【第54回 気象予報士試験 一般知識】問8 温帯低気圧の発達終了段階をわかりやすく解説
こんにちは!今回は第54回 気象予報士試験 一般知識 問8を解説します!
この問題は、中緯度の温帯低気圧が発達し、その発達過程が終了した段階の特徴を問う問題です。
受験生がつまずきやすいのは、発達中と発達終了後の違い、そして南半球での軸の傾きです。
特に(b)は、「南半球だから東西も逆になるのでは?」と考えやすいですが、ここがひっかけです。
この問題で重要なポイント
- 温帯低気圧は、上空の気圧の谷と対応しながら発達する。
- 発達中は、地上低気圧と上空の気圧の谷にずれがある。
- 発達中の温帯低気圧の軸は、北半球でも南半球でも、上空へ向かって西へ傾く。
- 発達過程が終了すると、地上低気圧と上空の低気圧の軸はほぼ鉛直になる。
- 発達終了段階では、対流圏上層に切離低気圧が存在することが多い。
- 上空に寒冷な低気圧があると、対流圏界面は周囲より低くなる。
- 南半球では、コリオリ力や回転方向は逆になるが、発達中の軸は東ではなく西に傾く。
■ 問題文
中緯度の温帯低気圧が発達し、その発達過程が終了した段階における特徴について述べた次の文(a)〜(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。
(a) 対流圏上層に、切離した低気圧があることが多い。
(b) 南半球においては、発達時に上空に向かって東に傾いていた気圧の谷の軸がほぼ鉛直となる。
(c) 地上低気圧の上空には、対流圏界面の高度が周囲より低いところがある。
| 選択肢 | (a) | (b) | (c) |
|---|---|---|---|
| ① | 正 | 正 | 正 |
| ② | 正 | 正 | 誤 |
| ③ | 正 | 誤 | 正 |
| ④ | 誤 | 正 | 正 |
| ⑤ | 誤 | 誤 | 誤 |
■ 解答
③
(a) 正
(b) 誤
(c) 正
■ 解き方の方針
この問題は、温帯低気圧の立体構造をイメージできるかがポイントです。
発達中
↓
上空の谷は地上低気圧より西側
↓
軸は上空へ向かって西へ傾く
発達終了段階
↓
上空の低気圧と地上低気圧が重なる
↓
軸がほぼ鉛直
上空が寒冷
↓
気柱が薄い
↓
対流圏界面が低い
(a)と(c)は正しいです。
(b)は、発達時の軸の傾きを東としている点が誤りです。正しくは、南半球でも上空へ向かって西へ傾くです。
■ 補足講義:温帯低気圧はどう発達するのか
温帯低気圧は、地上だけで発達するわけではありません。
上空の気圧の谷や寒気と対応しながら、立体的に発達します。
上空の気圧の谷
↓
地上低気圧の発達を助ける
発達が進む
↓
上空の寒冷低気圧と対応
↓
地上低気圧と上空低気圧の軸がそろう
発達中と発達終了後では、低気圧の立体構造が変わります。
| 段階 | 特徴 | イメージ |
|---|---|---|
| 発達中 | 上空の谷が地上低気圧より西側にある | 軸が上空へ向かって西に傾く |
| 発達終了段階 | 上空低気圧と地上低気圧が重なる | 軸がほぼ鉛直 |
■ (a) 対流圏上層に切離した低気圧があることが多い?
(a)は正しいです。
温帯低気圧が発達し、その発達過程が終了した段階では、対流圏上層に寒冷低気圧や切離低気圧が存在することが多くなります。
切離低気圧とは、偏西風の流れから切り離されたように存在する上空の低気圧です。
発達終了段階のイメージ
温帯低気圧が発達
↓
上空の谷が深まる
↓
寒気を伴う低気圧が切離
↓
対流圏上層に切離低気圧
ここで止まりやすいポイント
「切離低気圧」は地上低気圧ではなく、主に上空で見られる低気圧です。
地上天気図だけで考えると判断しにくいので、立体構造として押さえましょう。
したがって、(a)は正しいです。
■ (b) 南半球では発達時に上空へ向かって東に傾く?
(b)は誤りです。
この問題で最も重要なのは、南半球でも発達中の温帯低気圧の軸は上空へ向かって西へ傾くということです。
受験生は「南半球だから東西も逆になるのでは?」と思ってしまいやすいですが、これは誤解です。
発達中の温帯低気圧の軸
北半球
↓
上空へ向かって西へ傾く
南半球
↓
上空へ向かって西へ傾く
南半球では、コリオリ力の向きや低気圧の回転方向は北半球と逆になります。
しかし、温帯低気圧が発達するときに、上空の気圧の谷が地上低気圧より西側に位置するという構造は変わりません。
そのため、北半球でも南半球でも、発達中の気圧の谷の軸は上空へ向かって西へ傾いています。
発達過程のイメージ
発達中
↓
上空へ向かって西へ傾く
発達終了
↓
軸がほぼ鉛直になる
問題文では、
「南半球では、発達時に上空へ向かって東に傾いていた」
としています。
しかし、これは「東」が誤りです。
正しくは、
南半球でも
発達時は
上空へ向かって西へ傾く
となります。
なお、発達が終了すると軸がほぼ鉛直になるという後半部分は正しいです。
しかし、正誤問題では一部でも誤っていれば文全体が誤りです。
ここが最大のひっかけ
「南半球だから東西も逆になる」と考えてしまう受験生が非常に多い問題です。
しかし、温帯低気圧の発達中は、北半球でも南半球でも、軸は上空へ向かって西へ傾くと押さえましょう。
■ (c) 地上低気圧の上空では対流圏界面が低い?
