【第64回 気象予報士試験 実技1】問3を徹底解説|台風の移動予想・大雨要因・乾燥貫入・前線解析
こんにちは!今回は第64回 気象予報士試験 実技1 問3を解説します!
今回の問3では、
- 台風第AA号の移動方向・移動速度
- 12時間降水量が多くなる地域の判定
- 強雨をもたらす上昇流・収束の読み取り
- キキクルで監視すべき災害と指数
- 乾燥貫入の判定
- 温帯低気圧化に伴う前線解析
- 強風域の広がりと気圧傾度の変化
など、実技試験らしい予想図を総合的に読む力が問われています。
実技試験記述5型
基本セット:どこで(場所・高さ・時刻)+ なぜ(原因・背景場)+ 何が起きている(現象)
- 分布型:「A側では○○であり、一方B側では△△となっている。」
- 時間変化型:「◯時にはAであったが、△時にはBとなり、AからBへと変化した。」
- メカニズム型:「〜ため、□□が強まり、その結果△△となる。」
- リスク型:「〜ため、◯◯のおそれがあり、△△への注意・警戒が必要である。」
- 構造型:「◯◯付近の◇◇hPaで、ここが前線面に対応する。」
記述式問題の考え方はこちらの記事も参考にしてください!
⇒ 【実技試験講義No.1】気象予報士試験実技試験記述5型 – 独学資格塾
■ 問3(1) 台風第AA号の移動方向と移動速度
問題文
図1、図6、図8を用いて、8日21時に九州南部にある台風第AA号の24時間後までの移動について、初期時刻〜12時間後、12時間後〜24時間後の移動方向と速さを答える問題です。
模範解答
| 初期時刻〜12時間後 | 北北東 | 20(25)ノット |
| 12時間後〜24時間後 | 北東 | 15ノット |
◇ 解説
この問題は、台風中心の位置を時間順に追跡する問題です。
まず初期時刻の台風中心は、図1で九州南部付近にあります。
12時間後の図6では、中心は九州付近から日本海側へ北上しています。
この移動方向は、おおむね北北東です。
さらに24時間後の図8では、中心は日本海を北東方向へ進んでいます。
したがって、12時間後〜24時間後の移動方向は北東です。
この図で確認するポイント
- 初期時刻の台風中心位置
- 12時間後の低気圧中心位置
- 24時間後の低気圧中心位置
- 中心位置を結んだ移動方向
速さの考え方
移動速度は、
移動距離 ÷ 時間
で求めます。
台風の移動速度は5ノット刻みで答えるため、図上の読み取りから概算します。
初期時刻〜12時間後は、おおむね20〜25ノット程度です。
12時間後〜24時間後は、それよりやや遅く、約15ノットです。
つまずきポイント
中心位置は、等圧線の閉じた低圧部だけでなく、予想図の低気圧中心記号も確認して判断しましょう。
また、速度は厳密計算よりも、指定された5ノット刻みで概算する意識が大切です。
■ 問3(2) 大雨域・強雨要因・キキクル
問題文
図6右下によると、九州北部から中国地方、日本海西部にかけて、前12時間降水量が50mmを超え、最大で141mmに達する大雨が予想されています。この大雨について、強雨地域、発生要因、監視すべきキキクルを答える問題です。
模範解答
① 山陰沖
② ㋑・㋒
③
土砂災害:土壌雨量指数
浸水害:表面雨量指数
洪水災害:流域雨量指数、表面雨量指数
記述式解答のポイント:メカニズム型・リスク型
どこで:山陰沖を中心とする日本海側で
なぜ:700hPaで強い上昇流があり、850hPaで風が収束しているため
何が起きている:降水強度が強まり、大雨による土砂災害・浸水害・洪水災害のおそれがある
◇ 解説
① 降水強度が最も強い地域
図6右下では、九州北部から中国地方、日本海西部にかけて大雨が予想されています。
ただし、ここで問われているのは12時間降水量が最も多い場所ではなく、降水強度が最も強いと予測される地域です。
図6左下の700hPa鉛直流を見ると、山陰沖付近に非常に強い上昇流域があります。
また、図7下段の850hPa相当温位・風を見ると、山陰沖付近で風が収束しています。
したがって、降水強度が最も強いと予測される地域は山陰沖です。
つまずきポイント
「降水量が多い場所」と「降水強度が強い場所」は必ずしも一致しません。
降水強度は、上昇流や下層収束とセットで判断しましょう。
② 強雨の根拠
選択肢の中で根拠となるのは、
- ㋑ 700hPaで強い上昇流となるため
- ㋒ 850hPaで風が収束するため
です。
山陰沖は海上であり、地形の影響は主因ではありません。
また、台風中心そのものの位置でもないため、台風中心直上を理由にするのも不適切です。
③ キキクルと指数
大雨が陸上に予想される場合は、3種類のキキクルを監視します。
| 災害 | 指数 |
| 土砂災害 | 土壌雨量指数 |
| 浸水害 | 表面雨量指数 |
| 洪水災害 | 流域雨量指数、表面雨量指数 |
ここが重要!
