【第58回 気象予報士試験 専門知識】問15 アジアモンスーンとチベット高気圧・南西モンスーン・PJパターンをわかりやすく解説
こんにちは!今回は第58回 気象予報士試験 専門知識 問15を解説します!
この問題は、夏のモンスーン期におけるアジア域の対流圏上層・下層の大気循環について問う問題です。
特に重要なのは、チベット高気圧、南西モンスーン、そしてPJパターンです。
受験生がつまずきやすいのは、「チベット高気圧=チベット高原の積雪でできる」と覚えてしまうところです。実際には、夏季の強い加熱やモンスーン対流に伴う上層の高気圧性循環として理解する必要があります。
この問題で重要なポイント
- 夏のアジア上空には、対流圏上層にチベット高気圧が現れる。
- チベット高気圧は、夏季のチベット高原や周辺の加熱・モンスーン活動と関係する。
- 「夏でも積雪が残り、低温のために出現する」は誤り。
- 南西モンスーンは、アジアモンスーンの下層循環として重要である。
- 熱帯低気圧の発生には、海面水温だけでなく、下層収束・上層発散・鉛直シアーなどが関係する。
- PJパターンは、熱帯西部北太平洋付近の対流活動と日本付近の夏の天候に関係する。
- PJパターンが活発なとき、日本付近で高温になりやすい場合がある。
■ 問題文
図は夏のモンスーン期(6〜9月)におけるアジア域の対流圏上・下層の大気循環を200hPa(左)及び850hPa(右)の流線関数の平年値で表したものである。
この図を参照し、アジア域における夏の大気循環について述べた次の文(a)〜(c)の下線部の組み合わせとして正しいものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。
なお、風の回転成分(非発散成分)は、流線関数の大きい値を右側に見て等値線と平行に吹く。
(a) この時期、領域(ア)を中心に対流圏上層に大きな高気圧性循環が現れる。この循環はチベット高気圧と呼ばれ、チベット高原では夏でも積雪が残り周辺より低温のために出現する。
(b) 領域(イ)では、海面水温が28℃を超えるとともに、対流圏では上・下層とも西よりの風が吹いており、水平風の鉛直シアーが弱いため、熱帯低気圧の発生・発達に適した環境となっている。
(c) 領域(ウ)は海面水温が高く、下層ではモンスーンの南西風と太平洋高気圧の南縁を吹く偏東風の収束域となるため対流雲が盛んに発生する。この領域における対流活動は、日本の夏の天候に関係し、平年より活発なときには日本付近では高温になりやすい。
| 選択肢 | (a) | (b) | (c) |
|---|---|---|---|
| ① | 正 | 正 | 正 |
| ② | 正 | 正 | 誤 |
| ③ | 誤 | 正 | 正 |
| ④ | 誤 | 誤 | 正 |
| ⑤ | 誤 | 誤 | 誤 |
■ 解答
④
(a) 誤
(b) 誤
(c) 正
■ 解き方の方針
この問題は、3つの領域をそれぞれ別の現象として整理すると解きやすいです。
領域(ア)
↓
対流圏上層の高気圧性循環
↓
チベット高気圧
領域(イ)
↓
アジアモンスーン域
↓
熱帯低気圧の発達条件を確認
領域(ウ)
↓
熱帯西部北太平洋の対流活動
↓
PJパターン
↓
日本の夏の天候に関係
特に(a)は、チベット高気圧の出現理由を「低温」としている点が誤りです。
■ (a) チベット高気圧は低温のために出現するのか
(a)は誤りです。
夏のモンスーン期には、チベット高原付近を中心に、対流圏上層で大きな高気圧性循環が現れます。
これはチベット高気圧と呼ばれます。
ここまでは正しいです。
しかし、問題文では「チベット高原では夏でも積雪が残り周辺より低温のために出現する」とされています。
この理由が誤りです。
チベット高気圧は、夏季のチベット高原や周辺の強い加熱、アジアモンスーンに伴う活発な対流・潜熱加熱などと関係して形成される上層の高気圧性循環です。
ここが受験生のつまずきポイントです
「チベット高原=標高が高い=寒い」というイメージから、低温によって高気圧ができると考えてしまいがちです。
しかし、この問題で問われているのは夏の対流圏上層の循環です。
夏のチベット高原・周辺
↓
強い加熱
アジアモンスーンの活発な対流
↓
潜熱加熱
対流圏上層
↓
高気圧性循環
チベット高気圧
したがって、(a)は誤りです。
■ (b) 領域(イ)は熱帯低気圧の発生・発達に適した環境か
(b)は誤りです。
熱帯低気圧が発生・発達しやすい条件には、一般に次のようなものがあります。
- 高い海面水温
- 下層の収束
- 上層の発散
- 十分な水蒸気
- 弱い鉛直シアー
- コリオリ力がある程度働く緯度
