10(上)の500hPa気温分布を見ると、25日21時にも地上中心付近に周囲より気温の高い領域が残っています。
したがって③は、
有
です。
500hPaの気温極大は、台風の上層に暖気核が残っていることを示す重要な手掛かりです。
500hPa気温極大の時間変化
中心付近に気温極大あり
↓
25日21時
中心付近に気温極大あり
↓
26日21時
中心付近の気温極大なし
26日21時には上層の暖気核が不明瞭になっており、温帯低気圧化の進行を示します。
◇ ④ 南東側まで湿潤
図10(下)の700hPa湿数分布を確認します。
湿数が小さい領域ほど、気温と露点温度の差が小さく、空気が湿っています。
26日21時には、地上中心の西側から北側を通り、南東側にかけて湿潤域が分布しています。
したがって④は、
南東
です。
湿数の読み方
- 湿数が小さい:湿潤
- 湿数が大きい:乾燥
図の網掛けや数値の定義を確認し、湿数が大きい場所を湿潤域と取り違えないようにしましょう。
◇ ⑤ 中心の南側で相対的に乾燥
26日21時には、地上中心付近に加えて、その南側にも相対的に乾燥した領域が見られます。
したがって⑤は、
南
です。
湿潤域と乾燥域が中心の周囲に同心円状ではなく、方向によって異なる分布になったことが重要です。
非対称化を見落とさない
熱帯低気圧の成熟期には、中心を取り囲むように湿潤域が分布しやすくなります。
しかし、温帯低気圧化が進むと、前線や乾燥空気の流入によって湿潤域と乾燥域が非対称になります。
単に「湿っている」「乾いている」と読むのではなく、中心のどちら側に分布しているかを確認します。
◇ ⑥ 850hPa低気圧性循環中心は同位置
図11(下)で、26日21時の850hPaの風を確認します。
風の反時計回り循環の中心は、地上中心とほぼ同じ位置にあります。
したがって⑥は、
同位置
です。
500hPa渦度極大点は地上中心からずれていますが、850hPaの循環中心は地上中心と重なっています。
この違いは、台風の上層構造が崩れ始めている一方、下層には熱帯じょう乱としての循環が残っていることを示しています。
◇ ☆ 強風域は中心から離れて弧状に分布
図11(下)の50ノット以上の風を確認します。
26日21時の強風域は、台風中心付近に集中していません。
中心の北西側から北東側を通り、南東側にかけて、中心から約100〜300km離れた場所に弧状に分布しています。
記述式解答のポイント:分布型
どこで
中心の北西側から北東側、南東側にかけて
中心からの距離
100〜300km離れて
どのような形で
弧状に分布
中心の北西側から北東側,南東側にかけて,中心から100〜300km離れて弧状に分布。
(42字)
方向だけでなく距離と形も書く
「中心の北側に強風域がある」だけでは不十分です。
設問では分布の特徴を記述するため、
- どの方向にあるか
- 中心からどのくらい離れているか
- どのような形に分布しているか
を含めます。
◇ 相当温位極大値は低下している
850hPa面の相当温位極大値は、次のように低下しています。
| 時刻 | 相当温位極大値 |
|---|---|
| 24日21時 | 360K |
| 25日21時 | 357K |
| 26日21時 | 354K |
極大点そのものは地上中心と同位置を保っていますが、極大値は時間とともに低下しています。
つまり、下層の暖湿な中心構造は残っているものの、その強さは弱まりつつあります。
問2(1)でつまずきやすいポイント
- 異なる時刻の地上中心と高層中心を比較してしまう
- 渦度極大点と気温極大点を混同する
- 湿数が大きい場所を湿潤域だと思ってしまう
- 850hPa循環中心と相当温位極大点を同じ項目として扱う
- 強風域の方向だけを書き、距離と弧状分布を書かない
- 26日21時には完全に温帯低気圧になったと断定してしまう
- 相当温位極大点の位置と極大値の低下を分けて考えられない
