【過去問解説】第63回 実技2 問1

2025年11月24日

こんにちは!今回は気象予報士試験 第63回 実技2 問1を解説します!

◇模範解答

① -(サイズ表現なし) ② 非常に強い ③ 30海里 ④ 85ノット ⑤ 60海里 ⑥ 海上台風 ⑦ 5 m/s(≒10ノット) ⑧ 積雲 ⑨ 乱層雲 ⑩ 層積雲 ⑪ 低い

◇解説

詳細な解説:

図1は問題文の地上天気図(XX年9月19日21時)で、日本付近の実況を示しています。九州の南東海上に台風第○○号が位置し、中心気圧945 hPa・最大風速85ノット(約43.9 m/s)の強い勢力です。30ノット以上の直径が180+140=320海里により半径は160海里。よってこの台風の大きさ(強風域の半径)は約300 kmと推定され、気象庁の定義では500 km未満の場合「大型」「超大型」といったサイズ表現を付けないため、①には「(サイズ表現なし)」が入ります。最大風速85ノットは「非常に強い」台風に該当するため②は「非常に強い」です。また台風の中心位置の確度(確からしさ)は「正確」で、その誤差は概ね③30海里以下と示されています。中心気圧945 hPa・④最大風速85ノット、さらに中心から半径⑤60海里以内は風速50ノット以上の暴風域であることから、「TW(台風警報)」区分のうち⑥海上台風警報が発表されています。鹿児島の天気は弱い驟雨(にわか雨)で東風10ノット(約5 m/s)となっており⑦は10ノット相当(1 m/s刻み解答なので約5 m/s)です。鹿児島では下層雲に⑧積雲(Cu)が観測されています。一方、チェジュ島(済州島)の天気は曇りで、中層雲に高層雲または⑨乱層雲(Ns)、下層雲に⑩層積雲(Sc)が観測されています。気象衛星の赤外画像(図2)を見ると、台風中心付近には輝度温度の⑪低い(=雲頂高度が高い)積乱雲の塊が発達しており、また前線や台風北側の日本海にも広く雲域が広がっている状況がわかります。以上が問1(1)の空欄に対応する内容です。

◇模範解答

初期時刻から12時間後:15ノット、12時間後から24時間後:20ノット

◇解説

台風の移動速度を12時間ごとに推算します。図6および図7の地上予想図(それぞれ初期時刻から+12時間、+24時間の予想)における台風中心位置の移動距離を定規で測り、速度に換算します。初期時刻(19日21時)から12時間後(20日9時)までに台風は約200海里進んでおり、12時間で割ると約16.7ノットですが5ノット刻みの指定なので15ノットが適切です。同様に、12時間後から24時間後(20日21時)までは約230海里移動したため約19.2ノット、5ノット刻みで20ノットと求められます。したがって問1(2)の解答は「15ノット、20ノット」です。台風は時間経過とともにやや速度を上げて北東へ進んだことになります。なお、実際の計算値16.7ノットと19.2ノットはそれぞれ15と20に丸めており、多少の読み取り誤差は問題ありません。


◇模範解答

5 m/s(約10ノット) 

② 台風中心~鹿児島の距離:約70海里、鹿児島は暴風域の

◇解説

①図1の鹿児島地点に示された風速を読み取ります。図1の風向風速記号によれば、鹿児島は東風で風旗2本(10ノット)です。これを1ノット=0.514 m/s換算でおおよそ5 m/sとし、1 m/s刻みなので5 m/sと答えます。

②図1左下の台風拡大図(縮尺2倍)を使って台風中心から鹿児島までの距離を測定し、鹿児島が暴風域(風速25 m/s以上の領域)に入っているかどうかを答えます。拡大図では、緯度経度目盛りに60海里ごとの黒点が付いているので距離の目安になります。鹿児島(黒点)と台風中心を比べると約70海里離れていました。台風の暴風域半径は先述の通り60海里程度ですので、70海里離れた鹿児島は暴風域のに位置します。実際、図1右下の注記にも「中心から60海里以内で風速50ノット以上」とあり、鹿児島はその圏外であることが確認できます。


◇模範解答

天気図記号 A:低気圧(L)、B:高気圧(H)、C:低気圧(L)、D:高気圧(H)。中心気圧 B:1014 hPa、C:1008 hPa

◇解説

図1中の記号A~Dに関する問題です。図1ではいくつかの低気圧・高気圧や前線が描かれていますが、問題文では図5(19日9時の850 hPa予想図)も用いて、それぞれA~Dが地上の低気圧性循環か高気圧性循環かを判断するよう指示されています。図5を見ると、風の流れがAおよびCでは反時計回り(低気圧性循環)、BおよびDでは時計回り(高気圧性循環)になっているため、A=L(低気圧)、B=H(高気圧)、C=L、D=Hと判別できます。次に、それぞれの中心気圧を答えます。AとCは低気圧なので中心気圧を直接答えるのではなく、BとCに対応する中心気圧を答える形式です。図1ではAのすぐ東側に1020 hPaの等圧線が描かれており、A自身を囲む等圧線は1012 hPaです。Bはその1012 hPa等圧線より内側(低圧側)ではなく外側に位置し高圧部なので、Aの値(1012)より高い圧力となります。具体的には1012の次の高い等圧線は1016または1020ですが、図中の配置からBの中心気圧は1014 hPa程度と読み取られています。同様にCは1012 hPa等圧線で囲まれた低圧域内にある低気圧で、次の低い実線の等圧線は1008 hPaです。したがってCの中心気圧は1008 hPaと推定できます。以上により、問1(4)の解答は「A:低気圧、B:高気圧、C:低気圧、D:高気圧、B中心圧1014 hPa、C中心圧1008 hPa」です。


