【第54回 気象予報士試験 実技2】問1を徹底解説|台風の風速分布・高気圧の鉛直構造・300hPaトラフ

こんにちは!今回は第54回 気象予報士試験 実技2 問1を解説します!

問1では、九州に接近している非常に強い台風と、日本の北側にある2つの高気圧、さらに黄海から朝鮮半島北部に広がる雲域について解析します。

使用する資料は、

  • 地上天気図
  • 850hPa相当温位・風予想図
  • 500hPa天気図
  • 850hPa天気図
  • 気象衛星赤外画像
  • 300hPa天気図

です。

一見すると、それぞれ独立した問題に見えます。

しかし、実際には、

  • 地上天気図から台風の位置と移動を読む
  • 850hPa面で台風の非対称な風速分布を読む
  • 地上と850hPaの中心位置から高気圧軸の傾きを判断する
  • 高気圧の背の高さと下層気温を結びつける
  • 850hPaと300hPaの風から温度移流を判断する
  • 上層天気図から雲域の成因となるトラフを作図する

というように、複数の高度の資料をつなげて考える必要があります。

受験生が止まりやすいのは、1枚の図だけを見て、すぐに答えを決めようとしてしまうことです。

本問では、地上・850hPa・500hPa・300hPaを立体的につなげて読むことが重要です。

この問題で重要なポイント

  • 台風の位置・進行方向・速度は地上天気図の台風情報から読む
  • 距離を読むときはkmと海里を区別する
  • 最外側の閉じた等圧線と中心気圧を混同しない
  • 台風の進行方向右側では風速が強くなりやすい
  • 台風中心部では相当温位が最も高くなっている
  • 地上の気圧の尾根が850hPa面では温度場の谷に対応している
  • 高気圧軸の傾きは、地上中心と850hPa中心を比較して判断する
  • 高気圧の軸は上空ほど高温側へ傾く
  • 下層の気温が低い高気圧は、背が低くなりやすい
  • 温度移流は風向だけでなく、風上側の温度を確認する
  • トラフは衛星画像ではなく、300hPa天気図を基準に作図する

■ 問1の問題文

問題文

図1は24日21時の地上天気図、図2は24日21時を対象時刻とする予想図、図3、図4および図6は24日21時の高層天気図、図5は24日21時の気象衛星画像、図7は24日21時の解析図である。これらを用いて以下の問いに答えよ。

問1(1)

24日21時の日本付近の気象概況について述べた次の文章の空欄①〜⑫に入る適切な語句または整数値を答えよ。ただし、①④は16方位、②⑦は1の位の数字を四捨五入した10の倍数で、⑧⑩⑫は下の枠内からそれぞれ1つ選んで答えよ。なお、地上天気図において、鹿児島の位置は鹿児島の地点円の中心とする。

地上天気図によると、非常に強い台風が九州に接近中である。台風の中心は、鹿児島の(①)およそ(②)kmの位置にあり、(③)ノットの速さで(④)へ進んでいる。台風がこの速度を維持すれば、中心が鹿児島に最も近づくのは25日の(⑤)時頃とみられる。

地上天気図で、この台風の最も外側にある閉じた等圧線の値は(⑥)hPaであり、その半径は中心の南東側で約(⑦)海里である。この台風により15m/s以上の強風が吹いている可能性のある領域は、中心の南東側より北西側で(⑧)。

沿海州北部の沿岸には、中心気圧が(⑨)hPaの高気圧があって北日本を覆い、一部は関東地方に張り出している。関東地方から小笠原諸島の西にかけては南北にのびる気圧の(⑩)となっており、それを北から南へたどっていくと、東よりの風が西よりの風に変わるところがある。その部分を気圧の(⑪)といい、そこでの気圧は1010hPaより(⑫)。

空欄 選択肢
広い/狭い
尾根/谷
高い/低い

問1(2)

図2に基づき、九州に接近中の台風に伴う850hPa面の風速分布の特徴を、台風中心を取り巻く風速分布に着目し、風速が最大となる位置とその風速値に言及して50字程度で述べよ。

また、この台風に伴う850hPa面の相当温位分布の特徴を15字程度で述べよ。

問1(3)