■ 問2(2) 台風の構造変化と温帯低気圧化
模範解答
| 空欄 | 解答 |
|---|---|
| ⓐ | 眼 |
| ⓑ | 暖気核 |
| ⓒ | 渦度極大点 |
| ⓓ | 低気圧性循環中心 |
| ⓔ | 相当温位極大点 |
| ⓕ | 風速 |
| ⓖ | 気温極大点 |
| ⓗ | 温帯低気圧化 |
※ⓓとⓔは順不同です。
本番での解き方
↓
眼の有無を確認
↓
500hPa・850hPaの中心構造
↓
暖気核を確認
↓
各層の中心が地上中心と重なるか確認
↓
25日・26日の非対称化と軸のずれを確認
↓
温帯低気圧化と判断
◇ ⓐ 眼
図5の気象衛星赤外画像では、台風中心に雲の少ない円形の領域が見られます。
これは台風の、
眼
です。
眼が明瞭に見られることは、24日21時の台風が強い熱帯じょう乱として組織化されていることを示します。
◇ ⓑ 暖気核
台風は、中心付近が周囲より暖かい暖気核構造を持つじょう乱です。
本問では、500hPaで気温極大、850hPaで相当温位極大が中心付近に見られます。
これらは中心部に、
暖気核
があることを示しています。
暖気核の確認方法
- 500hPa:中心付近に気温極大がある
- 850hPa:中心付近に高相当温位域がある
- 地上から上層まで中心軸がそろっている
◇ ⓒ 渦度極大点
500hPaで台風の低気圧性回転が最も強い場所は、正渦度が最大となる場所です。
文章では「500hPaの」と続いているため、ⓒは、
渦度極大点
です。
24日21時には地上中心と同位置ですが、26日21時には地上中心から北または北西へずれます。
◇ ⓓ 低気圧性循環中心・ⓔ 相当温位極大点
850hPa面で確認する要素は、風の循環と相当温位です。
- 風の反時計回り循環の中心:低気圧性循環中心
- 相当温位が最も高い場所:相当温位極大点
したがって、
- ⓓ 低気圧性循環中心
- ⓔ 相当温位極大点
です。
公式解答ではⓓとⓔは順不同です。
◇ ⓕ 風速
問1(2)で確認したとおり、24日21時の850hPa風速分布は、進行方向の右側で強く、左側で弱くなっています。
したがって、右側と左側で差が大きくなっているものは、
風速
です。
風向ではなく風速
台風の左右で風向が違うのは、反時計回り循環である以上当然です。
ここで問われている非対称性は、問1(2)で確認した強風側と弱風側の差であるため、答えは「風速」です。
◇ ⓖ 気温極大点
26日21時には、500hPaの渦度極大点が地上中心からずれるだけでなく、地上中心付近に500hPa気温の極大が見られなくなります。
したがってⓖは、
気温極大点
です。
上層の気温極大が消えることは、台風特有の暖気核構造が崩れつつあることを示します。
◇ ⓗ 温帯低気圧化
24日21時から26日21時にかけて、次の変化が見られます。
- 500hPa渦度極大点が地上中心からずれる
- 500hPa気温極大点が地上中心付近から消える
- 700hPa湿潤域と乾燥域が非対称になる
- 850hPa強風域が中心から離れて弧状に分布する
- 日本付近で前線が明瞭になる
これらは、台風の、
温帯低気圧化
が進んでいることを示します。
温帯低気圧化のサイン
↓
上層と下層の中心がずれ始める
↓
暖気核が弱まる
↓
湿潤域・乾燥域が非対称になる
↓
強風域が中心から離れる
↓
前線が形成される
↓
温帯低気圧化が進行
26日21時に完全な温帯低気圧とは断定しない
26日21時にも、850hPaの低気圧性循環中心と相当温位極大点は地上中心と同位置にあります。
つまり、上層では温帯低気圧的な構造が強まりつつありますが、下層には熱帯じょう乱としての性質が残っています。
したがって、模範解答どおり「温帯低気圧化が進行する」と表現し、「完全に温帯低気圧になった」とは断定しません。
問2(2)でつまずきやすいポイント
- 暖気核と相当温位極大点を同じ用語として扱う
