【第62回 気象予報士試験 専門知識】問4 数値予報とデータ同化をわかりやすく解説
こんにちは!今回は第62回気象予報士試験 専門知識 問4を解説します!
この問題は、気象に関する数値予報について、データ同化、プリミティブ方程式、鉛直方向の格子間隔を問う問題です。
特に、(c)の「鉛直方向の変化が大きいなら、鉛直層の間隔を大きくする」というひっかけに注意しましょう。
この問題で重要なポイント
- データ同化と数値予報を繰り返すことで、観測データの情報は周辺の解析値にも反映される
- 気象庁の全球モデルはプリミティブ方程式を用いる
- 鉛直流は、水平風から連続の式を用いて求める
- 気温・気圧は水平方向より鉛直方向の変化が大きい
- 変化が大きい鉛直方向は、層の間隔を細かくする必要がある
■ 問題文
気象に関する数値予報について述べた次の文(a)〜(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。
(a)観測点が密な陸上などの地域の観測データの情報は、データ同化と数値予報を繰り返すことにより、観測点が疎らな海上などの地域の解析値にも反映される。
(b)プリミティブ方程式を用いる気象庁の全球モデルでは、大気の鉛直流は水平方向の運動方程式を使って予測した水平風から連続の式を用いて求めている。
(c)気温・気圧などの気象要素は、水平方向の変化に比べて鉛直方向の変化の方が大きいので、気象庁のメソモデルや局地モデルでは鉛直方向の層の間隔を水平格子間隔より大きくしている。
| (a) | (b) | (c) | |
|---|---|---|---|
| ① | 正 | 正 | 正 |
| ② | 正 | 正 | 誤 |
| ③ | 正 | 誤 | 誤 |
| ④ | 誤 | 誤 | 正 |
| ⑤ | 誤 | 誤 | 誤 |
■ 解答
②
(a)正
(b)正
(c)誤
■ 解き方の方針
この問題は、数値予報の基本的な仕組みを問う問題です。
試験本番では、次のように整理すると判断しやすいです。
データ同化
↓
観測値を解析値に反映
水平風
↓
連続の式
↓
鉛直流を求める
鉛直方向の変化が大きい
↓
鉛直方向は細かく表現する
特に(c)は、「変化が大きいから間隔を大きくする」のではなく、変化が大きいから間隔を小さくすると考えるのがポイントです。
■ (a)データ同化により観測の少ない地域にも情報が反映される
(a)は正しいです。
数値予報では、まず観測データを使って現在の大気の状態をできるだけ正確に表します。
この作業をデータ同化といいます。
観測点が多い陸上では、気温・風・気圧などの観測情報が多く得られます。
一方、海上では観測点が少ないため、直接の観測データは少なくなります。
しかし、データ同化と数値予報を繰り返すことで、観測点が密な地域の情報も大気の流れやモデル計算を通じて周辺の解析値へ反映されます。
データ同化のイメージ
観測データ
+
数値予報モデル
↓
現在の大気状態を解析
↓
次の予報に使う
「観測点がある場所だけをそのまま修正する」のではなく、モデルの中で大気全体の状態として整えられるイメージです。
したがって、(a)は正です。
■ (b)鉛直流は水平風から連続の式で求める
(b)は正しいです。
気象庁の全球モデルでは、プリミティブ方程式を用いて大気の運動を予測しています。
プリミティブ方程式とは、大気の運動や熱力学、質量保存などを表す基本的な方程式系です。
このうち鉛直流については、水平方向の運動方程式で予測された水平風から、連続の式を用いて求めます。
連続の式とは、簡単にいうと空気の質量が急に増えたり消えたりしないという考え方です。
鉛直流の求め方のイメージ
水平風が集まる
↓
空気が余る
↓
上昇流が生じる
水平風が広がる
↓
空気が足りなくなる
↓
下降流が生じる
つまり、水平風の収束・発散から、鉛直方向の流れを考えることができます。
したがって、(b)は正です。
■ (c)鉛直方向の層の間隔は水平格子間隔より小さい
(c)は誤りです。
気温や気圧などの気象要素は、水平方向の変化に比べて、鉛直方向の変化が非常に大きいです。
たとえば、気温は地上から上空へ数km上がるだけで大きく変化します。
また、気圧も高度とともに急激に低下します。
そのため、鉛直方向の変化を正確に表すには、鉛直方向を細かく分ける必要があります。
問題文では「鉛直方向の層の間隔を水平格子間隔より大きくしている」とありますが、正しくは鉛直方向の層の間隔は水平格子間隔より小さいです。
ここがひっかけ!
鉛直方向の変化が大きい
↓
粗くする
↓
×
鉛直方向の変化が大きい
↓
細かくする
↓
○
変化が大きい方向ほど、間隔を小さくして細かく表現する必要があります。
したがって、(c)は誤です。
■ 選択肢確認表
| 選択肢 | 正誤 | 理由 |
|---|---|---|
| (a) | 正 | データ同化と数値予報を繰り返すことで、観測点が少ない地域の解析値にも情報が反映される |
| (b) | 正 | 鉛直流は、水平風から連続の式を用いて求める |
| (c) | 誤 | 鉛直方向の変化が大きいため、鉛直方向の層の間隔は水平格子間隔より小さくする |
以上より、正しい組み合わせは②です。
■ 受験生がつまずくポイント
1. データ同化を「観測値をそのまま入れるだけ」と考えてしまう
データ同化は、観測データを単純に貼り付ける作業ではありません。
観測データと数値予報モデルを組み合わせて、大気全体として矛盾の少ない解析値を作る作業です。
2. 鉛直流を直接予測していると考えてしまう
この問題では、鉛直流は水平風から連続の式で求める、という点が問われています。
水平風の収束・発散と鉛直流を結びつけて理解しておくと、実技試験にもつながります。
3. 鉛直方向の変化が大きいなら間隔も大きい、と考えてしまう
これは非常にひっかかりやすいポイントです。
変化が大きい場所ほど、細かく分けないと正確に表現できません。
したがって、鉛直方向の層の間隔は水平格子間隔より小さくなります。
4. 水平方向と鉛直方向のスケール感を混同する
天気図では水平方向に広い範囲を見ますが、鉛直方向では数kmの違いで気温や気圧が大きく変化します。
「鉛直方向は変化が急なので細かく刻む」と覚えておきましょう。
■ まとめ
- (a)データ同化と数値予報を繰り返すことで、観測点が少ない海上などの解析値にも情報が反映されるため正しい
- (b)プリミティブ方程式を用いる全球モデルでは、鉛直流を水平風から連続の式で求めるため正しい
- (c)鉛直方向の変化が大きいので、鉛直方向の層の間隔は水平格子間隔より小さくするため誤り
正解は②
(a)正・(b)正・(c)誤
この問題で必ず押さえたいこと
データ同化
= 観測値とモデルを組み合わせる
鉛直流
= 水平風から連続の式で求める
鉛直方向の変化が大きい
= 鉛直方向は細かく分ける
数値予報の問題では、用語を丸暗記するだけでなく、なぜその処理をするのかを理解しておくことが大切です。
※ 本記事では、一般財団法人 気象業務支援センターより利用許諾を受けて、気象予報士試験問題を掲載しています。
問題文の著作権は一般財団法人 気象業務支援センターに帰属します。
以上、第62回 専門知識 問4の解説でした!
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皆で最高の独学環境を作っていきましょう!