沿海州北部の沿岸とアムール川中流域にある高気圧について、図1、図3および図4を用いて以下の問いに答えよ。

  1. 図1では、三陸沿岸から関東地方にかけてと、沿海州の沿岸から朝鮮半島の東岸にかけては、いずれも沿海州北部の沿岸にある高気圧から周囲より気圧の高い領域が南へのびている。図4に基づき、これら2つの気圧の高い領域に関連する下層(850hPa面)の温度分布に共通した特徴を30字程度で述べよ。
  2. 図1でアムール川中流域にある高気圧について、850hPa面における中心の緯度と経度を1°刻みで答えよ。また、地上から850hPa面にかけての高気圧中心の軸の傾きの方向を8方位で答えよ。さらに、高気圧中心の軸の上方に向かっての傾きの方向と850hPa面の温度分布との対応関係を、図4を用いて35字程度で述べよ。
  3. 850hPa面では、アムール川中流域にある地上の高気圧に対応する高気圧がみられるが、沿海州北部の沿岸にある地上の高気圧に対応する高気圧はみられない。次の文章の空欄㋐に入る語句を選び、㋑に入る説明を簡潔に答えよ。

沿海州北部の沿岸にある高気圧は、アムール川中流域の高気圧より背が(㋐)。これは、前者が後者に比べ、(㋑)ことと対応している。

㋐:高い/低い

問1(4)

図5において、黄海から朝鮮半島北部にかけて破線で囲って示した台風とは異なる雲域について、以下の問いに答えよ。

  1. 図2を用いて、この雲域の850hPa面において卓越する風向を8方位で答えよ。また、図6を用いて、この雲域の300hPa面において卓越する風向の範囲を45°の幅の2方位「A〜B」で表す場合のA、Bを、いずれも8方位で答えよ。さらに、850hPa〜300hPa間の気層における温度移流を簡潔に答えよ。
  2. この雲域の成因に関連する300hPa面のトラフを、解答図に実線で記入せよ。

