【第63回 気象予報士試験 専門知識】問3 二重偏波気象ドップラーレーダーをわかりやすく解説
こんにちは!今回は第63回気象予報士試験 専門知識 問3を解説します!
この問題は、二重偏波気象ドップラーレーダーによる降水観測についての問題です。
従来の気象ドップラーレーダーに比べて、二重偏波レーダーでは水平方向と垂直方向の2種類の電波を使うため、雨の強さや降水粒子の形・種類をより詳しく推定できます。
この問題で重要なポイント
- 強い降水域の奥では、電波が減衰してエコーが実際より弱く見えることがある
- 雨粒は雨粒がない空気中より電波の伝搬速度を少し遅くする
- 雨滴は大きいほど扁平になりやすい
- 二重偏波レーダーでは、水平偏波と垂直偏波の位相差から雨の強さを推定できる
- 水平偏波と垂直偏波の反射波の振幅比から、降水粒子の形や種類を推定できる
■ 問題文
気象庁の二重偏波気象ドップラーレーダーによる降水の観測について述べた次の文章の下線部(a)〜(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。
二重偏波気象ドップラーレーダーは、水平方向と垂直方向の2つの異なる振動面をもつ電波をそれぞれ水平偏波、垂直偏波という)を送受信することで、従来の気象ドップラーレーダーよりも多くの情報を取得可能な観測装置である。
レーダーから送信された電波が反射されてから戻ってくるまでの経路上に強い降水がある場合には、それより遠方の降水については、(a)電波が減衰してしまい実際の降水よりも弱いエコーが観測されることがある。
電波は雨粒のある空気中を進むとき、雨粒がない空気中と比べて伝搬速度が少し遅くなる性質がある。また、雨粒は大きいほど空気抵抗を受けて扁平になるが、氷粒子は扁平にはならない。
二重偏波気象ドップラーレーダーでは、このような電波や雨粒の特性を踏まえて、(b)水平偏波と垂直偏波の反射波の位相差を用いることにより、雨の強さを従来の気象ドップラーレーダーより正確に推定することが可能である。
さらに、降水粒子は種別によって形状が異なるので、(c)水平偏波と垂直偏波の反射波の振幅の比から降水粒子の形や種別を推定することが可能である。
| (a) | (b) | (c) | |
|---|---|---|---|
| ① | 正 | 正 | 正 |
| ② | 正 | 正 | 誤 |
| ③ | 正 | 誤 | 誤 |
| ④ | 誤 | 正 | 正 |
| ⑤ | 誤 | 誤 | 誤 |
■ 解答
①
(a)正
(b)正
(c)正
■ 解き方の方針
この問題は、二重偏波レーダーで得られる情報を次のように整理すると解きやすいです。
強雨域の奥
↓
電波が減衰してエコーが弱く見える
位相差
↓
雨の強さの推定
振幅比
↓
降水粒子の形・種類の推定
ポイントは、位相差は雨の強さ、振幅比は粒子の形や種類と結びつけることです。
■ (a)強い降水の奥では電波が減衰し、エコーが弱く見えることがある
(a)は正しいです。
レーダーの電波は、降水粒子に当たって反射・散乱されながら進みます。
途中に強い雨の領域があると、その領域で電波のエネルギーが失われます。
そのため、強い降水域のさらに奥にある降水については、実際には強い雨であっても、レーダーでは弱いエコーとして観測されることがあります。
電波減衰のイメージ
レーダー
↓
強い雨域で電波が弱まる
↓
その奥の雨まで十分に届かない
↓
実際より弱いエコーに見える
したがって、(a)は正です。
■ (b)水平偏波と垂直偏波の位相差から雨の強さを推定できる
(b)は正しいです。
雨粒がある空気中では、電波の伝わる速さが雨粒のない空気中より少し遅くなります。
また、雨滴は大きくなるほど空気抵抗を受けて横につぶれたような扁平な形になりやすくなります。
このため、水平偏波と垂直偏波では、雨域を通過したときの進み方に差が出ます。