- 500hPaの渦度極大点と気温極大点を入れ替える
- 850hPaの循環中心と地上中心の違いを見落とす
- 台風の左右差を風向の差だと考える
- 温帯低気圧化を前線の有無だけで判断する
- 26日21時に熱帯じょう乱の性質がすべて消えたと考える
■ 問2(3) 25日21時の850hPa温暖前線の作図
問題文
図11に基づき、解答図の太枠線で囲まれた範囲について、25日21時における850hPa面の温暖前線を、前線記号を用いて記入します。
模範解答の位置
温暖前線は、朝鮮半島付近から日本海西部を通り、日本海中部付近へ南東方向に延びる850hPa面の前線帯に沿って作図します。
温暖前線記号の半円は、暖気が進む側に向けて記入します。
前線解析は必ず500hPaから始める
850hPa面の前線作図であっても、いきなり等相当温位線の集中帯だけを見て線を引いてはいけません。
まず500hPaのじょう乱と地上中心の位置関係を確認し、台風の発達段階と閉塞の有無を判断します。
◇ 前線解析① 500hPa解析から始める
図9(上)で、25日21時の500hPa高度・渦度分布を確認します。
この時刻では、500hPa渦度極大点は地上中心とほぼ同位置にあります。
一方で、700hPa湿数分布や850hPa相当温位分布はすでに非対称化し始めており、台風が温帯低気圧化の過程に入っていることが分かります。
500hPaで確認する項目
- 地上中心と500hPa渦度極大点の位置関係
- トラフや正渦度域の位置
- 上層じょう乱が地上中心からずれているか
- 台風の発達段階と構造変化
◇ 前線解析② 閉塞しているかを判断する
25日21時の資料では、台風の温帯低気圧化は進み始めていますが、850hPaの低気圧性循環中心と相当温位極大点は地上中心と同位置です。
また、本問は温暖前線の作図を求めており、閉塞前線や閉塞点の作図は求めていません。
閉塞点・閉塞型について
本問では閉塞していないため、閉塞点の決定と閉塞前線の型の判定は行わない。
◇ 前線解析③ 850hPaの前線位置を推定する
図11(上)の850hPa相当温位と風を確認します。
前線位置を推定するときは、次の2つを最優先で重ねます。
- 等相当温位線の集中帯
- 風向が大きく変化する低気圧性シアー
温暖前線の北側には相対的に低い相当温位の空気があり、南側には高相当温位の暖湿空気があります。
その境界で等相当温位線が集中し、風向も変化しています。
↓
暖気側と寒気側を区別する
↓
前線を挟む風向変化を確認する
↓
集中帯と風のシアーが重なる位置を前線候補とする
◇ 前線解析④ 閉塞点を決める
本問では閉塞していないため、閉塞点は決定しません。
温暖前線の始点は、850hPaの低気圧性循環中心付近と、等相当温位線集中帯・風のシアーがつながる位置を基準にします。
◇ 前線解析⑤ 閉塞前線の型を判断する
本問では閉塞前線を作図しないため、寒冷型閉塞・温暖型閉塞の判定は行いません。
◇ 前線解析⑥ 850hPa面へ温暖前線を作図する
等相当温位線集中帯と風のシアーが一致する位置を、滑らかな線で結びます。
前線記号は温暖前線を用い、半円を暖気が進む側に向けます。
作図手順
- 図9で500hPa渦度極大点と地上中心を確認する
- 閉塞の有無を判断する
- 図11で850hPa等相当温位線の集中帯を探す
- 集中帯の両側の風向を比較し、低気圧性シアーを確認する
- 低気圧性循環中心付近から前線帯を滑らかにつなぐ
- 温暖前線記号の半円を暖気の進む方向へ付ける
- 解答図の太枠内に収める
作図でありがちな失敗
- 500hPaを確認せず、いきなり850hPaの線を引く
- 相当温位の高い領域の中心に前線を引く
- 等相当温位線の1本をそのままなぞる
- 風のシアーを確認しない
- 低気圧中心から不自然に直線を引く
- 温暖前線記号の半円を寒気側へ向ける
- 太枠の外まで作図する