■ 問1(1) 台風と周辺の気圧配置

模範解答

空欄 解答
南西
280
20
北東
5
1000
180
狭い
1020
尾根
鞍部
低い

本番での解き方

問1(1)は、文章を最初から順番に埋めるより、図1の中で確認する場所ごとに処理した方が速く解けます。

台風中心と鹿児島の位置関係

①・②を埋める

台風中心付近の英文情報

③・④を埋める

距離と移動速度

⑤を求める

閉じた等圧線と強風域

⑥〜⑧を埋める

沿海州北部の高気圧と周辺の風

⑨〜⑫を埋める

◇ ① 南西・② 280km

図1で、まず鹿児島の地点円の中心を確認します。

台風中心は、鹿児島から見て南西方向に位置しています。

したがって①は、

南西

です。

次に、鹿児島から台風中心までの距離を読み取ります。

問題文では、1の位を四捨五入した10の倍数で答えるよう指示されています。

図上の緯度・経度と距離の目盛りから、鹿児島から台風中心までは約280kmと読み取ります。

約280km

②の単位を必ず確認する

②で求めるのは台風の中心気圧ではありません。

問題文は、

「鹿児島の南西およそ(②)km」

となっています。

したがって、②は鹿児島から台風中心までの距離です。

◇ ③ 20ノット・④ 北東

台風の移動方向と速度は、図1の台風中心付近に記載された英文情報から読み取ります。

台風情報には、進行方向と移動速度として、

NE 20KT

に相当する情報が記されています。

  • NE:北東
  • 20KT:20ノット

したがって、

  • ③ 20
  • ④ 北東

です。

台風の移動方向と周辺の風向を混同しない

地上天気図に記入されている矢羽根は、各観測地点で吹いている風の向きと速さを表しています。

台風そのものの進行方向と速度は、台風中心付近に記載された台風情報から読みます。

◇ ⑤ 25日5時頃

台風は24日21時に鹿児島の南西約280kmにあり、北東へ20ノットで進んでいます。

20ノットは、1時間に約37km進む速さです。

移動時間の概算

1ノット=1時間に1海里

1海里≒1.852kmなので、

20ノット×1.852≒37km/h

280km÷37km/h≒7.6時間

24日21時+約8時間=25日5時頃

したがって⑤は、

5

です。

単純に距離だけを割る問題ではない

厳密には、台風中心から鹿児島までの直線距離と、台風の進行方向との関係も考える必要があります。

ただし、本問では台風が現在の進行方向と速度を維持すると仮定し、図上で最接近する時刻を概算します。

◇ ⑥ 1000hPa

図1で、台風中心の周囲にある閉じた等圧線を内側から外側へ追っていきます。

最も外側まで閉じている等圧線は、

1000hPa

です。

中心気圧を答えない

この問題で問われているのは、台風の中心気圧ではありません。

「最も外側にある閉じた等圧線の値」が問われています。

中心気圧と最外側の閉じた等圧線は、必ず分けて考えましょう。

◇ ⑦ 180海里

台風中心から南東方向に、最外側の1000hPa等圧線までの距離を読み取ります。

その半径は約180海里です。

約180海里

kmと海里を区別する

空欄 読み取るもの 単位
鹿児島から台風中心まで km
台風中心から1000hPa等圧線まで 海里

同じ距離の読み取りでも、指定された単位が異なります。

◇ ⑧ 狭い

地上天気図に記載された台風情報では、15m/s以上の強風が吹いている可能性のある範囲が、方向別の半径で示されています。

台風中心の南東側では強風域が広く、北西側では相対的に狭くなっています。

したがって⑧は、

狭い

です。

一般論ではなく、図の数値で判断する

「台風の右側は風が強い」という知識は重要です。

しかし、問1(1)で聞かれているのは、地上天気図に記載された実際の強風域の広がりです。

必ず南東側と北西側の半径を比較して答えます。

◇ ⑨ 1020hPa

図1の沿海州北部の沿岸にある高気圧中心を確認します。

中心に記載された気圧は、

1020hPa

です。

◇ ⑩ 尾根

沿海州北部の沿岸にある高気圧から、北日本を経て関東地方へ、周囲より気圧の高い領域が張り出しています。

さらに、関東地方から小笠原諸島の西にかけて、気圧の高い領域が南北に細長く伸びています。

このような高圧部の張り出しを、

気圧の尾根

と呼びます。

気圧の尾根と気圧の谷

用語 特徴
気圧の尾根 周囲より気圧の高い領域が細長く伸びている
気圧の谷 周囲より気圧の低い領域が細長く入り込んでいる

◇ ⑪ 鞍部・⑫ 低い

関東地方から南へ伸びる気圧の尾根を、北から南へたどります。

すると、東よりの風が西よりの風へ変化する場所があります。

この場所は、複数の高気圧や低気圧の間にあり、気圧傾度が小さくなる部分です。

このような場所を、

気圧の鞍部

と呼びます。

また、周囲の等圧線を確認すると、鞍部の気圧は1010hPaより低くなっています。

  • ⑪ 鞍部
  • ⑫ 低い
気圧の尾根を北から南へたどる

東よりの風から西よりの風へ変わる

気圧傾度の小さい鞍部を確認

周囲の等圧線から1010hPaより低いと判断

「鞍部」と「谷」を混同しない

鞍部は、単に気圧の低い領域が細長く伸びた気圧の谷ではありません。

複数の高気圧や低気圧の間で、等圧線の形が鞍のようになり、気圧傾度が小さくなる場所です。

問1(1)でつまずきやすいポイント

  • ②を台風の中心気圧だと思ってしまう
  • ②のkmと⑦の海里を混同する
  • 矢羽根から台風の進行方向を読もうとする
  • 中心気圧と最外側の閉じた等圧線を混同する
  • 強風域の広さを一般知識だけで判断する
  • 気圧の尾根・谷・鞍部を混同する
  • ⑫を周囲の高気圧の値から判断してしまう

■ 問1(2) 850hPa面の風速分布と相当温位分布

模範解答

風速分布:

台風の進行方向の右側で風速が強くなっており,中心のすぐ東で最も強い80ノットが予測されている。

(47字)

相当温位分布:

中心部の相当温位が最も高い。

(14字)

