【第60回 気象予報士試験 専門知識】問8 太平洋高気圧の特徴をわかりやすく解説

こんにちは!今回は第60回気象予報士試験 専門知識 問8を解説します!

この問題は、日本の夏の天気に大きく影響する太平洋高気圧についての問題です。

太平洋高気圧は、亜熱帯高気圧の1つで、夏になると日本付近へ張り出してきます。 ただし、問題文には「スケール」「ハドレー循環」「湿度」「チベット高気圧との関係」など、受験生が迷いやすいポイントが詰め込まれています。

この問題で重要なポイント

  • 太平洋高気圧は亜熱帯高気圧の1つ
  • 夏の太平洋高気圧は、水平スケールが非常に大きい
  • 3000km程度ではなく、東西に8000km以上に及ぶことがある
  • 亜熱帯高気圧はハドレー循環の下降流域に対応する
  • 下降流域では対流圏下層で発散場になりやすい
  • 海面付近は湿っていても、対流圏の多くの高度で相対湿度が高いとは限らない
  • 太平洋高気圧とチベット高気圧が重なると、下降流により積乱雲は発達しにくい

■ 問題文

日本の天気に影響を及ぼす太平洋高気圧について述べた次の文章の下線部(a)〜(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。

太平洋高気圧は亜熱帯高気圧の1つで、(a)東西方向の水平スケールが3000km程度の総観規模の現象である。

太平洋高気圧のような亜熱帯高気圧は、(b)ハドレー循環の下降流域に位置し、対流圏下層では発散域となっている。

また、太平洋高気圧の圏内では、(c)海面からの水蒸気の供給により、対流圏下層から上層までのほとんどの高度で相対湿度が高くなっている。

盛夏期に、太平洋高気圧が北西に張り出して本州付近を広く覆い、さらに対流圏上層の高気圧とも重なると、(d)午後に積乱雲が発達して広い範囲で雷雨になることが多い。

選択肢 (a) (b) (c) (d)

