こんにちは!今回は気象予報士試験 第63回 実技2 問2を解説します!
(1)解説
◇模範解答
① 台風中心を囲む1004 hPa等圧線の南北幅(初期時刻):約600 km、(+12時間後):約500 km、(+24時間後):約200 km
② 500 hPaの渦度極大値:小さくなる。台風の気圧中心の鉛直軸の傾き:ほぼ鉛直から北東方向に変わる。
③ 渦度極大値の移動速度:25ノット
④ 700 hPa上昇流の中心と地上台風中心の位置関係の変化:上昇流の中心は、地上の台風中心から北東方向に離れていく。台風の鉛直軸はほぼ鉛直から北東方向へと傾く。
◇解説
詳細な解説:
問2では、図6~図8の予想図(19日21時を初期時刻とする+12時間後および+24時間後の予想)と図1・図4を用いて、台風とその周辺の大規模場(総観場)の変化を読み取ります。
①地上天気図における台風中心を囲む1004 hPa等圧線の南北方向の直径を測定します。初期時刻(19日21時)の図1では、1004 hPa等圧線が台風の南側と北側で約600 km離れていました。12時間後(20日9時)の地上予想図では約500 km、24時間後(20日21時)では約200 km程度と読み取れます。この値から、台風の等圧線間隔(気圧場の広がり)が時間とともに急激に縮まっていることがわかります。言い換えれば、台風の規模が縮小し、等圧線の混み具合が変化したことで台風の勢力が弱まってきた兆候と考えられます。実際、19日21時から20日21時にかけて中心気圧も上昇傾向(945 hPa → 約970 hPa付近)にあり、台風は温帯低気圧化に向けて衰弱していると推測できます。

②では、500 hPa高度場における台風周辺の渦度極大(正渦度の最大値)の変化を述べます。図6上段(20日9時の500 hPa予想図)では、台風の真上付近に+724(×10^-6/s)の非常に大きな正渦度極大域が位置しています。一方、図7上段(20日21時の500 hPa予想図)では、台風中心からやや北東にずれた位置に+240(×10^-6/s)の極大値が確認できます。数値が724から240へ大幅に小さくなっていることから、500 hPa渦度極大値は時間の経過とともに「小さくなる」と表現できます。これは上空の台風周辺循環が弱まりつつある、つまり台風の勢力衰退に伴い上層の渦度も減少したことを示唆します。また同時に、渦度極大の位置が地上の台風中心に対して移動している点にも注目します。12時間後には極大値は地上中心とほぼ重なっていたのが、24時間後には北東方向へずれていました。これは台風の鉛直軸(上空での位置)が「ほぼ直上から北東方向へ傾いた」ことを意味します。台風が鉛直に発達した対称的な構造から、時間とともに北東に傾いた非対称構造へ移行しつつある、すなわち温帯低気圧の性質を帯び始めたことを示しています。
③上記で言及した500 hPa渦度極大値の位置移動の速さを求めます。12時間後(20日9時)と24時間後(20日21時)で渦度極大の中心位置がどれだけずれたかを計測し、その距離を12時間で割ってノットに換算します。図6・図7より渦度極大の移動距離は約315海里と読み取れるため、12時間で割ると約26ノットになります。問題文の指定「5ノット刻み」で四捨五入すると25ノットが適切な解答です。この値から、上層の渦度場の変化がかなり速い速度で進行していることがわかります。換言すれば、台風周辺の上層トラフの進行などにより、渦度極大が北東へ迅速に移行していると考えられます。
④700 hPaにおける上昇流の中心(鉛直流の極大域)と地上の台風中心との位置関係が、12時間後から24時間後にかけてどのように変化したかを記述します。図8(700 hPa鉛直流の予想図)によれば、12時間後(20日9時)には台風直上付近に-89 hPa/h程度の上昇流(負の鉛直流)極大がありましたが、24時間後(20日21時)にはその極大が地上中心から北東方向へ離れた位置(-112 hPa/hの地点)に移っています。すなわち、「上昇流の中心(強い上昇気流の位置)は、地上の台風中心から北東方向へ次第に遠ざかっていく」という変化が読み取れます。またこれに対応して、前述のとおり台風の垂直構造も鉛直から北東に傾いてきています。従って、答案としては「上昇流の中心は地上台風中心から北東方向に離れていく。台風の気圧中心の鉛直軸の傾きは、(それまで)ほぼ鉛直だったものが北東方向に傾く」といった内容を記せば良いでしょう。
以上の(1)①~④の分析から、台風は上陸後に速度を上げつつ北東進し、中心気圧の上昇・渦度の減少・構造の傾斜化など温帯低気圧化に向けた変化を遂げていることがわかります。
(2)解説
◇模範解答
a、e、f
◇解説
「台風の発達・衰弱に寄与する要因」について、与えられた候補(記号a~f)の中から寄与の大きいものを3つ選ぶ問題でした。候補には、おそらく(a)水蒸気供給量の変化、(b)上空トラフ接近の有無、(c)下層暖気流入、(d)下層寒気流入、(e)台風中心の鉛直軸の傾斜、(f)台風移動先の傾圧性(温度傾度)の大小、等があったと推測されます。上述したように、台風は時間とともに弱体化し、中心軸が北東へ傾くなど対称性が崩れてきています。また地上天気図では台風の進行方向前方で等圧線間隔が狭く(傾圧性が高い領域に進入)、進行速度が次第に低下していることも読み取れます。一方で、下層で台風中心に顕著な暖気・寒気の流入は24時間後まで顕在化しておらず、500 hPa高度場でも台風後方に明瞭なトラフは確認できません。以上を踏まえると、台風の衰弱に大きく寄与したのは(a)(水蒸気などエネルギー供給の減少)と(e)(鉛直軸の傾き=構造の崩れ)であり、加えて(f)(進行先の傾圧性が大きく台風が速度を落としている=周囲の環境場の影響)と判断できます。従って解答は a、e、f となります。要するに、台風は上陸後に水平方向の温度構造が大きい環境に入り込み、自身のエネルギー収支が悪化して急速に弱まったということです。
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