本番での解き方

図2で台風中心を確認

中心の周囲の風速を比較

強風側と弱風側を確認

最大風速の位置と値を読む

等相当温位線を中心側へ追う

相当温位が最も高い場所を確認

◇ 風速分布の記述

図2では、台風中心の周囲に反時計回りの循環が見られます。

ただし、風速は台風中心を囲む完全な同心円状にはなっていません。

台風は北東へ進んでいるため、進行方向の右側は、台風中心の南東側から東側に当たります。

図2の風速を確認すると、進行方向の右側で風速が強く、中心のすぐ東に最大80ノットの風が予測されています。

記述に必要な要素

どこで
台風の進行方向の右側で

何が
風速が強くなっている

最大となる位置
台風中心のすぐ東

最大値
80ノット

したがって、

台風の進行方向の右側で風速が強くなっており,中心のすぐ東で最も強い80ノットが予測されている。

とまとめます。

◇ なぜ進行方向の右側で風が強いのか

北半球の台風では、風は台風中心の周囲を反時計回りに吹きます。

さらに、台風自体が移動している場合、台風の回転による風に、台風の移動速度が加わります。

台風中心の周囲を反時計回りに吹く風

台風の移動速度

進行方向右側では同じ向きに加わる

右側の風速が強くなりやすい

一方、進行方向の左側では、台風の回転による風と移動速度が反対向きに働くため、右側より風速が弱くなりやすくなります。

「右側が強い」だけでは得点しにくい

この設問では、一般的な特徴だけでなく、

  • 最大風速となる位置
  • 最大風速の値

まで書くよう明確に指示されています。

「進行方向右側で強い」だけで終わらず、「中心のすぐ東」「80ノット」まで入れましょう。

◇ 相当温位分布の記述

図2の等相当温位線を、台風中心の周囲で確認します。

台風中心部には、周囲より相当温位の高い領域が分布しています。

等相当温位線の値を中心へ向かって追うと、中心部で相当温位が最も高くなっています。

中心部の相当温位が最も高い。

相当温位が高い空気とは

相当温位は、空気の温度と水蒸気量の両方を反映する量です。

  • 暖かいほど高くなりやすい
  • 水蒸気を多く含むほど高くなりやすい

台風中心部には暖かく湿った空気が存在するため、周囲より相当温位が高くなっています。

「暖気核」と書くだけでは設問に直接答えていない

台風中心部に高相当温位域があることは、台風の暖かく湿った中心構造と関係しています。

しかし、設問が求めているのは相当温位の分布の特徴です。

したがって、「中心部の相当温位が最も高い」と図に現れている分布を直接記述します。

■ 問1(3)① 気圧の尾根と850hPa温度場

模範解答

気圧の尾根付近は850hPa面の温度場の谷になっている。

(28字)

本番での解き方

図1で2つの気圧の高い領域を確認

同じ場所を図4で探す

850hPa等温線の形を確認

低温域が南へ伸びていることを確認

「温度場の谷」と表現

◇ 地上の尾根と850hPaの温度場を対応させる

図1では、沿海州北部の沿岸にある高気圧から、周囲より気圧の高い領域が2方向へ南に伸びています。

  • 三陸沿岸から関東地方にかけて
  • 沿海州沿岸から朝鮮半島東岸にかけて

次に、これらと同じ場所を図4の850hPa等温線で確認します。

すると、どちらの地域でも、周囲より低温な領域が南へ伸びています。

つまり、地上で気圧の尾根になっている場所は、850hPa面の温度場では、

温度場の谷

になっています。

記述式解答のポイント:対応関係型

対象1
地上の気圧の尾根

対象2
850hPa面の温度分布

対応関係
気圧の尾根付近が温度場の谷になっている

「寒気がある」だけでは不足

本問は、2つの気圧の高い領域に共通する温度分布の形を尋ねています。

「気温が低い」「寒気がある」だけでは、分布の形を十分に表せていません。

低温域が細長く伸びていることを表す、

温度場の谷

という表現を使います。

■ 問1(3)② アムール川中流域の高気圧

模範解答

項目 解答
850hPa面の中心 北緯53°、東経125°
軸の傾きの方向 北東
温度場との対応関係 高気圧中心の軸は,地上から850hPa面にかけて高温側に傾いている。

対応関係の解答は34字です。

◇ 850hPa面の中心は北緯53°・東経125°

図4で、アムール川中流域にある850hPa面の高気圧中心を探します。

高気圧中心は、等高度線が周囲より高くなっている中心付近にあります。

緯度・経度の目盛りから読み取ると、

北緯53°・東経125°

です。

中心位置を読む手順

  1. 等高度線の閉じた高高度域を探す
  2. 高度が最も高い側の中心を決める
  3. 緯度線と経度線から位置を読む
  4. 問題の指示どおり1°刻みで答える

