【第55回 気象予報士試験 専門知識】問7 天気予報ガイダンス・系統誤差・カルマンフィルターをわかりやすく解説
こんにちは!今回は第55回 気象予報士試験 専門知識 問7を解説します!
この問題は、気象庁が作成している天気予報ガイダンスについて問う問題です。
ガイダンスは、数値予報モデルの結果をそのまま使うのではなく、過去の予報誤差や観測値との関係を利用して、予報に使いやすい形へ補正・変換したものです。
受験生がつまずきやすいのは、数値予報モデルが苦手な現象は、ガイダンスでも絶対に補正できないと思ってしまうところです。
しかし、誤差に一定の傾向がある場合、つまり系統誤差であれば、ガイダンスによって低減できることがあります。
この問題で重要なポイント
- ガイダンスは、数値予報モデルの予測値を統計的に補正・加工した情報である。
- 数値予報モデルには、地形・海陸分布・物理過程などに起因する系統誤差がある。
- 系統誤差とは、毎回同じような方向に出やすい誤差である。
- ガイダンスは、系統誤差を低減できる。
- 海陸の区別の不一致による誤差も、ガイダンスで低減できる場合がある。
- 放射冷却による気温低下をモデルが十分に予測できない場合でも、気温ガイダンスで低減できる場合がある。
- カルマンフィルターは、最新の観測結果を取り込みながら予測式を逐次更新する。
- 大きな降水量が観測されると、その後しばらく多めに予測する傾向が出ることがある。
■ 問題文
気象庁が作成している天気予報ガイダンスについて述べた次の文(a)〜(d)の下線部の正誤について、下記の①〜⑤の中から正しいものを1つ選べ。
(a) 数値予報モデルでは、予報時間が長くなるにつれて予測値の系統誤差の傾向が変化することがある。ガイダンスはそのような系統誤差を低減することができる。
(b) 数値予報モデルでは、海陸の区別が実際と一致していない格子点がある。ガイダンスは、海陸の区別の不一致に起因する予測値の誤差を低減することができる。
(c) 数値予報モデルが放射冷却による気温の低下を十分に予測できない場合は、気温ガイダンスでもそのような予測誤差を低減することはできない。
(d) カルマンフィルターを用いた平均降水量ガイダンスは、数値予報モデルが予測していない大きな降水量が観測されると、それ以降のある期間にわたって降水量を実際より多めに予測する傾向がある。
| 選択肢 | 内容 |
|---|---|
| ① | (a)のみ誤り |
| ② | (b)のみ誤り |
| ③ | (c)のみ誤り |
| ④ | (d)のみ誤り |
| ⑤ | すべて正しい |
■ 解答
③
(a) 正
(b) 正
(c) 誤
(d) 正
■ 解き方の方針
この問題は、ガイダンスの役割を一言で押さえると解きやすいです。
数値予報モデル
↓
そのままでは誤差がある
↓
過去の予報と実況の関係を利用
↓
統計的に補正
↓
ガイダンス
本番では、まず系統誤差という言葉に注目します。
系統誤差
↓
いつも同じ方向に出やすい誤差
↓
統計的に補正しやすい
↓
ガイダンスで低減できる
一方で、(c)のように「気温ガイダンスでも低減できない」と言い切っている文は注意です。
モデルが放射冷却を十分に表現できない場合でも、その誤差に傾向があれば、ガイダンスで補正できることがあります。
■ (a) 予報時間で変化する系統誤差をガイダンスで低減できる?
(a)は正しいです。
数値予報モデルには、予測値が実際より高めに出やすい、低めに出やすいなど、一定の傾向をもつ誤差があります。
このような誤差を系統誤差といいます。
また、系統誤差の出方は、予報時間が長くなるにつれて変化することがあります。
系統誤差のイメージ
数値予報モデル
↓
毎回少し高めに予測しやすい
または
毎回少し低めに予測しやすい
↓
系統誤差
ガイダンスは、過去の数値予報と実況の関係を利用して、このような系統誤差を低減します。
たとえば、ある地域でモデルの気温予測がいつも2℃高めに出る傾向があれば、その傾向を統計的に補正するイメージです。
ここで止まりやすいポイント
「予報時間が長くなると誤差の傾向が変わるなら、補正できないのでは?」と思いやすいです。
しかし、予報時間ごとの誤差傾向を統計的に捉えれば、ガイダンスで低減できます。
したがって、(a)は正しいです。
■ 補足講義:系統誤差とは
系統誤差は、試験でよく問われる重要語句です。
ランダムにばらつく誤差ではなく、同じような条件で同じ方向に出やすい誤差です。
| 誤差の種類 | イメージ | ガイダンスとの関係 |
|---|---|---|
| 系統誤差 | いつも高め・低めに出る傾向 | 統計的に補正しやすい |
| ランダム誤差 | 毎回ばらばらに出る誤差 | 補正しにくい |
ガイダンスは、数値予報モデルの誤差のうち、特にこの系統誤差を低減する役割を持ちます。
■ (b) 海陸の区別の不一致による誤差を低減できる?
