【第63回 気象予報士試験 専門知識】問4 数値予報モデルと予測対象をわかりやすく解説
こんにちは!今回は第63回気象予報士試験 専門知識 問4を解説します!
この問題は、数値予報モデルの水平格子間隔と、予測できる大気現象のスケールについての問題です。
さらに、組織化された積乱雲による強い降水を予測するために、どのような数値予報モデルや物理過程が重要かも問われています。
この問題で重要なポイント
- 水平格子間隔が小さいほど、より小さなスケールの現象を表現しやすい
- 積乱雲のような小規模で激しい現象には、非静力学モデルが重要
- プリミティブ方程式系は、主に静力学平衡を仮定した大規模現象向けの考え方
- 強い降水の予測には、雲微物理過程や対流過程の扱いが重要
- 地面からの熱・水蒸気供給だけが最重要というわけではない
■ 問題文
数値予報とその予測対象である大気現象について述べた次の文章の下線部(a)〜(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。
大気現象には様々な時間空間スケールを持つものがあるが、一般に、(a)数値予報モデルで予測可能な現象の水平スケールの下限は、水平格子間隔が小さいほど小さくなる。
また、数値予報が予測できる大気現象は、数値予報モデルによっても異なる。
数値予報において組織化された積乱雲からもたらされる強い降水の予測精度を向上させるには、(b)プリミティブ方程式系を基礎方程式とする数値予報モデルを用いる必要があり、物理過程として最も重要な部分は、(c)地面からの蒸発や日射による地面の加熱を考慮した下部境界からの熱・水蒸気供給のパラメタリゼーションである。
| (a) | (b) | (c) | |
|---|---|---|---|
| ① | 正 | 正 | 誤 |
| ② | 正 | 誤 | 正 |
| ③ | 正 | 誤 | 誤 |
| ④ | 誤 | 正 | 正 |
| ⑤ | 誤 | 正 | 誤 |
■ 解答
③
(a)正
(b)誤
(c)誤
■ 解き方の方針
この問題は、数値予報モデルを次のように整理すると解きやすいです。
格子間隔が小さい
↓
細かい現象を表現しやすい
積乱雲による強い雨
↓
鉛直加速度が重要
↓
非静力学モデルが必要
強雨の予測
↓
雲微物理・対流過程が重要
ポイントは、強い降水=下部境界だけで決まるわけではないということです。
■ (a)格子間隔が小さいほど、小さな現象を予測しやすい
(a)は正しいです。
数値予報モデルでは、大気を格子状に区切って計算します。
そのため、水平格子間隔が粗いモデルでは、小さなスケールの現象を細かく表現することができません。
一方、水平格子間隔が小さいモデルでは、より小さなスケールの現象を表現しやすくなります。
格子間隔のイメージ
格子間隔が大きい
↓
大きな現象向き
格子間隔が小さい
↓
小さな現象も表現しやすい
したがって、(a)は正です。
■ (b)積乱雲の強雨予測にはプリミティブ方程式系ではなく非静力学モデルが重要
(b)は誤りです。
組織化された積乱雲からもたらされる強い降水では、強い上昇流や下降流など、鉛直方向の運動が非常に重要です。
このような現象では、静力学平衡を仮定すると、鉛直方向の加速度を十分に表現できません。
そのため、積乱雲スケールの強雨予測では、非静力学モデルが重要になります。
ここがひっかけ!
問題文では「プリミティブ方程式系を基礎方程式とする数値予報モデル」とあります。
しかし、組織化された積乱雲による強い降水の予測精度向上で重要なのは、鉛直加速度を扱える非静力学モデルです。
積乱雲
↓
強い上昇流・下降流
↓
鉛直加速度が重要
↓
非静力学モデル
したがって、(b)は誤です。
■ (c)強雨予測で最も重要なのは下部境界だけではない
(c)は誤りです。
地面からの蒸発や日射による地面の加熱は、大気下層に熱や水蒸気を供給するため、降水の発生に関係します。
しかし、組織化された積乱雲による強い降水の予測では、それだけが最も重要というわけではありません。
強い降水の予測には、雲の中で水蒸気が雲水・雨・雪・氷粒子などに変化する雲微物理過程や、対流の発生・発達を扱う対流過程が非常に重要です。
強雨予測で重要な物理過程
水蒸気の供給
+
上昇流
+
雲微物理過程
+
対流過程
↓
強い降水の予測
したがって、「最も重要な部分は下部境界からの熱・水蒸気供給のパラメタリゼーションである」とする(c)は誤です。
■ 選択肢の確認表
| 記号 | 正誤 | 判断ポイント |
|---|---|---|
| (a) | 正 | 水平格子間隔が小さいほど、予測可能な現象の水平スケールの下限は小さくなる |
| (b) | 誤 | 積乱雲による強い降水の予測には、鉛直加速度を扱える非静力学モデルが重要 |
| (c) | 誤 | 強雨予測では、下部境界からの熱・水蒸気供給だけでなく、雲微物理過程や対流過程が重要 |
■ 受験生がつまずくポイント
1. 格子間隔と予測スケールの関係を逆に覚える
格子間隔が小さいほど、より細かい現象を表現しやすくなります。
細かい格子
↓
細かい現象を表現しやすい
「格子間隔が小さい=予測可能な現象の下限スケールも小さい」とセットで覚えましょう。
2. プリミティブ方程式系を万能だと思ってしまう
プリミティブ方程式系は、総観規模の大気現象を扱ううえで重要です。
しかし、積乱雲のように鉛直加速度が重要な現象では、静力学近似では不十分になる場合があります。
積乱雲・局地的大雨・強い対流が出てきたら、非静力学モデルを連想しましょう。
3. 強雨の原因を「水蒸気供給だけ」で考えてしまう
強い雨には、もちろん水蒸気の供給が必要です。
ただし、実際に強雨を予測するには、雲の中で何が起きるか、つまり雲微物理過程や対流過程の表現が重要になります。
水蒸気があるだけでは、どこで、どのくらいの強さで雨になるかまでは決まりません。
4. 「下部境界」という言葉に引っ張られる
下部境界からの熱・水蒸気供給は、降水に関係する重要な要素です。
しかし、この問題では「組織化された積乱雲からもたらされる強い降水」の予測がテーマです。
そのため、下部境界だけでなく、雲の発生・発達・降水粒子の成長を扱う物理過程まで見る必要があります。
■ まとめ
- (a)水平格子間隔が小さいほど、より小さな水平スケールの現象を表現しやすいため正しい
- (b)積乱雲による強い降水の予測には、プリミティブ方程式系ではなく非静力学モデルが重要なため誤り
- (c)強雨予測で最も重要な部分を下部境界からの熱・水蒸気供給だけとするのは不適切で、雲微物理過程や対流過程が重要なため誤り
正解は③
(a)正・(b)誤・(c)誤
この問題で必ず押さえたいこと
数値予報モデルの問題では、現象のスケールとモデルの特徴を結びつけて考えることが重要です。
水平格子間隔が小さい
↓
小さな現象を表現しやすい
積乱雲・局地的大雨
↓
鉛直加速度が重要
↓
非静力学モデル
強雨予測
↓
雲微物理過程・対流過程が重要
特に、積乱雲=非静力学モデル、強雨予測=雲微物理過程・対流過程という対応を押さえておきましょう。
※ 本記事では、一般財団法人 気象業務支援センターより利用許諾を受けて、気象予報士試験問題を掲載しています。
問題文の著作権は一般財団法人 気象業務支援センターに帰属します。
以上、第63回 専門知識 問4の解説でした!
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皆で最高の独学環境を作っていきましょう!