◇ 高気圧軸は北東へ傾いている

高気圧の軸の傾きを判断するには、図1の地上高気圧中心と、図4の850hPa高気圧中心を比較します。

850hPa面の中心は、地上の中心より北東側にあります。

図1で地上高気圧中心を確認

図4で850hPa高気圧中心を確認

地上中心から850hPa中心への方向を読む

北東

したがって、高気圧中心の軸は、地上から850hPa面にかけて、

北東

へ傾いています。

傾きを見る方向に注意

問題は「地上から850hPa面にかけて」の傾きを尋ねています。

そのため、

地上中心 → 850hPa中心

の向きを読みます。

逆向きに読むと南西と答えてしまうため注意しましょう。

◇ 高気圧の軸は高温側へ傾く

次に、図4の850hPa等温線を確認します。

地上高気圧中心から850hPa高気圧中心へ向かう北東方向は、相対的に気温の高い側です。

したがって、高気圧中心の軸は、

地上から850hPa面にかけて高温側に傾いている

と表現します。

なぜ高気圧軸は高温側へ傾くのか

暖かい空気の柱は膨張して厚くなります。

そのため、上空の等圧面高度は高温側で高くなり、高気圧中心も上空ほど高温側へ移ります。

高温側の空気柱が厚くなる

850hPa面の高度が高くなる

上空の高気圧中心が高温側へ移る

高気圧軸は高温側へ傾く

■ 問1(3)③ 2つの高気圧の鉛直構造

模範解答

空欄 解答
低い
下層の気温が低い

◇ 沿海州北部沿岸の高気圧は背が低い

図1では、沿海州北部の沿岸とアムール川中流域の両方に地上高気圧があります。

しかし、図4の850hPa面では、アムール川中流域の高気圧に対応する高気圧は見られる一方、沿海州北部沿岸の高気圧に対応する高気圧は見られません。

つまり、沿海州北部沿岸の高気圧は、地上付近では明瞭でも、850hPa面まで高気圧構造が続いていません。

したがって、アムール川中流域の高気圧より、

背が低い

と判断します。

高気圧の背の高さを判断する方法

地上 850hPa面 判断
高気圧あり 対応する高気圧あり 850hPa面まで高気圧構造が続いている
高気圧あり 対応する高気圧なし 地上付近に限られた背の低い高気圧

◇ 背が低いのは下層の気温が低いため

沿海州北部沿岸の高気圧付近では、アムール川中流域の高気圧付近より下層の気温が低くなっています。

冷たい空気は密度が大きく、空気柱の厚さが小さくなります。

そのため、地上では高気圧となっていても、上空まで高高度域が続きにくくなります。

下層の気温が低い

空気柱が収縮する

等圧面間の厚さが小さくなる

上空では高気圧が不明瞭になる

背の低い高気圧

したがって㋑は、

下層の気温が低い

です。

「高気圧=暖かい」とは限らない

地上で高気圧になっていても、その高気圧が暖かい空気で構成されているとは限りません。

本問の沿海州北部沿岸の高気圧は、下層の冷たい空気と対応した、背の低い高気圧です。

問1(3)でつまずきやすいポイント

  • 地上の気圧の尾根と850hPa温度場を別々に見てしまう
  • 「低温域」だけで終わり、「温度場の谷」と書けない
  • 850hPa高気圧中心を等温線から探してしまう
  • 地上中心と850hPa中心を逆向きに結ぶ
  • 高気圧軸が低温側に傾くと誤解する
  • 地上高気圧があれば850hPaにもあると思い込む
  • 背の低さと下層の低温を結びつけられない