(b)は正しいです。
数値予報モデルでは、大気を格子に分けて計算しています。
そのため、実際には海岸線が複雑でも、モデル上では格子ごとに海か陸かを表現します。
このとき、実際の海陸分布とモデル上の海陸分布が一致しない格子点が出ることがあります。
海陸不一致のイメージ
実際の地形
↓
海岸線が複雑
数値予報モデル
↓
格子で海・陸を表現
↓
実際とずれる場合がある
海と陸では、気温の変化や風の吹き方が大きく異なります。
そのため、海陸の区別の不一致は、気温や風などの予測誤差につながります。
ただし、この誤差に一定の傾向がある場合、ガイダンスによって低減できます。
ここがひっかけ
「モデルの地形や海陸の表現が間違っているなら、ガイダンスでも直せない」と考えがちです。
しかし、同じ地点で同じような誤差が出るなら、統計的に補正できる可能性があります。
したがって、(b)は正しいです。
■ (c) 放射冷却の予測誤差は気温ガイダンスでも低減できない?
(c)は誤りです。
ここがこの問題の最大のひっかけです。
問題文では、数値予報モデルが放射冷却による気温の低下を十分に予測できない場合、気温ガイダンスでもそのような予測誤差を低減できないとしています。
しかし、これは誤りです。
数値予報モデルが放射冷却を十分に表現できない場合でも、その誤差に一定の傾向があれば、気温ガイダンスで低減できることがあります。
放射冷却とガイダンスの考え方
晴れて風が弱い夜
↓
地表面から熱が逃げる
↓
地表付近が冷える
↓
放射冷却
モデルが冷え込みを弱く予測
↓
実際より気温を高めに予測しやすい
↓
その傾向を学習
↓
気温ガイダンスで補正
もちろん、ガイダンスですべての誤差が完全になくなるわけではありません。
しかし、「低減することはできない」と言い切るのは誤りです。
ここがひっかけ
「数値予報モデルが予測できないなら、ガイダンスでも無理」と思ってしまうと間違えます。
ガイダンスは、モデルの予測値と実況の関係を使って補正するため、モデルの苦手な傾向をある程度低減できる場合があります。
したがって、(c)は誤りです。
■ 補足講義:放射冷却を受験生目線で理解する
放射冷却は、夜間に地表面から宇宙へ熱が逃げることで、地表付近の気温が下がる現象です。
特に、晴れて雲が少なく、風が弱い夜に起こりやすくなります。
| 条件 | なぜ冷えやすいか |
|---|---|
| 晴れている | 雲が少なく、地表からの熱が宇宙へ逃げやすい |
| 風が弱い | 上空の暖かい空気と混ざりにくい |
| 乾燥している | 水蒸気による保温効果が弱い |
| 盆地・内陸 | 冷気がたまりやすい |
数値予報モデルがこの冷え込みを十分に表現できないと、最低気温を高めに予測することがあります。
しかし、同じ地点で同じような条件のときに同じような誤差が出るなら、気温ガイダンスで補正できます。
■ (d) カルマンフィルターでは大雨後に多めに予測する傾向がある?
