【第60回 気象予報士試験 一般知識】問6 傾圧波動と熱輸送をわかりやすく解説

こんにちは!今回は第60回気象予報士試験 一般知識 問6を解説します!

この問題は、北半球中緯度における偏西風の波動について、気圧の谷の傾きから密度・風向・熱輸送を読み取る問題です。

かなり難しく見えますが、ポイントは図の気圧の谷が高度とともにどちらへ傾いているかを正しく読むことです。 今回は谷の軸が高度とともに東へ傾いているため、一般的な発達中の温帯低気圧でよく見る「西に傾くトラフ」とは逆のイメージになります。

この問題で重要なポイント

  • 北半球では、地衡風は気圧の低い側を左に見て吹く
  • 図では気圧の谷の軸が高度とともに東へ傾いている
  • 谷の東側では、等圧面間の厚さが西側より小さい
  • 等圧面間の厚さが小さいほど、平均密度は大きい
  • 密度が大きい空気は、同じ気圧なら温度が低い
  • 谷の東側では北向き成分を持つ風が吹く
  • 谷の西側では南向き成分を持つ風が吹く
  • この図の範囲では、熱は北向きではなく南向きに輸送される

■ 問題文

北半球中緯度において水平方向にも高度方向にも一様な西風が吹く場があり、ある波動がその場に重なった状態を考える。 図は、そのような状態における東西方向の鉛直断面図で、等圧面pおよびp+Δp(Δp>0)の高度を細い実線で、気圧の谷の軸を太い実線で示している。 このとき、この図に示された2つの等圧面に挟まれた気層における南北方向の熱輸送について述べた次の文章(a)〜(d)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。 ただし、一様な西風と波動のいずれについても、地衡風平衡と静力学平衡が成立しているものとする。

図に示された気圧の谷の軸の東側では西側に比べて、(a)密度の大きい空気が(b)北向きの成分を持つ風で運ばれている。 また、気圧の谷の軸の西側では、東側に比べて(c)温度の低い空気が南北方向の成分を持つ風で運ばれることによる熱輸送がある。 これらを考慮すると、この図に示された波動の範囲では、熱は(d)北向きに輸送されている。

図
選択肢 (a) (b) (c) (d)