◇模範解答

① 前線面高度:約810 hPa。理由:気温の安定層の上端となるため。
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③ 館野:920 hPa程度(※許容範囲910~930 hPa)、鹿児島:500 hPaより上

◇解説

館野(茨城県)および鹿児島における大気の鉛直構造に関する設問です。図3にそれぞれ館野と鹿児島のラジオゾンデによる温度・露点の状態曲線(エマグラム)および風の鉛直分布が示されています。

①館野における前線面の高度(気圧)を10 hPa刻みで答え、さらにその判断理由のうち「気温」に関するものを約15字で述べます。前線面とは暖気と寒気の境界面ですが、エマグラム上では風向が大きく変化し、かつ気温減率が小さい(安定層となっている)高度に相当します。館野のエマグラムを読むと、およそ810 hPa付近に気温の鉛直勾配が小さくなる層があり、その上端で風向が南西から北西へと大きく変化しています。これが前線面と考えられ、気圧にして約810 hPaが該当します。設問の「10 hPa刻み」で答えるという指示から、解答例では810 hPaとしています。理由については、「気温の安定層の上端となるため」といった表現が考えられます。要するに、暖気と寒気の境目で気温の鉛直変化が小さくなっている層(=安定な層)の上端高さであることが根拠です。

②①で特定した前線面が850 hPa面において館野の南北どちらに位置するかを答えます。これは地上前線の位置とほぼ同義ですが、図4を用いると判断しやすくなります。図4の850 hPa面相当温位を見ると、関東付近には南北に強い傾圧帯(等相当温位の密集帯)があり、その南縁が館野付近を通過しています。一般に前線面は傾圧帯(温度傾度の強い帯)の南側境界付近に位置し、地上ではそれよりやや南に前線が延びます。館野(茨城)は関東平野の北部に位置しますが、図4から館野より南に高相当温位空気と低相当温位空気の境界がある(=前線が館野の南にある)ことがわかります。従って答えは「館野の」となります。この根拠として、先ほど求めた前線面高度との関連で「館野では前線面が850 hPaより高い高度に位置し、その高さは南側ほど低くなっているため」と説明できます。実際、暖気側(南側)ほど前線面高度が低く、寒気側(北側)ほど高い傾斜をもつので、館野では850 hPaより上空で前線面に達し、その前線は館野から見て南方に位置するということです。

③では館野および鹿児島における大気の状態をさらに比較する設問です。具体的には「館野における前線面高度」(これは①で答えた810 hPa前後)と「850 hPa面で館野の南に前線が位置するか北に位置するか」(これは②で答えた「南」)を踏まえて、両地点の対流の程度を答えるものです。館野と鹿児島のエマグラムを見比べ、空気塊が自由に上昇できる上限、すなわち雲頂高度(空気塊の浮力がゼロになる高度)を読み取ります。館野では前線面より上は成層安定度が高く、積雲対流が抑制されており、雲頂高度は約920 hPa程度と推定されます(許容範囲910~930 hPa)。一方鹿児島は台風暖域にあたり、大気の大部分が湿潤断熱減率に近い状態で不安定です。鹿児島の状態曲線では空気塊は500 hPaより上まで上昇しうる(雲頂が500 hPaより高い)ことが読み取れます。したがって、館野では対流が浅く抑制的(雲頂が低い)のに対し、鹿児島では対流圏中層まで達する深い対流が可能な状態と言えます。答案例では「館野:920 hPa、鹿児島:500 hPaより上」といった表現になっています。なお、館野では地表付近が冷たく安定な寒気の層で覆われており、積雲が成長しにくい状態です。一方鹿児島は暖湿な対流層が厚く、上空まで対流が発達しやすいことを意味します。


◇模範解答

◇解説

図1の地上天気図で四国付近から先が省略されて描かれている停滞前線を、図1内の四角で示された枠内に補足的に描き入れる作図問題です。解析のヒントとして、問1(5)①②で求めた前線面情報や、図2(衛星画像)、図4(解析図)、図5(予想図)が示唆されています。前述の通り、850 hPa面の等相当温位を見ると四国南方から東海沖にかけて強い傾圧帯が存在し、その南縁付近が前線に相当します。また衛星赤外画像(図2)でも、四国の南海上から本州南岸にかけて雲が帯状に連なっており前線位置を示唆します。従って、四国南東沖から本州南岸沿いを東進するように停滞前線を延長し、前線記号で描画します(実際の解答用紙では赤鉛筆等で前線記号を記入)。具体的には、図1中四国の南にある前線記号の端から東寄りに線を伸ばし、紀伊半島南岸沖を経て遠州灘方面へと達する形で停滞前線を描き入れれば正解です。


以上です!独自解説とAIを組み合わせ解答・解説を作成しています。訂正・ご意見あればコメントやご連絡いただけると幸いです。皆で最高の独学環境を作り上げていきましょう!

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