(d)は正しいです。
カルマンフィルターを用いたガイダンスでは、最新の観測値を取り込みながら、予測式を逐次更新します。
つまり、最近の予報誤差を反映して、次の予測を調整していきます。
カルマンフィルターのイメージ
予測する
↓
実況と比べる
↓
誤差を確認する
↓
予測式を更新する
↓
次の予測に反映する
ここで、数値予報モデルが予測していない大きな降水量が観測されたとします。
すると、ガイダンスは「モデルよりも実際は多く降った」という情報を取り込みます。
その結果、それ以降のある期間にわたって、降水量を実際より多めに予測する傾向が出ることがあります。
ここで止まりやすいポイント
カルマンフィルターは最新の観測を取り込むため、常に予報がよくなるだけだと思いがちです。
しかし、大きな観測値に影響されると、その後しばらく過大予測の傾向が出ることがあります。
したがって、(d)は正しいです。
■ 補足講義:カルマンフィルターは「学習するガイダンス」
カルマンフィルターは、予測式の係数を固定せず、最新の観測結果を取り込みながら更新していく方法です。
イメージとしては、直近の予報外れを見て、次の予報を少し修正する仕組みです。
カルマンフィルターの流れ
数値予報モデルの予測
↓
ガイダンスで降水量を予測
↓
実際の降水量を確認
↓
予測式を修正
↓
次回以降の予測へ反映
そのため、急に大きな降水量が観測されると、その情報が強く反映され、しばらく多めに予測しやすくなることがあります。
■ 選択肢確認表
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| (a) | 正 | ガイダンスは、予報時間によって変化する系統誤差を統計的に低減できるため。 |
| (b) | 正 | 海陸の区別の不一致に起因する予測誤差も、傾向があればガイダンスで低減できるため。 |
| (c) | 誤 | モデルが放射冷却による気温低下を十分に予測できない場合でも、気温ガイダンスで誤差を低減できる場合があるため。 |
| (d) | 正 | カルマンフィルターは最新の観測値を反映するため、大きな降水量が観測された後、しばらく多めに予測する傾向が出ることがあるため。 |
以上より、誤っているのは(c)のみです。
したがって、正解は③です。
■ 受験生がつまずくポイント
1. ガイダンスを単なる「数値予報の言い換え」だと思ってしまう
ガイダンスは、数値予報モデルの結果をそのまま出すものではありません。過去の予報と実況の関係を使い、統計的に補正・加工した情報です。
2. 系統誤差の意味があいまいになる
系統誤差は、同じような方向に出やすい誤差です。ガイダンスは、このような傾向のある誤差を低減するのが得意です。
3. モデルの海陸表現の誤差は補正できないと思ってしまう
海陸の区別が実際とずれていても、その地点で毎回同じような誤差が出るなら、統計的に補正できる可能性があります。
4. 放射冷却をモデルが外したらガイダンスでも無理だと思ってしまう
今回の最大のひっかけです。モデルが放射冷却を十分に表現できなくても、その誤差に傾向があれば気温ガイダンスで低減できる場合があります。
5. カルマンフィルターを「常に精度を上げる万能補正」と思ってしまう
カルマンフィルターは最新の観測を取り込んで更新しますが、大きな観測値の影響を受けると、その後しばらく過大予測の傾向が出ることがあります。
6. 「できない」という強い否定表現を見落とす
(c)は「低減することはできない」と言い切っています。専門知識では、このような強い否定表現が誤りになることが多いです。
■ まとめ
- ガイダンスは、数値予報モデルの予測値を統計的に補正・加工した情報である。
- ガイダンスは、系統誤差を低減できる。
- 海陸の区別の不一致に起因する誤差も、ガイダンスで低減できる場合がある。
- 放射冷却による気温低下をモデルが十分に予測できない場合でも、気温ガイダンスで低減できる場合がある。
- カルマンフィルターは最新の観測値を取り込み、予測式を逐次更新する。
- 大きな降水量が観測された後、しばらく多めに予測する傾向が出ることがある。
- 誤っているのは(c)のみ。
正解は③
この問題で必ず押さえたいこと
数値予報モデル
↓
系統誤差がある
↓
過去の予報と実況の関係
↓
ガイダンスで補正
放射冷却の冷え込み不足
↓
モデルが気温を高めに予測しやすい
↓
その傾向を利用
↓
気温ガイダンスで低減できる場合あり
カルマンフィルター
↓
最新の観測値を反映
↓
大雨後に予測式が修正
↓
しばらく多めに予測することがある
※ 本記事では、一般財団法人 気象業務支援センターより利用許諾を受けて、気象予報士試験問題を掲載しています。
問題文の著作権は一般財団法人 気象業務支援センターに帰属します。
以上、第55回 専門知識 問7の解説でした!
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皆で最高の独学環境を作っていきましょう!
