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【例題】局地風・ジェット気流に関する次の説明のうち、正しいものはどれか。
① やまじ風は大気成層が不安定なときに特に強くなる
② 寒帯前線ジェット気流は亜熱帯ジェット気流より高い高度に存在する
③ 広戸風は台風または発達した低気圧が日本の南海上にあるときに発生しやすい
④ 亜熱帯ジェット気流は時間的・空間的変動が大きく、月平均では不明瞭になる
目次
- 1. 局地風とは
- 2. やまじ風(愛媛県)
- 3. 広戸風(岡山県)
- 4. 清川だし(山形県)
- 5. 局地風の共通メカニズム
- 6. ジェット気流の基礎知識
- 7. 寒帯前線ジェット気流(Polar Jet)
- 8. 亜熱帯ジェット気流(Subtropical Jet)
- 9. 下層ジェット
- 10. 日本に影響する高気圧の種類
- 11. 📋 過去問チャレンジ(4問)
1. 局地風とは
特定の気圧配置のときに、ごく局所的に強い風あるいは非常に強い風が吹く現象を「局地風」という。気象予報士試験では日本三大局地風(やまじ風・広戸風・清川だし)の基礎概念が出題される。
共通する発生メカニズム:
- 地形による気流の水平・鉛直収束(ホースの先を細くすると水勢が強まる原理と同じ)
- 山頂付近の逆転層(安定層)が「天井板」の役割を果たし、気流を圧縮・加速する
- 山越え気流によるフェーン現象(昇温・乾燥)を伴う場合が多い
- 大気の成層が安定しているときに発生しやすい(不安定なときは上昇気流が優先されて弱まる)
2. やまじ風(愛媛県)
場所: 愛媛県東部の四国中央市〜新居浜市の平野部
発生条件:
- 日本海に発達した低気圧または台風が存在する気圧配置(春〜梅雨期・秋に多い)
- 南よりの風が四国山地の南斜面に吹き付ける
- 大気の成層が安定している(不安定な場合は強制上昇が優先され弱まる)
- 山頂付近に逆転層が存在することで気流が収束・加速される
メカニズム:
南よりの風が四国山地を越えて北側斜面を吹き下りる際、フェーン現象(力学的フェーン・非断熱フェーン)により気温が上昇する。
💡 やまじ風の試験ポイント
「やまじ風は成層安定時に強まる」「逆転層が天井板として収束を強める」「南よりの風が日本海低気圧時に発生」の3点を覚える。
3. 広戸風(岡山県)
場所: 岡山県北東部の那岐山麓(津山市・奈義町付近)
発生条件:
- 台風または発達した低気圧が日本の南海上を進んだ場合に発生しやすい
- 北よりの風が中国山地の北側から吹き付ける
- 大気の成層が安定していること、山頂付近に逆転層が存在することが条件
- やまじ風と発生メカニズムは同様だが、気圧配置パターンが正反対
フェーンとボラ:
広戸風は山越え気流でフェーン現象が起きるが、北よりの寒気が下降するため、フェーンによる昇温を加味しても吹く前より気温が低下する場合があり、これを「ボラ」という。(山越え気流が昇温→フェーン、降温→ボラ)
【重要】やまじ風と広戸風の気圧配置の違い
やまじ風:日本海に低気圧→南よりの風→四国山地越え
広戸風:日本の南海上に低気圧→北よりの風→中国山地越え
※どちらも「成層安定+逆転層+気流収束」が発生の鍵
4. 清川だし(山形県)
場所: 山形県東田川郡庄内町清川付近
発生時期: 主に夏(早候期)
発生メカニズム:
南東または南に近い風が奥羽山脈から吹き下り、盆地を経て清川付近の渓谷(北側と南側を山地に挟まれた地形)を西へ通り抜けるときに気流が水平収束して強風となる。
💡 三大局地風まとめ表
| 局地風 | 場所 | 気圧配置 | 風向 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| やまじ風 | 愛媛県 四国中央市〜新居浜市 | 日本海に低気圧 | 南よりの風 | フェーン現象あり |
| 広戸風 | 岡山県 津山市・奈義町 | 日本南海上に低気圧 | 北よりの風 | ボラ(気温低下)の場合あり |
| 清川だし | 山形県 庄内町清川 | — | 南東風 | 夏季・渓谷による水平収束 |
