【過去問解説】第63回 実技1 問2

2025年11月22日

こんにちは!今回は気象予報士試験 第63回 実技1 問2を解説します!

◇模範解答

12時間後:東経127°、24時間後:東経137°

◇解説

トラフの解析には以下の要点から判断します。

トラフとリッジを解析するには以下の観点から判断する

  • 等高度線が低圧側から高圧側へ張り出している
  • 正渦度域(正渦度極大域)
  • 風のシアー

こちらの記事を参考⇒【講義】前線解析 – 独学資格塾

図3(500hPa高度・渦度解析図)では、華北上空に500hPaのトラフ(気圧の谷)が黒太実線で示されています。このトラフの進行を予想図で追うと、12時間後(図4の500hPa予想図)では張り出しと+220hPa/hの正渦度域から日本海に達しているとみられ、さらに24時間後(図5)では同様に張り出しと+229hPa/hの正渦度域から日本付近に差し掛かっています。これを基準に経度を読み取ると、12時間後(5月1日9時)の図4上で、問題文のトラフ(解析時刻に華北にあったもの)が5460 mの等高度線と交わる経度を読むと東経127°付近です。同様に24時間後(5月1日21時)の図5では東経137°付近で5460 m線と交わっています。

◇模範解答

トラフは東北東に進み、西側から地上低気圧に接近する。

◇解説

図4・図5によると、地上では4月30日21時に東シナ海にあった低気圧が、12時間後には九州西方海上、24時間後には日本海中部へと北東進し、同期間に中心気圧が下がって発達しています。これに対応して500hPaのトラフも中国大陸から日本海へ東北東方向に進んでおり、地上低気圧に西側から追いつく形で接近しています。つまり地上低気圧の真西から上空の気圧の谷が迫る形になり、12~24時間後にかけてこのトラフの接近・通過による上昇流強化で地上低気圧の発達が促進されると考えられます。回答例では「トラフは東北東進し、西側から地上低気圧に接近する」という簡潔な記述になっていますが、これは地上低気圧よりもやや西側(後方)に位置する500hPaトラフが東北東へ移動して追いかけ、低気圧の直上へ進んでくるという状況を述べたものです。


◇模範解答

等高度線:5520 m。理由:500hPa面の正渦度域の南縁(渦度ゼロの等値線)に最も近いため。

◇解説

500hPaの強風軸(ジェット気流軸)についての問題です。図5(24時間後の500hPa高度・渦度予想図)から日本付近の500hPa高度場を読み取ります。東経135°線に注目すると、その経線付近で高度線の間隔が狭くなっている箇所があります。強風軸とは等高度線が密集し風速が極大となる軸線ですが、数値予報図では風速そのものはプロットされていないため、高度線や渦度の分布から推定します。一般に500hPaの正渦度域(渦度>0の領域)の南縁は対流圏上層のジェット気流に対応することが多く、今回も正渦度域南端(渦度ゼロ線)付近に強い西風軸が存在すると推測できます。図5では東経135°付近で5520 mの等高度線がちょうど渦度ゼロ線に重なるように走っており、かつ高度線間隔も周囲より狭まっています。このことから、「東経135°において強風軸に最も近い500hPa等高度線の値」は5520 mと判断できます。

理由としては、5520 mの等高度線が500hPa正渦度域の南縁(渦度=0の線)とほぼ一致し、強風帯を示唆しているためです。解答例でも「500hPa面の正渦度域の南縁(渦度ゼロの等値線)に最も近いため」と記述されています。同様の問題では、対流圏上層のジェットコア付近では等高度線が屈曲・集中しやすいこと、また正渦度帯の南端やトラフの南側でジェットが吹くことを知識として持っておくと、判断の根拠になります。


◇模範解答

地上低気圧の中心の南東側で、850hPaの暖気が集中し相対的な高温域となっている。
850hPa面では地上低気圧の中心東側で暖気移流、南側で寒気移流が顕著となっている。一方、700hPa面では低気圧中心付近から東側にかけて最大 –80 hPa/hの強い上昇流、南側には最大 +20 hPa/hの下降流域が現れている。

◇解説

地上低気圧の周辺における温度場・温度移流と鉛直流の構造を把握する問題です。図5(24時間後予想図)右下の地上天気図では、日本海に低気圧の中心が予想されています。この低気圧の中心から約400 km以内に着目し、850hPa面および700hPa面の予想図(図5左下・図5上)から特徴を読み取ります。

850hPa面の気温分布の特徴:図5左下の850hPa気温予想図を見ると、地上低気圧の中心の南東側に顕著な暖気域が広がっています。具体的には、低気圧中心の南東方向で温度の水平傾度が大きく、等温線が混み合って高温側(例えば15℃以上)が狭く存在します。これは低気圧の暖域が南東側に偏っていることを意味します。したがって「低気圧中心の南東側で周囲より高い温度域となっている」と表現できます。言い換えれば、南東側に強い暖気塊(暖気集中帯)があり、南西側~西側には相対的に低温域があるという非対称な温度分布です。この分布は低気圧に伴う温暖前線が東~北東方向に伸び、寒冷前線が南側に伸びている典型的なパターンと一致します。