この差が位相差として現れ、雨の強さをより正確に推定するために使われます。
位相差で雨の強さを見るイメージ
雨粒が多い・大きい
↓
電波の進み方に差が出る
↓
水平偏波と垂直偏波の位相差が大きくなる
↓
雨の強さを推定
したがって、(b)は正です。
■ (c)振幅比から降水粒子の形や種類を推定できる
(c)は正しいです。
降水粒子は、雨滴・雪・あられ・ひょうなど、種類によって形が異なります。
たとえば、大きな雨滴は横に扁平になりやすいため、水平方向と垂直方向で反射のされ方に差が出ます。
一方、氷粒子は雨滴と異なる形や性質をもつため、水平偏波と垂直偏波の反射波の振幅の比を見ることで、降水粒子の形や種類を推定できます。
振幅比で粒子の形を見るイメージ
水平偏波の反射
+
垂直偏波の反射
↓
振幅の比を比較
↓
粒子の形・種類を推定
したがって、(c)は正です。
■ 選択肢の確認表
| 記号 | 正誤 | 判断ポイント |
|---|---|---|
| (a) | 正 | 強い降水域の奥では電波が減衰し、実際より弱いエコーが観測されることがある |
| (b) | 正 | 水平偏波と垂直偏波の反射波の位相差から、雨の強さをより正確に推定できる |
| (c) | 正 | 水平偏波と垂直偏波の反射波の振幅比から、降水粒子の形や種類を推定できる |
■ 受験生がつまずくポイント
1. 「強い雨ほどレーダーに強く映る」とだけ考えてしまう
基本的には強い雨ほど強いエコーになります。
しかし、強い降水域を電波が通過すると、その途中で電波が弱まります。
そのため、強い雨域の奥では、実際より弱いエコーとして観測されることがあります。
強い雨
= エコーが強い
だけではなく
強い雨の奥
= 電波減衰で弱く見えることがある
2. 位相差と振幅比の役割を混同する
二重偏波レーダーでは、水平偏波と垂直偏波を比較します。
ただし、何を比較するかによって得られる情報が変わります。
位相差
↓
雨の強さ
振幅比
↓
粒子の形・種類
この対応関係は、試験でそのまま問われやすいので確実に押さえましょう。
3. 雨粒と氷粒子の形の違いを意識できない
大きな雨滴は、落下中に空気抵抗を受けて横に広がった扁平な形になりやすいです。
一方、氷粒子は雨滴とは異なる形状や反射特性をもちます。
そのため、二重偏波レーダーでは、雨・雪・あられ・ひょうなどの判別にも利用できます。
4. 従来型レーダーとの違いをあいまいに覚える
従来の気象ドップラーレーダーでも、降水エコーや風の情報を得ることはできます。
しかし、二重偏波レーダーでは、水平偏波と垂直偏波を使うことで、降水粒子の形や種類に関する情報も得やすくなります。
「二重偏波=情報量が増える」と理解しておくと整理しやすいです。
■ まとめ
- (a)強い降水域の奥では、電波減衰により実際より弱いエコーが観測されることがあるため正しい
- (b)水平偏波と垂直偏波の反射波の位相差を使うことで、雨の強さをより正確に推定できるため正しい
- (c)水平偏波と垂直偏波の反射波の振幅比から、降水粒子の形や種類を推定できるため正しい
正解は①
(a)正・(b)正・(c)正
この問題で必ず押さえたいこと
二重偏波気象ドップラーレーダーでは、水平偏波と垂直偏波を比較することで、従来より多くの情報を得られます。
電波減衰
= 強雨域の奥が弱く見える
位相差
= 雨の強さの推定
振幅比
= 降水粒子の形・種類の推定
特に、位相差と振幅比の役割の違いは、二重偏波レーダーの問題で頻出なので、セットで覚えておきましょう。
※ 本記事では、一般財団法人 気象業務支援センターより利用許諾を受けて、気象予報士試験問題を掲載しています。
問題文の著作権は一般財団法人 気象業務支援センターに帰属します。
以上、第63回 専門知識 問3の解説でした!
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皆で最高の独学環境を作っていきましょう!