キキクルは、単に「大雨の危険度」ではなく、災害の種類ごとに見る指標が異なります。
土砂・浸水・洪水を、それぞれ対応する指数とセットで覚えましょう。
■ 問3(3) 乾燥貫入・前線解析・強風域の変化
問題文
台風第AA号は24時間後までに日本海で温帯低気圧に変わる見込みです。図6〜9を用いて、乾燥域の特徴、対応する気流、24時間後の前線解析、強風域の変化を答える問題です。
模範解答
①
700hPa鉛直流:下降流域
850hPa相当温位:相対的な低相当温位域
② ㋒
③ 前線作図
④
閉塞前線の北側で気圧傾度が急になり、地上低気圧の中心の北東側に強風の範囲が広がる。
◇ 解説
① 湿数6℃以上の乾燥域に対応する場
図9では、九州の西の海上から関東の東の海上にかけて、700hPaで湿数6℃以上の乾燥域がのびています。
この領域を図8の700hPa鉛直流と対応させると、主に下降流域に対応します。
また、850hPa相当温位では、周囲より相当温位の低い領域、つまり相対的な低相当温位域に対応します。
記述式解答のポイント:分布型・構造型
どこで:九州の西の海上から関東の東の海上にかけて
なぜ:乾燥した空気が下降しながら流入しているため
何が起きている:700hPaでは下降流域、850hPaでは低相当温位域に対応している
② どの気流に対応するか
700hPaで乾燥し、下降流を伴い、850hPaで低相当温位となる流れは、温帯低気圧に伴う乾燥貫入に対応します。
したがって、選択肢は㋒です。
コンベアベルトの整理
- 暖気コンベアベルト:暖湿気が上昇しながら流入
- 寒冷コンベアベルト:低気圧北側から冷気が回り込む
- 乾燥貫入:乾燥空気が低気圧後面から下降しながら入り込む
③ 前線解析
前線解析の考え方はこちらの記事も参考にしてください!
⇒ 【講義】前線解析 – 独学資格塾
前線解析では、まず閉塞しているかどうかを確認します。
今回の24時間後の低気圧では、強風軸が低気圧に巻き込むように伸び、寒気の流入と暖気の張り出しが明瞭です。
このため、閉塞していると判断できます。
この図で確認するポイント
- 強風軸が低気圧に巻き込むように伸びているか
- 寒気の流入が見られるか
- 暖気の張り出しがあるか
- 閉塞点をどこに置くか
次に、等温線集中帯の南縁と風のシアーから、前線位置を推定します。
この図で確認するポイント
- 等温線集中帯の南縁
- 風向のシアー
- 地上低気圧中心との位置関係
閉塞点は、推定した前線位置と強風軸が交わる付近に置きます。
閉塞前線の型は、温暖前線側前面の寒気と寒冷前線後面の寒気の温度差を見て判断します。
今回は、温暖前線の進行方向前面の寒気のほうが温度が低く、温暖型閉塞前線として描きます。
この図で確認するポイント
- 閉塞点の位置
- 閉塞前線の伸ばし方
- 温暖前線・寒冷前線の接続
- 地上風のシアーとの整合性
④ 強風域の変化
温帯低気圧化が進むと、低気圧の構造は台風のような対称構造から、前線を伴う非対称構造へ変化します。
24時間後には、閉塞前線の北側で等圧線間隔が狭くなり、気圧傾度が大きくなっています。
そのため、地上低気圧中心の北東側に強風域が広がります。
記述式解答のポイント:時間変化型・メカニズム型
どこで・いつ:24時間後の地上低気圧中心の北東側で
なぜ:閉塞前線の北側で気圧傾度が急になったため
何が起きている:強風域が北東側へ広がっている
つまずきポイント
「強風域が広がる」とだけ書くと不十分です。
どこで気圧傾度が急になったかまで書くと、実技答案として強くなります。
■ 問3 全体まとめ
- 台風中心を時間順に追って移動方向・速度を読む
- 強雨域は700hPa上昇流と850hPa収束で判断する
- キキクルは災害名と指数名をセットで覚える
- 湿数6℃以上の乾燥域は下降流域・低相当温位域に対応する
- 乾燥貫入は温帯低気圧化の重要なサイン
- 前線解析では等温線集中帯・風のシアー・強風軸を見る
- 強風域の変化は気圧傾度の変化とセットで記述する
※ 本記事では、一般財団法人 気象業務支援センターより利用許諾を受けて、気象予報士試験問題を掲載しています。
問題文の著作権は一般財団法人 気象業務支援センターに帰属します。
以上、第64回 気象予報士試験 実技1 問3の解説でした!
独学資格塾では、単なる模範解答だけでなく、「受験生がどこでつまずくのか?」を重視して解説しています。
訂正・ご意見などありましたら、ぜひコメントで教えてください!
皆で最高の独学環境を作っていきましょう!