▲ 日本三大局地風(やまじ風・広戸風・清川だし)の発生地点と気圧配置・ジェット気流の高度・緯度比較・5種の高気圧の特徴
5. 局地風の共通メカニズム
山越え気流が強風(おろし風)となる原因を整理する:
- 山岳波(重力波): 安定した気流が山岳に吹き付けて強制上昇→山頂越え後に重力で大きく下降→鉛直方向に振動性の気流(山岳波)が発生
- 鞍部収束: 山脈の稜線が低い鞍部では、安定した気流が越えるときに収束の効果で風速が強まる
- 逆転層の天井板効果: 逆転層(安定層)が存在すると、山頂と逆転層下面の狭い空間に気流が圧縮されてさらに強まる
【試験頻出】おろし風の発生条件
❌ 不安定成層 → 強制上昇が持続し、山越え気流が弱まる
✅ 安定成層 → 山頂越え後に重力下降が強く起き、おろし風が発生
6. ジェット気流の基礎知識
ジェット気流と強風軸の違い:
- ジェット気流: 大気を3次元的に見た風速の極大部
-
強風軸:
等圧面天気図上における風速の極大部
(試験では「ジェット気流」として出題されることが多いが厳密には区別する)
温度風の関係によるジェット気流の形成:
北半球中緯度帯では北ほど気温が低いため、温度風の関係で西よりの風が上層ほど強まり、対流圏界面付近で風速が最大となる→これがジェット気流である。
💡 温度風の関係でジェット気流を理解する
北ほど気温が低い(水平温度傾度が存在)
→ 温度風ベクトルが加算されて上層ほど西風が強まる
→ 対流圏界面付近で風速が最大(ジェット気流)
7. 寒帯前線ジェット気流(Polar Jet)
- 存在高度: 対流圏上層(300〜500hPa付近)
- 存在緯度: 北緯40〜60°付近(冬季は南下、日本本土の上空まで)
- 季節変動: 夏より冬の方が水平温度傾度が大きく→冬季に強く・低緯度に
- 変動の大きさ: 日々の蛇行・分布の変化が大きい(変動大)
- 複数存在: 北回りと南回りの2本が同時に出現することがある
- 解析天気図: 500hPa高層天気図で解析(冬季は対流圏界面高度が低下するため)
8. 亜熱帯ジェット気流(Subtropical Jet)
- 存在高度: 対流圏上層(200hPa付近)
- 存在緯度: 北緯20〜30°(定常的に存在)
- 季節変動: 冬季は台湾〜沖縄付近に南下して強化。夏季は北海道のはるか北に北上して弱まる
- 変動の大きさ: 時間的・空間的変動が小さい(月平均した風速分布でも明瞭)
- 形成メカニズム: ハドレー循環の高緯度側における下降流が始まる部分に見られるため、日変化は少ない
- 解析天気図: 300hPa・250hPa・200hPa高層天気図を使用
【重要】2つのジェット気流の比較
| 項目 | 亜熱帯ジェット | 寒帯前線ジェット |
|---|---|---|
| 高度 | 200hPa | 300〜500hPa |
| 緯度 | 北緯20〜30° | 北緯40〜60° |
| 変動 | 小(月平均でも明瞭) | 大(蛇行・南北移動) |
| 冬季 | 南下・強化 | 南下・強化 |
| 形成要因 | ハドレー循環の上端 | 南北の水平温度傾度 |
9. 下層ジェット
- 存在高度: 対流圏下層(850hPa前後)
- 出現時期: 主に梅雨期(梅雨前線の南側)
- 特徴: 40〜50ktの強風帯として現れる
- 役割: 相当温位345K以上の暖湿な空気を高速で前線付近に輸送→大量の水蒸気補給→積乱雲の維持・発達・大雨をもたらす
- 生成メカニズム: 諸説あり、明確ではない(試験でも「不明確」として出題されることがある)
💡 下層ジェットの試験ポイント
「梅雨前線の南側に出現する850hPaの強風帯」「相当温位345K以上の暖湿気を輸送」「積乱雲の維持に寄与」「生成メカニズムは諸説あり」の4点を押さえる。
10. 日本に影響する高気圧の種類
高気圧の5種類を解説する。
① 太平洋高気圧
- 季節:夏季
- 鉛直スケール:地上〜上層まで(背が高い)
- 性質:高温・湿潤
- 亜熱帯高気圧の一部で日本付近の固有名詞
② シベリア高気圧
- 季節:冬季
- 中心:中国東北部やバイカル湖付近
- 形成:長期の放射冷却により地表付近に寒気が堆積