■ 解答

(a) 誤
(b) 正
(c) 誤
(d) 誤

■ 解き方の方針

この問題は、太平洋高気圧を「夏に晴れをもたらす高気圧」とだけ覚えていると迷いやすいです。

次のように、構造で整理すると判断しやすくなります。

亜熱帯高気圧

ハドレー循環の下降流域

下層では発散

下降流で雲が発達しにくい

特に(c)と(d)は、直感と逆に感じやすいところです。

「海の上の高気圧だから湿っている」「夏だから積乱雲が発達しやすい」と考えると、ひっかかります。

■ (a) 太平洋高気圧の水平スケールは3000km程度か

(a)は誤りです。

太平洋高気圧は、夏季に北太平洋上で広く発達する非常に大きな高気圧です。

問題文では「東西方向の水平スケールが3000km程度」としていますが、太平洋高気圧の東西スケールはもっと大きく、夏には8000km以上に及ぶことがあります。

ここがひっかけです。

3000km程度

総観規模の現象としては大きい

でも太平洋高気圧としては小さすぎる

太平洋高気圧は、日本付近だけの小さな高気圧ではなく、北太平洋規模で広がる大規模な高気圧です。

したがって、(a)は誤りです。

■ (b) 亜熱帯高気圧はハドレー循環の下降流域で下層発散か

(b)は正しいです。

太平洋高気圧のような亜熱帯高気圧は、ハドレー循環の下降流域に対応します。

赤道付近で上昇した空気は上空で高緯度側へ向かい、亜熱帯付近で下降します。 この下降流域に形成されるのが、亜熱帯高気圧です。

ハドレー循環と亜熱帯高気圧

赤道付近

強い加熱で上昇

上空で高緯度側へ移動

亜熱帯で下降

亜熱帯高気圧

空気が下降して地表付近に近づくと、下層では周囲へ広がる流れになります。 つまり、対流圏下層では発散域になります。

したがって、(b)は正しいです。

■ (c) 太平洋高気圧の圏内では下層から上層まで相対湿度が高いか

(c)は誤りです。

太平洋高気圧は海上に広がるため、海面付近では水蒸気の供給を受けます。 そのため、下層の一部では湿った空気を含むことがあります。

しかし、太平洋高気圧の本質は下降流です。 下降流では空気が断熱圧縮によって昇温し、相対湿度が下がりやすくなります。

ここで止まりやすいポイント

海面から水蒸気供給

下層は湿りやすい

でも

高気圧内は下降流

断熱圧縮で昇温

相対湿度は低くなりやすい

そのため、対流圏下層から上層までのほとんどの高度で相対湿度が高い、という説明は不適切です。

したがって、(c)は誤りです。

■ (d) 太平洋高気圧と上層高気圧が重なると広範囲で雷雨になりやすいか

(d)は誤りです。

盛夏期に太平洋高気圧が本州付近を広く覆い、さらに対流圏上層の高気圧と重なると、日本付近では背の高い高気圧に覆われる状態になります。

このような場合、下降流が強まり、雲の発達は抑えられやすくなります。

太平洋高気圧+上層高気圧のイメージ

下層:太平洋高気圧

上層:チベット高気圧など

背の高い高気圧に覆われる

下降流が強い

積乱雲は発達しにくい

もちろん、局地的には山沿いや内陸部で雷雨が発生することはあります。 しかし、問題文のように「広い範囲で雷雨になることが多い」という説明は、太平洋高気圧にしっかり覆われた状況とは合いません。

むしろ、晴れて強い日射となり、猛暑になりやすい状況です。

したがって、(d)は誤りです。

■ 選択肢確認表

項目 判定 理由
(a) 太平洋高気圧の東西スケールは3000km程度ではなく、夏には8000km以上に及ぶことがあるため。
(b) 亜熱帯高気圧はハドレー循環の下降流域に位置し、対流圏下層では発散域となるため。
(c) 海面付近は湿っていても、下降流による断熱昇温で、対流圏の多くの高度では相対湿度が高いとはいえないため。
(d) 太平洋高気圧と上層高気圧が重なると下降流が強まり、積乱雲は広範囲では発達しにくいため。

以上より、正しい組み合わせはです。

■ 受験生がつまずくポイント

1. 太平洋高気圧を「日本周辺だけの高気圧」と考えてしまう

太平洋高気圧は、日本の夏の天気に影響するため、日本付近だけの現象のように感じやすいです。

しかし実際には、北太平洋に広く広がる非常に大きな高気圧です。 3000km程度という表現は小さすぎます。

2. ハドレー循環と亜熱帯高気圧がつながらない

亜熱帯高気圧は、ハドレー循環の下降流域に対応します。

「赤道で上昇、亜熱帯で下降」とセットで覚えると、(b)は判断しやすくなります。

3. 海の上だから全層で湿っていると思ってしまう

太平洋高気圧は海上にあるため、下層では水蒸気の供給があります。

しかし、高気圧内では下降流が卓越します。 下降流による断熱昇温で相対湿度は下がりやすく、対流圏のほとんどの高度で相対湿度が高いとはいえません。

4. 夏=積乱雲が発達しやすい、と短絡してしまう

夏は確かに強い日射で積乱雲が発達することがあります。

しかし、太平洋高気圧と上層高気圧が重なって強い下降流に覆われると、広範囲の対流活動は抑制されやすくなります。

5. 「相対湿度」と「水蒸気量」を混同する

水蒸気が供給されることと、相対湿度が高いことは同じではありません。

下降流で気温が上がると、飽和水蒸気圧が大きくなり、相対湿度は下がりやすくなります。

■ まとめ

  • 太平洋高気圧は亜熱帯高気圧の1つ
  • 夏の太平洋高気圧は東西に非常に大きく、3000km程度では小さすぎる
  • 亜熱帯高気圧はハドレー循環の下降流域に対応する
  • 対流圏下層では発散域となる
  • 太平洋高気圧内では、下降流による断熱昇温で相対湿度が低くなりやすい
  • 上層高気圧と重なると下降流が強まり、広範囲の積乱雲は発達しにくい

正解は④

(a) 誤
(b) 正
(c) 誤
(d) 誤

この問題で必ず押さえたいこと

太平洋高気圧

亜熱帯高気圧

ハドレー循環の下降流域

下層では発散

下降流

断熱圧縮で昇温

相対湿度は下がりやすい

雲は発達しにくい

太平洋高気圧+上層高気圧

背の高い高気圧

下降流が強い

猛暑・晴天になりやすい

太平洋高気圧は、単に「夏の高気圧」と覚えるのではなく、ハドレー循環の下降流域として理解すると、湿度や雲の発達までつなげて判断できます。

※ 本記事では、一般財団法人 気象業務支援センターより利用許諾を受けて、気象予報士試験問題を掲載しています。
問題文の著作権は一般財団法人 気象業務支援センターに帰属します。

以上、第60回 専門知識 問8の解説でした!

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