今回の前線解析フローチャート
↓
地上中心と渦度極大点の位置関係を確認
↓
閉塞の有無を判断
↓
本問では閉塞していないため閉塞点・閉塞型は判定しない
↓
850hPa等相当温位線の集中帯を確認
↓
850hPa風のシアーを確認
↓
暖気側と寒気側を決定
↓
温暖前線を滑らかに作図
↓
半円を暖気の進む方向へ付ける
問2(3)でつまずきやすいポイント
- 地上の前線位置をそのまま850hPa面へ写す
- 最も高い相当温位の場所に前線を引く
- 相当温位の集中帯だけを見て風を確認しない
- 前線の暖気側と寒気側を逆にする
- 半円を前線の移動方向と逆向きに付ける
- 閉塞していないのに閉塞前線を追加する
■ 問2(4) 紀伊半島から四国で降水量が増える要因
模範解答
要因1:
暖湿空気が,温暖前線のところで収束し上昇する。
(書き出しを含め23字)
要因2:
暖湿空気が,太平洋側の南斜面にぶつかって上昇する。
(書き出しを含め25字)
※要因1と要因2は順不同です。
記述式解答のポイント:原因型
2つの解答は、どちらも「暖湿空気が」で書き始めます。
その後に、
- どこで
- どのような作用を受け
- どのように上昇するか
を続けます。
◇ 要因1 温暖前線での収束・上昇
図11(上)では、紀伊半島から四国の南側へ高相当温位の暖湿空気が流れ込んでいます。
一方、その北側には温暖前線が形成され、風向の異なる空気が集まる収束帯となっています。
↓
温暖前線付近で風が収束
↓
暖湿空気が持ち上げられる
↓
雲が発達
↓
降水量が増加
したがって、1つ目の要因は、
暖湿空気が,温暖前線のところで収束し上昇する。
です。
記述の分解
どこで
温暖前線のところで
何が
南海上から流入する暖湿空気が
どのように変化するか
収束して上昇する
結果
降水が強化される
「前線があるため」だけでは不足
前線が存在するだけでは、降水が増える仕組みを説明したことになりません。
模範解答では、
- 暖湿空気
- 温暖前線
- 収束
- 上昇
を含めています。
◇ 要因2 太平洋側南斜面での地形性上昇
図12の地形を見ると、紀伊半島と四国には標高の高い山地があり、太平洋側に南向きの斜面があります。
南海上から流れ込む暖湿空気は、この南斜面にほぼ直交するように吹き付けます。
↓
紀伊半島・四国の南斜面にぶつかる
↓
地形に沿って強制的に上昇
↓
冷却・凝結
↓
降水量が増加
したがって、2つ目の要因は、
暖湿空気が,太平洋側の南斜面にぶつかって上昇する。
です。
記述の分解
どこで
太平洋側の南斜面で
何が
南海上から流入する暖湿空気が
どのように変化するか
斜面にぶつかり、地形に沿って上昇する
原因
紀伊半島・四国の山地による地形性上昇
「山にぶつかる」だけでは不十分
降水量が増える直接的な仕組みは、空気が山にぶつかることではなく、その空気が斜面に沿って上昇することです。
必ず「暖湿空気」「南斜面」「上昇」を含めます。
◇ 前線性上昇と地形性上昇が重なる
本問の降水域では、2つの上昇機構が同時に働きます。
| 上昇機構 | 資料 | 仕組み |
|---|---|---|
| 前線性上昇 | 図11 | 暖湿空気が温暖前線付近で収束して上昇する |
| 地形性上昇 | 図12 | 暖湿空気が太平洋側南斜面にぶつかって上昇する |
+
南斜面での地形性上昇
↓
上昇流が強化
↓
紀伊半島から四国で降水量が増加
問2(4)でつまずきやすいポイント
- 2つとも「暖湿空気が流れ込む」とだけ書く
- 温暖前線で起こる収束を書かない
- 前線面を滑昇すると書き、問題図にない細部まで推測する
- 山地にぶつかるだけで上昇を書かない
- 「南斜面」ではなく単に「山」と書く
- 図11と図12の役割を分けて考えられない
- 文字数を増やしすぎて必要な要素が埋もれる
■ 問2 解答確認表
| 設問 | 解答 | 判断材料 |
|---|---|---|