- 鉛直スケール:地表付近のみ(背が低い)
- 性質:寒冷・乾燥
- 冬型気圧配置で大陸から季節風とともに流入→日本海で気団変質→日本海側に雨・雪
③ オホーツク海高気圧
- 季節:梅雨期
- 形成:大陸と海洋の地理的分布の影響+対流圏上層のジェット気流の蛇行(ブロッキング高気圧の影響)
- 性質:寒冷・湿潤
- やませ: 北日本の太平洋側に吹く冷たく湿った北東風または東風→日中の低温・濃有霧・農作物生育不良・交通障害
④ チベット高気圧
- 季節:夏季
- 鉛直スケール:対流圏上層のみ(背が高い高気圧だが上層限定)
- 形成:チベット高原の陸面からの顕熱 + アジアモンスーンの活発な対流活動に伴う潜熱による大気加熱
- 日本への張り出しが強いとき→猛暑が持続しやすい
⑤ 移動性高気圧
- 季節:春・秋
- 特徴:西から東へ移動(平均40km/h程度で東進)
- 対応:上空の傾圧不安定波のリッジに対応(やや前面に見られる)
- 天気変化:2〜3日周期で天気が変わりやすい
▲ やまじ風・広戸風の発生メカニズム(逆転層の天井板効果)・下層ジェットと梅雨大雨・ジェット気流の試験ポイント整理
11. 📋 過去問チャレンジ(4問)
【過去問1:ジェット気流】(平成25年度第1回 専門知識 問9)
北半球の偏西風帯におけるジェット気流について述べた次の文(a)〜(d)の正誤について、正しいものを一つ選べ。
(a)
温度風の関係から、地衡風は高度とともに風速が大きくなり、対流圏界面付近で極大となる。これがジェット気流である。
(b)
ジェット気流が風下の方ほど強くなっている領域では、ジェット気流は等圧面上で等高度線を高度の高い側から低い側に横切ることが多く、弱くなっている領域では逆の向きに横切ることが多い。
(c)
温帯低気圧の発達に伴って亜熱帯ジェット気流の北側に出現する寒帯前線ジェット気流では、亜熱帯ジェット気流と比べて風速が極大となる高度が高い。
(d)
亜熱帯ジェット気流は時間的、空間的な変動が小さいため、各時刻の風速分布だけでなく、月平均した風速分布にもその存在が明瞭に認められる。
選択肢:①(a)のみ誤り ②(b)のみ誤り ③(c)のみ誤り ④(d)のみ誤り ⑤すべて正しい
💡 解答・解説
解答:③((c)のみ誤り)
(a)正:温度風の関係により、北ほど気温が低い北半球偏西風帯では、上層ほど西風が強まり対流圏界面付近で極大となる。ただし厳密にはこれだけでジェット気流と呼ぶわけではない(三次元的極大域がジェット気流)。
(b)正:加速・減速の効果でジェット気流は等高度線を横切る。加速域では高度の高い側から低い側へ横切り、減速域は逆。
(c)誤:寒帯前線ジェット気流は対流圏の平均温が低く、対流圏界面高度が低いため、亜熱帯ジェット気流より低い高度に存在する。
(d)正:亜熱帯ジェット気流はハドレー循環に起因するため変動が小さく、月平均でも明瞭に認められる。
【過去問2:局地風(おろし風)】(平成21年度第1回 専門知識 問9)
局地風に関する次の文章の下線部(a)〜(d)の正誤について、正しいものを一つ選べ。
おろし風は地形の影響により山地の風下側で局地的に風が強まる現象である。
(a)
不安定成層の状態で強い風が山に当たると山岳波が発生し、これに伴う強い気流が山の風下側の地表面に達するとおろし風となる。
(b)
風が山地を横切るときに鞍部(稜線の低いところ)で収束して風速が強まり、風向に沿った谷間やその先の平野などでおろし風が発生する。
愛媛県にはやまじ風と呼ばれるおろし風がある。これは太平洋から吹き込む南よりの風が四国山地を越えて強風となって北側斜面を吹き降ろす現象である。台風または発達した低気圧が日本海を進んだ場合に多く発生し、風下では
(c) フェーン現象によりおろし風発生前よりも気温が上昇する。
また、岡山県には広戸風と呼ばれるおろし風がある。これは台風または発達した低気圧が本州南岸を進んだ場合に日本海からの風が中国山地を越えて岡山県側の南麓に吹き降ろして発生する。
(d) 風下での気温はおろし風発生前よりも下降する。
選択肢:①(a)のみ誤り ②(b)のみ誤り ③(c)のみ誤り ④(d)のみ誤り ⑤すべて正しい