■ 問1(4)① 雲域付近の風向と温度移流

模範解答

項目 解答
850hPa面
300hPa面 A
300hPa面 B 南西
温度移流 暖気移流

※300hPa面のAとBは順不同です。

本番での解き方

図5で破線内の雲域を確認

同じ場所を図2で確認

850hPaの卓越風向を読む

同じ場所を図6で確認

300hPaの卓越風向の範囲を読む

風上側の温度と鉛直シアを確認

温度移流を判断

◇ 850hPa面の風向は東

最初に図5で、黄海から朝鮮半島北部にかけて破線で囲まれた雲域を確認します。

次に、同じ場所を図2の850hPa相当温位・風予想図で探します。

この雲域付近の850hPa面では、東から西へ向かう風が卓越しています。

風向は風が吹いてくる方向で表すため、

です。

風が向かう方向ではなく、吹いてくる方向

東風とは、東から西へ向かって吹く風です。

矢羽根の向きと風向の名称を逆にしないように注意しましょう。

◇ 300hPa面の風向は南〜南西

次に、図6の300hPa天気図で同じ雲域付近の風向を読み取ります。

この領域では、南から南西の範囲の風が卓越しています。

問題では45°の幅の2方位で答えるよう指示されているため、

  • A:南
  • B:南西

となります。

AとBは順不同です。

◇ 850hPa〜300hPa間は暖気移流

850hPa面では東風、300hPa面では南〜南西風となっています。

高度が上がるにつれて、風向が東から南、さらに南西へ変化しています。

この風向変化は、高度とともに風向が時計回りに変化する鉛直シアです。

北半球では、高度とともに風向が時計回りに変化する場合、一般に暖気移流に対応します。

暖気移流

温度移流は風向だけで判断しない

温度移流を正しく判断するには、

  • 風上側が高温か低温か
  • 風が等温線をどちら向きに横切るか

を確認します。

風上側の空気 判断
現在地より高温 暖気移流
現在地より低温 寒気移流

本問では、図3・図4の温度分布と850hPaから300hPaまでの風向変化を合わせて、暖気移流と判断します。

東風だから暖気移流とは限らない

風向が東であることだけでは、暖気移流か寒気移流かは決まりません。

東側が高温なら暖気移流になりますが、東側が低温なら寒気移流になります。

必ず温度場との位置関係を確認しましょう。

■ 問1(4)② 300hPaトラフの作図

問題文

黄海から朝鮮半島北部にかけての雲域の成因に関連する300hPa面のトラフを、解答図に実線で記入します。

模範解答の位置

トラフは、中国東北区付近から黄海西部付近へ、概ね南北方向に延びるように記入します。

図6の300hPa等高度線が低緯度側へ張り出し、流れの曲率が大きくなる部分を滑らかに結びます。

図

トラフ作図の基本手順

  1. 図5で対象となる雲域の位置を確認する
  2. 図6で同じ緯度・経度の場所を探す
  3. 300hPa等高度線が低緯度側へ張り出す部分を探す
  4. 周辺の風向を確認し、流れの曲率が大きい場所を探す
  5. 等高度線の谷の中心を滑らかな実線で結ぶ
  6. トラフ前面に対象の雲域が位置するか確認する

◇ 最初に300hPa天気図を見る

この設問では、衛星画像に雲域が示されています。

しかし、雲域の中心にそのままトラフを引くわけではありません。

まず、図6の300hPa天気図で、等高度線の形を確認します。

トラフは、等高度線が低緯度側へ張り出し、上空の流れが大きく曲がる場所に位置します。

300hPa等高度線を確認

南への張り出しを探す

周辺の風向変化を確認

曲率が最大となる部分を結ぶ

衛星画像の雲域との整合を確認

◇ 風向の変化も確認する

トラフの周辺では、等高度線の走向と風向が変化します。

本問の対象領域では、トラフの周辺で風が南よりから南西よりへ変化しています。

等高度線の谷だけでなく、この風向変化も使って、トラフ軸の位置を絞ります。

◇ 雲域はトラフ前面に形成される

上空のトラフ前面では、正渦度移流などに伴って上昇流が生じやすくなります。

さらに、本問では850hPa〜300hPa間で暖気移流も見られます。

300hPaトラフ前面

下層から中上層の暖気移流

上昇流が強まる

黄海から朝鮮半島北部に雲域が形成

したがって、作図したトラフの前面側に、図5の雲域が位置していることを最後に確認します。

作図でありがちな失敗

  • 衛星画像の雲域の中央に線を引く
  • 300hPa等高度線を1本そのままなぞる
  • 風向の変化を確認しない
  • 短い折れ線を何本もつなぐ
  • トラフ前面と後面を逆にする
  • 雲域との位置関係だけで作図する