■ 解答

(a)正
(b)正
(c)誤
(d)誤

■ 解き方の方針

この問題は、最初から熱輸送を考えようとすると難しくなります。

試験本番では、次の順番で整理すると見通しがよくなります。

① 等圧面の間隔を見る

密度の大小を判断する

② 気圧の谷の東西で風向を読む

北向きか南向きかを見る

③ 密度の大きい空気・小さい空気を温度に置き換える

冷たい空気か暖かい空気かを判断する

④ どちら向きに熱が運ばれるかを考える

ここで特に重要なのは、密度の大きい空気=温度の低い空気と考えることです。

また、北半球の地衡風では、気圧の低い側を左に見て風が吹きます。 このルールを使って、谷の東側・西側で南北方向の風の成分を読み取ります。

■ まず等圧面の間隔から密度の大小を見る

図では、p面とp+Δp面という2つの等圧面が描かれています。

同じ気圧差Δpに対して、高度差が小さい場所ほど、その間にある空気は重く、密度が大きいと考えられます。

等圧面の間隔と密度の関係

同じ気圧差

等圧面の間隔が狭い

薄い層で同じ重さを支える

密度が大きい

等圧面の間隔が広い

密度が小さい

図を見ると、気圧の谷の軸の東側では、西側よりも2つの等圧面の間隔が狭くなっています。

したがって、谷の東側は西側に比べて密度の大きい空気が存在していると判断できます。

■ (a)谷の東側では密度の大きい空気があるか

(a)では、図に示された気圧の谷の軸の東側では、西側に比べて密度の大きい空気があると述べています。

これは正しいです。

先ほど確認したように、谷の東側では等圧面の間隔が西側より狭くなっています。 同じ気圧差をより薄い層で支えているため、平均密度が大きいと考えられます。

谷の東側

等圧面の間隔が狭い

密度が大きい

同じ気圧なら温度が低い

したがって、(a)は正しいです。

■ 次に地衡風から風向を読む

この問題では、地衡風平衡が成立していると書かれています。

北半球の地衡風は、気圧の低い側を左に見て吹くのが基本です。

北半球の地衡風の読み方

北半球

風は等圧線にほぼ平行に吹く

低圧側を左に見て吹く

図の気圧の谷の軸は、低圧部の中心に相当します。 谷の東側と西側では、波動に伴う風の南北成分の向きが逆になります。

この図のように谷の軸が高度とともに東へ傾いている場合、谷の東側では北向き成分を持つ風、谷の西側では南向き成分を持つ風になります。

■ (b)谷の東側では北向き成分を持つ風で運ばれるか

(b)では、谷の東側の空気が北向き成分を持つ風で運ばれていると述べています。

これは正しいです。

谷の東側では、地衡風の南北成分は北向きになります。 したがって、密度の大きい空気が北向き成分を持つ風で運ばれている、という記述は正しいです。

谷の東側で起きていること

谷の東側

密度が大きい空気

温度が低い空気

北向き成分を持つ風で運ばれる

したがって、(b)は正しいです。

■ (c)谷の西側では温度の低い空気が運ばれるか

(c)では、谷の西側では、東側に比べて温度の低い空気が南北方向の成分を持つ風で運ばれると述べています。

これは誤りです。

谷の西側では、東側に比べて等圧面の間隔が広くなっています。 等圧面の間隔が広いということは、平均密度が小さいということです。

同じ気圧で考えると、密度が小さい空気は温度が高い空気です。

谷の西側

等圧面の間隔が広い

密度が小さい

温度が高い

暖かい空気

したがって、谷の西側で運ばれているのは、東側に比べて温度の低い空気ではなく、温度の高い空気です。

ここで受験生がつまずきやすいのは、図の谷の西側を「寒気側」と決めつけてしまうところです。

この問題では、一般的なイメージではなく、図から等圧面の間隔を読み取り、密度と温度を判断する必要があります。

したがって、(c)は誤りです。

■ (d)熱は北向きに輸送されているか

(d)では、この図に示された波動の範囲では、熱は北向きに輸送されていると述べています。

これは誤りです。

ここまで整理した内容をまとめると、次のようになります。

谷の東西での輸送

谷の東側

密度が大きい

温度が低い空気

北向きに運ばれる

谷の西側

密度が小さい

温度が高い空気

南向きに運ばれる

つまり、この図では、冷たい空気が北へ、暖かい空気が南へ運ばれています。

これは、熱が北向きに輸送されているのではなく、むしろ南向きに輸送されていると考えられます。

熱輸送で大切なのは、「風の向き」だけではありません。 どんな温度の空気が、その向きに運ばれているかを見る必要があります。

熱輸送の見方

暖かい空気が北へ行く
または
冷たい空気が南へ行く

北向きの熱輸送

冷たい空気が北へ行く
または
暖かい空気が南へ行く

南向きの熱輸送

この問題では、谷の東側で冷たい空気が北へ運ばれ、谷の西側で暖かい空気が南へ運ばれています。 したがって、熱は北向きではありません。

したがって、(d)は誤りです。

■ 選択肢確認表

項目 判定 理由
(a) 谷の東側では等圧面間隔が狭く、密度が大きい
(b) 谷の東側では北向き成分を持つ風で空気が運ばれる
(c) 谷の西側は東側より密度が小さく、温度が高い空気である
(d) 冷たい空気が北へ、暖かい空気が南へ運ばれるため、熱は北向きではない

以上より、正しい組み合わせはです。

■ 受験生がつまずくポイント

1. 図を見てすぐに「温帯低気圧の普通の熱輸送」と考えてしまう

中緯度の波動と聞くと、暖気が北へ、寒気が南へ運ばれて、熱が北向きに輸送されるイメージを持ちやすいです。

しかし、この問題の図では、気圧の谷の軸が高度とともに東へ傾いています。 一般的な発達中の波動で見られる西傾とは逆の状況として読む必要があります。

2. 等圧面の間隔から密度を読む発想が出てこない

この問題では、気温の高低が直接書かれていません。

そのため、2つの等圧面に挟まれた層の厚さから、密度の大小を判断する必要があります。 等圧面の間隔が狭いほど密度が大きい、という関係を押さえましょう。

3. 密度が大きい空気を暖かい空気だと思ってしまう

同じ気圧で考えると、密度が大きい空気は温度が低い空気です。

気体の状態方程式のイメージとして、冷たい空気は縮んで重く、暖かい空気は膨張して軽いと考えると理解しやすいです。

4. 風向だけで熱輸送を判断してしまう

熱輸送は、単に「風が北向きだから北向き」とは判断できません。

北向きに運ばれているのが暖かい空気なのか、冷たい空気なのかで、熱輸送の向きは変わります。

5. 冷たい空気が北へ運ばれる意味を見落とす

この図では、谷の東側で冷たい空気が北向きに運ばれています。

これは、北向きに熱を運んでいるのではなく、相対的に冷たい空気を北へ運んでいることになります。 同時に西側では暖かい空気が南へ運ばれるため、全体として熱は南向きに輸送されます。

■ まとめ

  • 谷の東側では等圧面間隔が狭く、密度が大きい
  • 密度が大きい空気は、同じ気圧なら温度が低い
  • 谷の東側では、冷たい空気が北向きに運ばれる
  • 谷の西側では、暖かい空気が南向きに運ばれる
  • そのため、この図の範囲では熱は北向きではなく南向きに輸送される

正解は②

(a)正
(b)正
(c)誤
(d)誤

この問題で必ず押さえたいこと

等圧面の間隔が狭い

密度が大きい

温度が低い

谷の東側

冷たい空気が北へ

谷の西側

暖かい空気が南へ

結果

熱は北向きではなく南向き

この問題では、見た目の風向だけでなく、「どの温度の空気がどちらへ運ばれているか」を整理することが大切です。

※ 本記事では、一般財団法人 気象業務支援センターより利用許諾を受けて、気象予報士試験問題を掲載しています。
問題文の著作権は一般財団法人 気象業務支援センターに帰属します。

以上、第60回 一般知識 問6の解説でした!

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