💡 解答・解説
解答:①((a)のみ誤り)
(a)誤:山岳波(重力波)は大気の成層が安定なときに発生する。不安定成層では強制上昇が持続し、山越え気流が弱まる。
(b)正:山脈の稜線の低い鞍部では、安定した気流が越えるときに収束の効果で風速が強まる。
(c)正:やまじ風は南よりの気流が四国山地を越えて吹き下りる際にフェーン現象が起き、気温が上昇する(力学的フェーン・非断熱フェーン)。
(d)正:広戸風は北よりの寒気が下降するため、フェーンによる昇温を加味しても吹く前より気温が低下する場合があり、ボラと呼ぶ。
【過去問3:高気圧の種類】
日本に影響する高気圧に関する次の説明のうち、正しいものはどれか。
① チベット高気圧は地上から対流圏上層まで発達する背の高い高気圧で、夏季に日本付近に張り出すと猛暑が持続する
② オホーツク海高気圧は温暖・湿潤な性質を持ち、北日本の太平洋側に暖かい東風を吹かせる
③ シベリア高気圧は対流圏上層まで発達する背の高い高気圧で、冬季に大陸から日本へ冷たい乾燥した風を送る
④ 移動性高気圧は上空の傾圧不安定波のリッジに対応して春・秋に西から東へ移動し、2〜3日周期の天気変化をもたらす
💡 解答・解説
解答:④
①誤:チベット高気圧は対流圏上層のみに見られる高気圧。地上では解析されない。
②誤:オホーツク海高気圧は寒冷・湿潤な性質を持ち、北日本の太平洋側に「やませ」という冷たく湿った北東風または東風を吹かせる。
③誤:シベリア高気圧は長期の放射冷却で形成される背の低い高気圧(地表付近のみ)。
④正:移動性高気圧は傾圧不安定波のリッジに対応し、春・秋に平均40km/h程度で東進、2〜3日周期で天気変化をもたらす。
【過去問4:下層ジェットと梅雨大雨】
梅雨期に見られる下層ジェットについて述べた次の文のうち、正しいものはどれか。
① 下層ジェットは主に対流圏上層(200〜300hPa)に出現する強風帯である
② 下層ジェットは梅雨前線の北側に出現し、寒冷乾燥な空気を輸送する
③ 下層ジェットは850hPa前後に見られ、前線付近に多量の水蒸気を輸送して積乱雲の維持・発達に寄与する
④ 下層ジェットの生成メカニズムは完全に解明されており、海面水温との関係で説明できる
💡 解答・解説
解答:③
①誤:下層ジェットは対流圏下層(850hPa前後)に出現する。
②誤:下層ジェットは梅雨前線の南側に出現し、暖湿気(相当温位345K以上)を輸送する。
③正:850hPa前後の強風帯(40〜50kt)として出現し、水蒸気を前線付近に輸送、積乱雲の維持に寄与する。
④誤:下層ジェットの生成メカニズムは諸説あり、明確ではない。
まとめ
主要ポイントのリスト:
- やまじ風:愛媛県、日本海低気圧時の南よりの風、成層安定+逆転層→フェーン現象
- 広戸風:岡山県、日本南海上の低気圧時の北よりの風、ボラ(気温低下)になる場合あり
- 清川だし:山形県、夏季の南東風、奥羽山脈を経た水平収束による強風
- 局地風の共通:成層安定時に強まる(不安定時は弱まる)、逆転層が収束を強化
- 温度風の関係:北ほど気温低い→上層ほど西風強まる→対流圏界面付近で最大
- 亜熱帯ジェット:200hPa、北緯20〜30°、変動小、ハドレー循環の上端、月平均でも明瞭
- 寒帯前線ジェット:300〜500hPa、北緯40〜60°、変動大、冬に南下・強化、2本同時出現あり
- 下層ジェット:850hPa前後、梅雨期に梅雨前線南側に出現、水蒸気輸送で積乱雲を維持
- 太平洋高気圧:夏・背高い・高温湿潤。シベリア高気圧:冬・背低い・寒冷乾燥
- オホーツク高気圧:梅雨・寒冷湿潤・やませ(冷害・霧)
- チベット高気圧:夏・対流圏上層のみ・猛暑持続。移動性高気圧:春秋・2〜3日周期
難易度:★★★☆☆
この記事について
気象予報士試験の専門知識科目で単独出題される重要テーマです。特に「やまじ風・広戸風・清川だし」の局地風の発生メカニズムと気圧配置の違い、「亜熱帯ジェット気流と寒帯前線ジェット気流」の高度・緯度・変動性の比較、「下層ジェットの役割」は繰り返し出題されています。過去問を通じてしっかり定着させましょう!