最初に300hPa天気図でトラフを決め、最後に衛星画像との整合を確認します。

問1(4)でつまずきやすいポイント

  • 図5と図2・図6で同じ場所を対応させられない
  • 東風を西から吹く風と誤解する
  • 300hPa風向の範囲を1方位だけで答える
  • 暖気移流を850hPaの風向だけで判断する
  • 高度とともに風向が回転する向きを逆に読む
  • トラフを雲域の中心線として引く
  • 等高度線の谷ではなく、最も風の強い場所に引く

■ 問1 解答確認表

設問 解答 判断材料
(1)① 南西 鹿児島から見た台風中心の方向
(1)② 280km 鹿児島と台風中心の距離
(1)③ 20ノット 台風中心付近の移動情報
(1)④ 北東 台風中心付近のNE表示
(1)⑤ 5時頃 位置・進行方向・速度から最接近時刻を推定
(1)⑥ 1000hPa 最外側の閉じた等圧線
(1)⑦ 180海里 中心から南東側の1000hPa等圧線まで
(1)⑧ 狭い 南東側と北西側の強風域半径の比較
(1)⑨ 1020hPa 沿海州北部沿岸の高気圧中心
(1)⑩ 尾根 周囲より高い気圧の領域が南へ伸びる
(1)⑪ 鞍部 東よりの風から西よりの風へ変わる場所
(1)⑫ 低い 鞍部付近の等圧線
(2)風速分布 進行方向右側で強く、中心のすぐ東で80ノット 図2の850hPa風速分布
(2)相当温位 中心部が最も高い 図2の等相当温位線
(3)① 気圧の尾根付近は温度場の谷 図1の高圧部と図4の低温域
(3)②中心 北緯53°・東経125° 図4の850hPa高度場
(3)②傾き 北東 地上中心と850hPa中心の位置関係
(3)②対応 高温側に傾く 高気圧軸と850hPa温度分布
(3)③㋐ 低い 850hPa面に対応する高気圧がない
(3)③㋑ 下層の気温が低い 冷たい気柱は厚さが小さい
(4)① 850hPa 図2の対象雲域付近の風
(4)① 300hPa 南・南西 図6の対象雲域付近の風
(4)①温度移流 暖気移流 風上側の温度と鉛直方向の風向変化
(4)② 300hPaトラフを実線で作図 等高度線の谷・風向変化・雲域との位置関係

この問題で必ず押さえたいこと

地上天気図の台風情報

中心位置・進行方向・速度・強風域を読む
850hPa風速分布

進行方向右側で強い

中心のすぐ東で80ノット
850hPa相当温位分布

台風中心部が最も高い
地上の気圧の尾根

850hPa面では温度場の谷
地上高気圧中心と850hPa高気圧中心

高気圧軸は北東へ傾く

高温側へ傾く
下層の気温が低い

気柱の厚さが小さい

背の低い高気圧
850hPa風と300hPa風

風上側の温度を確認

暖気移流
300hPa等高度線と風向

トラフの位置を決定

トラフ前面の雲域と照合

■ まとめ

  • 台風中心は鹿児島の南西約280kmにある
  • 台風は20ノットで北東へ進んでいる
  • 鹿児島への最接近は25日5時頃と見積もられる
  • 最外側の閉じた等圧線は1000hPaである
  • 南東側の半径は約180海里で、北西側の強風域は狭い
  • 沿海州北部沿岸の高気圧の中心気圧は1020hPaである
  • 関東地方から南へ気圧の尾根が伸び、その途中に鞍部がある
  • 850hPa面では台風の進行方向右側で風が強い
  • 最大風速は台風中心のすぐ東の80ノットである
  • 台風中心部の相当温位が最も高い
  • 地上の気圧の尾根付近は850hPa面の温度場の谷である
  • アムール川中流域の850hPa高気圧中心は北緯53°・東経125°である
  • 高気圧軸は地上から850hPa面にかけて北東の高温側へ傾く
  • 沿海州北部沿岸の高気圧は下層が低温なため背が低い
  • 黄海から朝鮮半島北部の雲域では850hPaが東風、300hPaが南〜南西風である
  • 850hPa〜300hPa間では暖気移流となっている
  • 雲域の成因となる300hPaトラフは等高度線と風向から作図する

※ 本記事では、一般財団法人 気象業務支援センターより利用許諾を受けて、気象予報士試験問題を掲載しています。
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以上、第54回 気象予報士試験 実技2 問1の解説でした!

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