850hPa面の温度移流と700hPa面の鉛直流の特徴:850hPa気温・風予想図(図5左下)では、風と等温線から温度移流の極大部を推定できます。地上低気圧の東側では南寄りの風が暖気を北へ運ぶ暖気移流となっており、等温線の混み合いもあって顕著です。一方、低気圧の南側では西寄りの風が寒気を東へ運ぶ寒気移流が見られます。つまり低気圧を挟んで東側が暖気移流、南側が寒気移流の場となっています。これは温暖前線側(東側)で暖気が流入し、寒冷前線側(南側)で寒気が流入する典型的構造です。

700hPa鉛直流予想図(図5左下に破線等で描画)では、負の鉛直流(上昇流)域と正の鉛直流(下降流)域が確認できます。地上低気圧の中心付近から東側にかけて強い上昇流が予想されており、その極値は-80 hPa/h程度です。これは1時間で80 hPaも気圧が下がる(高度にして数km上昇する)強い上昇運動を意味します。場所としては地上低気圧の東~北東側、すなわち温暖前線の北側付近に対応すると考えられます。対照的に、低気圧の南側では+20 hPa/h程度の弱い下降流が見られます。下降流域は寒冷前線背後の冷たい高気圧側に対応し、南~南西側で顕著です。

以上をまとめると、850hPa温度移流は「中心の東側で暖気移流、南側で寒気移流」、700hPa鉛直流は「中心~東側で強い上昇流(最大 -80 hPa/h)、南側で弱い下降流(最大 +20 hPa/h)」となります。解答ではそれぞれ35字・60字程度で述べる指示でしたので、「~となる」「~が見られる」とシンプルにまとめると良いでしょう。


◇模範解答

◇解説

前線解析(作図)は以下の手順で作成します。

前線解析(作図)

  • 閉塞の判断
  • 前線位置の推定(高層天気図)
  • <閉塞している場合>閉塞点と閉塞前線の型の決定
  • 作図

こちらの記事を参考⇒【講義】前線解析 – 独学資格塾

●閉塞の判断

強風軸(ジェット流)が巻き込むように伸びており、若干寒気の流入や暖気の突っ込みも見えることから閉塞していると判断できます。

●前線位置の推定(高層天気図)

等温線集中帯の南縁および風のシアーにより前線位置を推定します。風のシアはやや不明瞭ですが南向き成分が生じたところを境とします。

●<閉塞している場合>閉塞点と閉塞前線の型の決定

前線の推定値に対して強風軸が通る点を閉塞点とします。

閉塞点から地上低気圧中心に対して伸ばした閉塞前線に対して前面と後面で温度を比べたとき、後面のほうが気温が低いため寒冷型閉塞前線(”人”の形になる)と判断できます。

以上より地上天気図の風のシアに配慮しながら作図すると模範解答になります。


◇模範解答

北緯40° 東経140° (※東経141°まで許容)
移動の方向:東北東、速さ:20ノット、中心気圧の変化量:+4 hPa
遅い

◇解説

低気圧の36時間後の予想位置・強度変化を答える問題です。図6(36時間後予想図:5月2日9時)で地上低気圧の予想位置を確認すると、低気圧マークが東北地方付近(日本海北部から北海道日本海側にかけて)に進んでいます。ほかのLスタンプと迷う方がいるかもしれませんが、作図問題より1日21時の時点で閉塞し最盛期を迎えていることがわかるため2日9時の時点では衰退していると予想されます。そういったことからも緯度経度を1°刻みで読むと北緯40°、東経140°付近です(東経141°程度でも誤差範囲)。したがって①の答えは「北緯40° 東経140°(付近)」となります。

②24時間後(5月1日21時)から36時間後(5月2日9時)までの12時間で、この低気圧がどの方向へどれくらい移動し、中心気圧がどれだけ変化したかを答えます。図5(24時間後)では低気圧中心がおおよそ北緯37°、東経135°付近、中心気圧1004 hPaと読み取れます。図6(36時間後)では前述のとおり北緯40°、東経140°付近で、中心気圧は1008 hPa程度に見えます。位置の差から移動ベクトルを求めると、南西側(元の位置)から見て北東(NE)~東北東(ENE)方向へ進んでいます。16方位で表現する場合、北東(NE)は風向等で45°を指し、東北東(ENE)はそれよりやや東寄り(67.5°)です。本低気圧はほぼ東寄りの北東進と言え、解答例では「東北東」と表現されました。移動距離は約5°経度・3°緯度程度で、12時間でおよそ500 km前後進んだ計算です。これをノットに換算すると500 km/12h ≈ 22 ktとなり、最も近い5ノット刻みは20ノットです。中心気圧は1004 hPaから1008 hPaへ+4 hPaの変化(弱まり)となっています。以上より②は「東北東、20ノット、+4 hPa」が正解です。

③最後に、移動の速さの変化について比較します。12~24時間後の移動と24~36時間後の移動を比べると、図4→図5(前半12時間)では九州西方から日本海中部まで移動し距離が大きく、図5→図6(後半12時間)は日本海中部から北海道付近までで距離がやや小さい印象です。定量的には、前半(12hで約7°程度の移動)は30~35 kt相当、後半(12hで約5°程度の移動)は20~25 kt相当となり、若干後半の方が遅くなっています。問題文の基準では3ノット未満の差は「変わらない」としますが、ここでは差が10ノット近くあるため「遅い」と判断できます。よって③は「遅い」を選択します。


以上です!独自解説とAIを組み合わせ解答・解説を作成しています。訂正・ご意見あればコメントやご連絡いただけると幸いです。皆で最高の独学環境を作り上げていきましょう!

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