(c)は正しいです。
発達終了段階の温帯低気圧の上空には、寒冷な低気圧が存在することが多くなります。
寒冷な空気が上空にある場所では、気柱の厚さが周囲より小さくなり、対流圏界面の高度が低くなります。
対流圏界面が低くなるイメージ
上空に寒冷低気圧
↓
気柱が冷たい
↓
気柱の厚さが小さい
↓
対流圏界面が低い
つまり、地上低気圧の上空には、対流圏界面の高度が周囲より低いところがあると考えられます。
ここで間違えやすい理由
低気圧という言葉から「上に膨らむ」とイメージしてしまうと、対流圏界面が高いと誤解しやすいです。
しかし、上空に寒気を伴う場合、気柱は冷えて薄くなり、対流圏界面は低くなります。
したがって、(c)は正しいです。
■ 補足講義:寒冷低気圧と対流圏界面
気柱が暖かいと、空気は膨張しやすく、厚みが大きくなります。
一方、気柱が冷たいと、空気は収縮しやすく、厚みが小さくなります。
| 上空の状態 | 気柱の厚さ | 対流圏界面の高度 |
|---|---|---|
| 暖かい | 厚い | 高くなりやすい |
| 冷たい | 薄い | 低くなりやすい |
寒冷低気圧
↓
上空が冷たい
↓
気柱が薄い
↓
対流圏界面が低い
■ 選択肢確認表
| 選択肢 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| (a) | 正 | 発達過程が終了した温帯低気圧では、対流圏上層に切離低気圧があることが多いため。 |
| (b) | 誤 | 南半球でも発達中の温帯低気圧の軸は上空へ向かって西へ傾く。問題文は東としているため誤り。 |
| (c) | 正 | 寒冷低気圧に対応して、対流圏界面の高度が周囲より低いところがあるため。 |
以上より、組み合わせは(a)正、(b)誤、(c)正です。
したがって、正解は③です。
■ 受験生がつまずくポイント
1. 発達中と発達終了段階を混同する
発達中は地上低気圧と上空の谷にずれがあり、軸は上空へ向かって西に傾きます。発達が終了すると、上空の低気圧と地上低気圧が重なり、軸がほぼ鉛直になります。
2. 切離低気圧を地上低気圧だと思ってしまう
この問題でいう切離低気圧は、対流圏上層に現れる低気圧です。地上天気図だけで考えないようにしましょう。
3. 南半球では東西も逆になると思ってしまう
南半球ではコリオリ力の向きや低気圧の回転方向は逆になります。しかし、発達中の温帯低気圧の軸は、北半球でも南半球でも上空へ向かって西へ傾きます。
4. 文の後半だけ見て正しいと判断してしまう
(b)は「軸がほぼ鉛直となる」という部分だけ見ると正しそうです。しかし、前半の「上空に向かって東に傾いていた」が誤りなので、文全体として誤りです。
5. 対流圏界面の高さを低気圧の強さだけで判断する
対流圏界面の高度は、気柱の温度構造と関係します。寒冷低気圧の上空では、気柱が冷たく薄くなり、対流圏界面が低くなりやすいです。
6. 「寒気=対流が活発=対流圏界面が高い」と短絡してしまう
この問題では、発達終了段階の寒冷低気圧に伴う大気の立体構造を見ます。上空の寒気に対応して、対流圏界面が周囲より低いところがあると考えます。
■ まとめ
- 発達終了段階の温帯低気圧では、対流圏上層に切離低気圧があることが多い。
- 発達中の温帯低気圧の軸は、北半球でも南半球でも上空へ向かって西へ傾く。
- (b)は、南半球での発達時の軸を「東に傾く」としているため誤り。
- 発達終了後は、上空低気圧と地上低気圧が重なり、軸がほぼ鉛直になる。
- 寒冷低気圧の上空では、対流圏界面が周囲より低くなることがある。
正解は③
この問題で必ず押さえたいこと
温帯低気圧の発達中
↓
北半球でも南半球でも
上空へ向かって西へ傾く
発達終了段階
↓
軸がほぼ鉛直
寒冷低気圧
↓
気柱が冷たい
↓
対流圏界面が低い
※ 本記事では、一般財団法人 気象業務支援センターより利用許諾を受けて、気象予報士試験問題を掲載しています。
問題文の著作権は一般財団法人 気象業務支援センターに帰属します。
以上、第54回 一般知識 問8の解説でした!
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