| (1)① | 同位置 | 25日21時の地上中心と500hPa渦度極大点 |
| (1)② | 北(北西) | 26日21時の地上中心と500hPa渦度極大点 |
| (1)③ | 有 | 25日21時の中心付近の500hPa気温極大 |
| (1)④ | 南東 | 26日21時の700hPa湿潤域 |
| (1)⑤ | 南 | 26日21時の700hPa相対的乾燥域 |
| (1)⑥ | 同位置 | 26日21時の850hPa低気圧性循環中心 |
| (1)☆ | 中心の北西側から北東側、南東側にかけて、中心から100〜300km離れて弧状に分布 | 26日21時の850hPa風速50ノット以上の領域 |
| (2)ⓐ | 眼 | 24日21時の気象衛星赤外画像 |
| (2)ⓑ | 暖気核 | 500hPa気温極大と850hPa高相当温位 |
| (2)ⓒ | 渦度極大点 | 500hPa高度・渦度図 |
| (2)ⓓ | 低気圧性循環中心 | 850hPa風の閉じた循環 |
| (2)ⓔ | 相当温位極大点 | 850hPa相当温位分布 |
| (2)ⓕ | 風速 | 台風の進行方向右側と左側の差 |
| (2)ⓖ | 気温極大点 | 26日21時の500hPa気温分布 |
| (2)ⓗ | 温帯低気圧化 | 軸のずれ・暖気核の弱化・非対称化・前線形成 |
| (3) | 850hPa温暖前線を前線記号で作図 | 500hPa解析、等相当温位線集中帯、風のシアー |
| (4)要因1 | 暖湿空気が、温暖前線のところで収束し上昇する | 図11の前線と風・相当温位分布 |
| (4)要因2 | 暖湿空気が、太平洋側の南斜面にぶつかって上昇する | 図12の紀伊半島・四国の地形 |
この問題で必ず押さえたいこと
眼・暖気核・鉛直にそろった中心
↓
熱帯低気圧らしい対称構造
中心軸はまだおおむね同位置
↓
湿数分布と強風域が非対称化
500hPa渦度極大点が北側へずれる
↓
500hPa気温極大点が消える
↓
温帯低気圧化が進行
↓
26日21時にも地上中心と同位置
↓
熱帯じょう乱の性質も残る
↓
500hPaから確認
↓
閉塞の有無を判断
↓
850hPa等相当温位線集中帯と風のシアー
↓
温暖前線を作図
↓
温暖前線での収束上昇
+
太平洋側南斜面での地形性上昇
■ まとめ
- 25日21時の500hPa渦度極大点は地上中心と同位置である
- 26日21時には500hPa渦度極大点が地上中心の北または北西へずれる
- 500hPa気温極大は25日21時まで残るが、26日21時には見られなくなる
- 700hPa湿数分布は時間とともに非対称になる
- 26日21時の850hPa低気圧性循環中心は地上中心と同位置である
- 強風域は中心から100〜300km離れ、北西側から北東側、南東側へ弧状に分布する
- 850hPa相当温位極大値は360Kから354Kへ低下する
- 24日21時の台風には眼と暖気核があり、各層の中心がそろっている
- 軸のずれ・暖気核の弱化・湿潤域の非対称化は温帯低気圧化のサインである
- 26日21時にも下層には熱帯じょう乱としての性質が残っている
- 前線作図では500hPa解析から始め、閉塞の有無を判断する
- 本問では閉塞していないため、閉塞点と閉塞型の判定は行わない
- 温暖前線は850hPa等相当温位線集中帯と風のシアーから決める
- 紀伊半島から四国の大雨には、温暖前線での収束上昇が関係する
- 太平洋側南斜面での地形性上昇も降水量を増加させる
※ 本記事では、一般財団法人 気象業務支援センターより利用許諾を受けて、気象予報士試験問題を掲載しています。
問題文の著作権は一般財団法人 気象業務支援センターに帰属します。
以上、第54回 気象予報士試験 実技2 問2の解説でした!
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