問題文では、領域(イ)について「上・下層とも西よりの風が吹いており、水平風の鉛直シアーが弱い」としています。
しかし、図の流線関数の分布から見ると、この領域で上層と下層の風向が同じ西よりの風で鉛直シアーが弱い、とは判断できません。
むしろ、モンスーン循環の中では、下層のモンスーン西風と上層の流れが異なり、鉛直シアーが大きくなりやすい領域があります。
ここが受験生のつまずきポイントです
「海面水温が28℃を超える」だけを見ると、熱帯低気圧が発生しやすいと考えたくなります。
しかし、熱帯低気圧は海面水温だけで決まりません。
海面水温が高い
↓
必要条件の1つ
でも
鉛直シアーが強いと発達しにくい
上層・下層の風の関係も確認する
したがって、(b)は誤りです。
■ (c) 領域(ウ)の対流活動と日本の夏の天候
(c)は正しいです。
領域(ウ)は、熱帯西部北太平洋付近に対応する領域です。
この付近では海面水温が高く、下層ではモンスーンの南西風と、太平洋高気圧の南縁を吹く偏東風が収束しやすくなります。
そのため、対流雲が盛んに発生します。
この領域の対流活動は、日本の夏の天候と関係しています。
特に、フィリピン付近から熱帯西部北太平洋で対流活動が活発になると、日本付近では太平洋高気圧が強まりやすくなり、高温になりやすいことがあります。
PJパターンのイメージ
熱帯西部北太平洋
フィリピン付近
↓
対流活動が活発
大気の波列が日本付近へ影響
↓
太平洋高気圧が強まりやすい
日本付近
↓
晴天・高温になりやすい
このような関係は、PJパターンとして知られています。
したがって、(c)は正しいです。
■ 選択肢確認表
| 項目 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| (a) | 誤 | チベット高気圧は夏季の加熱やモンスーン対流に伴う上層高気圧であり、積雪が残る低温のために出現するわけではない。 |
| (b) | 誤 | 海面水温だけでなく、上・下層風や鉛直シアーも重要であり、記述のように発達に適した環境とはいえない。 |
| (c) | 正 | 熱帯西部北太平洋の対流活動は日本の夏の天候に関係し、活発なときには日本付近で高温になりやすい。 |
以上より、正しい組み合わせは④です。
■ 受験生がつまずくポイント
1. チベット高気圧を「寒冷高気圧」と考えてしまう
チベット高気圧は夏の対流圏上層に現れる高気圧性循環です。低温や積雪で出現する高気圧ではありません。
2. 海面水温28℃だけで熱帯低気圧が発達すると判断してしまう
高い海面水温は重要ですが、それだけでは不十分です。鉛直シアーや下層収束、上層発散なども確認する必要があります。
3. 流線関数から風向を読むのに迷う
問題文にある通り、風の回転成分は流線関数の大きい値を右側に見て等値線と平行に吹きます。上層と下層の風向を丁寧に比べましょう。
4. PJパターンと日本の高温を結びつけられない
フィリピン付近・熱帯西部北太平洋の対流活動が活発になると、日本付近の太平洋高気圧が強まり、高温になりやすい場合があります。
5. 領域(イ)と領域(ウ)を同じ熱帯域として扱ってしまう
どちらも低緯度の領域ですが、問われている現象が違います。領域(イ)は熱帯低気圧の発達条件、領域(ウ)はPJパターンと日本の夏の天候として整理しましょう。
■ まとめ
- 領域(ア)には、夏季の対流圏上層にチベット高気圧が現れる。
- チベット高気圧は、積雪が残る低温によって出現するものではない。
- 熱帯低気圧の発達には、高い海面水温だけでなく、鉛直シアーなども重要である。
- 領域(ウ)では、南西モンスーンと太平洋高気圧南縁の偏東風が収束し、対流活動が活発になりやすい。
- 領域(ウ)の対流活動は日本の夏の天候と関係し、活発なときには日本付近で高温になりやすい。
- (a)誤、(b)誤、(c)正。
正解は④
この問題で必ず押さえたいこと
チベット高気圧
↓
夏の対流圏上層の高気圧性循環
↓
低温・積雪でできるわけではない
熱帯低気圧の発達条件
↓
高い海面水温
+
下層収束
+
上層発散
+
弱い鉛直シアー
領域(ウ)
↓
南西モンスーン
+
太平洋高気圧南縁の偏東風
↓
収束・対流活発
PJパターン
↓
熱帯西部北太平洋の対流活動
↓
日本の夏の高温に関係
※ 本記事では、一般財団法人 気象業務支援センターより利用許諾を受けて、気象予報士試験問題を掲載しています。
問題文の著作権は一般財団法人 気象業務支援センターに帰属します。
以上、第58回 専門知識 問15の解説でした!
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